リーチマイケルが引退を考えた末に選んだあきらめない心という判断基準

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ラグビー日本代表のキャプテンとして3度のワールドカップでチームを率い、ベスト8進出という日本ラグビー史上最高の結果を経験したリーチマイケル。だが、その輝かしい経歴の裏で、彼は数年前に引退を考えるほど追い詰められていたという。チームが負けるたびに「自分のせいだ」と感じてひどく落ち込む性格は、プロになっても、キャプテンになってもなくならなかった。ニュージーランド出身のリーチは15歳で日本に留学し、体重78kgの少年から100kgを超えるフロントローの選手へと成長を遂げてきた。そんな彼を思いとどまらせ、再び前を向かせたものは何だったのか。東京都の広報媒体に寄せられた本人のインタビューから、その思考の転換点を読み解く。

「自分のせいだ」と感じ続けた責任感の重さ

リーチは高校生の頃からチームの勝敗に対する責任を強く感じる性格だったと語る。その責任感は練習への打ち込みにつながる一方で、負けた時の落ち込みも人一倍大きくした。

高校生のころから、チームの勝敗に対する責任を強く感じていました。だから、チームを勝利に導くために、練習に一層打ち込めるようになりましたが、その一方で、チームが負けたときには「自分のせいだ」と感じてひどく落ち込むようになってしまいました。

リーチマイケル選手 スペシャルインタビュー/東京都広報「TOKYO」

(参考)リーチマイケル選手 スペシャルインタビュー「夢への道は”あきらめない心”」 – 東京都

このつらさは大学生になっても、プロのラグビー選手として大活躍するようになってもなくならず、数年前には引退を考えるほどだったとリーチ自身が明かしている。日本代表のキャプテンという立場にありながら、内面では重い責任感に押しつぶされそうになっていたという事実は、外から見える成功と内側の苦しさが必ずしも一致しないことを示している。試合で思うような結果が出ず、周囲からの期待に応えられなかったと感じる時の苦しさは、選手としてのキャリアが長くなっても消えることはなかったという。

なぜ「言い訳と向き合う」という選択をしたのか

引退を考えるほどの苦しさの中で、リーチが選んだのは責任感そのものを手放すことではなく、落ち込んだ気持ちを具体的な行動に変換する方法だった。

悔しさに浮かぶ「言い訳」を素通りしない

「負けて悔しいとき、自分の中に思い浮かぶ言い訳に、正直に向き合うようにしています。そして、次は同じ言い訳をしないように、筋力や体力について具体的な目標を立てて、それを達成できるような練習のプランを作り直すのです」とリーチは語る。悔しさや自己嫌悪の感情を放置せず、その中にある「言い訳」を直視し、それを次の具体的なトレーニング目標に変換するという手順を踏んでいる。感情を感情のまま終わらせず、必ず行動計画に落とし込むという一貫した姿勢が見て取れる。

この考え方の背景には「自分の目標が達成できるかどうかは100%自分しだいだ」という信念がある。負けた原因を外部要因のせいにするのではなく、自分の努力で変えられる部分に焦点を当て続けることで、悔しさというネガティブな感情を、次の練習に向かうエネルギーへと転換している。

毎日「自分を褒める」という思考モデルの構造

リーチがもう一つ大切にしているのが、そのままの自分を受け入れ、認めるという習慣だ。「今は、毎日自分のいいところを褒めるようにしています。その日の練習でいいタックルが一回できたとか、パスを取れたとか、どんな小さなことでもいい。毎日すべてが完璧にできる人なんていないから、日々自分を認めてあげるようにしているんです」と語っている。

心理学では、自分自身への肯定的な評価(自己肯定感)が、失敗や挫折からの回復力(レジリエンス)を支える重要な要素だとされる。リーチの「言い訳と向き合い次の目標に変える」行動と、「毎日いいところを褒める」習慣は、一見すると矛盾するようで実は補完関係にある。前者は改善すべき点を直視する厳しさであり、後者はできている部分を認める優しさだ。厳しさだけでは自己否定に陥り、優しさだけでは成長が止まる。両方を併用することで、責任感の強さゆえに追い詰められがちな性格でも競技を続けられたのだと考えられる。

この2つの習慣が同時に機能するためには、それぞれの対象が違う点にも注目したい。「言い訳と向き合う」対象は結果であり、まだ足りていない部分だ。一方「毎日褒める」対象はその日の過程であり、すでにできた部分だ。結果に対しては厳しく、過程に対しては優しく評価するという使い分けが、リーチの中で自然に機能していたと考えられる。結果と過程を同じ基準で評価してしまうと、うまくいかない時期はすべてが否定的に見えてしまうが、評価する対象を分けることで、常にどこかしらの前進を認められる状態を保てる。

「今は、毎日すべてが完璧にできる人なんていないから、日々自分を認めてあげるようにしているんです」という前提を明確に置いていることも重要で、完璧さを目指すのではなく、不完全であることを許容した上でその日の前進を探すという姿勢が、この習慣を継続可能なものにしている。

他のキャプテン経験者・トップアスリートとの比較

チームの勝敗に個人が責任を感じすぎる傾向は、キャプテンやリーダーの立場にある人によく見られる特徴だ。責任感の強さはチームを牽引する原動力になる一方、行き過ぎると心身を消耗させ、リーチのように引退という選択肢が頭をよぎるほどの重荷になることもある。重要なのは、責任感そのものを否定するのではなく、それを消耗の方向ではなく行動改善の方向に変換する仕組みを持てるかどうかだ。リーチの場合、それが「言い訳の直視」と「日々の自己承認」という2つの習慣だった。

リーチの競技人生を振り返ると、高校時代の恩師の存在も無視できない。体も小さく技術もなかった留学当初のリーチに対し、恩師は「お前はいつか日本代表のキャプテンになるぞ。そして強豪の社会人チームで大活躍するんだ」と言い聞かせ続けたという。リーチはその言葉を今も覚えており、今でも恩師と連絡を取り合っている。責任感の強さで自分を追い込みやすい性格の選手にとって、結果が出ない時期でも自分を信じ続けてくれる第三者の存在は、自己承認の習慣を身につける以前の土台として機能していた可能性がある。

一般人のキャリア・人生設計への応用

落ち込みを「次の具体的な目標」に変換する

仕事で失敗した時、自己嫌悪だけで終わらせず、「なぜうまくいかなかったのか」という言い訳の中身を直視し、それを次に取り組む具体的な行動目標に変換する。リーチの練習プラン作り直しは、そのままビジネスの振り返りにも応用できる型だ。感情を否定せず、しかしそこで立ち止まらずに次のアクションへ変換するという順番が重要になる。

毎日「できたこと」を1つ見つける習慣

完璧を求めすぎず、その日にできた小さなことを1つ認める習慣は、燃え尽きやすい真面目な人ほど取り入れる価値がある。リーチが「いいタックルが一回できた」という小さな出来事を挙げているように、褒める基準を高く設定しすぎないことがこの習慣を継続させるコツだ。

夢は誰かに話さなくてもいい

リーチは幼い頃からの夢を家族にも隠し、「将来は医者になりたい」と嘘をついていたと明かしている。プロのラグビー選手になって初めて、両親は本当の夢を知ったという。夢を人に話して後押しを得る生き方だけでなく、自分の中で大切に守り、静かに追いかける生き方もあっていいと語っている。目標を誰かに宣言することがモチベーションになる人もいれば、静かに一人で積み上げる方が力を発揮できる人もいる。

好きなこと・得意なことを軸に夢を広げる

リーチは「好きなことや得意なことを軸にして夢を広げていけばいい」と話している。夢を早く見つければ、進学先や取り組む活動の選択肢も、その夢に近づくものを選べるようになる。壮大な目標を最初から掲げる必要はなく、日常の小さな「楽しかった」という感覚を出発点にしていいというメッセージは、キャリアの方向性に迷う社会人にも当てはまる。

2015年、2019年、2023年と3度のワールドカップでキャプテンを務め、2019年大会では日本ラグビー史上初のベスト8進出という結果を残したリーチだが、その道のりが平坦でなかったことは、この引退を考えたというエピソードからも明らかだ。

Geminiで「言い訳」を「次の目標」に言い換える3ステップ

リーチの「言い訳に正直に向き合い、具体的な目標に変える」という思考は、感情的になりやすい場面ほど実践が難しい。ここでは幅広いタスクに対応できるGeminiを使い、落ち込んだ経験を具体的な行動計画に変換する方法を紹介する。

ステップ1:悔しかった出来事と、頭に浮かんだ言い訳を書き出す

Geminiに「最近悔しかった出来事と、その時に頭に浮かんだ言い訳を正直に教えてください、と聞かれたら答えるので、一緒に整理してください」と伝え、対話しながら感情と言い訳を切り分けて言語化する。

ステップ2:言い訳の中にある改善余地を具体的な目標に変換する

「今話した言い訳の中で、自分の努力で変えられる部分はどこか教えてください。それを来月までの具体的な目標に変換してください」と依頼する。リーチが筋力や体力の目標に落とし込んだように、抽象的な反省を測定可能な目標に変える。

ステップ3:今日できた小さなことを1つ記録する

目標に向かう過程で、Geminiに「今日取り組んだことの中で、良かった点を1つ見つけて短くまとめてください」と依頼し、日々の記録として残す。改善目標と自己肯定の記録を両方持つことで、リーチの2つの習慣を同時に再現できる。結果に対しては厳しい目標設定を、過程に対しては優しい自己承認を、というリーチの評価の使い分けを、AIとの対話を通じて日常的な習慣に落とし込むことができる。

リーチマイケルの思考が示す強さの本質

リーチマイケルの強さは、責任感の強さそのものではなく、その責任感が自分を追い詰めすぎないように調整する2つの習慣を持っていたことにある。悔しさの中の言い訳を直視し具体的な目標に変える厳しさと、どんな小さなことでも自分を認める優しさ。この両輪があったからこそ、引退を考えるほどの重圧を抱えながらも、3度のワールドカップでキャプテンを務め続けることができた。「自分の夢に責任を持つこと」と「仲間を大切にすること」という2つの言葉に、あきらめずに戦い続けるための思考モデルが凝縮されている。5歳の時に見つけた夢を誰にも言わずに守り続け、体重78kgの高校1年生が100kgのワールドカップキャプテンへと成長していった過程そのものが、あきらめない心の証明になっている。

リーチマイケルはなぜ引退を考えるほど追い詰められていたのですか?

チームの勝敗に対する責任感が非常に強く、負けた時に「自分のせいだ」と感じてひどく落ち込む性格が、プロになっても、キャプテンになってもなくならなかったためです。

「言い訳に向き合う」とはどういう意味ですか?

悔しい気持ちを感情のまま放置せず、その中にある言い訳を直視した上で、次に同じ言い訳をしないための具体的な練習目標に変換するという思考の手順です。

毎日自分を褒める習慣はなぜ大切なのですか?

完璧を求めすぎる責任感の強さは自己否定につながりやすいため、小さくてもできたことを日々認めることで、改善への厳しさとのバランスを取っているとされます。

一般の仕事にも応用できる考え方はありますか?

失敗した時に言い訳の中身を直視して具体的な目標に変換すること、そして毎日できたことを1つ認める習慣を持つことの2点が応用できます。

Geminiを使った振り返りはどんな場面で役立ちますか?

悔しい経験を感情のまま終わらせず、改善できる部分を具体的な目標に変換したい時、また日々の小さな達成を記録して自己肯定感を保ちたい時に役立ちます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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