練習の後半、選手の動きにわずかな重さが混じり始める。本人は「まだいつも通り動けている」つもりでも、太ももやふくらはぎの張りは前日より確実に強くなっている——こうした変化を、コーチや本人の感覚だけに頼らず数値で捉えたいという声が、スポーツ現場や整体・トレーナーの現場で増えています。
スポーツ現場で筋疲労・筋硬度を客観的に測る意味
筋肉の張りや疲労感は、選手本人の「なんとなく重い」という自己申告に頼りがちで、コーチや trainer が第三者としてその状態を正確に把握するのは簡単ではありません。触診による経験則も重要ですが、担当者が変わればばらつきが出ますし、記録として時系列で比較することも難しくなります。
スポーツ庁はSport in Life推進プロジェクトの一環として、アスリートの不調(スランプ)の要因やコンディショニングに関する調査研究を実施しており、身体の状態を客観的なデータとして捉え、パフォーマンスの低下を事前に察知することの重要性を報告会で示しています。感覚だけに頼らず、身体の状態を定量的に把握しようとする動きは、トップスポーツの現場から一般のコンディショニング管理にも広がりつつあります。
(参考)Sport in Life 〜コンディショニングに関する研究成果報告会(第2回)を開催〜 – スポーツ庁
「筋疲労・筋硬度を測る」には2つのアプローチがある
ひとくちに「筋疲労・筋硬度を測る」と言っても、実は測定の切り口が大きく2つに分かれます。ひとつは筋肉そのものの「硬さ・張り」を機械的に評価する方法、もうひとつは筋肉が使う「酸素・代謝」の状態を測る方法です。前者は触診の延長として捻挫・肩こり・パフォーマンス評価の現場で、後者は持久系トレーニングの強度管理で使われる場面が多く、目的によって選ぶべきツールが変わってきます。

この2軸で整理すると、研究レベルの精度を求めるなら「硬さ測定」ではMyotonPRO、「酸素代謝」ではMoxy Monitorが候補になり、現場での手軽さを優先するなら国産のTDM-Z2のような機器が選択肢になります。次の章で、それぞれの特徴を公式情報にもとづいて具体的に見ていきます。
現場で使われる代表的な計測ツール3選
ここでは「筋疲労・筋硬度を測る」カテゴリーで実際に使われている製品を3つ取り上げ、測定方式・主な用途・価格帯の目安を一覧にしました(価格は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください)。
| 製品名 | 提供元 | 測定方式 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| MyotonPRO | Myoton AS(エストニア) | 打撃応答による筋の緊張・硬さのデジタル触診 | 医療評価・研究・スポーツトレーニング |
| Moxy Monitor | Fortiori Design LLC(米国) | 近赤外線分光法による筋酸素飽和度(SmO2)の連続測定 | 持久系スポーツのリアルタイムトレーニング管理 |
| TDM-Z2(NEUTONE) | テクノネクスト株式会社 | 押し当て式の軟部組織(筋肉)硬度測定 | 整骨院・鍼灸・スポーツトレーナーの現場計測 |
各社公式サイトの掲載情報(2026年8月確認)をもとにHuman Soarが作成。
研究・臨床でも使われる精度志向の触診機器|MyotonPRO
MyotonPRO(マイオトンプロ)は、皮膚の上から軽く押し当てて機械的な微振動を与え、その反応から筋肉の緊張度(Tone)・硬さ(Stiffness)・弾性(Elasticity)などを数値として算出する「デジタル触診」機器です。公式サイトによると、医療分野での治療効果の評価や、スポーツ現場でのトレーニング・回復過程における骨格筋の状態モニタリング、研究分野での定量評価など、非侵襲かつ短時間で測定できる点が特徴として紹介されています。
スマートフォンほどのサイズで持ち運びやすく、同一部位を継続的に測定して変化を追う運用に向いています。ただし医療現場での診断用途としては「研究用途限定(For Research Use Only)」と明記されており、治療の可否を判断する目的では使えない点は導入前に確認しておく必要があります。
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(参考)Myoton – Muscle Tone, Stiffness, Elasticity measurement device – Myoton AS
持久系トレーニングの強度管理に使う筋酸素センサー|Moxy Monitor
Moxy Monitor(モクシーモニター)は、筋肉に近赤外線を当てて反射光の変化を分析し、筋肉内の酸素飽和度(SmO2)をリアルタイムで測定するウェアラブルセンサーです。公式サイトでは、40グラム未満の軽さで水中でも使用でき、ANT+やBluetoothで各種スポーツウォッチ・バイクトレーナー用ソフトと連携できる点が紹介されています。
硬さそのものではなく「筋肉がどれだけ酸素を使えているか」という代謝面から疲労度を捉えるのが特徴で、自転車・水泳・ラグビーなど持久力が問われる競技のトレーニング強度調整に向いています。購入は公式サイトの購入ページから行う形になっており、用途に応じてアクセサリやソフトウェアの組み合わせを選ぶ仕組みです。
(参考)The Device(Moxy Sensor) – Moxy Monitor(Fortiori Design LLC)
現場ですぐ使える国産の筋硬度計|TDM-Z2(NEUTONE)
TDM-Z2は、テクノネクスト株式会社が扱う「NEUTONE」ブランドのデジタル筋硬度計です。公式サイトによると、測定部位に本体を押し当てるだけで筋肉(軟部組織)の硬さ・柔らかさを自動的に数値化できる、操作のシンプルさを重視した機器として案内されています。
MyotonPROのような研究向けの多機能さはない代わりに、専門的なトレーニングなしでもすぐに使い始められる手軽さが強みです。整骨院や鍼灸院、スポーツトレーナーの現場での日常的な計測に向いており、価格や購入方法は取扱代理店経由の見積り制となっているため、正式な金額は問い合わせが必要です。
(参考)製品案内(デジタル表示式 筋硬度計 TDM-Z2) – テクノネクスト株式会社
導入前に整理したい3つの判断軸
3製品を見てきたように、「筋疲労・筋硬度を測る」ツールは目的によって適したものが変わります。現場に導入する前に、次のようなステップと判断軸を整理しておくと選定がスムーズになります。

①何を測りたいのかを見極める
「筋肉の張り・硬さの変化を追いたいのか」「持久力トレーニング中の代謝状態を見たいのか」で、選ぶべき機器のカテゴリーがそもそも変わります。両方を見たい場合は、硬さ系と酸素代謝系を1台ずつ組み合わせて運用しているチームもあります。目的があいまいなまま「とりあえず高機能なもの」を選ぶと、現場で使いこなせずに終わってしまうケースが少なくありません。
②対象人数とランニングコストを見積もる
選手個人が自分の状態を追うのか、チーム全体で複数人を継続的に計測するのかによって、必要な台数・消耗品・データ管理の手間が大きく変わります。特にウェアラブル型のセンサーは充電・洗浄・故障時の予備機の確保など、購入後の運用コストも含めて検討することが重要です。
③試用やデモで現場との相性を確認する
数値の出方や操作感は実際に使ってみないと分からない部分が多く、カタログスペックだけで判断すると「思ったより測定に時間がかかる」「対象者によって数値がぶれる」といったギャップが生じることがあります。可能であれば代理店のデモや試用期間を活用し、少人数から導入して運用に慣れてから対象を広げるのが現実的です。
よくある質問
筋硬度計と筋肉痛の判定は同じものですか?
いいえ、別のものです。筋硬度計が測定するのは「その時点での筋肉の硬さ・張りの度合い」であり、筋肉痛(遅発性筋肉痛など)の有無そのものを直接判定する機器ではありません。硬さの数値が高い状態が続く場合に、疲労が抜けきっていないサインの一つとして参考にする、という使い方が一般的です。
筋酸素センサーは初心者でも扱えますか?
Moxy Monitorのような筋酸素センサーは装着自体は難しくありませんが、得られるSmO2の数値をトレーニング強度の調整に活かすには、ある程度の知識や経験が必要です。導入初期は公式サイトが提供するアプリやトレーニングソフトの解説を確認しながら、まずは自分自身のベースライン(平常時の数値)を把握するところから始めるとよいでしょう。
複数の製品を併用する必要はありますか?
必須ではありません。まずは「硬さ・張り」か「酸素・代謝」のどちらを重視したいかを決め、1種類から始めるのが現実的です。運用に慣れて、より多角的にコンディションを把握したいというニーズが出てきた段階で、もう一方のアプローチを追加で検討するという進め方でも十分です。
まとめ
- 「筋疲労・筋硬度を測る」ツールには、筋肉の硬さ・張りを評価するタイプと、筋肉の酸素・代謝を評価するタイプの2つのアプローチがある
- MyotonPROは研究・臨床レベルの精度を持つ筋硬度測定機器、Moxy Monitorは持久系トレーニング向けの筋酸素センサー、TDM-Z2は現場で手軽に使える国産の筋硬度計
- 導入前には「何を測りたいか」「対象人数とコスト」「試用での相性確認」の3点を整理しておくと選定の失敗を防ぎやすい
- 価格や仕様は変更されることがあるため、最終的な判断は必ず各製品の公式サイトで最新情報を確認する
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