コンプレッションウェア比較12選|企業の暑熱・疲労対策

コンプレッションウェア12ブランドを比較し企業の暑熱・疲労対策での選び方を解説する記事のアイキャッチ スポーツウェルビーイング

コンプレッションウェアは、着圧で筋肉のムダな振動を抑える機能性インナーです。結論から言うと、企業が従業員へ配るなら「着圧の強さ」ではなく「使う場面」で選ぶのが正解で、研究でも約20hPaの弱い着圧のほうが約40hPaの強い着圧より疲労を抑えました。公式サイトで確認できた12ブランドを一覧にして、選び方と夏場の注意点まで整理します。

現場を回っていると、「去年の夏に配ったインナー、結局あまり着られていないんですよね」という声をよく聞きます。サイズが合わない、締めつけが強すぎる、そもそも何に効くのか説明されていない。せっかく予算を取ったのに、ロッカーに積まれたままになっているケースは珍しくありません。

この記事では、各ブランドの公式サイトで確認できた事実だけを使って、機能の名称・公式が挙げる用途・作業用途への対応を比べます。あわせて、着圧の強さと効果の関係を調べた国内の研究と、2025年6月に施行された職場の熱中症対策ルールとの関係も見ていきます。

  1. コンプレッションウェアとは|着圧で筋肉の振動を抑える機能性インナー
    1. 公式が挙げる効果は疲労軽減・サポート・速乾の3系統
    2. リカバリーウェアや姿勢矯正インナーとは役割が分かれる
  2. コンプレッションウェア比較12選|公式サイトで確認できたブランド
    1. CW-X(ワコール)|テーピング原理を応用しワーク用途も公式に持つ
    2. C3fit(ゴールドウイン)|立ち仕事と移動時の着用を公式が勧める
    3. バイオギア(ミズノ)|競技別に設計が分かれる国内メーカーの定番
    4. アンダーアーマー|夏と冬でシリーズを使い分ける設計
    5. 2XU|リカバリー専用コレクションを別に持つ
    6. SKINS|睡眠・移動まで想定したシリーズ構成
    7. デサント|1枚の生地で機能を切り替えるSchematech
    8. BODY TOUGHNESS(おたふく手袋)|利用者の声が作業現場で埋まっている
    9. アシックス|体幹のブレ抑制をラバープリントで設計する
    10. ワークマン|980円から買えてサイズ選びの注意も公式が明記
    11. Nike Pro|フィットネスレベルを問わない汎用ライン
    12. adidas TECHFIT|ゾーン別の着圧設計を製品名に掲げる
  3. 弱い着圧のほうが疲労は軽くなる|研究が示した20hPaという目安
    1. 120分のランニングで弱圧が強圧を上回った3つの指標
    2. 効果が確認できなかった研究もある|過信を避けるための前提
    3. 医療用の弾性ストッキングはmmHgで規定されている
  4. 公式の用途記載で4タイプに分かれる|どこを取るかを先に決める
    1. 作業も競技も|ワークマン・おたふく手袋BT・CW-X
    2. 競技のサポート特化|ミズノ・アシックス・アンダーアーマー・ナイキ・アディダス・デサント
    3. 移動や立ち仕事で長く着る|Goldwin C3fit
    4. 回復のために着る|2XU・SKINS
  5. 従業員へ配布するときの5ステップ|サイズ実測から始める
    1. ①使う場面を1つに絞る
    2. ②着圧の強さは弱めから試す
    3. ③サイズを実測で合わせる
    4. ④洗い替えの枚数を決める
    5. ⑤現場の声で見直す
  6. 夏に使うなら冷感素材と重ね着の管理を組み合わせる|職場の暑熱対策との関係
    1. 着衣補正値では織物の二重着用を+3℃として扱う
    2. 2025年6月施行の義務化と服装選びをつなげる
  7. まとめ

コンプレッションウェアとは|着圧で筋肉の振動を抑える機能性インナー

コンプレッションウェアは、体に密着させて適度な圧(着圧)をかけることで、運動中の筋肉の動きをサポートするインナーの総称です。ここでは、各社が公式に何を謳っているのかと、似た名前の製品との違いを整理します。

ワークマンは公式サイトで「コンプレッション【compression】とは『加圧』『圧縮』の意味で(中略)筋肉の動きをサポートしてくれるウェア」と用語そのものを定義しています。ミズノは「運動生理学やバイオメカニクスの研究に基づいて、素材のストレッチや衣服圧をコントロールすることにより、スポーツ時のパフォーマンスや筋肉、関節へのサポート機能を持たせた商品群の総称」とし、「筋肉のムダな振動を抑えることで筋肉の負担を軽減」すると説明しています。

つまり、生地を伸ばして体に密着させ、走ったり跳んだりしたときに筋肉が揺れる量を減らす、というのが共通の考え方なんですよね。

公式が挙げる効果は疲労軽減・サポート・速乾の3系統

後ほど一覧にする12ブランドの公式説明を並べると、書かれている効果はおおむね3つに収まります。1つ目が疲労軽減、2つ目が関節・筋肉のサポート、3つ目が吸汗速乾や接触冷感といった素材の快適性です。

ワコールのCW-Xは「独自のテーピング原理をさまざまなウェアに応用し、運動時のカラダをサポート」するWEARABLE TAPING(身にまとうテーピング)を掲げ、効果として「疲労軽減」「安定性向上」「可動域向上」の3点を挙げています。ただし公式サイトには「商品によって期待できる効果は異なります」という注記も併記されています。

アンダーアーマーのHEATGEARは「吸汗速乾性と通気性に優れたファブリックが酷暑時でも涼しく、ドライで快適に保つ」と快適性の側に寄った説明で、「60分間のトレーニングによる発汗後、通常のコットンTシャツと比べて53%軽量(自社調べ)」という数値も公開しています。

効果の言い方はブランドごとに違いますが、この3系統のどれを前面に出しているかを見ると、そのブランドが何のために作っているのかが読み取れます。

(参考)コンプレッションウェア特集 – 株式会社ワークマン

(参考)バイオギア(野球) – ミズノ株式会社

リカバリーウェアや姿勢矯正インナーとは役割が分かれる

売り場では隣に並んでいても、コンプレッションウェアと「リカバリーウェア」「姿勢矯正インナー」は別のカテゴリーです。混同したまま配ると、期待した効果と違うという不満につながります。

たとえばTENTIALは、公式サイトの製品カテゴリーにコンプレッションを持っていません。同社のBody Care Innerは姿勢補正インナーで、公式サイトが「強力な着圧のある姿勢補正グッズは、締め付けが苦しく」と、むしろ着圧製品と自社製品の線引きを説明しています。就寝時に着るBAKUNEはリカバリーウェアとして届け出られた別カテゴリーの製品です。

コンディションを整える道具としての位置づけを整理したい場合は、一流アスリートのコンディショニング完全ガイドで睡眠・栄養・リカバリーの関係もあわせて確認すると、ウェアだけに頼らない設計になります。

コンプレッションウェア比較12選|公式サイトで確認できたブランド

ここからは、製品の公式サイトで機能名称と用途を確認できた12ブランドを並べます。選定条件は「メーカー公式サイトに製品ラインナップのページがあり、一般消費者が購入できる形で日本国内に展開していること」の1点です。公式サイトを確認できなかったブランドは掲載していません。

ブランド(提供企業) 機能・技術の名称 公式が挙げる主な用途 作業・立ち仕事の明記
CW-X(ワコール) WEARABLE TAPING ラン・野球・ワーク あり
C3fit(ゴールドウイン) 3つのC(着圧・調整・快適性) ラン・登山・クライミング・ヨガ あり
バイオギア(ミズノ) Dynamotion Fit 野球・ゴルフ・テニス・陸上 なし
アンダーアーマー(ドーム) HEATGEAR/COLDGEAR トレーニング全般・酷暑時 なし
2XU(ツータイムズユージャパン) MCS(マッスル・コンテインメント・スタンピング) ラン・トライアスロン・リカバリー なし
SKINS(グリップインターナショナル) 動的段階的着圧 競技・リカバリー・移動・睡眠 なし
デサント Schematech(スキーマテック) 競技用(エナジーリターン理論) なし
BODY TOUGHNESS(おたふく手袋) POWER STRETCH EVO 建設・農業・製造の作業現場 あり
アシックス MOTION MUSCLE SUPPORT ランニング なし
ワークマン クロスワーク立体成型・氷撃冷感 仕事・アウトドア・デスクワーク あり
Nike Pro(ナイキジャパン) Nike Dri-FIT トレーニング・フィットネス なし
adidas TECHFIT(アディダスジャパン) TECHFIT COMPRESSION/AEROREADY トレーニング・ジム なし

公式サイトで確認できた12ブランドの機能名称と用途(2026年9月時点・各ブランド公式サイトより作成)

この表で見えてくるのは、作業・立ち仕事を公式に用途として挙げているのは12ブランド中4ブランドだけだということです。企業が従業員へ配る前提なら、この4つがまず候補になります。以下、12ブランドを1つずつ見ていきます。

CW-X(ワコール)|テーピング原理を応用しワーク用途も公式に持つ

ワコールのCW-Xは、WEARABLE TAPING(身にまとうテーピング)という考え方を軸に、「着るだけのコンディショニング」を掲げています。生地の中にテーピングのような支持ラインを配置し、関節や筋肉の動きを方向づける設計です。

特筆すべきは、公式サイトが利用シーンとして「RUN」「BASEBALL」に加えて「WORK」を独立して掲げている点です。大手スポーツブランドで作業用途を正面から扱っているのは珍しく、企業の配布用途と相性が良いブランドといえます。製品ラインもタイツ・レギンス、パーツサポーター、インナートップス、ソックス、アームアクセサリーまで幅広くそろっています。

(参考)WEARABLE TAPING – 株式会社ワコール CW-X

C3fit(ゴールドウイン)|立ち仕事と移動時の着用を公式が勧める

C3fitは2019年秋冬にGoldwinブランドのコレクションへ統合され、現在は「C3fit technology」として展開されています。名称の由来は「独自の着圧設計(Compression)、コンディショニング(Conditioning)、快適な着用感(Comfort)の3つのC」です。

ロングタイツは現行4型で、Compression Long Tights(14,300円)、Impact Air Long Tights(14,850円)、Focus Support Long Tights(16,500円)、Impact Breeze Long Tights(13,200円)がそろいます。公式サイトは用途として「ラン、登山、クライミング、ヨガ」を挙げたうえで、「立ち仕事や、飛行機など移動時の着用もお勧め」と明記しています。デスクワーク中心の職場でも使える数少ないラインです。

(参考)C3fit タイツ – 株式会社ゴールドウイン

バイオギア(ミズノ)|競技別に設計が分かれる国内メーカーの定番

ミズノのバイオギアは、単一の製品名ではなく「運動生理学やバイオメカニクスの研究に基づいて」設計された商品群の総称です。公式には「筋肉のムダな振動を抑えることで筋肉の負担を軽減」すると説明されています。

特徴は競技別の細分化で、野球、ゴルフ、テニス、陸上それぞれに専用ラインがあります。アンダーシャツ、ロング・ハーフタイツ、腰や肘のサポーター、ソックス、アームガードまで品目もそろいます。動きやすさの技術としてDynamotion Fitも公式用語として使われています。作業用途の記載は確認できませんでした。

(参考)バイオギア(コンプレッション)商品一覧 – ミズノ株式会社

アンダーアーマー|夏と冬でシリーズを使い分ける設計

アンダーアーマー(日本総代理店は株式会社ドーム)は、温度帯でシリーズを分けているのが特徴です。HEATGEARは「酷暑時でも涼しく、ドライで快適に保つ」ベーシックテクノロジー、COLDGEARは「一枚でも暖かく」「汗冷えを防ぐ」ラインと位置づけられています。

公式が挙げる効能は、温度調節、吸湿発散、4方向ストレッチの3軸です。吸湿発散については「60分間のトレーニングによる発汗後、通常のコットンTシャツと比べて53%軽量(自社調べ)」という比較値が公開されています。新素材UAネオラストを使ったUAヒートギア エリートも展開されています。

(参考)HEATGEAR ベースレイヤー – 株式会社ドーム(アンダーアーマー)

2XU|リカバリー専用コレクションを別に持つ

オーストラリア発の2XU(日本法人は株式会社ツータイムズユージャパン)は、MCS(マッスル・コンテインメント・スタンピング)という独自のサポート技術を掲げています。公式の説明は「重要な筋肉、腱、筋膜のグループをターゲットに、激しい運動中の疲労や緊張に対して、主要な筋肉をサポートする革新的なファブリックサポートシステム」です。

MCSコンプレッションだけで39型を展開し、ラン・トライアスロン・ジムに加えてリカバリー専用コレクションを別枠で持つのが特徴です。リフレッシュリカバリー コンプレッションタイツは15,400円で、運動後に着るための製品として設計されています。キッズラインもあります。

(参考)MCSコンプレッション – 株式会社ツータイムズユージャパン(2XU)

SKINS|睡眠・移動まで想定したシリーズ構成

SKINSは「運動中に最適且つ正確な圧力を与える『動的段階的着圧』の手法を初めてコンプレッションウェアに応用したパイオニア」を自認するブランドで、公式サイトでは「着るサプリ」という表現も使われています。日本での独占販売権は2021年8月から株式会社グリップインターナショナルが持っています。

製品はSERIES-1、SERIES-3、SERIES-5の3体系で、SERIES-1のメンズロングタイツが13,200円です。用途はアクティブパフォーマンスとリカバリーの2軸に分かれ、トラベル&リカバリーやスリープ用のロングタイツまで用意されているのが他社にない構成です。

(参考)SKINS 製品一覧 – 株式会社グリップインターナショナル

デサント|1枚の生地で機能を切り替えるSchematech

デサントのDESCENTE PROに搭載されるSchematech(スキーマテック)は、「1枚の生地の中で糸の織り方や編み方を変え、異なる機能性を付与する特殊技術」です。ストレッチ性、耐久性、通気性、着圧などを、生地の部位ごとに配置し分けます。

公式は「生地の切り替え、縫製を減らすことで、”第2の皮膚”のように」着られる点を訴求しています。研究拠点DISC OSAKAで生まれたエナジーリターン理論を反映したSCHEMATECH ENERGY RETURN TIGHTSは38,500円、QUARTER TIGHTSは35,200円と、今回並べた中では最も高い価格帯です。

(参考)DESCENTE PRO タイツ – 株式会社デサント

BODY TOUGHNESS(おたふく手袋)|利用者の声が作業現場で埋まっている

1926年創業の作業用手袋メーカー、おたふく手袋のインナーブランドがBODY TOUGHNESSです。「Get your second skin. 第二の皮膚を手に入れろ。」を掲げ、「ワーク、スポーツシーンなど、常に厳しい環境下で最大限のパフォーマンスを発揮し続けるスペシャリスト」向けと位置づけられています。

機能アイコンは、コンプレッション、ストレッチ、吸汗速乾、紫外線軽減、接触冷感、スピード消臭、全身消臭の7種類です。上位モデルのPOWER STRETCH EVOは「速乾スピード約2倍/冷感機能約1.5倍」(従来の冷感パワーストレッチシリーズとの比較・当社調べ)とされています。公式サイトの利用者の声には、建設現場の現場監督、鉄骨鳶職人、農業生産法人、素麺工房、モータースポーツが並び、想定読者が作業現場であることがはっきり分かる構成です。

(参考)BODY TOUGHNESS 製品一覧 – おたふく手袋株式会社

アシックス|体幹のブレ抑制をラバープリントで設計する

アシックスは「コンプレッション」という独立カテゴリーを公式に置いておらず、技術名としてMOTION MUSCLE SUPPORTを使っています。公式の説明は「モーション・マッスル・サポートにより姿勢と筋肉の負担軽減を追求したランニングタイツ」です。

設計上の特徴は、体幹をサポートするラバープリントを配置して走行時のブレを抑える点と、膝部にV字のラバープリントを置く点です。ロングタイツはスタビリティ、スタビリティ+、スピードポケット、METASPEED、ROADなど用途別に分かれ、3/4丈やバイカーショーツ、ベースレイヤートップスも展開しています。用途はランニング中心です。

(参考)メンズ インナー・タイツ – 株式会社アシックス

ワークマン|980円から買えてサイズ選びの注意も公式が明記

ワークマンのコンプレッションウェアは980〜1,900円という価格帯で、今回並べた他社製品の数分の1から数十分の1にあたります。効能として「適度な圧力を加えることで血液の循環がよくなり、疲労の原因となる老廃物を排除し、むくみを防いだり、体力回復につながります」という疲労軽減、サポーターやテーピングの役割を担うケガの予防、そして快適性の3点が挙げられています。

用途に「立ち仕事やデスクワーク」「仕事やアウトドア」を公式に明記している点も、企業配布を考えるうえで扱いやすいところです。機能名も氷撃冷感-10℃、アイスアーマー、遮熱-5℃冷感など夏向けが充実しています。

そのうえで公式サイトは、「締め付けすぎて逆に血行が悪くなり身体に不調をきたすことがないよう気を付けましょう。」とサイズ選びの注意も書いています。安価だからと大量に一括発注する前に、この一文は社内共有しておきたいところです。

(参考)コンプレッションウェア – 株式会社ワークマン

Nike Pro|フィットネスレベルを問わない汎用ライン

ナイキのNike Proは、「フィットネスレベルに関わらず、安心できる着用感で最適なパフォーマンスを発揮」するコレクションと説明されています。素材面ではNike Dri-FITテクノロジーが「肌から汗を逃がしてすばやく蒸発」させる役割を担います。

サブラインはトレーニング、スカルプト、シームレス、オクタ、ウォーム、フリースの6系統で、タイツ、タイトトップ、ショーツ、バイカーショーツ、スポーツブラまで展開しています。用途はトレーニングとフィットネスが中心で、リカバリーや作業用途の記載は確認できませんでした。

(参考)Nike Pro コレクション – 株式会社ナイキジャパン

adidas TECHFIT|ゾーン別の着圧設計を製品名に掲げる

アディダスのTECHFITは、2026年9月時点でも現行ラインとして展開されています。公式の説明は「TECHFIT COMPRESSION ── パワフルな動きを支えるゾーン別の着圧設計で、自由な動きを叶えながら筋肉に寄り添うようにフィット」です。通気の技術としてAEROREADYが併用されています。

価格はロングレギンス4,950円、3/4丈4,400円、ショートタイツ3,850円と、国内スポーツブランドの中間層にあたります。長袖・半袖・ノースリーブのトップス、ハイブリッドのインナーパンツ、ミディアムサポートブラもそろいます。製品名に「コンプレッション」を明示しているのは、今回の12ブランドではアディダスとワークマンだけです。

(参考)テックフィット インナー – アディダス ジャパン株式会社

Q. ワークマンのコンプレッションウェアと1万円台の製品は何が違いますか?

公式情報の範囲で違いが大きいのは、設計の細分化と用途の幅です。ワークマンは980〜1,900円で仕事・アウトドア・デスクワークをまとめてカバーします。1万円台のC3fitやSKINSは、タイツだけで4型以上を用途別に分け、リカバリーや睡眠用のラインを別に持ちます。着圧の強さそのものを価格から判断することはできません。

弱い着圧のほうが疲労は軽くなる|研究が示した20hPaという目安

強圧と弱圧のコンプレッションタイツを比較した図。弱圧のほうが筋疲労の軽減に有効

「もっと締まるやつはないの」と聞かれることがありますが、着圧は強いほど効果が上がるわけではありません。国内の研究では、弱い着圧のほうが良い結果を出しています。

立命館大学の後藤一成氏による研究「長時間運動時におけるコンプレッションタイツの着用が筋疲労や筋損傷・炎症反応に及ぼす影響」は、健康な成人男性8名を対象に、120分間のランニングで着圧の違いを比べています。

120分のランニングで弱圧が強圧を上回った3つの指標

この研究では、約20hPaの弱圧タイツが、約40hPaの強圧タイツや着圧なしのタイツと比べて優位に立ちました。差が出たのは、下肢筋群の筋疲労の軽減、運動中の心拍数の上昇抑制、そして炎症反応の抑制の3点です。

論文はさらに踏み込んで、「運動終了直後において,弱圧条件における跳躍高は強圧条件に比較して有意に高値を示した(P < 0.05)」と報告しています。つまり強く締めたほうが、運動直後のパフォーマンスはむしろ落ちたということです。

理由についても「30hPa を上回るような強圧を施した CG は,運動に伴う代謝物の蓄積を助長するのかもしれない」と考察されています。締めつけが強すぎると血流が制限され、老廃物が流れにくくなるという見立てですね。

被験者8名の小規模な研究なので、この数値をそのまま万人に当てはめることはできません。それでも「強ければ強いほど良い」という売り場の空気に対して、はっきりした反証になっています。

(参考)長時間運動時におけるコンプレッションタイツの着用が筋疲労や筋損傷・炎症反応に及ぼす影響(デサントスポーツ科学 Vol.37) – 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団

効果が確認できなかった研究もある|過信を避けるための前提

同じ論文は、着用しても運動パフォーマンスの改善が見られなかった先行研究が複数存在することも明記しています。コンプレッションウェアは「着れば必ず速くなる道具」ではなく、条件によって結果が分かれる道具だという前提で導入したほうが、社内の説明もぶれません。

一方で、運動していない時間の効果を調べた研究もあります。一関工業高等専門学校の鈴木明宏氏らによる「日常生活におけるコンプレッションウェア着用効果について」は、健常成人男性10名を対象に、着用によって副交感神経の活性や脳波β波の増加に有意な差が見られたと報告しています。ただし唾液アミラーゼについては有意な差はありませんでした。

数値が出た指標と出なかった指標を、どちらも並べて社内に共有しておくと、「思ったほど変わらない」という声が出たときに議論が止まりません。

(参考)日常生活におけるコンプレッションウェア着用効果について(デサントスポーツ科学 第38巻) – 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団

医療用の弾性ストッキングはmmHgで規定されている

研究で使われるhPa(ヘクトパスカル)に対して、医療の世界ではmmHg(水銀柱ミリメートル)で着圧を規定しています。単位が違うため、スポーツ用の製品と医療用の製品を同じ数字で比べることはできません。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は「弾性ストッキング」を一般的名称として登録し、「末梢から中枢に向かい漸減的に圧迫を加える機能を有する」ものと定義しています。厚生労働省の通知では、療養費の支給対象として「弾性ストッキングについては、30 ㎜ Hg 以上の着圧のもの」と定め、条件付きで15mmHg以上も対象としています。

スポーツ用のコンプレッションウェアの多くは、この医療用の基準とは別の製品です。混同して「医療用と同じ効果がある」と社内に説明しないよう注意してください。

(参考)慢性静脈不全による難治性潰瘍治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について(保医発0327第8号・令和2年3月27日) – 厚生労働省保険局医療課

Q. コンプレッションウェアは着圧が強いほど効果がありますか?

強いほど効果が上がるとは確認されていません。立命館大学の後藤一成氏が120分間のランニングで比較した研究では、約20hPaの弱圧が約40hPaの強圧より下肢の筋疲労や心拍数の上昇を抑えました。運動終了直後の跳躍高も弱圧のほうが有意に高い値でした。同研究は30hPaを上回る強圧が代謝物の蓄積を助長する可能性にも触れています。

公式の用途記載で4タイプに分かれる|どこを取るかを先に決める

コンプレッションウェア12ブランドを公式の用途記載で4分類したマトリクス図

12ブランドの公式説明を「作業・日常を想定しているか」と「運動中のサポートか回復か」の2軸で置き直すと、4つのグループに分かれます。ここを先に決めておくと、候補が一気に絞れます。

この分類は各社が公式サイトに書いている用途をそのまま拾って並べたもので、性能の優劣を表すものではありません。自社がどのマスを必要としているかを決める道具として使ってください。

作業も競技も|ワークマン・おたふく手袋BT・CW-X

公式サイトが立ち仕事や作業現場を用途として明記している3ブランドです。企業が従業員へ配布する場合、説明書きをそのまま社内展開に使えるという実務上の利点があります。おたふく手袋は利用者の声まで作業現場で構成されており、現場に「これはスポーツ用ではない」と伝えやすいのも強みですね。

競技のサポート特化|ミズノ・アシックス・アンダーアーマー・ナイキ・アディダス・デサント

競技別・トレーニング別に設計が分かれる6ブランドです。社内の部活動やスポーツクラブ支援、アスリート社員のサポートといった文脈なら第一候補になりますが、作業用途の記載がないため、現場作業者向けの一括配布には説明が一段必要になります。

移動や立ち仕事で長く着る|Goldwin C3fit

C3fitは公式に「立ち仕事や、飛行機など移動時の着用もお勧め」と書いている点で、このマスに単独で入ります。出張が多い職種や、長時間の立ち作業がある職場で試す価値があります。移動そのものによる疲労は、ウェア以外の手段と組み合わせて減らすほうが確実です。

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回復のために着る|2XU・SKINS

運動していない時間に着ることを公式が想定している2ブランドです。2XUはリカバリー専用コレクション、SKINSはトラベル&リカバリーとスリープのラインを持ちます。健康経営の文脈で「働いた後の回復」に手を入れたい場合は、このマスから入ると設計がぶれません。

従業員へ配布するときの5ステップ|サイズ実測から始める

企業がコンプレッションウェアを従業員へ配布する際の5ステップのフロー図

候補が絞れたら、あとは配り方の設計です。ここを飛ばして枚数だけ決めると、冒頭に書いたような「ロッカーに積まれたまま」になります。

5つのステップは順番に意味があります。とくに②と③を③→②の順でやると、サイズが合っていないのに「きつい=効いている」と誤解されたまま定着してしまいます。

①使う場面を1つに絞る

「夏の屋外作業」「長時間の立ち仕事」「終業後の回復」のうち、どれに使うのかを1つに決めます。複数を兼ねようとすると、前章の4タイプのどれにも合わない選定になりがちです。健康経営の施策全体の中でこの施策がどこに効くのかを整理したい場合は、ウェルビーイング施策の設計の考え方から逆算すると位置づけが決まります。

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②着圧の強さは弱めから試す

先に見たとおり、約20hPaの弱圧のほうが約40hPaの強圧より良い結果を出した研究があります。最初から強い着圧を選ばず、弱めのモデルで試してから判断するほうが、体感の不満も出にくくなります。強く締まるモデルを求める声が出た場合も、研究の内容を添えて説明できるようにしておきます。

③サイズを実測で合わせる

コンプレッションウェアは、普段のシャツのS・M・Lではなく、身長・体重・ウエストなどの実測値でサイズ表を引く製品がほとんどです。ワークマンが公式に警告しているとおり、締め付けすぎは血行を悪くする可能性があります。メジャーを用意した採寸の機会を1回設けるだけで、返品と不満が大きく減ります。

④洗い替えの枚数を決める

肌に直接着る製品なので、1人1枚では回りません。夏場の屋外作業なら1日1枚が前提になるため、最低2枚、できれば3枚を1セットとして予算を組みます。ここを1枚で通すと、洗濯が追いつかず着用が続かない、という形で施策が止まります。

⑤現場の声で見直す

配布して終わりにせず、1か月後に「着ているか」「どの場面で着ているか」「きつくないか」の3点を聞きます。着ていない人がいた場合、理由はサイズか用途のミスマッチのどちらかであることがほとんどです。次の発注でモデルを変えるための材料として残しておきます。

Q. サイズは普段の服と同じ表記で選べますか?

多くの製品は身長・体重・ウエストなどの実測値でサイズ表を引きます。普段のシャツの表記で選ぶと合わないことがあります。ワークマンは公式サイトで「締め付けすぎて逆に血行が悪くなり身体に不調をきたすことがないよう気を付けましょう。」と注意を明記しているため、配布前に採寸の機会を設けることをおすすめします。

夏に使うなら冷感素材と重ね着の管理を組み合わせる|職場の暑熱対策との関係

コンプレッションウェアには接触冷感や吸汗速乾を謳うモデルが多く、夏用として配られることがよくあります。ただし重ね着になる以上、暑熱リスクの管理とセットで考える必要があります。

厚生労働省は2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則にあわせて「職場における熱中症予防基本対策要綱」を示し、服装について「熱を吸収し、又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を着用させること。また、これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も望ましいこと」と定めています。

着衣補正値では織物の二重着用を+3℃として扱う

暑さ指数(WBGT)の評価では、着ている服の種類に応じて補正値を足します。JIS Z 8504の附属書Aに基づく着衣補正値では、作業服を基準とした場合、織物の衣服を二重に着用した場合は+3(℃-WBGT)として扱われます。

要綱が定める「暑熱な場所」はWBGTが28度以上または気温が31度以上の場所です。つまりインナーを重ねることで、同じ現場でも実質的な暑さ指数が基準を超える側に押し上げられる可能性があります。通気性の高いモデルを選ぶ、上着の側を薄くする、といった調整とセットで考えるのが実務的です。

冷却を分担させる手段としては、ウェア以外の選択肢も併用できます。

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(参考)労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について(基発0520第6号・令和7年5月20日/別紙1 職場における熱中症予防基本対策要綱) – 厚生労働省労働基準局

2025年6月施行の義務化と服装選びをつなげる

今回の改正の背景には、令和6年の熱中症による休業4日以上の死傷災害が1,195人と、調査開始以来最多になったという実態があります。事業者には体制整備・手順作成・関係者への周知が求められるようになりました。

この文脈でコンプレッションウェアを配る場合、「配布した」こと自体は対策の証明になりません。要綱が求めているのは体制と手順です。ウェアの支給は、その手順書の中にある「服装」の項目を埋める手段の1つとして位置づけると、監査でも説明が通ります。法改正そのものの対応範囲は職場の熱中症対策の義務化と罰則の解説で確認できます。

環境省の熱中症環境保健マニュアルも、衣服について「吸汗・速乾素材や軽・涼スーツ等を活用する」「炎天下では、輻射熱を吸収する黒色系の素材を避ける」と具体的に示しています。黒のインナーを選びがちな現場では、この1行が効きます。

(参考)熱中症環境保健マニュアル 2022 – 環境省

Q. 夏に作業服の下へ着せると暑くなりませんか?

重ね着になる分、暑さ指数の評価は厳しくなります。JIS Z 8504附属書Aに基づく着衣補正値では、織物の衣服を二重に着用した場合は+3(℃-WBGT)として扱われます。接触冷感や吸汗速乾を謳うモデルを選び、上着側の通気性も併せて見直すことが前提になります。厚生労働省の要綱も透湿性・通気性の良い服装を求めています。

Q. レディースサイズや半袖タイプもそろいますか?

今回の12ブランドは、いずれも公式サイトにメンズとレディースの両方、または半袖・ノースリーブを含む複数の丈の展開があります。2XUはキッズラインも持ちます。企業で配布する場合は、性別と丈の選択肢が両方そろっているかを発注前に確認すると、後から追加発注する手間を減らせます。

まとめ

コンプレッションウェアの選定は、ブランドの知名度よりも「公式が何の用途を想定しているか」を見るほうが早く決まります。今回の内容を振り返ります。

  • 公式サイトで確認できたのは12ブランド。作業・立ち仕事を用途に明記しているのはCW-X、C3fit、おたふく手袋BODY TOUGHNESS、ワークマンの4つ
  • 着圧は強いほど良いわけではなく、120分のランニングでは約20hPaの弱圧が約40hPaの強圧より筋疲労・心拍上昇・炎症反応を抑えた
  • 医療用の弾性ストッキングはmmHgで規定される別カテゴリーで、スポーツ用の製品と同じ効果を謳うことはできない
  • 配布は「使う場面を1つに絞る→弱めの着圧から試す→実測でサイズを合わせる→洗い替えを2〜3枚確保する→1か月後に現場の声で見直す」の順で進める
  • 夏に重ね着する場合、織物の二重着用は着衣補正値+3(℃-WBGT)として扱われるため、通気性の確保と冷却手段の併用が前提になる

価格は980円から38,500円まで約39倍の開きがあります。高い製品が現場に合うとはかぎらないので、使う場面を先に決めてから価格帯を選んでください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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