ボルダリングジムの数は平成10年代前半の数十軒規模から、今や500軒を超える水準まで増えました。この急拡大を支えているのが、課題の完登記録や弱点の可視化をスマホひとつで行える記録アプリ・トレーニングアプリの普及です。本記事では、屋外攻略型から自宅ボード連動型まで、性質の異なる10製品を公式サイトの情報にもとづいて比較します。
「アプリが多すぎてどれを選べばいいかわからない」という担当者・愛好者向けに、3つのタイプ分類と選び方の4ステップも整理しました。福利厚生としてボルダリングを社内制度に取り入れたい健康経営担当者にも参考になる内容です。
なぜ今クライミング記録アプリが必要なのか|競技人口60万人規模の背景
スポーツクライミングは2020年東京オリンピックで正式競技となって以降、国内での競技人口・施設数がともに拡大してきました。愛好者を含む競技人口はネット上の推計で60万人程度とされ、選手登録者数だけでも2025年4月時点で3,062名にのぼります。
この普及を後押ししているのが、スポーツDXの広がりとボルダリングジムの急増です。公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会が内閣府消費者委員会に提出した資料によると、国内のジム数は平成10年代前半の数十軒程度から、現在は500軒を超える水準まで拡大しています。ジムが身近になったことで、初心者から競技志向のクライマーまで、自分の課題履歴やトレーニング内容を記録するニーズが高まりました。
(参考)スポーツクライミング 現状について(2025年5月13日提出資料) – 公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会
Q. ボルダリングは運動経験がなくても始められますか?
はい、道具がシューズとチョークだけで始められる手軽さから未経験者でも始めやすい種目です。全国のジムには初心者向けの易しい課題が用意されており、記録アプリの多くも初心者向けの用語集やルール解説を備えています。まずは近くのジムで体験レッスンを受け、慣れてきたら記録アプリで自分の課題履歴を残す流れがおすすめです。
ボルダリング・クライミング記録アプリ10選|特徴と公式サイト
今回紹介する10製品は、各製品の公式サイト・公式ストアページで機能・実績を確認できたものを選定基準としています。海外発の製品が中心になりやすい領域のため、日本語対応・国内開発の製品も2つ含めました。
| 製品名 | 提供元 | 主な機能・特徴 | 対応プラットフォーム |
|---|---|---|---|
| Vertical-Life(8a.nu統合) | Vertical-Life GmbH(オーストリア) | 世界50万人が利用するガイドブック統合型。詳細トポとオフライン機能、個人ログを提供 | iOS / Android |
| KAYA | KAYA Climb, Inc.(米国) | GPSガイドブックと100万本超のベータ動画、300超のエリア・200超のジムを収録 | iOS / Android |
| Satellite | Funabashi Rocky Co.,Ltd.(日本) | 国内ジム対応数が多い課題ログアプリ。AutoGrade機能でグレードを自動判定 | iOS / Android |
| ボルレコ(Bouldering Recorder) | 個人開発(日本) | 壁の写真にホールドを丸印で記録するシンプル設計。外岩用のライン記入機能つき | iOS |
| ボルクラ | AMGAMES, INC.(日本) | 写真にスタンプを付けて課題を作成・共有。初心者向けのルール解説を収録 | iOS |
| Crimpd | Lattice Training(英国) | 世界的コーチが設計した指力・持久力トレーニング。ワークアウトログ1,000万件超 | iOS / Android / Web |
| Grippy | Griptonite(英国) | Beastmaker公式提携のハングボードアプリ。専用機器Motherboardで力を数値計測 | iOS / Android |
| Kilter Board | Kilter(米国) | 世界中のジムの課題をBluetoothで自宅ボードに再現。ログ・プレイリスト機能 | iOS / Android |
| MoonBoard | Moon Climbing Ltd.(英国) | 2016年発、世界標準の元祖LEDトレーニングボード。12万問超の課題を収録 | iOS / Android |
| Tension Board | Tension Climbing / Aurora Climbing(米国) | ホールド配置を精密設計した自宅トレーニングボード。専用アプリで採点・記録 | iOS / Android |
各製品の公式サイト・公式ストアページの記載内容にもとづく(2026年9月時点)。価格・対応機種は変動する場合があるため最新情報は公式サイトで確認してください。
Vertical-Life(8a.nu統合)|世界50万人が使うガイドブック統合型
Vertical-Lifeは、屋外クラッグと屋内ジムの両方に対応するガイドブック統合型アプリです。世界各地のクラッグの詳細トポをオフラインでも閲覧でき、現地ガイドブック著者が監修した情報の正確さが強みです。
もともと実績データベースとして知られていた「8a.nu」の機能をアプリに統合しており、個人の登攀ログ・チャレンジ機能・ジムのランキングも1つのアプリで完結します。無料範囲でも地図・ルート一覧・ログ機能が使え、詳細トポやオフライン保存は有料プランで解放されます。
(参考)Vertical-Life Premium 公式サイト
KAYA|100万本超のベータ動画を持つ屋外特化アプリ
KAYAは、米国発の屋外クライミング特化アプリです。GPSオフラインマップで駐車場所やアプローチルートまで案内する機能を持ち、300を超えるエリアと200を超えるジムのガイドブックを収録しています。
最大の特徴は100万本を超えるコミュニティ投稿型のベータ動画ライブラリです。登り方の参考動画を課題ごとに探せるため、初見の課題でも攻略の糸口を見つけやすくなります。
(参考)KAYA | The Climber's App 公式サイト
Satellite|国内ジム対応数の多い課題ログアプリ
Satelliteは日本のFunabashi Rocky社が開発した課題ログアプリで、国内の対応ジム数の多さが特徴です。チェックインした課題を記録すると、タイムラインで他のクライマーの完登状況やランキングを確認できます。
2024年以降のアップデートでは、ジムごとにグレードの分布を可視化する「グレード管理統計」と、その分布にもとづき課題の難易度を自動更新する「AutoGrade」機能が追加されました。
(参考)Satellite -Climbing App- 公式ストアページ
ボルレコ|壁写真にホールドを記録するシンプル設計
ボルレコ(Bouldering Recorder)は、国内で長く使われてきたシンプルな課題記録アプリです。ジムの壁を撮影し、使うホールドに丸印を付けるだけで課題を記録できる手軽さが支持されています。
バージョン2では外岩でのライン記入に便利なツールが追加され、編集した課題画像をSNSに投稿する機能にも対応しました。
ボルクラ|初心者向けコンテンツ付きの課題管理アプリ
ボルクラは、写真にスタンプなどで印をつけて課題を作成・管理・共有できる国内アプリです。編集した課題画像は仲間と共有でき、複数の課題をセクションごとにまとめて管理できます。
ボルダリングの基本情報・ルール・用語集といった初心者向けコンテンツも収録しており、始めたばかりのクライマーが最初に入れるアプリとして扱いやすい設計です。
Crimpd|世界的コーチ監修のトレーニングアプリ
Crimpdは、Lattice Trainingのトム・ランドール氏とオリー・トール氏が設計したトレーニングアプリです。持久力・パワー持久力・筋力・柔軟性など目的別のワークアウトが用意されています。
ダウンロード数は50万件を超え、記録されたワークアウト数は1,000万件を突破しています。自分の弱点を補うスキルテンプレートや、スケジュール管理機能も備えています。
Grippy|Beastmaker公式のハングボードアプリ
Grippyは、指力トレーニング機器として知られるBeastmakerと提携するGriptonite社のアプリです。世界のコーチが提供するハングボードワークアウトを無料で利用できます。
専用機器「Motherboard」と組み合わせると、ハングタイムや荷重をリアルタイムで計測でき、トレーニングサイクルごとの成果をベンチマークとして比較できます。
Kilter Board|世界中のジムの課題を自宅で再現
Kilter Boardは、LEDホールドを内蔵した自宅設置型トレーニングボードの専用アプリです。Bluetooth接続で世界中のジムに設置されたKilter Boardの課題を呼び出し、自宅のボードで同じ課題に挑戦できます。
2025年以降はアプリが刷新され、ログ画面や検索機能、プレイリストによる課題整理機能が強化されました。
MoonBoard|世界標準を作った元祖LEDボード
MoonBoardは2016年に登場した、Bluetooth制御LEDホールドを備える元祖トレーニングボードです。世界中のMoonBoardユーザーが同じ規格の壁で同じ課題に挑戦できる点が最大の特徴です。
公式アプリには12万問を超える課題ライブラリがあり、セッションの記録やベンチマークとの比較機能も搭載されています。
Tension Board|精密設計のホールド配置が強み
Tension Boardは、Tension Climbing社とAurora Climbing社が手がけるトレーニングボードです。ホールドの配置が精密に設計されており、狭いスペースでも高難度のトレーニングを再現できます。
専用アプリでは課題ごとの採点・記録に対応し、Kilter BoardやMoonBoardと同様にBluetoothでホールドを点灯させながらトレーニングできます。
Q. クライミング記録アプリは無料で使えますか?
基本的なログ機能は無料で使えるアプリが大半です。Vertical-LifeやKAYAはガイドブック閲覧や記録の基本機能を無料開放し、詳細トポやオフライン機能などを有料プランにしています。Crimpdも無料ワークアウトが75種類以上あり、まず無料範囲で試してから有料機能の必要性を判断できます。
3タイプで見る記録アプリの選び方|ログ型・強化型・ボード型
10製品はいずれも「クライミングを記録する」という点では共通していますが、力を入れている機能で大きく3タイプに分かれます。同じジャンルでも目的が異なるため、まず自分がどのタイプを求めているかを整理すると選びやすくなります。

課題ログ・攻略記録型|Vertical-Life・KAYA・Satellite・ボルレコ・ボルクラ
登った課題を写真や動画で残し、ガイドブックやコミュニティ機能で攻略の手がかりを得るタイプです。屋外中心ならKAYAやVertical-Life、国内ジム中心ならSatellite・ボルレコ・ボルクラが選びやすい選択肢になります。
指・上半身の強化特化型|Crimpd・Grippy
記録よりもトレーニングそのものに重心を置くタイプです。コーチ監修のプログラムに沿って持久力や指力を鍛えたい人、伸び悩みを感じている中〜上級者に向いています。
自宅ボード連動型|Kilter Board・MoonBoard・Tension Board
専用のLEDトレーニングボードと組み合わせて使うタイプです。世界共通の課題ライブラリに挑戦しながら記録も残せるため、記録と強化を同時に満たしたい人に向いていますが、ボード本体の購入と設置スペースが前提になります。
バドミントンの分析アプリやバスケットボールの分析アプリでも、同じように「記録型」と「強化型」でツールの性格が分かれる傾向があります。
Q. スマホの記録アプリだけで上達できますか?
記録だけに使うなら十分ですが、上達を狙うなら強化特化型アプリの併用が効果的です。ログ型アプリは「何を登ったか」を可視化する役割が中心で、指の力や持久力そのものを鍛えるプログラムは持っていません。CrimpdやGrippyのような強化特化型を組み合わせると、記録とトレーニングの両輪が揃います。
記録アプリ導入前に確認したい4つのポイント
10製品の中から実際に使うアプリを決める際は、思いつきで1つに絞らず、次の4つの視点を順番に確認するのがおすすめです。特に自宅トレーニング機器の購入を検討している場合は、後戻りしにくい投資になるため慎重な確認が必要です。

視点①活動フィールドを整理する
屋外クラッグでの活動が中心なら、GPSガイドブックを持つKAYAやVertical-Lifeが有力候補になります。逆にジム中心であれば、対応ジム数が多いSatelliteや国内アプリのほうが日常的な記録に向いています。
視点②目的を明確化する
「課題の記録を残したいのか」「指の力そのものを鍛えたいのか」で、選ぶべきアプリの系統が変わります。両方を求める場合は、ログ機能とトレーニング機能を両方持つアプリを優先的に検討します。
視点③自宅の設備・スペースの有無を確認する
Kilter Board・MoonBoard・Tension Boardのような自宅ボード連動型は、専用ボードの購入と設置スペースの確保が前提になります。賃貸住宅の場合は原状回復の可否も含め、導入前に確認しておく必要があります。
視点④無料範囲でまず試す
紹介した10製品の多くは基本機能を無料で使えます。いきなり有料プランや機器を購入するのではなく、まず無料範囲で1〜2週間試し、自分の記録習慣に合うかどうかを確かめることが失敗しない近道です。
Q. 自宅にクライミングボードを置くにはどれくらいのスペースが必要ですか?
一般的なLEDトレーニングボード(Kilter BoardやMoonBoardなど)は幅2〜3m、奥行き1m程度の壁面スペースが目安です。天井高や設置角度は製品ごとに規定があるため、購入前に各メーカー公式サイトの設置ガイドを必ず確認してください。賃貸住宅の場合は原状回復の可否も事前に確認が必要です。
スマホ完結型か自宅ボード連動型か|継続のしやすさで比較する
最後に、多くの人が迷う「スマホだけで完結させるか、自宅ボードに投資するか」という論点を整理します。結論として、始めやすさを取るならスマホ完結型、追い込みの再現性を取るなら自宅ボード連動型が向いています。

スマホ完結型は初期費用がかからず、写真や動画で課題を記録・共有しながらジムの垣根を越えて他のクライマーと交流できる点が魅力です。一方の自宅ボード連動型は専用ボードの購入費用がかかるものの、天候や外岩までの距離に左右されず、世界共通の課題ライブラリで自宅でも追い込み練習ができます。
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Q. 屋外クライミングと室内ジムでアプリを使い分けるべきですか?
活動フィールドが変わる場合は使い分けたほうが記録の精度が上がります。屋外中心ならGPSガイドブックを持つKAYAやVertical-Lifeが地形情報ごと記録できて便利です。室内ジム中心ならジム対応数の多いSatelliteや国内アプリのボルレコ・ボルクラのほうが、日々の課題管理がしやすくなります。
まとめ|自分に合うクライミング記録アプリを選ぶために
ボルダリング・クライミングの記録アプリは、目的によって選ぶべき製品が大きく変わります。最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 国内のクライミング人口・ジム数は拡大が続いており、記録アプリの需要も広がっている
- 10製品は「課題ログ・攻略記録型」「指・上半身の強化特化型」「自宅ボード連動型」の3タイプに分類できる
- 選ぶ際は活動フィールド・目的・設備の有無・無料範囲での試用の4視点を順番に確認する
- スマホ完結型は始めやすさ、自宅ボード連動型は追い込みの再現性で優れる
- 屋外中心か室内ジム中心かで、使い分けたほうが記録の精度が上がる
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