増田珠が語る、戦力外からの増量による体づくり革命

増田珠の増量による体づくり|戦力外からの復活とトレーニング スポーツアスリート

戦力外から開幕スタメンを掴んだ野球選手の逆転劇

ヤクルトの増田珠は、プロ9年目にして初めて開幕スタメン出場を果たした選手だ。2023年オフにソフトバンクから戦力外通告を受け、ヤクルトへ移籍。そこから体重を85キロから93キロへ増やす体づくりに取り組み、キャリアハイを更新し続けている。「どこからも声がなければ語学留学するつもりだった」というほどの崖っぷちから、どのように体を作り直していったのか、本人の言葉から追う。

戦力外通告と語学留学まで考えていた覚悟

増田は2017年のドラフト3位でソフトバンクに入団し、2年目に一軍デビューを果たしたが、そのオフに右手首を手術。その後は故障と向き合いながら少しずつ一軍出場機会を増やしていったものの、2023年オフに戦力外通告を受けた。「戦力外になった時、もしどこからも声がかからなかったら、海外へ語学留学しようと思っていて、親にも相談していました」と、選手生命の終わりを覚悟していたことを明かしている。

ヤクルト移籍1年目の2024年は52試合(先発17試合)に出場し、2年目の2025年は75試合(先発19試合)に出場して代打打率.350を記録するなど、コツコツと数字を積み上げてきた。「戦力外からのスタートでしたから、与えられるチャンスは決して多くありません。その限られた機会のなかで結果を残さなければ道は開けないという気持ちでやってきました」と振り返っている。

(参考)戦力外を乗り越えたヤクルト・増田珠の逆襲「どこからも声がなければ語学留学するつもりだった」 – web Sportiva

センター守備での限界を感じたことが増量のきっかけ

増田はこの2年間、何試合かセンターを守る機会があったが、「自分の脚力では少し厳しいのかなと感じたんです」と語る。「チームには足の速い選手がたくさんいますし、その選手たちと同じ土俵で勝負して勝とうとするのは簡単ではありません」との考えから、脚力で勝負するのではなく、右打者としての馬力や出力を上げて長打を増やす方向へ舵を切ったという。

右手首の手術という故障歴を乗り越えた背景

増田はソフトバンク2年目の一軍デビュー直後のオフに右手首を手術している。打者にとって手首は打撃の要となる部位であり、その後は故障と向き合いながら少しずつ一軍出場機会を増やしていった経緯がある。手首の手術という不安要素を抱えながらも、その後にウエイトトレーニングによる増量へ踏み切った点は、故障歴があるからこそ体幹やパワーの土台を丁寧に作り直す必要があったことを示しているとみられる。

体重表記85キロから93キロへ、球団発表という異例の展開

2026年5月22日、球団は増田の体重表記を85キロから93キロへ変更したことを発表した。シーズン中の体重変更発表という珍しさから、ネット上でも話題になったという。約8キロの増量は、単なる体重増加ではなく、右打者としての長打力向上を狙った意図的なフィジカル強化の結果であることが、本人の発言からうかがえる。

一般的に、シーズン中に大きな体重変化を発表する例は多くない。多くの選手はオフシーズンに体づくりを行い、シーズン中は体重を維持する方向で調整するとされる。増田のケースは、これまで抑えていたウエイトトレーニングを解禁し、シーズンをまたいで継続的に体を大きくしていった結果と考えられる。

「別に記事にならなくてもいいのになあ」という本人の反応

体重変更の発表がネット上で話題になったことについて、増田自身は「別に記事にならなくてもいいのになあ」と語ったという。この反応からは、増量そのものが話題性を狙ったものではなく、あくまで打撃強化という実利のための地道な取り組みだったことがうかがえる。

脚力型と馬力型、二つの生存戦略の比較

プロ野球の外野手には、俊足を生かして守備範囲と盗塁で貢献する脚力型と、パワーで長打を生み出す馬力型という二つの生存戦略がある。

脚力型|俊足と守備範囲で貢献する生き方

脚力型の選手が持ち味とする守備範囲や機動力による貢献は、外野の花形とされることが多い。俊足を武器にヒットや盗塁、好返球で試合の流れを引き寄せるタイプで、体格に恵まれなくても俊敏性と反応の速さがあれば活躍できる道として知られている。

馬力型|長打力で結果を出す増田の選択

一方の馬力型は、パワーで長打を生み出し得点貢献という別の価値を提供する。増田は脚力型の選手たちと同じ土俵で勝負するのではなく、右打者としての馬力を磨く道を選んだ。

この判断は、自分に足りない要素を無理に伸ばそうとするのではなく、すでに持っている資質を伸ばす方向に資源を集中させる考え方だといえる。どちらが優れているという話ではなく、自分の身体的特性と照らし合わせてどちらの土俵で戦うかを見極めることが、限られた出場機会の中で結果を出すための前提になる。増田の判断は、この見極めを比較的早い段階で行えたことが功を奏した例だといえる。

筆者が分析する、限られた出場機会を生かす実践のヒント

増田のケースから読み取れる実践的な学びは、限られたチャンスの中で「1打席にかける思い」を研ぎ澄ませたことだ。「1打席にかける思いや、勝負に臨む気持ちの強さは、ソフトバンク時代に培うことができたと思いますし、それがヤクルトでも生きているのかなと思います」との言葉は、出場機会が少ない時期の経験が、のちの成長の土台になったことを示している。

体づくりの方向性を定める際は、自分の強みと弱みを客観的に見極めることが重要になる。トレーニング設計の考え方についてはトレーニング理論に関する記事を、増量期の栄養管理については栄養に関する記事もあわせて参考にしてほしい。

「開幕戦というのは特別な日ですし、ましてや5番という打順でグラウンドに立てた。これまで苦しいことやつらいこともたくさんありましたが、あの時にあきらめず、野球から逃げなくて本当によかったと思いました」という増田の言葉には、戦力外という最も厳しい状況でも野球そのものから逃げなかったことが、後の増量による体づくりを実行に移す土台になったという実感がにじむ。

まとめ

  • 増田珠は2023年オフに戦力外通告を受け、語学留学まで考えるほどの崖っぷちに立たされた
  • ヤクルト移籍後は限られた出場機会の中で結果を残し、代打打率.350を記録するなど数字を積み上げた
  • センター守備の限界を感じ、脚力ではなく馬力で勝負する方向へ体づくりの軸を切り替えた
  • 2026年5月に体重表記を85キロから93キロへ変更、シーズンをまたぐ増量に取り組んだ
  • プロ9年目で初の開幕スタメンを獲得し、キャリアハイを更新し続けている

よくある質問

増田珠はなぜ増量に取り組んだのか

センター守備での脚力の限界を感じ、右打者としての馬力や出力を上げて長打を増やす方向に体づくりの方針を切り替えたためである。

どれくらい体重が増えたのか

球団発表によると、体重表記は85キロから93キロへ、約8キロ増加した。

戦力外通告後はどのような気持ちだったのか

「どこからも声がなければ語学留学するつもりだった」と語るほど、選手生命の終わりを覚悟していたという。

ヤクルト移籍後の主な成績は

2024年は52試合、2025年は75試合に出場して代打打率.350を記録し、2026年にプロ9年目で初の開幕スタメンを獲得した。

今後の目標は

スタメン定着を目指しながら、増量によって得た長打力をシーズンを通じて安定させていくことが今後の課題になるとみられる。開幕スタメンという結果は、その途上にある一つの到達点といえる。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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