吉田正尚のトレーニング|室伏広治に学んだメニューとバット

吉田正尚のトレーニング|室伏広治に学んだメニューとバット スポーツアスリート

吉田正尚のトレーニングの原点は、腰痛に悩んでいた2016年11月に、室伏広治氏へ手紙で指導を頼んだことです。2017年1月から始まった指導は、反り腰の改善と「ケガをしない体づくり」を目標にしたもので、約10kgのハンマーや紙風船を使う独特のメニューが含まれていました。

身長173cmと、メジャーリーガーとしては小柄な体で長打を打てるのはなぜなのか。「特別な重量を挙げているのでは?」と想像する人も多いと思いますが、公表されている情報をたどると、まず体を壊さない土台を作り、そのうえで瞬発力を磨くという順番が見えてきます。

この記事では、時期ごとのトレーニングメニュー、方法の考え方、愛用バットの仕様を、本人の発言と公式情報をもとに整理します。

吉田正尚のトレーニングの原点|腰痛から室伏広治氏に指導を頼んだ

吉田選手が本格的に体づくりを見直したきっかけは、腰の故障でした。2016年11月、腰椎椎間板症と筋疲労性腰痛に悩んでいた吉田選手は、ハンマー投げの元日本代表で、のちにスポーツ庁長官を務めた室伏広治氏に手紙を送り、指導をお願いしています。

文春オンラインの記事で室伏氏が語ったところによると、指導は2017年1月に始まり、目標は反り腰の改善と「怪我をしない身体づくり」でした。重いものを持ち上げる前に、まず故障しない動きを身につけるところから入ったわけですね。

なお室伏氏は2025年9月30日にスポーツ庁長官を退任しています。長官在任中も含め、吉田選手とのトレーニングは長年続いてきました。

(参考)室伏広治が語る吉田正尚との出会い(2023年8月9日) – 文春オンライン

(参考)室伏スポーツ庁長官の退任にあたり(2025年9月30日) – 文部科学省

Q. 吉田正尚が室伏広治に指導を受けたきっかけは何ですか?

腰の故障です。2016年11月、腰椎椎間板症と筋疲労性腰痛に悩んでいた吉田選手が手紙で指導を依頼し、2017年1月から反り腰の改善とケガをしない体づくりを目標にしたトレーニングが始まりました。

吉田正尚のトレーニングメニュー|4つの時期で見る中身

吉田選手のトレーニングメニューは、時期によって重点が変わっています。報道で時点が確認できる4つの時期を並べると、次のようになります。

吉田正尚のトレーニングの変遷(時期別)
時期 主な内容 重点
2017年1月 室伏氏の指導が始まる 反り腰の改善・故障しない体
2020年1月 約10kgのハンマー、紙風船、瞬発系 瞬発力と弱い部分の強化
2023年1月 沖縄で室伏氏の指導を受ける MLB1年目に向けた準備
2024年1月 沖縄での合同自主トレ 筋力・体幹・一本歯下駄

出典:文春オンライン(2023年8月9日)、あすリート(2020年1月25日)、THE ANSWER(2023年1月12日)、Full-Count(2024年2月28日)の報道をもとに編集部が集計

具体的な重量や回数は公表されていませんが、内容を見ると「故障予防→瞬発力→シーズンに向けた総合的な準備」という流れになっています。それぞれの時期を詳しく見ていきます。

2017年1月|反り腰を直すところから始めた

最初の段階で重視されたのは、反り腰の改善でした。腰に負担がかかる姿勢のまま筋力を上げても、また同じところを痛めてしまいます。

そこで、まずは体の使い方そのものを見直すことから始めています。トレーニングを「量」ではなく「動きの質」から組み立てた点が、吉田選手の体づくりの土台になっています。

2020年1月|ハンマーと紙風船で瞬発力を磨いた

2020年1月24日、吉田選手は東京医科歯科大学で室伏氏の4回目の指導を受けました。約10kgのハンマーを使うメニューや、紙風船を使ったトレーニング、瞬発系のメニューが行われています。

本人はこのとき、自主トレの狙いを「プラス瞬発系だったり、弱い部分を鍛えなおすこと」と説明し、「ケガせず1日も無駄にせず」シーズンを送りたいと話していました。

2023年1月|MLB挑戦の前に再び指導を受けた

レッドソックスに移籍する直前の2023年1月には、室伏氏が沖縄で吉田選手とNPBの若手選手を指導したことが、本人のInstagramで報告されています。

環境が大きく変わる前に、長年続けてきた体づくりの基礎を確認し直した形です。新しいリーグに挑むときほど、慣れた土台に立ち返るのは理にかなっているんですよね。

2024年1月|筋力・体幹・一本歯下駄を組み合わせた

2024年1月の沖縄での自主トレでは、筋力トレーニングと体幹トレーニングに加えて、一本歯下駄を使った練習が報じられています。一本歯下駄はバランス感覚と足裏の使い方を鍛える道具です。

同じ自主トレに参加した後輩選手は、重りが40kgや50kgでも正しい姿勢で行うことを学んだと語っています。重さより姿勢を優先する考え方は、2017年の指導から一貫しています。

(参考)吉田正尚が室伏広治氏と自主トレ(2020年1月25日) – あすリート(読売テレビ)

(参考)吉田正尚が室伏広治氏の指導を報告(2023年1月12日) – THE ANSWER

(参考)吉田正尚の沖縄自主トレ(2024年2月28日) – Full-Count

吉田正尚のトレーニング方法|腰を守りながら瞬発力を上げる

吉田正尚のトレーニングメニューを4要素で整理した図解
図:吉田正尚のトレーニングを支える要素(編集部作成)

吉田選手のトレーニング方法は、腰を守る動きづくりを中心に、瞬発力、筋力と体幹、道具であるバットを組み合わせたものとして整理できます。上の図は、公表されている情報を4つの要素に分けて並べたものです。

ポイントは、すべてが「打撃」という1つの目的につながっていることです。ハンマーを振るメニューは、重いものを速く動かす力を養うもので、バットを振る動作と共通する部分があります。紙風船のような軽い道具を使うメニューは、力を入れすぎずに体をコントロールする感覚を磨くものです。

本人は室伏氏との取り組みについて「自分の中の引き出しっていうのは確実に増えています」と話しています。1つの正解を覚えるのではなく、体の使い方の選択肢を増やしていく方法なんですよね。

打者の筋力づくりについては岡本和真の筋力トレーニング法、体幹からの出力については大谷翔平の体幹トレーニングも参考になります。

あわせて読みたい岡本和真のホームラン打者を支える筋力トレーニング法›

吉田正尚のバット|85cmのトップバランスを使い分けてきた

吉田選手のバットは、2021年時点で長さ85.0cm、重さ875〜885gのイエローバーチ製でした。週刊ベースボールの記事によると、プロ1年目にはアオダモ、ホワイトアッシュ、ハードメープルの3種類の木材を使い分けていたそうです。

メーカー公式サイトでは、ヴィクタスが「吉田正尚選手使用モデル」としてバーチ材・トップバランスのバットを84cmと85cmの2サイズで販売しています。トップバランスは先端側に重心があるタイプで、遠心力を使って打球を飛ばしやすい特徴があります。

同じ記事で吉田選手は、道具選びについて「自分の意見を持って、しっかり伝えて」いくことの大切さを語っています。体づくりと同じく、道具も自分の感覚を言葉にして調整してきたわけですね。

(参考)吉田正尚のバットへのこだわり(2021年6月27日) – 週刊ベースボールONLINE

(参考)吉田正尚選手使用モデル – マルチ&ヴィクタススポーツジャパン

Q. 吉田正尚のバットの長さと重さはどれくらいですか?

2021年時点の報道では、長さ85.0cm、重さ875〜885gのイエローバーチ製でした。メーカーのヴィクタスはバーチ材・トップバランスの使用モデルを84cmと85cmで販売しています。現在の試合用バットの正確な重さは公表されていません。

小柄でも長打を打てる理由|研究データで見る筋力とスイング速度

吉田選手は身長173cm、体重はNPB公式で85kg、MLB公式で192ポンド(約87kg)です。メジャーの外野手としては小柄ですが、研究データを見ると、筋力やパワーを高めることがスイング速度につながるという関係が示されています。

日本体育・スポーツ・健康学会の発表(2025年)では、野手26名を対象に、除脂肪体重やスクワットの最大挙上重量(1RM)がスイング速度と正の相関を示し、特に60%1RMという中くらいの負荷でのパワーが最も高い相関(r=0.537)を示したと報告されています。また2026年の体育学研究では、大学野球選手40名で各種目のピークパワーとスイング速度に正の相関が確認されています。

重いものを挙げるだけでなく「速く動かす力」が大事だという結果は、ハンマーや瞬発系を重視してきた吉田選手のメニューとも重なります。

なお、2026年8月16日には左ハムストリングの挫傷で10日間の負傷者リストに入っています。故障を防ぐ体づくりは、キャリアを通じて続くテーマなんですよね。食事面の工夫は吉田正尚の食事術、科学的な練習の考え方はダルビッシュ有の科学的アプローチ、体のケア全般は一流アスリートのコンディショニング完全ガイドでまとめています。

あわせて読みたい吉田正尚の食事術|メジャーで結果を出す外野手の栄養戦略›

(参考)野球選手におけるスクワットのパワー発揮特性とスイング速度の関係(第75回大会予稿集、2025年) – 日本体育・スポーツ・健康学会

(参考)大学野球選手における負荷-速度関係とスイング速度との関係性(体育学研究71巻、2026年) – 日本体育・スポーツ・健康学会

(参考)吉田正尚 個人年度別成績 – 日本野球機構(NPB)

(参考)Masataka Yoshida Stats, Profile – MLB.com

Q. 筋力トレーニングは打撃のスイング速度に関係しますか?

関係があることが研究で示されています。野手26名を対象にした2025年の発表では、除脂肪体重やスクワットの1RMがスイング速度と正の相関を示し、中くらいの負荷でのパワーが最も強い相関でした。重さだけでなく速く動かす力を高めることが大切です。

まとめ|吉田正尚のトレーニングは故障予防から始まった

この記事のポイントを振り返ります。

  • 吉田正尚のトレーニングは、2016年の腰の故障をきっかけに室伏広治氏へ指導を頼んだことが原点
  • 2017年1月から反り腰の改善とケガをしない体づくりを目標に指導が始まった
  • メニューには約10kgのハンマー、紙風船、瞬発系、一本歯下駄など独特のものが含まれる
  • バットは2021年時点で85.0cm・875〜885gのイエローバーチ製
  • 研究でも筋力やパワーとスイング速度の関係が示されており、速く動かす力を重視する方法と重なる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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