MLBで先発ローテーションを担う左腕投手・菊池雄星。183cm、95kgの体を作り上げるトレーニングとともに、本人が特に重視しているのが睡眠管理だ。登板前日には13〜14時間もの睡眠を取ることで知られており、その背景にはメンタル面も含めた独自の考え方がある。筆者は複数の報道をもとに、菊池選手の睡眠へのこだわりを紹介する。
登板前日に13〜14時間眠る理由
普段から睡眠時間を長く確保する選手は少なくないが、菊池選手の睡眠時間はその中でも際立って長い。まずはその実態を見ていく。
菊池選手は毎日最低でも8時間以上、できれば9〜10時間の睡眠を取り、登板前日には13〜14時間眠るという。エンゼルスやチームメイトへの質問に答えた際には、「登板日は野球のことを考えたくないから、できる限り長く寝ていたい」と語っており、長時間睡眠が身体の回復だけでなく、試合当日への過度な意識を和らげるメンタルコンディショニングとしての役割も果たしていることがうかがえる。
(参考)「ベッドの上では寝るだけ」専門家が教える野球選手の“睡眠力”を高める習慣 – Homebase
11時間しか眠れなかった夜に起きたこと
菊池選手が長時間睡眠を重視するようになった背景には、実際に睡眠時間が短くなった際のトラブルがある。
2019年9月、当時ブルージェイズに所属していた菊池選手はヤンキース戦でMLBキャリア初の2桁勝利がかかる登板を行い、6回途中で左上部僧帽筋の痙攣により降板した。試合後の報道では、普段の13〜14時間ではなく11時間しか眠れなかったことが痙攣の原因ではないかと本人が考えていると伝えられている。菊池選手は普段、午後11時に就寝し午後1時に起床する生活を送っているとされ、この一件が睡眠時間とコンディションの関係を強く意識するきっかけのひとつになったとみられる。
(参考)菊池雄星、MLBキャリア初の2桁勝利も緊急降板。理由は11時間しか寝なかったこと? – J SPORTS コラム&ニュース
睡眠効率という専門的な視点
長時間眠ればよいという単純な話ではなく、睡眠の「質」にも目を向ける必要がある。ここでは専門家の見解も踏まえて整理する。
野球選手の睡眠を研究する専門家は、ベッドにいる時間のうち実際に眠っている時間の割合を示す「睡眠効率」が85%以上であることが望ましいと説明している。必要な睡眠時間は人によって異なり、長く眠る必要のない人が無理に睡眠時間を延ばすと、かえって睡眠効率が下がってしまうこともあるという。菊池選手のように長時間眠ることで高いパフォーマンスを発揮できる選手がいる一方、それぞれの選手が自分に合った睡眠時間を見極めることが重要だとされている。
就寝前ルーティンで脳に習慣づける
質の高い睡眠を得るためには、寝る前の過ごし方も重要になる。専門家が指摘する就寝前の工夫を見ていく。
「ベッドの上では寝ることだけに集中する」という習慣づけが、質の高い睡眠につながるという。決まった時間に寝室の照明を落とし、ベッドの上でスマートフォンなどを見ないようにすることで、脳が「ここは眠る場所だ」と認識しやすくなる。こうした習慣化は、遠征や登板日程で生活リズムが変動しやすい投手にとって、環境が変わっても崩れにくい睡眠の土台をつくる助けになると考えられる。ホテルでの遠征生活が続くプロ野球選手にとって、寝室という物理的な環境が変わっても同じ入眠儀式を繰り返せることは、安定したコンディションを保つ上で大きな意味を持つ。
睡眠不足がパフォーマンスに与える影響
睡眠と運動パフォーマンスの関係は、スポーツ医科学の分野でも数多く研究されてきたテーマだ。睡眠時間を確保した場合に反応速度や判断力が向上したという報告は複数存在し、投手にとって重要な制球や球威の安定にも関わってくる可能性がある。
また、睡眠不足が続くと、筋量の維持や回復に関わるホルモンの分泌が低下しやすくなることも指摘されている。トレーニングの効果を十分に体に反映させるためには、負荷をかけた後の睡眠を含めた回復期間が欠かせないという考え方は、菊池選手の長時間睡眠にも通じるところがある。
投手にとっての睡眠管理の重要性
先発投手は登板間隔が空くため、日々の疲労回復だけでなく、登板日に向けたコンディション調整という独特の課題を抱えている。
菊池選手が登板前日にあえて長時間の睡眠を取るのは、単純な疲労回復に加えて、試合への意識を過剰に高めすぎないための調整という側面もあるとみられる。フィジカルとメンタルの両方に効く手段として睡眠を位置づけている点が、菊池選手の睡眠管理の特徴だと言える。登板間隔という独特のリズムの中で、いかに心身をリセットするかという課題に、睡眠という最も基本的な手段で向き合っている姿勢は、他の投手にとっても参考になる部分が多いだろう。
大谷翔平にも通じる睡眠重視の潮流
MLBでは近年、睡眠を競技力向上の重要な要素として位置づける選手が増えている。同じ二刀流として知られる大谷翔平も、1日10時間の睡眠を取ることで知られており、睡眠を重視する姿勢は菊池選手に限った話ではない。
体格や役割が異なる選手同士でも、長時間睡眠によって高いパフォーマンスを維持しているという共通点は、睡眠がフィジカルの回復だけでなく、集中力や判断力の維持にも関わっていることを示している。菊池選手のように登板日という特定のタイミングに合わせて睡眠時間を調整する工夫は、日々のコンディション管理をさらに一段階進めた取り組みだと言える。
菊池雄星の睡眠管理まとめ
- 普段は8〜10時間、登板前日には13〜14時間の睡眠を取っている
- 「野球のことを考えたくないから長く寝る」というメンタル面での理由も語っている
- 2019年には11時間睡眠だった夜に痙攣で緊急降板した経験がある
- 専門家は睡眠時間の長さだけでなく、睡眠効率という質の指標も重視している
- 就寝前のルーティンを習慣化することが、環境が変わっても崩れない睡眠の土台になる
菊池雄星の睡眠管理に関するよくある質問
菊池雄星はなぜ登板前日に長く眠るのか
身体の回復に加えて、「野球のことを考えたくないから、できる限り長く寝ていたい」というメンタル面での理由を本人が語っている。
睡眠時間が短くなるとどんな影響があったか
2019年の登板では、普段より短い11時間睡眠だったことが、試合中の筋肉の痙攣による緊急降板の原因ではないかと本人が考えていると報じられている。
睡眠効率とは何か
ベッドにいる時間のうち、実際に眠っている時間の割合を指す指標で、専門家は85%以上が望ましいとしている。単に長く眠ればよいわけではない点が特徴だ。
登板間隔のある投手はどう睡眠を管理すべきか
就寝前のルーティンを習慣化し、環境が変わっても同じ手順で眠りにつけるようにしておくことが、登板日程による生活の変動に対応する助けになる。
大谷翔平など他のMLB選手も睡眠を重視しているか
大谷翔平が1日10時間の睡眠を取っていると報じられているように、菊池選手以外にも睡眠を重視するMLB選手は少なくない。競技力向上の要素として睡眠を捉える考え方は、近年広がりを見せている。
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