鈴木啓太がゼロからの起業で貫いた「探究心」という判断基準

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浦和レッズや日本代表として活躍したプロサッカー選手、鈴木啓太氏は引退後、アスリートの腸内細菌を研究するAuB株式会社を創業した。プロサッカー選手から研究者・起業家への転身という異例のキャリアを支えたのは、2歳の頃から母に言われ続けた「うんちを見なさい」という教えだった。筆者はこの発言をもとに、未知の領域に飛び込んだ判断基準を分析する。

母の教えが探究心の原点になった瞬間

鈴木氏は2歳の頃から、毎日母に「うんちを見なさい」と言われて育った。当時は腸活という言葉すら一般的ではなかったが、母は調理師資格を持ち、家族の健康を守るなかで自然と腸に着目していたという。この教えのおかげで、鈴木氏自身も現役時代から体調管理を意識し、冷たい飲み物を避けたりサプリメントを摂ったりする習慣を身につけていた。

幼少期の何気ない習慣が、後の研究テーマの土台になっている点は見逃せない。誰かに与えられた知識ではなく、日常の実感として蓄積された感覚が、引退後のキャリア選択の判断基準として機能している。

アスリートの腸内細菌を調べたら面白いという直感

ヘルスケア業界では2000年代以降、腸内細菌を調べる費用と時間が大幅に短縮され、より多くの研究が行われるようになった。うんちの記録アプリを開発している人物に出会ったのが、引退する年の6月のこと。まだ引退を決めていない段階から、研究のために会社を作ろうと考えたという。

「サッカー選手としての経験からアスリートの腸内細菌を調べたら面白いのではないか」という直感が起業のきっかけになった。ビジネスとしての採算よりも、自身の現体験から必要性を感じたことが先にあった点が特徴的だ。

腸内細菌の重要性に気づいていた違和感

鈴木氏は「サッカー界にも一般的にも腸内細菌のすごさは浸透していなかった」と振り返る。お腹が冷えると筋肉の状態が悪くなるなど、体感としては重要性を感じているはずなのに、なぜ他のアスリートが注目しないのかという違和感を持ち続けていたという。この違和感を放置せず研究対象にした行動力が、起業への転換点になっている。

研究データが裏付けるアスリートの体の特徴

AuBでは40競技ほどのトップアスリートを対象に研究を進め、最初のプロダクト開発までの4年間で500人・1000検体、現在は1000人を超える被験者から2200以上の検体を集めている。一般の人と比較するとアスリートの腸内細菌は多様性が高く、酪酸菌が2倍以上いることが分かっている。

酪酸菌は運動しないと減る特徴があり、一般的には体内の5%だが、アスリートでは10%、トップクラスのオリンピアンでは20%ほど保持しているという。特に持久系の選手に多いというデータは、感覚的な実感を科学的に裏付ける成果であり、鈴木氏の探究心が具体的な研究成果として結実した例である。

腸内環境とパフォーマンスの関係をどう捉えるか

鈴木氏は、腸内環境を良くするために特定の食品を食べれば良いという単純な答えはないと語る。多種多様な菌や食物繊維を摂ることが重要で、発酵食品やヨーグルトを日々変えて食べることを勧めている。菌に餌を与えるという発想は、会社組織で営業・経理・人事それぞれが機能して初めて回るという比喩で説明されている。

パフォーマンスを上げる唯一の方法は、良い仕事を反復することだという指摘も印象的だ。厳しいトレーニングで疲労し、回復し、少しずつ改善されることでパフォーマンスが上がる。健康の土台である腸を整えることは、コンディションを整えることとイコールであり、それがパフォーマンス向上につながるという構造を鈴木氏は説明している。

他の引退アスリートの起業との違い

引退後に起業するアスリートの多くは、自身の競技経験を直接生かしたスクール運営やコーチング事業を選ぶ傾向がある。これに対し鈴木氏は、競技経験を「研究対象への着眼点」として活用し、科学的な検証を伴う事業を選んだ点で異なる。

感覚的な違和感を放置せず、費用や時間の壁が技術発展で下がったタイミングを捉えて行動に移した判断は、直感と環境変化の両方を見極める視点の重要性を示している。

一般のキャリア選択への応用

会社員が新しい領域に挑戦する際も、鈴木氏のように「日常のなかで感じ続けてきた違和感や実感」を出発点にすることで、他者と差別化された着眼点を持つことができる。特に、専門知識がない分野であっても、実体験に基づく問題意識があれば、周囲を巻き込みながら学び進めることが可能だ。

すぐに答えが出ない分野に飛び込む勇気は、母の教えのような長年蓄積された習慣的な実感に支えられている場合が多い。自分の日常の中にある「ずっと引っかかっていること」を棚卸しする作業が、新しい挑戦の種になり得る。

判断軸を言葉にするAI活用という選択肢

鈴木氏のように長年の実感を事業の着眼点に変えるには、まず自分の中にある違和感や習慣を言語化する作業が助けになる。AIチャットツールに、幼少期から続けている習慣や気になっていることを箇条書きで入力し「これらの中で他の人があまり注目していない着眼点はどれか」と問いかけることで、新しい視点が見えてくることがある。

専門外の領域に挑戦する際も、AIとの対話を通じて自分の実感と最新の技術動向を結びつけて整理しておくことは、判断の精度を高める実践的な方法だ。

よくある質問

鈴木啓太はなぜ腸内細菌の研究会社を起業したのですか

2歳の頃からの母の教えで腸への関心を持ち続けており、ヘルスケア技術の発展で研究コストが下がったタイミングで、アスリートの腸内細菌を調べる面白さに気づいたことがきっかけである。

AuBの研究ではどのようなことが分かっていますか

アスリートの腸内細菌は一般の人より多様性が高く、酪酸菌の保有率も高いことが分かっている。特に持久系の選手ほど酪酸菌の割合が高い傾向があるという。

この判断基準は専門知識がない人にも応用できますか

応用できる。専門知識よりも、日常の中で感じ続けてきた違和感や実感を出発点にすることで、他者と差別化された着眼点を持って新しい領域に挑戦できる。

まとめ

鈴木啓太氏のキャリア選択の核心は、幼少期からの実感を放置せず、環境変化のタイミングを捉えて行動に移す探究心にある。競技経験を直接生かすのではなく、研究対象への着眼点として活用した判断は、専門外の領域に挑戦するすべての人にとって参考になる思考モデルだ。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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