「体の至るところにシールを付けて映像を撮り、成功時と失敗時のデータをいっぱい取って、0.03秒ずつくらいに細分化して調べました」。スポーツクライミング選手の森秋彩は、大学のAC入試に提出するレポートのために、自らの苦手なムーブを科学的に分析した経験を持つ。専門家に頼るのではなく、自分の体を素材にして課題を突き止めたそのプロセスは、競技を問わず動作改善に取り組むすべての人にとって参考になる。
苦手なランジを克服するための分析法
森は当時、ダイナミックな動きで飛び出す「ランジ」というムーブを苦手としていた。感覚だけで練習を繰り返すのではなく、大学入試のAC入試レポート提出という機会を使い、約3カ月かけて自分の動作を客観的に分析するプロジェクトに取り組んだ。
体にシールを付けて撮影した映像の使い方
分析の手法はシンプルだが手間のかかるものだった。体の関節や重心となる部位にシールを貼り付け、ランジの成功時と失敗時それぞれの映像を撮影。目視だけでは捉えられない体の動きの違いを、映像データとして蓄積していった。
0.03秒単位で動きを分解する視点
撮影した映像は0.03秒単位まで細分化され、体の各部分の動きと全体の動きの関係を比較された。その結果「初速や壁と腰の距離に違いがあり、また上半身と下半身の連動性にズレがあることがわかった」という。感覚では気づけなかった具体的な差異が、数値と映像によって初めて言語化された瞬間だった。
(参考)独占インタビュー|森秋彩 – Going My Way – 天才少女の新たな船出 – CLIMBERS
気づきを練習に落とし込む方法
分析で終わらせず、見つかったズレを意識して練習に反映させたことが森の分析の核心だ。「そこを意識して練習するようになったら実際に改善することができた」と語るように、データによる発見を具体的な練習メニューの修正につなげたプロセスこそが、この取り組みを単なる自由研究以上のものにしている。
この姿勢はスポーツ科学の基本的な考え方とも重なる。専門的な機材がなくても、スマートフォンのスロー撮影機能とシールなど身近な道具があれば、同様のアプローチは十分に応用できる。
自己流バイオメカニクス分析を自分の練習に取り入れる3ステップ
森の取り組みは、特別な設備がなくても始められる点に価値がある。動作改善に悩む競技者やトレーニング愛好者に向けて、実践のステップを整理する。
1. 苦手な動作の成功例と失敗例を撮影する
スマートフォンのスロー撮影機能を使い、同じ動作の成功時と失敗時をそれぞれ複数回撮影する。関節や重心にマーカーを付けておくと、後の比較がしやすくなる。
2. コマ送りで両者を見比べる
動画編集アプリのコマ送り機能を使い、初速・体の角度・部位ごとの連動タイミングなど、成功時と失敗時で異なる点を洗い出す。他のアスリートの分析事例と見比べると、着眼点のヒントが得られやすい。
3. 見つけた差異を1つの練習課題に絞って修正する
分析で複数の差異が見つかっても、一度に全てを直そうとせず、最も影響の大きい1点に絞って練習に反映させる。森が上半身と下半身の連動性という1つの課題に焦点を当てたように、絞り込みが改善のスピードを左右する。
よくある質問
Q. 専門的な分析ソフトがなくても動作分析はできますか
森が行った分析も、特別な計測機器ではなく撮影とコマ送りの目視比較が中心だった。スマートフォンのスロー撮影機能だけでも十分に着手できる。
Q. どのくらいの期間で成果が出るものですか
森の場合は約3カ月かけて分析とレポートをまとめたが、練習への反映自体はより短期間で始められる。分析にかける時間よりも、見つけた差異を継続的に意識して練習することが重要だ。
Q. 一人で分析するのが難しい場合はどうすればよいですか
コーチや練習仲間に撮影を手伝ってもらい、複数の視点で映像を見比べるのも有効だ。自分では気づきにくい癖を、第三者の目で発見できることもある。
まとめ
- 森秋彩は大学AC入試のレポートのため、苦手なランジを自己流のバイオメカニクス分析で解明した
- 体にシールを付けて撮影した映像を0.03秒単位で細分化し、成功時と失敗時の差異を比較した
- 初速・体と壁の距離・上半身と下半身の連動性のズレという具体的な課題を発見した
- 分析で終わらせず、見つけたズレを練習に反映させたことで実際の改善につながった
- 特別な機材がなくてもスマートフォン撮影とコマ送り比較で同様のアプローチは実践できる
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