週末に「乗馬クラブに社員を連れて行きたい」と考えたことはありませんか。実は乗馬クラブは、独立系の小規模施設から、鉄道会社や商社と手を組む大手グループまで、運営の作られ方が業種によって大きく異なります。乗馬クラブ業界は全国に数百のクラブがあり、独立系・大手企業との合弁・異業種からの参入という3つの経営モデルが混在しているのが実態です。本記事では公式サイトで確認できた全国の主要10社を一覧化し、企業が福利厚生や研修に活用する方法まで解説します。
乗馬クラブ業界とは|飼養頭数と実施率から見る市場規模
乗馬クラブとは、乗用馬を保有し、会員制または体験形式でレッスンを提供する施設の総称です。競走馬を扱う競馬業界とは異なり、生涯スポーツとしての乗馬指導や、馬とのふれあいを通じた健康増進・教育活動を主な事業としています。
農林水産省の資料によると、国内の馬の総飼養頭数は48,418頭で、このうち競走用に登録されている軽種馬が全体の約57%を占めています。乗馬クラブが保有する馬は、競走馬引退後の馬や、乗馬専用に繁殖・調教された馬が中心です。
スポーツ庁が毎年実施する「スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、乗馬は個別種目として調査項目に含まれており、生涯スポーツの選択肢の一つとして位置づけられています。第3期スポーツ基本計画では成人の週1回以上のスポーツ実施率を70%に高める目標が掲げられており、乗馬のような非日常性の高い種目も裾野拡大の対象です。
Q. 乗馬クラブは全国にどれくらいありますか?
業界団体である公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会(全乗協)には、2010年3月時点で274クラブ・登録乗用馬5,096頭が加盟していました。加盟していない独立系クラブも多いため、実際に稼働している施設数はさらに多いとみられます。
(参考)令和6年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」 – スポーツ庁
(参考)協会について – 公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会
全国の乗馬クラブ主要10社一覧|運営形態で見る違い
Human Soarでは、各社の公式サイトで事業内容・所在地・運営会社を確認できた乗馬クラブを調査し、独立系から大手企業とのJVまで10社を一覧にまとめました。会員数や馬匹数など、公式サイトに明記されている数値のみを掲載しています。関東エリアだけでも千葉県・茨城県などに拠点が広がっており、地域別の一覧サイトでも複数のクラブが比較検討できます。
| 社名・クラブ名 | 所在地 | 運営形態 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 乗馬クラブクレイン | 大阪府羽曳野市 | 大手チェーン | 1971年設立、会員約39,000名・馬匹約3,150頭(グループ連結) |
| 神戸乗馬倶楽部 | 兵庫県神戸市 | 公益社団法人 | 1915年創業、2015年に100周年、しあわせの村馬事公苑の指定管理者 |
| 軽井沢乗馬倶楽部 | 長野県軽井沢町 | 独立系(株式会社) | 長野県馬術連盟・日本馬術連盟加盟の会員制クラブ |
| 小岩井農牧(まきば園) | 岩手県雫石町 | 異業種(酪農発) | 1891年創業、三菱グループ系、資本金2億5,600万円・従業員約300名 |
| 湖南馬事センター | 滋賀県甲賀市 | 独立系 | 敷地11ha、少人数レッスンと厩務員養成課程を併設 |
| フジファーム(富士ファーム) | 静岡県御殿場市 | 独立系(有限会社) | 全天候型インドア馬場を保有、自社主催の競技会を年4回開催 |
| 杉谷乗馬クラブ | 大阪府和泉市 | 独立系(株式会社シーダーバレー) | 1964年創立、敷地面積70,000m2・保有馬50頭(2024年1月時点) |
| 山中湖乗馬クラブ馬車道 | 山梨県山中湖村 | 独立系 | 富士山麓・標高1,000mに立地、外乗(トレイル)中心のレッスン |
| エルミオーレ | 愛知県豊田市(本社) | 独立系(多拠点チェーン) | 1999年設立、豊田・神戸・埼玉・茨城など全国6拠点を展開 |
| 那須トレーニングファーム | 栃木県那須塩原市 | 独立系 | 大学の馬介在療法研究や自治体の乗馬講座に協力 |
出典:各社公式サイトの記載内容をもとにHuman Soarが2026年9月時点で作成
乗馬クラブクレイン|会員約39,000名の国内最大級チェーン
乗馬クラブクレインは1971年に大阪で設立され、大阪・奈良・千葉・仙台など全国20拠点以上に「乗馬クラブ クレイン」ブランドを展開しています。公式サイトによると、グループ連結の会員数は約39,000名、馬匹数は約3,150頭、従業員数は約2,350名にのぼります。
後述するとおり、名古屋鉄道や東武鉄道、両備バスなど異業種の大手企業と共同で地域拠点を開設してきた点が特徴で、単独チェーンではなく「合弁ネットワーク」として業界最大級の規模を築いています。
神戸乗馬倶楽部|創業110年超の公益法人が指定管理も担う
神戸乗馬倶楽部は1915年(大正4年)に発足し、2015年に100周年を迎えた歴史あるクラブです。2011年に公益社団法人へ移行し、現在は神戸市の「しあわせの村馬事公苑」の指定管理者として、乗馬レッスンに加えて障がい者向けのホースセラピー事業も行っています。
営利法人ではなく公益法人が運営主体である点は、他の9社と異なる特徴です。青少年の健全育成や地域貢献を定款上の目的に明記しており、収益事業と公益事業を両立させるモデルとして参考になります。
(参考)神戸乗馬倶楽部について – 公益社団法人神戸乗馬倶楽部
軽井沢乗馬倶楽部|観光地に根ざした独立系クラブ
軽井沢乗馬倶楽部は、長野県北佐久郡軽井沢町に本拠を置く株式会社軽井沢乗馬倶楽部が運営しています。長野県馬術連盟・日本馬術連盟の加盟団体として、競技志向の会員から観光客向けの体験乗馬まで幅広く対応しているのが特徴です。
観光地に立地する独立系クラブは、避暑地としての集客力を活かしながら、地元の会員基盤とビジター需要の両方を取り込む収益構造を持つ傾向があります。
小岩井農牧(まきば園)|酪農事業から乗馬体験へ広がった三菱グループ企業
小岩井農牧株式会社は1891年創業、1938年設立の老舗企業で、キリンホールディングスや三菱商事など三菱グループ各社を主要株主に持ちます。資本金は2億5,600万円、従業員数は約300名で、酪農・山林・環境緑化・観光・食品の5事業を展開しています。
観光事業の一環である「まきば園」では乗馬体験を提供しており、専業の乗馬クラブとは異なり、農牧業の多角化の延長線上に乗馬サービスが位置づけられている点が特徴です。
湖南馬事センター|厩務員養成課程を併設する少人数制クラブ
湖南馬事センターは滋賀県甲賀市にあり、敷地面積11haの施設で少人数レッスンの会員制乗馬クラブを運営しています。公式サイトによると、乗馬クラブに加えて厩務員養成コースを扱う「馬の学校」を併設し、就業を見据えた人材育成にも取り組んでいます。
元競走馬やポニーを含む馬を保有し、自馬預託サービスも提供しており、地方都市における小規模独立系クラブの典型的な事業構成を示しています。
フジファーム|インドア馬場でジュニア選手を育てる専門型クラブ
有限会社富士ファームが運営するフジファームは、静岡県御殿場市で全天候型インドア馬場を保有し、マンツーマン指導によるジュニア選手の育成に力を入れています。公式サイトでは、全日本レベルや国体出場選手を輩出してきた実績が紹介されています。
自社主催の競技会「FUJI HORSE SHOW」を年4回開催するなど、大会運営自体を事業の柱に据えている点が、他の独立系クラブとの差別化要素です。
杉谷乗馬クラブ|関西屈指の競技馬場を持つ老舗クラブ
杉谷乗馬クラブは1964年に大阪府和泉市で創設され、株式会社シーダーバレーが運営しています。敷地面積は70,000m2、保有馬数は50頭(2024年1月時点)で、競技馬場や屋内外複数の馬場を備える関西屈指の規模を誇ります。
クラブ主催の競技会に加え、全国レベルの大会が毎月のように開催されており、競技志向のクラブとして半世紀以上の歴史を積み重ねてきました。
山中湖乗馬クラブ馬車道|富士山麓の外乗特化型クラブ
山中湖乗馬クラブ馬車道は、山梨県山中湖村で標高1,000mの高原に立地する乗馬クラブです。公式サイトによると、初心者でもスタッフが横に付いて散歩感覚で楽しめる外乗(トレイル)レッスンを中心に展開しています。
観光地に立地しながらも会員制の競技クラブとは異なる客層を狙い、レザークラフト体験など乗馬以外の体験メニューも併設している点が特徴です。
エルミオーレ|全国6拠点を展開する多拠点型チェーン
有限会社エルミオーレは1999年設立で、愛知県豊田市に本社を置きます。公式サイトによると、豊田・神戸・埼玉・茨城・三河高原・鶴見緑地(大阪)の全国6拠点で「ホースファーム エルミオーレ」ブランドを展開しています。
単一施設ではなく複数拠点を同一ブランドで運営する点はクレインと共通しますが、大手企業との合弁ではなく自社単独での多拠点展開という違いがあります。
那須トレーニングファーム|大学・自治体と連携する地域密着型クラブ
那須トレーニングファームは栃木県那須塩原市にあり、乗馬レッスンに加えて競走馬の調教トレーニングを手がけています。公式サイトによると、那須塩原市が主催する小中高生向け乗馬講座への協力や、国際医療福祉大学の馬介在療法研究への協力など、教育・医療分野との連携が特徴です。
馬を使ったフリースクールの運営にも取り組んでおり、乗馬クラブが地域の教育インフラの一部として機能している事例といえます。
Q. 乗馬クラブによって会員数や規模はどれくらい違いますか?
大手チェーンの乗馬クラブクレインはグループ連結で約39,000名の会員を抱える一方、独立系クラブの多くは公式サイトに会員数を公開しておらず、数十名から数百名規模とみられます。規模より立地や指導方針で選ばれる施設が多いのが実態です。
乗馬クラブの3つの経営モデル|独立系・グループ系列・異業種参入
今回調査した10社を運営形態で分類すると、独立系クラブ・大手企業との合弁展開・異業種からの参入という3つの経営モデルに整理できます。同じ「乗馬クラブ」という業種でも、資本の出どころによって事業の作られ方が大きく異なる点が分かります。
独立系クラブ|地域密着で会員制を運営
軽井沢乗馬倶楽部・神戸乗馬倶楽部・杉谷乗馬クラブ・山中湖乗馬クラブ馬車道・湖南馬事センター・フジファーム・那須トレーニングファーム・エルミオーレの8社は、いずれも単独の株式会社・有限会社・公益法人が単独で運営しています。今回調査した10社のうち8割を独立系が占めており、業界の主流を構成しています。
独立系クラブは地域の会員基盤や観光需要に根ざした経営が中心で、教育機関や自治体との連携(那須トレーニングファームの事例など)、競技会運営(フジファーム、杉谷乗馬クラブ)など、施設ごとに独自の強みを打ち出す傾向があります。
大手企業との合弁展開|クレイングループの異業種連合
乗馬クラブクレインは、単独の直営店舗網ではなく、名古屋鉄道・東武鉄道・両備バス・日本毛織(ニッケ)・日本農産工業(ノーサン)といった異業種の大手企業と共同出資で地域拠点を開設する手法を1980年代から続けています。公式サイトの沿革によると、1984年の「名鉄乗馬クラブ・クレイン東海」開設を皮切りに、鉄道会社やバス会社との合弁が相次ぎました。
合弁相手企業が持つ土地・沿線顧客基盤と、クレインが持つ乗馬クラブの運営ノウハウを組み合わせることで、単独では出店が難しい地域にも展開できる点が、このモデルの強みです。
異業種からの参入|酪農・農牧業の多角化としての乗馬
小岩井農牧は、酪農・山林・環境緑化を本業とする農牧業の会社で、観光事業の一環として乗馬体験を提供しています。乗馬クラブとしての専業ではなく、三菱グループの一員として100年以上続く農場経営の多角化のなかに乗馬サービスが位置づけられている点が、他の9社と一線を画します。
本業に近接する形で乗馬を取り入れるモデルは、観光牧場や大規模農場が集客の柱を増やす際の参考事例になります。
Q. なぜ乗馬クラブは異業種企業との合弁が多いのですか?
乗馬クラブの運営には広い土地・厩舎・馬の管理体制が必要で、単独企業が新規に用意するコストが高いためです。鉄道会社や商社が持つ遊休地・沿線顧客基盤と、専門クラブの運営ノウハウを組み合わせる合弁は、双方にとって出店リスクを抑えられる方法として活用されてきました。
企業が乗馬クラブを福利厚生・研修に活用する方法
乗馬クラブは個人の趣味施設と思われがちですが、法人向けのプログラムを持つクラブも増えています。健康経営や社員研修の一環として乗馬を取り入れる企業も出てきており、スポーツ施設全般の法人契約と同様の発想で検討できます。
乗馬は非日常性が高く、動物とのコミュニケーションを通じて集中力や落ち着きを養う効果が指摘されることから、管理職研修やメンタルヘルス施策の一環として紹介されるケースもあります。導入する際は、通常のフィットネス施設と同様に、拠点までのアクセスや最低利用人数の条件を事前に確認することが重要です。
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乗馬クラブを単発のレクリエーションとして使う場合は、企業運動会のような団体イベントの一種として組み込む方法もあります。企業運動会でチームビルディングを成功させる開催方法で紹介した設計の考え方は、乗馬体験会にも応用できます。
また、動物とのふれあいを軸にした施策は、ウェルビーイング経営の取り組み事例で紹介した「つながり・コミュニティづくり」の分野に位置づけて社内制度化すると、目的が明確になります。
Q. 乗馬クラブに法人向けの福利厚生プランはありますか?
クラブによって対応が異なりますが、複数拠点を持つクレインやエルミオーレのような大手チェーンでは法人会員や団体利用の窓口を持つ場合があります。独立系クラブでも団体レッスン枠を用意していることが多いため、まずは各クラブへ直接問い合わせるのが確実です。
乗馬クラブ経営が直面する課題とDX・地域連携の可能性
今回調査した10社のうち、公式サイトで会員数を公開していたのは乗馬クラブクレインの1社のみで、多くの独立系クラブは経営状況を外部に開示していません。これは乗馬クラブ業界全体が、他のスポーツ施設と同様に経営の透明性や収益多角化の課題を抱えていることを示しています。
乗馬クラブは土地・厩舎・馬の維持費という固定費が重く、利用者数の増減が経営に直結しやすい業態です。オンライン予約やキャッシュレス決済の導入、地域の教育機関・自治体との連携(那須トレーニングファームの事例など)は、他のスポーツ施設同様に稼働率の改善につながる手段になります。
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乗馬クラブ業界が抱える構造的な課題は、日本スポーツ業界の8つの課題|15兆円市場へのDXと構造改革で整理したスポーツ産業全体の課題と重なる部分が多く、業界横断での解決策を参考にできます。
Q. 乗馬クラブ経営で最も重い固定費は何ですか?
馬の飼育・管理コストと、厩舎・馬場を維持するための土地・設備コストです。利用者数に関わらず馬の飼料・獣医費用・装蹄費用が発生し続けるため、固定費に占める割合が他のスポーツ施設より高くなりやすい構造があります。
まとめ
乗馬クラブ業界は、独立系・大手企業との合弁展開・異業種からの参入という3つの経営モデルが混在する業種です。要点を振り返ります。
- 国内の馬の総飼養頭数は48,418頭で、乗用馬は競走用に次ぐ用途として位置づけられている
- 今回調査した主要10社のうち8社が独立系、1社が大手企業との合弁ネットワーク(クレイン)、1社が異業種からの参入(小岩井農牧)
- 乗馬クラブクレインは会員約39,000名・馬匹約3,150頭のグループ連結規模を持つ国内最大級のチェーン
- 企業の福利厚生・研修としての活用は、通常のスポーツ施設法人契約と同様の視点で検討できる
- 固定費の重さから、オンライン予約や地域連携によるDX・収益多角化が今後の経営課題になる
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