世界のeスポーツ市場は右肩上がりの成長が続いていますが、調査機関によって推計額に幅があり、「世界市場◯億円」という一つの数字だけで参入の是非を判断するのは危険です。結論として、企業がeスポーツ参入を検討する際は、市場規模の大きさそのものより①収益モデルとの適合度②地域特性③既存事業との接続点④法規制・社会的受容の4つの軸で判断することが重要です。本記事では世界市場の動向と、日本企業が参入を検討する際の視点を解説します。
世界のeスポーツ市場は今どのくらいの規模か
世界のeスポーツ市場規模については、民間調査各社の推計に幅があります。年間の市場規模を20億〜26億米ドル程度とする推計が複数あり、今後10年で年平均10%台後半の成長率が見込まれるとする予測が目立ちます。金額の絶対値よりも「成長率が高い分野である」という方向性自体は、各社の推計に共通しています。
日本国内でも、スポーツ庁と経済産業省が共同で公表した政策とりまとめのなかで、eスポーツを含む「みるスポーツ」産業の成長を政策課題として扱っており、国としても市場拡大を後押しする姿勢を示しています。海外の急成長だけでなく、国内の政策動向もあわせて押さえておくことが、参入検討の前提になります。
(参考)スポーツ未来開拓会議 ~今後のスポーツの成長産業化を見据えた、当面の取組等についてのとりまとめ~ 2025年4月 – スポーツ庁・経済産業省
Q. 世界のeスポーツ市場規模はどのくらいですか?
調査機関によって推計に幅がありますが、年間20億〜26億米ドル規模とする推計が複数あり、今後10年間は年平均10%台後半の成長が見込まれています。1つの数字を鵜呑みにするより、複数の推計に共通する「成長率の高さ」という傾向を参入判断の材料にするのが現実的です。
日本市場は2024年に161億円|世界の成長スピードと比べる
日本国内のeスポーツ市場は、2024年時点で推計約161億円まで拡大しました。日本eスポーツ連合(JESU)によると、これは前年対比で9.9%の伸長にあたり、2020年以降は年平均10%前後の成長を維持しています。2026年には200億円を超えると予測されており、世界市場の成長率と近い水準で拡大が続いている点が特徴です。
市場の裾野を示すファン数も、2024年時点で約967万人と推定され、そのうち約419万人が競技者人口にあたると見られています。2026年には日本のファン数が約1,500万人に迫るとの予測もあり、視聴者・参加者の両面で市場が厚みを増しています。
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(参考)eスポーツの市場と推移 – 一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU)
収益モデル別に見る日本市場の内訳
参入を検討するうえで重要なのは、市場全体の金額よりも「どの収益区分が伸びているか」です。JESUが公表した2024年の構成比データをもとに、Human Soarが表に再整理しました。
| 収益区分 | 2024年の構成比 | 特徴 |
|---|---|---|
| イベント運営 | 37.3% | オンライン・オフラインのハイブリッド開催が定着 |
| スポンサー費用 | 35%以上(イベント運営と合計で7割超) | 大会・チームへの協賛が中心 |
| グッズ・ストリーミング関連 | 構成比は小さいが高成長率 | 今後の存在感拡大が見込まれる |
出典:JESU「eスポーツの市場と推移」(2024年実績)をもとにHuman Soarが集計・表に再構成(2026年9月作成)。
イベント運営とスポンサー収入が市場の7割超を占める
2024年時点では、イベント運営とスポンサー収入だけで市場全体の7割以上を占めています。企業が最初に検討しやすいのは、この2つの収益区分に近い形の協賛・大会運営支援です。既存の広告予算やスポンサー活動の延長線上で始めやすいという意味で、参入のハードルが比較的低い領域といえます。スポンサー市場自体の伸びについては拡大するeスポーツスポンサー市場|ブランド活用の最新事例で詳しく解説しています。
グッズ・ストリーミング関連は伸び率で存在感を増している
構成比としてはまだ大きくありませんが、グッズ販売や配信関連の収益は高い成長率で伸びています。自社にコンテンツ制作やEC機能を持つ企業であれば、この領域の方が既存の強みを活かしやすい場合があります。収益区分ごとに自社の強みとの相性を見極めることが、次のセクションで説明する参入判断の軸につながります。
Q. 日本のeスポーツ市場はどのくらいの速さで成長していますか?
JESUの公表データによると、2024年の国内市場は前年対比9.9%増の約161億円で、2020年以降は年平均10%前後の成長が続いています。2026年には200億円を超えると予測されており、世界市場の成長率と近い水準で拡大しています。
企業がeスポーツ参入を判断する4つの軸
市場が伸びているというだけで参入を決めると、収益化までの道筋が見えないまま予算だけが先行しがちです。Human Soarでは、参入判断を整理するための4つの軸を独自に設計しました。
収益モデル適合度|自社が入りやすいのはどの収益区分か
前のセクションで見た通り、日本市場の7割超はイベント運営とスポンサー収入です。広告・協賛の実務経験がある企業は、まずこの領域から検討すると立ち上げやすくなります。逆にコンテンツ制作やEC機能を持つ企業は、成長率の高いグッズ・配信領域の方が相性がよい場合があります。
地域特性|アジアはファン基盤、北米・欧州は興行モデルが強い
世界市場を一括りにせず、狙う地域のプレイヤー・ファン層の特徴を踏まえることが重要です。アジア圏は競技人口・視聴者数の厚みが強みになりやすく、北米・欧州はリーグ運営やスポンサーシップなど興行としての完成度が高い傾向にあります。自社が海外展開を視野に入れるかどうかで、優先すべき地域が変わります。
既存事業との接続点|健康経営・エンゲージメント施策との相性
eスポーツは「デジタル領域の福利厚生・エンゲージメント施策」として社内に位置づけやすい特徴があります。健康経営やコミュニケーション施策の一環として導入すれば、単独の新規事業として立ち上げるより社内合意を得やすくなります。
法規制・社会的受容|ゲーム依存症対策などの論点への備え
景品表示法に関わる景品・賞金設計や、ゲーム依存症への配慮など、eスポーツ特有の論点は事前に整理しておく必要があります。スポーツ庁・経済産業省の政策とりまとめでも、成長産業化と並行してこうした社会的な論点への目配りが議論されており、参入企業側もこの視点を欠かせません。
あわせて読みたいeスポーツと従業員エンゲージメント|デジタルスポーツを健康経営に活かす›
Q. eスポーツ参入で最も高いハードルは何ですか?
多くの企業にとって最大のハードルは、社内合意形成と法規制・社会的受容への対応です。景品表示法や、ゲーム依存症など社会的な論点への配慮が必要で、単なる市場規模の魅力だけでは決裁が通りにくい分野です。4つの判断軸のうち、法規制・社会的受容の検討を後回しにしないことが重要です。
参入前に社内で確認する3つの手順
4つの軸で方向性が見えたら、次は社内で合意形成を進める段階です。市場の魅力だけで企画を通そうとすると、決裁の場で足元をすくわれがちです。以下の3ステップで検討を進めます。
ステップ1|自社の強みと収益区分を突き合わせる
広告・協賛の実務経験、コンテンツ制作力、ECやグッズ販売の基盤など、自社が持つ既存アセットを棚卸しし、前のセクションで整理した収益区分のどこに当てはまるかを確認します。強みが明確な区分から着手すると、投資対効果を説明しやすくなります。
ステップ2|国内の先行企業事例を調べる
近畿経済産業局の調査では、地域イベントへの協賛やローカル大会の運営支援など、中小企業でも取り組みやすい参入形態が紹介されています。自社と近い規模・業種の事例を具体的に集めておくと、社内説明の説得力が増します。
ステップ3|社内の合意形成とリスク管理体制を整える
景品表示法対応やゲーム依存症への配慮など、eスポーツ特有のリスクを扱う担当窓口を先に決めておきます。担当が不明確なまま進めると、トラブル発生時の対応が遅れ、社内の推進力自体が失われかねません。
(参考)関西企業フロントラインNEXT「eスポーツ市場への中小企業の参入可能性」Vol.26 – 近畿経済産業局
Q. 中小企業でもeスポーツに参入できますか?
参入は可能です。近畿経済産業局の調査でも、地域イベントへの協賛やローカル大会の運営支援など、中小企業でも取り組みやすい参入形態が紹介されています。大規模な自社リーグ運営を目指すのではなく、既存の販促・採用活動と組み合わせた小さな規模から始めるのが現実的です。
まとめ|市場規模ではなく4つの軸で参入を判断する
世界のeスポーツ市場は推計に幅がありますが、成長分野であること自体は各社の見立てが一致しています。判断すべきは「参入するかどうか」ではなく「どの軸で自社に合っているか」です。今回のポイントを振り返ります。
- 世界市場は年20億〜26億米ドル規模とする推計が複数あり、年平均10%台後半の成長が見込まれる
- 日本市場は2024年に約161億円、前年比9.9%増と世界市場に近い成長率で拡大している
- 国内市場の7割超はイベント運営とスポンサー収入で構成され、グッズ・配信領域が伸び率で存在感を増している
- 参入判断は収益モデル適合度・地域特性・既存事業との接続点・法規制の4軸で整理する
- 参入前には自社アセットの棚卸し・先行事例の調査・社内のリスク管理体制づくりの3ステップを踏む
スポーツDX全体の動向についてはスポーツDXとは|3階層構造・事例・課題を解説、健康経営との掛け合わせを検討する場合はeスポーツは企業の健康経営に使える?導入メリットと事例もあわせてご覧ください。
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