2004年アテネ五輪にバレーボール女子日本代表として出場し、現在は解説や普及活動に携わる大山加奈さん。小学2年生で喘息を抱えながらバレーボールを始め、小中高すべての年代で日本一を経験したトップアスリートは、競技人生を通じてどのような食事管理を実践してきたのか。筆者は本人のインタビューを基に、栄養面での歩みを追う。
子ども時代は「残さず食べる」ことから
大山さんは子どもの頃から食べることが大好きで、出されたものは残さず食べることを意識していたという。「残さず食べる」という教育は母親や小学校の監督から徹底されており、頑張って食べる習慣がすでにこの頃から根づいていた。もともと喘息を患っていたが、バレーボールを始めて体を動かすようになってから健康な体を手に入れられたと振り返っており、体づくりの土台に食事と運動の両方があったことがうかがえる。
10代から日本代表入りした大山さんだが、当時は代表活動の際に栄養士が作った食事を食べる機会はあったものの、栄養指導を受ける機会自体は少なく、本人も栄養に対する高い意識をまだ持っていなかったと振り返っている。中学3年時には「日本一に相応しい自分になる」ためにバレーボール以外の生活態度も見直した経験があり、この頃培った自己管理の姿勢が、後の食事管理への意識にもつながっていったとみられる。
東レ入団後に芽生えた栄養バランスへの意識
東レアローズに入団してからは寮生活が始まり、栄養バランスの良い食事が日常になった。もともと便秘がちな体質だったという大山さんは、食物繊維を意識的に摂取するようになり、納豆や漬物、キムチといった発酵食品を、寮の食事に加えて自分でも用意して食べていたという。
腸内環境を整える効果があるとして、栄養士が作る食事にはきのこが頻繁に登場していたといい、その影響もあって今も自宅にきのこを常備しているそうだ。よく使うきのこはしめじが一番多く、しいたけやエリンギ、まいたけも好んで食べているという。きのこを取り入れるようになってからは、便秘になりやすい体質も改善されたと語っている。アテネ五輪前後には腰痛に悩まされ、コンディション調整が難しい時期もあったと明かしており、体調管理の土台としての食事の重要性を、苦しい経験を通じてより強く実感するようになったようだ。
(参考)プロアスリートを支える食事に迫る。第47回 女子バレーボール・大山加奈さんインタビュー – きのこらぼ

和食とおにぎりが支えたパフォーマンス
ベストパフォーマンスを出すための食事について尋ねられた大山さんは、「これというのはない」としながらも、「和食の方が力は出るなというのが肌感覚としてあった」と語っている。一番好きな食べ物はおにぎりで、食べると元気が出てテンションも上がるという。
好きなきのこ料理としては味噌汁を挙げており、うま味が加わることで味に深みが出る点を評価している。バター炒めやベーコン炒めも好んで作っているといい、どの食材とも合わせやすい点を使い勝手の良さとして挙げている。米を中心とした和食は、運動量の多いアスリートにとって糖質とタンパク質、発酵食品由来のうま味を無理なく摂取できる組み合わせであり、大山さんの感覚的な実感は栄養面から見ても理にかなっているといえる。

引退後、親になって見えた食事の課題
2010年に現役を引退した大山さんは、現在は2人の娘の子育てをしながら、WEリーグの理事なども務めている。親になってからの食事については、子どもがタンパク質を摂りづらく、野菜もあまり食べてくれないという課題を挙げ、いかに野菜を食べてもらえるメニューを作るかを考えているという。
また娘が便秘症で悩んでいることから、現役時代に自身の便秘対策として取り入れていたきのこ料理や発酵食品を、子どもの食事にも積極的に取り入れているそうだ。自身の経験から得た知恵が、次の世代の食生活にも生かされている形だ。
春高バレー決勝の記憶と長丁場を戦う体力
大山さんが競技人生で忘れられない試合として挙げるのが、高校3年生時の春高バレー決勝だ。相手のエース選手に得点を決められても悔しさを感じないほど、決め合う展開そのものを楽しめていたと振り返っている。長時間にわたる試合を戦い抜くには、技術やメンタルだけでなく、試合中も集中力を切らさないだけのエネルギー摂取と体力の土台が欠かせない。
大山さんは現役時代、リラックスや気持ちの切り替えがあまり得意ではなかったと明かしており、今になって振り返ると休養の取り方にも改善の余地があったと感じているという。栄養バランスの取れた食事と並んで、心身を意図的に休ませる時間を持つことも、長丁場を戦い抜く体づくりには必要な要素だったといえるだろう。
アスリートと子どもたちへの食事アドバイス
アスリートへのアドバイスとして、大山さんは「一番は楽しく食べましょう、ということ」と強調する。「あれ食べなさい」「残さず食べろ」と注文を付けることで食事が苦痛な時間にならないよう、まずは楽しく食べることを大切にしてほしいと語る。そのうえで、成長期に欠かせないタンパク質やカルシウムは積極的に摂ってほしいとも付け加えている。
子どもたちには「勉強もスポーツも頑張ってエネルギーをたくさん使っているのだから、エネルギーをしっかり摂らないとダメだよ」と伝えているといい、頑張る子どもたちにこそ十分な栄養摂取の大切さを説いている。競技生活で得た経験を、次世代への言葉として還元し続けている姿勢がうかがえる。
「練習で泣いて試合で笑う」から学んだコンディションの考え方
大山さんは現役時代、「練習で泣いて試合で笑う」という言葉を大切にしていたというが、引退後は「練習で泣く必要があるのかな」と考え方が変わったと語っている。厳しく辛いことをしなければ勝てないという価値観から、心身の健康を保ちながら競技を楽しむという考え方へと変化したという。
この変化は食事に対する姿勢にも重なる部分がある。現役時代は「残さず食べる」「バランス良く食べる」という管理的な側面が強かった食事も、今は子育てを通じて「楽しく食べる」ことを何より大切にする姿勢に発展している。心身の健康を土台にするという考え方が、コンディション作り全体を貫く軸になっているといえるだろう。
よくある質問
大山加奈さんはいつから栄養を意識するようになったのか
10代で代表入りした当初は栄養指導を受ける機会が少なかったが、東レ入団後の寮生活で栄養バランスの良い食事が日常になり、意識が高まったと語っている。
なぜきのこを積極的に食べるようになったのか
もともと便秘がちな体質を改善するため、食物繊維や腸内環境を整える効果があるとされるきのこを、栄養士の食事や自炊で積極的に取り入れるようになったという。
ベストパフォーマンスのための食事はあったのか
特別な食事があったわけではないが、和食の方が力が出るという感覚があり、一番好きな食べ物であるおにぎりを食べると元気が出たと振り返っている。
子どもの食事で意識していることは
タンパク質や野菜が不足しがちなことを課題に感じており、現役時代に取り入れていたきのこ料理や発酵食品を子どもの食事にも生かしているという。
現役時代と引退後で食事への考え方は変わったのか
現役時代は栄養バランスを整える管理的な側面が強かったが、引退後は「楽しく食べること」を何より大切にする考え方に変化したと語っている。
まとめ
- 子ども時代から「残さず食べる」習慣が食への基礎を作った
- 東レ入団後の寮生活で栄養バランスを意識するようになり、発酵食品ときのこを積極的に摂取した
- 和食とおにぎりが、本人の感覚として力の出る食事だったという
- 引退後は子育てを通じて、タンパク質や野菜の摂取という新たな食事の課題に向き合っている
- アスリートへのアドバイスは「楽しく食べること」を大前提に、タンパク質やカルシウムの積極摂取
- 「練習で泣いて試合で笑う」から「心身の健康を大切にする」への価値観の変化が、食事への向き合い方にも表れている
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