組織を守る管理職バーンアウト予防|アスリート式回復設計

組織を守る管理職バーンアウト予防プランのアイキャッチ画像 ソリューション

今期から部長に昇格した彼女は、先月あたりから週末もノートパソコンを開くようになった。部下の1on1、自分のプレイヤー業務、上司への報告――どれも「今すぐ」と言われるわけではないのに、気づけば全部が同時に締め切りを迎えている。本人は「まだ大丈夫」と言うが、朝のメールへの返信が以前より1日遅くなっている。

こうした光景は、いま多くの企業で特別なものではなくなりつつあります。マイナビが2026年4月に実施した調査では、正社員全体の現在バーンアウト率が17.3%だったのに対し、20〜30代の管理職では36.3%と3人に1人を超えました。管理職であることそのものが、燃え尽きのリスク要因になっているのです。

厚生労働省の調査でも、現在の仕事や職業生活に強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は82.7%にのぼり、その理由の上位には「仕事の量」が挙げられています。研修で知識を伝えるだけでは、この負荷そのものは減りません。必要なのは、管理職の負荷を継続的に見える化し、回復のタイミングを設計する仕組みです。

(参考)正社員の”バーンアウト(燃え尽き症候群)”に関する実態調査 – マイナビキャリアリサーチLab

(参考)令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況 – 厚生労働省

  1. プランの概要|”量”ではなく”サイクル”で管理職の負荷を見る
  2. 課題解決の流れ|燃え尽きは「頑張りすぎ」ではなく設計の不在から起きる
    1. 現状の課題|プレイングマネージャーの三重負荷が放置されている
    2. 問題の要因|負荷を「見える化」する仕組みがない
    3. 解決策|シーズン設計の発想を管理職の働き方に移植する
  3. 継続モニタリングが価格競争と無縁である3つの理由
    1. 効果の構造|”負荷の波”を可視化できる専門性
    2. 模倣されにくい理由|医療でもITでもない第三の指標体系
    3. 提供主体の強み|スポーツ現場とデータ分析の両方に立てる立場
  4. プランの具体的な内容|4つのモニタリング指標
    1. 業務量負荷|会議数と対応件数の急増を最初のサインにする
    2. 対人負荷|1on1と報告の頻度から孤立を読み取る
    3. 裁量度|「決められている感覚」の低下を見逃さない
    4. 回復度|オフ時間が確保できているかを本人に尋ねる
  5. 導入ロードマップ|検証・標準化・定着の3フェーズ
    1. 0〜3ヶ月|検証フェーズ|1部署でモニタリングを試験運用する
    2. 3〜6ヶ月|標準化フェーズ|悪化サインへの対応手順を制度化する
    3. 6〜12ヶ月|定着フェーズ|離職率の改善に連動した契約へ移行する
  6. データが管理職の危機を先読みする仕組み|効果の経路とリスク管理
    1. 効果が効いてくる理由|「導入直後」ではなく「2巡目」から効いてくる
    2. KPIの設計|仮説としての目安を段階ごとに置く
    3. リスクと対応策|監視感を持たれないための設計
    4. 続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく
  7. 料金モデルという選択肢|継続モニタリングに月額が合う理由
    1. 買い切り型の限界|単発研修では負荷の波を捉えられない
    2. 新モデルの仕組み|シーズン単位の月額でリカバリー設計を継続する
    3. 導入時の注意点|計測項目の合意形成にコストがかかる
  8. 対象となる組織・読者|誰にとって必要な設計か
    1. 慢性的な人手不足で管理職を増員できない企業の経営者
    2. 管理職の離職・休職が増えている企業の人事担当者
    3. プレイングマネージャーとして現場を兼務する管理職本人
  9. 期待できる効果|3つの流れ
    1. 管理職の離職防止が採用・教育コストの削減につながる
    2. 早期の負荷検知がメンタル不調の重症化を防ぐ
    3. 管理職の安定が部下のエンゲージメントを底上げする
  10. よくある質問
    1. 従業員数が少ない企業でも導入できますか?
    2. 監視されているという反発を防ぐにはどうすればいいですか?
    3. 効果が数値に表れるまでどのくらいかかりますか?
  11. まとめ

プランの概要|”量”ではなく”サイクル”で管理職の負荷を見る

本プランは、管理職の働き方を「頑張り続けられるかどうか」という精神論ではなく、負荷と回復のサイクルとして設計し直す提案書です。アスリートが試合期とオフ期を繰り返す期分け(ピリオダイゼーション)の発想を、日々の管理職の業務設計に応用します。

  • 対象:プレイングマネージャー化が進み、管理職の離職・休職が増えている企業の人事部門・経営者
  • 課題:管理職の燃え尽きによる離職・休職と、それに伴うマネジメント空白の発生を防ぐ
  • 導入期間:目安6か月(負荷モニタリングの試験運用から制度化まで)

スポーツ現場の負荷管理ノウハウ×企業の人事データが交わる領域に生まれるプログラムで、出社回帰の結束不足を解消する合宿科学活用プランのように組織の土台づくりを扱う施策とも相性がよい設計です。

課題解決の流れ|燃え尽きは「頑張りすぎ」ではなく設計の不在から起きる

管理職の燃え尽きがなぜ繰り返し起きるのか、その構造を「現状の課題」「問題の要因」「解決策」の3段階で整理します。

現状の課題|プレイングマネージャーの三重負荷が放置されている

  • 【三重負荷】上司からの要求・部下からの要求・自分自身のプレイヤー業務が同時にのしかかっている
  • 【気づかれにくさ】管理職は不調を口に出しにくく、限界が見えたときにはすでに深刻化している
  • 【代替不能】管理職が倒れると、チーム運営そのものが止まってしまう

厚生労働省の調査では、2023年11月から2024年10月までの1年間で、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%にのぼりました。管理職の不調は、本人だけでなくチーム運営そのものを止めるリスクとして扱う必要があります。

(参考)令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)の結果を公表します – 厚生労働省

問題の要因|負荷を「見える化」する仕組みがない

  • 多くの企業では、管理職の労働時間は把握していても、業務の質的な負荷や回復状況までは可視化していない
  • 研修は単発のイベントで終わり、日々の負荷変動を継続的に追う仕組みになっていない
  • 不調のサインが「本人の性格の問題」として扱われ、組織側の設計課題として扱われにくい

解決策|シーズン設計の発想を管理職の働き方に移植する

  • アスリートが「試合期・移行期・準備期」を繰り返すように、管理職の業務にも高負荷期と回復期を意図的に組み込む
  • 負荷指標を定点観測し、悪化のサインが出た時点で業務量を調整する仕組みに変える
  • 回復を「サボり」ではなく、次の高負荷期に備える正当な業務として位置づけ直す

継続モニタリングが価格競争と無縁である3つの理由

なぜこの仕組みが、単発の管理職研修とは違う形で差別化になるのか。3つの理由から見ていきます。

管理職バーンアウト予防プランの模倣されやすさと専門性のポジショニング

効果の構造|”負荷の波”を可視化できる専門性

単発の研修は、受講した瞬間の満足度は測れても、その後の負荷変動までは追えません。継続的にモニタリングすることで、悪化の兆候を「本人が言い出す前」に把握できるようになります。

模倣されにくい理由|医療でもITでもない第三の指標体系

労務管理は労働時間を、産業保健は診断名を扱いますが、どちらも「日々の負荷の波」そのものを定量化する発想には乏しいのが実情です。アスリートの負荷管理で培われた指標体系は、この隙間を埋める専門性になります。

提供主体の強み|スポーツ現場とデータ分析の両方に立てる立場

この掛け合わせには、アスリートの負荷管理の実務知見と、企業の人事データ分析の両方に日常的に接している立場が欠かせません。片方だけでは、指標は精緻でも現場の運用に落ちなかったり、逆に運用は回っても指標が粗いままになったりします。管理職本人の耐性を鍛える管理職の意思決定力を鍛える元アスリート式プレッシャー耐性プランとは異なり、本プランは負荷そのものを可視化・調整する側からアプローチします。

プランの具体的な内容|4つのモニタリング指標

管理職の負荷は、単一の指標ではなく複数の軸を組み合わせて定点観測します。

指標 測定内容
業務量負荷 会議数・対応件数・稼働時間の週次推移
対人負荷 1on1・部下対応・上位層への報告の頻度
裁量度 業務の優先順位を自分で決められている感覚
回復度 睡眠・オフ時間の確保状況の自己申告

4つのモニタリング指標(週次で定点観測し、悪化の兆候を早期に検知する)

業務量負荷|会議数と対応件数の急増を最初のサインにする

会議数や対応件数が平常時から大きく増えた週は、燃え尽きの初期兆候として扱います。数値が単発で跳ねるより、上昇が2〜3週続く傾向を重視します。

対人負荷|1on1と報告の頻度から孤立を読み取る

マイナビの調査では、バーンアウトである人ほど職場での孤独感を強く感じている傾向が示されています。対人接触の頻度そのものよりも、質の変化を追うことが重要です。

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裁量度|「決められている感覚」の低下を見逃さない

業務量が同じでも、裁量が奪われるほど負荷は重く感じられます。裁量度の低下は、業務の再設計が必要なサインとして扱います。

回復度|オフ時間が確保できているかを本人に尋ねる

回復度は他人からは見えにくい指標です。短い自己申告のアンケートを定期的に挟むことで、本人も気づいていない疲労の蓄積を拾います。

導入ロードマップ|検証・標準化・定着の3フェーズ

いきなり全社導入するのではなく、検証→標準化→定着の順に段階を踏むことで、指標の精度を上げながらリスクを抑えます。

管理職バーンアウト予防プランの導入ロードマップ 0〜3ヶ月・3〜6ヶ月・6〜12ヶ月

0〜3ヶ月|検証フェーズ|1部署でモニタリングを試験運用する

まずは1〜2部署の管理職を対象に、4つの指標を試験的に計測します。目的は完璧な制度をつくることではなく、自社の業務特性に合わせて閾値を調整することです。

3〜6ヶ月|標準化フェーズ|悪化サインへの対応手順を制度化する

試験運用で得た知見をもとに、どの指標がどこまで悪化したら誰が介入するかという対応フローを明文化し、人事・上長の役割分担を整理します。

6〜12ヶ月|定着フェーズ|離職率の改善に連動した契約へ移行する

制度が安定して運用できるようになった段階で、固定報酬に加えて管理職の離職率・休職率の改善幅に応じた成果報酬を組み込む契約へ移行します。

データが管理職の危機を先読みする仕組み|効果の経路とリスク管理

負荷を継続的に見える化する取り組みは、導入して終わりではありません。効果がどの経路で表れ、どこにリスクがあり、うまくいかない場合にどう見直すかまでを一連の流れとして持っておく必要があります。

効果が効いてくる理由|「導入直後」ではなく「2巡目」から効いてくる

この仕組みの効果は、導入初月から実感できるものではありません。むしろ、悪化サインを検知して初めて業務調整が入った「2巡目」以降に、離職の未然防止という形で効いてきます。

KPIの設計|仮説としての目安を段階ごとに置く

フェーズ 見るべき指標 目安
検証フェーズ 悪化サインの検知回数 1人あたり月1〜2回は想定内
標準化フェーズ 半年以内の管理職離職率 自社ベースラインからの改善幅
定着フェーズ 管理職の休職発生率 成果報酬の算定基準に採用

フェーズごとに確認するKPIの目安(自社のベースライン把握が前提)

とりわけ重要なのは「悪化サインの検知回数」です。検知がゼロのまま進む場合は、むしろ閾値が緩すぎる可能性を疑うべき数値として扱います。

リスクと対応策|監視感を持たれないための設計

想定されるリスク 対応策
監視されている感覚を持たれる 評価目的ではなく本人保護のための計測だと事前に説明する
回答が形骸化する 回答時間を2分以内に抑え、結果を本人にも還元する

導入時に想定される主なリスクと対応策

続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく

標準化フェーズを6か月続けても半年以内の管理職離職率が自社ベースラインから改善しない場合は、指標の設計そのものを見直す運用変更のタイミングと位置づけます。撤退基準をあらかじめ数値で決めておくことは、弱さの表明ではなく、リスクを制御できる設計力の裏付けです。

料金モデルという選択肢|継続モニタリングに月額が合う理由

本プランは、サブスク・月額提携型を基本の課金モデルとして想定しています。管理職の負荷は季節や繁忙期によって波があり、単発の買い切りでは実態を追い切れないためです。

買い切り型の限界|単発研修では負荷の波を捉えられない

スポーツ式管理職研修|納得度を高める3ステップ設計法のような単発研修を買い切る従来型の契約は、実施した時点で発注側の関心が一区切りついてしまい、その後の負荷変動を追跡する動機が弱くなりがちです。

新モデルの仕組み|シーズン単位の月額でリカバリー設計を継続する

月額の基本料金で4指標のモニタリングと介入フローの運用を継続し、半年ごとに離職率・休職率の改善幅を確認して契約内容を見直す設計にすることで、提供側にも改善を続けるインセンティブが生まれます。

導入時の注意点|計測項目の合意形成にコストがかかる

モニタリングに使う指標の定義や測定期間は、導入前に人事・現場双方で明確に合意しておく必要があります。最初は簡易な指標から始め、標準化フェーズが整った段階で項目を増やす移行の仕方が現実的です。

対象となる組織・読者|誰にとって必要な設計か

本プランが特に効果を発揮しやすいのは、次の3タイプの組織・読者です。

慢性的な人手不足で管理職を増員できない企業の経営者

増員が難しい以上、既存の管理職の負荷を可視化し、限界に近づく前に手を打つことが唯一の現実的な対策になります。

管理職の離職・休職が増えている企業の人事担当者

個別対応に追われる前に、組織全体の負荷傾向を定点観測する仕組みがあれば、対応の優先順位をつけやすくなります。

プレイングマネージャーとして現場を兼務する管理職本人

自分の負荷を客観的な数値で示せることは、周囲に助けを求める際の後ろめたさを減らすことにもつながります。

期待できる効果|3つの流れ

継続モニタリングを導入すると、効果は次の3つの流れで組織に波及していきます。

管理職バーンアウト予防プラン導入前後の指標比較

管理職の離職防止が採用・教育コストの削減につながる

管理職の離職・休職が減れば、後任の採用や引き継ぎにかかるコストを抑えられます。管理職ほど育成に時間がかかるため、この効果は特に大きくなります。

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早期の負荷検知がメンタル不調の重症化を防ぐ

不調のサインを本人が言い出す前に把握できれば、休職に至る前の段階で業務調整という軽い介入で済ませられる可能性が高まります。

管理職の安定が部下のエンゲージメントを底上げする

管理職の余裕は、そのまま1on1の質や部下への関わり方に反映されます。管理職を守ることは、間接的にチーム全体の定着にもつながります。

よくある質問

導入を検討する際によく寄せられる質問を3つ紹介します。

従業員数が少ない企業でも導入できますか?

導入できます。管理職が1〜2名の企業でも、4指標を簡易化した形で計測を始められます。専任の担当者がいなくても、既存の1on1に計測項目を組み込む運用が可能です。

監視されているという反発を防ぐにはどうすればいいですか?

目的が評価ではなく本人保護であることを事前に明示し、結果を本人にも共有することで反発は抑えられます。管理職自身が結果を確認できる設計にすることが重要です。

効果が数値に表れるまでどのくらいかかりますか?

検証フェーズは3か月ほどですが、離職率の改善として数値に表れ始めるのは標準化フェーズに入ってから、目安として半年前後です。

まとめ

最後に、本記事のポイントを振り返ります。

  • 管理職の燃え尽きは本人の頑張り不足ではなく、負荷を可視化する仕組みの不在から起きる
  • アスリートの期分けの発想を応用し、業務量・対人負荷・裁量度・回復度を継続的にモニタリングする
  • 導入は検証→標準化→定着の順に進め、成果報酬型への移行も視野に入れる
  • 単発研修ではなく月額の継続モニタリングが、負荷の波を追うのに適した課金モデルになる
  • 「最近あの管理職、様子がおかしいかもしれない」という違和感が浮かんだ時点が、相談のタイミングです

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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