「異動の希望を出したことはありますか」と社員に尋ねると、「出しても通らないので」と笑って流される。社内公募の掲示は出ているのに、応募は毎年ほとんどない。そんな場面に心当たりはないでしょうか。
社内公募が形骸化する原因は、窓口があっても「誰が手を挙げられるのかが見えない」「いつ誰に知られるのかが決まっていない」「抜ける部署に補償がない」という設計の空白にあります。スポーツのFA(フリーエージェント)制度は、この3点を先にルールにすることで、選手が自分の意思で動ける仕組みを成り立たせてきました。
日本労働研究雑誌2025年1月号の論文(千野翔平氏、リクルートワークス研究所)は、リクルートマネジメントソリューションズの2022年調査として、社内公募制度の導入率が42.2%、自己申告制度が67.5%、FA制度が11.8%であると紹介しています。社内公募は、労働政策研究・研修機構の2007年調査(2006年時点)の34.7%から広がっています。一方で、リクルートワークス研究所の2022年調査(300人以上の企業の個人が対象)では、異動希望が叶わなかった人の35.2%が「一切説明なし」でした。
制度の数が増えても、手を挙げた社員が納得して動ける保証にはなっていません。本記事では、プロ野球のFAの考え方を企業の異動に移す、社内FA型の異動設計プランを提案します。
(参考)日本における社内公募制度の現状と課題(日本労働研究雑誌No.774、2025年1月号) – 労働政策研究・研修機構
- プランの概要|社内公募を「手を挙げて動ける制度」に変えるスポーツ式FA設計
- 課題解決の流れ|制度は42.2%に広がっても「手を挙げても動けない」が残る
- 上司を介さず補償まで決めるスポーツ式FAが社内公募と違う3つの理由
- プランの具体的な内容|資格・宣言・補償の3つを決めて公開する
- 導入ロードマップ|ルール公開・最初の宣言期間・定着確認の3フェーズ
- 効果の経路とKPI・リスク|説明率と定着率で制度の健康度を測る
- 料金モデルという選択肢|設計は固定・運用は月額・定着の確認に成果連動を添える
- 対象となる組織・読者|社内公募はあるが動きが鈍い3つのタイプ
- 期待できる効果|手を挙げた社員・現場・経営の3者に出る変化
- まとめ|社内公募に「資格・窓口・補償」を足して動ける制度にする
プランの概要|社内公募を「手を挙げて動ける制度」に変えるスポーツ式FA設計

図は、本プランの考え方を式にしたものです。異動が動く条件を、数えられる資格、公示される窓口、放出側の補償の3つに分けています(本記事の整理)。
- 対象:従業員100〜1,000名規模の企業の経営者・人事責任者・事業部長
- 課題:社内公募や自己申告制度はあるが、手を挙げても動けず、応募が育たない
- 導入期間(目安):ルールの設計と最初の試行に約3ヶ月、全社展開と定着の確認まで含めて約12ヶ月
本プランは、プロ野球のFAが備える「資格を日数で数える」「宣言の期間と公示を決める」「移籍に伴う補償を決める」の3つを、企業の異動に置き換えます。異動を人事部と上司の裁量から、公開されたルールに基づく選択へ移すことが狙いです。
課題解決の流れ|制度は42.2%に広がっても「手を挙げても動けない」が残る

図は、同じ2022年調査で、異動の実現に近い制度ほど導入率が低いことを示したものです(上記論文の紹介数値)。自己申告制度は情報を集める仕組みで、異動そのものを実現する仕組みではありません。FA制度のように本人が主導する制度は、まだ少数派です。
現状の課題|希望を出しても説明のないまま終わる
- 【希望の行き止まり】異動希望が叶わなかった人の35.2%が「一切説明なし」(リクルートワークス研究所2022年調査、300人以上の企業の個人が対象)
- 【制度の偏り】自己申告制度67.5%、社内公募42.2%に対し、本人が主導するFA制度は11.8%(リクルートマネジメントソリューションズ2022年調査)
- 【手を挙げる心理的な負担】応募が上司に伝わる場面が多いほど、手を挙げにくくなる(本記事の整理)
問題の要因|資格・窓口・放出側の補償が設計されていない
- 【資格の不透明】誰が、どの条件を満たせば手を挙げられるのかを、社員自身が数えて確かめられない(本記事の整理)
- 【窓口の不在】いつ、誰に宣言し、誰がいつ知るのかが決まっていない(本記事の整理)
- 【放出側の補償の空白】人が抜ける部署に後任が補充されないため、上司が異動を止める動機が残る(本記事の整理)
2024年4月から、労働契約の締結時と更新時に、就業場所と業務の変更の範囲を明示する事項が加わりました。会社が命じられる異動の範囲は書面で見えるようになった一方、本人が手を挙げて動く道筋までは、この改正が定めるものではありません。
(参考)令和6年4月から労働条件明示のルールが変わりました – 静岡労働局 労働基準部 監督課
解決策|プロ野球FAの「数える・公示する・補償する」を異動に移す
- 【資格を数える】満たせば誰でも宣言できる基準を、数字で公開する
- 【宣言と公示を固定する】宣言の期間と窓口を決め、受け入れ側の全部署に同時に知らせる
- 【放出側に補償する】異動が成立したら、抜ける部署に後任補充と引き継ぎの期間を保証する
日本野球機構(NPB)の公示では、一軍の出場選手登録が145日以上あったシーズンを1シーズンと数え、国内FAは通算8シーズンで取得します(2007年以降のドラフトで入団した大学・社会人出身の選手は7シーズン)。資格を取得した選手は、日本シリーズ終了日の翌日から、土・日・祝日を除く7日以内に権利の行使を表明し、公示の翌日から旧球団を含むどの球団とも契約交渉ができます。資格が数字で決まり、時期と手順が公開されているため、選手は上司の機嫌を読まずに動けます。
一方、日本プロ野球選手会の2021年12月の資料によると、FA移籍には年俸ランクに応じた金銭補償があり、選手会は補償金が移籍をためらわせる要因になっていると主張しています。企業の異動では、補償を「罰則」ではなく「後任の補充」の形にすることが、動きやすさと現場の維持を両立させる分かれ目になります。
(参考)フリーエージェントについて(2019年度公示) – 日本野球機構
(参考)移籍の活性化(国内移籍)(2021年12月公開) – 日本プロ野球選手会
Q. 社内FA制度と社内公募制度は、何が違うのですか?
社内公募制度は人材を求める部署が募集を出す求人型で、社内FA制度は社員が募集の有無にかかわらず自分から異動を申し出る求職型です。本記事のプランは、求職型の考え方を土台に、資格・宣言の窓口・放出側の補償を先に決める点が特徴です。
上司を介さず補償まで決めるスポーツ式FAが社内公募と違う3つの理由
社内公募の改善は、掲示方法や応募書式の工夫で終わりがちです。本プランは、手を挙げる前後のルールまで含めて設計するため、次の3つの点で性質が変わります。
理由1|募集を待たず本人が動く「求職型」で応募の母数が変わる
公募型は、募集が出るまで社員は待つ立場です。FA型は、条件を満たした社員が募集の有無にかかわらず宣言できるため、受け入れ側が「こんな人材が欲しい」と気づく機会も増えます。
上記論文が紹介する事例では、A社は制度の導入前に年約500人だった応募が、2023年度には約2万人に増え、そのうち約7,500人がマッチングしました(本記事の計算値で約37.5%)。窓口の設計が応募の母数を変えうることを示す一例です。ただし企業名は匿名で、他社に同じ結果が出るとは限りません。
理由2|資格・窓口・補償の3点セットは人事部だけでは決められず真似しにくい
資格の基準は評価制度と、窓口の運用は上司の役割と、補償は要員計画と予算に結びつきます。つまり、掲示や書式の改善では済まず、経営の合意が要ります。この合意形成の質が価格では測れない差になります。
同じ「異動の見える化」でも、評価の根拠を整える設計はスポーツ審判式の人事評価プランの記事が扱っています。本プランは、そこに「動く権利」と「抜ける側の補償」を加えた設計です。
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理由3|提供主体の強み|スポーツの移籍ルールと企業の人事制度の両方に日常的に接している
本プランを提供する側は、スポーツ現場の移籍や契約のルールに関する一次情報と、企業の人事・組織制度の設計の両方に日常的に接しています。競技の仕組みをそのまま写すのではなく、企業の評価制度や要員計画に合わせて「翻訳」できることが、絵に描いた餅にしない裏付けになります。
また、制度は設計して終わりではなく、最初の宣言期間を終えたあとの振り返りで形が決まります。その振り返りまで伴走できる体制を持っていることも、提供主体の強みです。
プランの具体的な内容|資格・宣言・補償の3つを決めて公開する
設計するのは3つです。表は、プロ野球のFAの仕組みを、企業の異動でどう置き換えるかを並べたものです。
| 仕組み | スポーツの原型 | 企業での設計 |
|---|---|---|
| 資格の数え方 | 一軍の出場選手登録が145日以上のシーズンを1と数え、国内FAは通算8シーズン | 勤続年数や直近の評価など、数えて確かめられる基準を公開し、満たした社員全員に宣言の資格を付ける |
| 宣言の窓口と公示 | 日本シリーズ終了翌日から7日以内(土日祝を除く)に表明し、公示後はどの球団とも交渉できる | 年1〜2回の宣言期間を固定し、受付は人事に一本化して、受け入れ部署に同時に公示する |
| 放出側の補償 | 年俸ランクに応じた金銭補償がある(2021年12月時点の選手会資料) | 異動成立と同時に、放出側に後任補充の枠と引き継ぎ期間を付ける |
出典:日本野球機構「フリーエージェントについて」(2019年度公示)、日本プロ野球選手会「移籍の活性化(国内移籍)」(2021年12月公開)をもとに作成。企業での設計は本記事の提案
仕組み1|資格の数え方|誰が手を挙げられるかを社員自身が数えて確かめられる
勤続年数、現部署での在籍期間、直近の評価など、数字で確かめられる条件を3つ以内に絞って公開します。プロ野球が日数で資格を数えるのは、選手が自分の資格を自分で確かめられるようにするためです。人事の判断の余地が小さいほど、社員は「どうせ通らない」と考えにくくなります。
仕組み2|宣言の窓口と公示|期間を固定し受け入れ部署に同時に知らせる
宣言は年1〜2回の期間に限り、受付は人事に一本化します。宣言した社員の情報は、受け入れ側の全部署に同時に示し、特定の部署だけが先に動くことを防ぎます。成立が内定するまで現所属の上司に知らせるかどうかは、会社の規模と文化に合わせて事前に決めます。
仕組み3|放出側の補償|抜ける部署に後任と引き継ぎの期間を約束する
異動が成立したら、放出側の部署に後任補充の枠と、3〜6か月程度の引き継ぎ期間を付けます。補償を設計せずに制度だけ作ると、上司が異動を止める動機が残り、中小規模では特に現場が回らなくなります。補償は、手を挙げる社員を罰する仕組みではなく、現場を守る仕組みとして設計します。
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Q. 従業員が少ない会社でも社内FA制度は導入できますか?
導入できます。ただし、常設ではなく年1回の宣言期間に絞り、放出側への後任補充の約束を先に決めるのが現実的です。少人数では一人が抜ける影響が大きいため、資格を満たした社員が同時に多数宣言した場合の優先順位も事前に決めておきます。
導入ロードマップ|ルール公開・最初の宣言期間・定着確認の3フェーズ
制度は、ルールを公開してから、最初の宣言期間を実際に回し、成立後の定着を確認する順に進めます。順番を逆にすると、期待だけが先に高まり、動けなかった社員の不信を招くためです。
0〜3ヶ月|検証|資格の基準と補償のルールを決めて公開する
この期間に検証するのは、資格の基準が社員にとって数えやすいか、補償として出せる後任補充の枠が経営計画と合うかの2点です。経営層の合意を取り、基準と補償を社内に公開します。収益化は考えず、設計費の範囲で進めます。
3〜6ヶ月|標準化|最初の宣言期間を回して不成立の理由を全員に説明する
最初の宣言期間を実施し、成立しなかった社員にも理由を説明する手順を標準化します。調査で「一切説明なし」が35.2%だった点を踏まえ、説明を制度の一部に組み込みます。納得感を早く確かめることが、次の宣言期間の信頼につながります。
6〜12ヶ月|収益化|成立後の定着を確認して運用を月額の支援に移す
成立した異動について、半年後の在籍と周囲の評価を確認します。この確認と、次の宣言期間に向けた見直しの支援を、月額の運用契約に移します。定着の確認が回り始めて初めて、成果に連動する部分の設計も検討できます。
効果の経路とKPI・リスク|説明率と定着率で制度の健康度を測る
効果は、ルールを公開した日ではなく、最初の宣言期間を終え、説明が回り始めてから現れます。ここでは、効果の経路、見る指標、起きやすいリスク、見直しの基準の順に整理します。
効果が効いてくる経路|資格の公開から宣言・成立・定着へ
経路は、資格の公開、宣言の増加、成立した異動の増加、異動後の定着へと進みます。最初の数か月は宣言が少なく、ルールが信頼されてから増えるため、宣言件数だけで制度の成否を判断しない姿勢が要ります。
KPIの設計|フェーズごとに見る指標を決める(仮説としての目安)
KPIは、自社の導入前の状況(ベースライン)を把握することが前提です。次の表は、フェーズごとに見る指標の目安です。
| フェーズ | 指標 | 見方 |
|---|---|---|
| 0〜3ヶ月 | 資格・窓口・補償のルールを社員が知っている割合 | 社内アンケートで確かめる。導入前の数字と比べる |
| 3〜6ヶ月 | 不成立の社員への説明実施率 | 宣言した社員のうち、理由の説明を受けた割合。目標は100%とする |
| 6〜12ヶ月 | 成立後6か月の在籍率と、放出側の後任補充までの日数 | 制度導入前の異動者の水準と比べて見る |
出典:本記事の提案(仮説としての目安)。数値目標は自社のベースラインを測ってから設定する
特に重視したいのは、不成立の社員への説明実施率です。調査で35.2%が「一切説明なし」だったことを踏まえると、成立数よりも先に、動けなかった社員が納得しているかを見る方が、次の宣言を生むかどうかに直結します。
リスクと対応策|上司との関係悪化と人気部署への集中を先に防ぐ
| リスク | 兆し | 対応策 |
|---|---|---|
| 宣言が上司との関係悪化を招く | 宣言を控える社員が増え、宣言件数が伸びない | 宣言の受付を人事に一本化し、成立が内定するまでの上司への通知の扱いを事前に決めて公開する |
| 人気部署に宣言が集中する | 受け入れ側の募集枠を超える宣言が続く | 資格を満たした全員に宣言を認めつつ、成立は受け入れ側の枠と選考で決めると明記する |
| 放出側の現場が回らなくなる | 成立後も後任補充が遅れ、残った社員の負担が増える | 後任補充の枠と引き継ぎ期間を異動成立の条件にする |
出典:本記事の提案
3つのうち最も起きやすいのは、宣言が上司との関係悪化を招くという不安から、誰も宣言しなくなる事態です。制度の見た目が整っていても、この不安が解消されないと応募は育ちません。通知の順番と範囲は、規程に明記して初めて社員に信じてもらえます。
続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく
たとえば、導入から6か月たっても宣言が1件もない場合は、制度を広げず、資格の基準と通知の範囲を見直します。不成立の社員への説明実施率が8割に届かない場合は、成立数を追わず説明の手順の整備を優先します。12か月の時点で、成立後6か月の在籍率が制度導入前の異動者の水準を下回るなら、対象を絞るか、自己申告制度に戻す判断をします(いずれも仮説ベースの目安)。
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料金モデルという選択肢|設計は固定・運用は月額・定着の確認に成果連動を添える
このプランに合う料金の形は、設計費を固定にし、運用を月額にし、定着の確認に成果連動を添えるハイブリッド型です。異動制度は、ルールを作った後の運用と見直しで価値が決まる性質を持つためです。
買い切り型の限界|規程を納めた日から運用が止まる
規程と書式を納めて終わる買い切り型では、最初の宣言期間で見つかる不都合を直す人がいなくなります。資格の基準が厳しすぎる、補償の枠が足りないといった問題は、運用して初めて分かります。
新モデルの仕組み|設計費は固定・運用は月額・成立後の定着に連動する部分を添える
初期の設計と試行は固定の設計費とし、窓口運営と見直しの支援は月額とします。そのうえで、成立した異動の半年後の在籍など、定着の確認ができた時点で成果連動の部分を上乗せします。導入側は運用の質に、提供側は定着の結果に責任を持つ形になります。
導入時の注意点|成果連動の指標は異動の成立数にしない
異動の成立数に報酬を連動させると、無理な成立を促すおそれがあるため、このプランには向きません(本記事の考え方)。連動の指標は、成立後の在籍と周囲の評価など、納得して動けたかを表すものに置きます。最初は1つの事業部で試し、運用が回り始めてから全社に広げる段階的な導入が現実的です。
Q. 異動の成立数に応じた成果報酬型にしないのはなぜですか?
成立数に報酬を連動させると、無理な成立を促すおそれがあるためです。本プランでは、成立後6か月の在籍など、納得して動けたかを表す指標を、月額の運用に添える形で見ます。
対象となる組織・読者|社内公募はあるが動きが鈍い3つのタイプ
社内公募や自己申告制度を持っていても、手を挙げた社員が動けない企業は少なくありません。次の3タイプが特に当てはまります。
制度はあるが応募が育たない企業の経営者
社内公募の掲示は出しているのに、応募が毎年数件にとどまる企業の経営者です。窓口の工夫の前に、資格と通知と補償を経営の判断で決めることで、制度の見え方が変わります。人の流出を外部の採用で補う前に、社内の動きを見直す視点は、採用ミスマッチを防ぐトライアウト式選考プランの記事にもつながります。
異動の説明に追われる人事責任者
異動希望が通らなかった社員への説明が、担当者ごとにばらついている人事責任者です。不成立の理由を説明する手順を制度の一部に組み込むことで、個別の対応に頼らない運用に変えられます。
人が抜けると現場が回らなくなる事業部長
異動を認めたいが、後任が来ないので止めてしまう事業部長です。放出側の補償を先に決めておけば、止めざるを得ない状況を減らせます。人を動かしながら成果を保つ視点は、プレイングマネージャーの限界を超える組織設計の記事とも重なります。
期待できる効果|手を挙げた社員・現場・経営の3者に出る変化

図は、手挙げ異動の制度で、社員、受け入れ部署、放出元の部署、人事、経営が互いに何を渡し、何を受け取るかを整理したものです(本記事の整理)。期待できる効果は、次の3つの流れで考えられます。
社員が納得して動ける
資格が数えられ、結果の理由が説明されることで、希望が通らなかった場合でも、次の機会に向けた判断ができます。複業人材の定着を考えたレンタル移籍式のエンゲージメント設計とも同じく、本人が選べる感覚が定着を支えます。
現場の欠員が計画の中で補われる
放出側の補償が決まっているため、異動が現場の突発的な欠員ではなく、計画された人員の入れ替えになります。残る社員の負担が事前に見えることで、異動を応援する空気も生まれやすくなります。
経営が人材の動きを把握できる
宣言と成立の記録が残るため、経営は、どの部署に人が集まり、どの部署から出ていくかを数字で見られます。人材の動きが見える状態は、配置の判断を人事部の経験から、データに基づく対話へ変える土台になります。
まとめ|社内公募に「資格・窓口・補償」を足して動ける制度にする
- 社内公募の導入率は42.2%でも、異動希望が叶わなかった人の35.2%が一切の説明を受けていない(2022年調査)
- 形骸化の要因は、資格の不透明、窓口の不在、放出側の補償の空白にある
- プロ野球のFAは、資格を日数で数え、宣言の期間と公示を決め、補償を設けている
- 企業では、数えられる資格、公示される窓口、後任補充の補償の3つを決めて公開する
- 設計は固定、運用は月額で、定着の確認に成果連動を添える形が合う
「うちの社内公募は、なぜ誰も手を挙げないのか」という疑問が浮かんだ時点が、相談のタイミングです。
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