「キャンプ場・グランピング事業に参入したいが、どんな会社が実際に運営しているのか分からない」という声を、観光・地域振興・不動産関連の事業者からよく聞きます。結論から言うと、参入企業はアウトドア専業・観光宿泊業からの多角化・地域資源の受託運営・独立系専業の4つの型に分かれ、型によって必要な資本や運営体制が大きく異なります。本記事では実在するキャンプ場運営会社10社を調べ、参入モデル別に整理しました。
- なぜ今、キャンプ場運営への企業参入が相次いでいるのか
- キャンプ場運営会社10社|参入モデルの比較
- 株式会社スノーピーク|自社ブランドの世界観を宿泊体験に変換
- 株式会社ピカ|富士急グループの資本力で先駆けたグランピング事業
- 株式会社にしがき|国内最多クラスの施設数を持つグランピング専業グループ
- 株式会社R.project|遊休不動産・公設施設のリニューアル運営を手掛ける
- 株式会社Recamp|キャンプ場予約プラットフォームとの合弁で誕生した運営会社
- 株式会社千葉フィールズパートナーズ|青少年向け公共施設の管理運営
- カトープレジャーグループ|ホテル運営の実績を活かしたグランピング展開
- 株式会社ザファーム|農業体験と宿泊を組み合わせた独自コンセプト
- 株式会社パシュート|複数施設を直営するキャンプ場運営専業会社
- 株式会社キャンプマナビス|単独大規模施設に特化した運営会社
- 参入モデルは4つの類型に分かれる
- 参入時に見落としやすい3つの注意点
- 自社に合う参入モデルの選び方
- まとめ
なぜ今、キャンプ場運営への企業参入が相次いでいるのか
キャンプ場・グランピング事業は、官公庁の統計上も「市場が拡大している業種」として正式に位置づけられています。中小企業庁が運営する事業再構築補助金では、成長分野進出枠の対象業種として「キャンプ場・グランピング施設宿泊業」が指定されており、2009年から2019年にかけて市場規模が10%以上拡大し、継続的な上昇トレンドにあることが根拠資料として示されています。
この指定は一般社団法人日本グランピング協会の要望によるもので、根拠資料には観光庁「旅行・観光消費動向調査」の確報集計表(2010年〜2019年分)が使われています。国の補助制度が明示的に成長業種と認めている点は、新規参入を検討する企業にとって事業計画の説得材料にもなります。
市場の拡大を裏付けるように、キャンプ場・グランピング運営に参入する事業者の顔ぶれも多様化しています。もともとアウトドア用品メーカーだった企業が自社ブランドの体験施設を展開したり、鉄道・レジャー系の企業がグループ内資産を活用したり、地域の遊休地を専業事業者が受託運営したりと、参入経路そのものが1つのビジネスモデルとして確立されつつあります。
(参考)成長分野進出枠(通常類型)における市場拡大要件の対象となる業種・業態の一覧 – 中小企業庁 事業再構築補助金事務局
Q. キャンプ場・グランピング事業はなぜ成長産業と認定されたのですか?
中小企業庁の事業再構築補助金において、2009年〜2019年の間に市場規模が10%以上拡大し、継続的な上昇トレンドにあることが観光庁の統計データで確認されたためです。一般社団法人日本グランピング協会の要望を受けて指定業種となりました。
キャンプ場運営会社10社|参入モデルの比較
ここでは、事業内容を公式サイトで確認できた国内のキャンプ場運営会社10社を取り上げます。選定条件は、キャンプ場・グランピング施設の運営を主要事業または中核事業として公表しており、会社概要(設立・代表者・所在地等)を一次情報として確認できることです。上位4社は事業モデルと強みを詳しく解説し、残りは要点に絞って紹介します。
| 会社名 | 参入モデル | 特徴 |
|---|---|---|
| 株式会社スノーピーク | アウトドア専業からの拡張 | 自社ブランド体験施設「スノーピークランドステーション」を全国展開 |
| 株式会社ピカ | 観光・宿泊業からの多角化 | 富士急行グループが1995年から展開するグランピング先駆けブランド |
| 株式会社にしがき | 観光・宿泊業からの多角化 | 「グランドーム」等を全国4拠点以上で運営、施設数国内最多クラス |
| 株式会社R.project | 地域資源活用の受託・パートナー型 | 遊休不動産・公設キャンプ場のリニューアル運営を手掛ける |
| 株式会社Recamp | 地域資源活用の受託・パートナー型 | スペースキーとR.projectの合弁で設立、公設キャンプ場運営に特化 |
| 株式会社千葉フィールズパートナーズ | 地域資源活用の受託・パートナー型 | 青少年向けアウトドア施設・公共施設の管理運営を担う |
| カトープレジャーグループ | 観光・宿泊業からの多角化 | ホテル・レジャー施設運営の実績を活かし「GRAX」を展開 |
| 株式会社ザファーム | 独立系・専業運営型 | 2016年設立、農業体験と宿泊を組み合わせた独自コンセプト |
| 株式会社パシュート | 独立系・専業運営型 | キャンプ場運営事業を専業とし複数施設を直営 |
| 株式会社キャンプマナビス | 独立系・専業運営型 | 南房総の約7,000坪超の敷地で森・海2エリアの単独施設を運営 |
各社の公式サイト・会社概要ページを2026年9月時点で確認し作成。参入モデルの分類はHuman Soarによる独自区分。
株式会社スノーピーク|自社ブランドの世界観を宿泊体験に変換
新潟県三条市に本社を置くアウトドア用品メーカーのスノーピークは、「スノーピークランドステーション」という直営キャンプ施設を各地に展開しています。自社の高機能ギアをそのまま体験できる場として設計されており、用品販売と宿泊体験を一体化させたブランド戦略が特徴です。
アウトドア専業メーカーが体験施設に参入するモデルは、既存顧客との接点を増やしながら、店舗では伝わりにくい製品の使用感を直接体験してもらえる利点があります。一方で、キャンプ場運営そのものが専業ではないため、施設ごとの収益性は本業のギア販売との相乗効果込みで評価される傾向があります。
株式会社ピカ|富士急グループの資本力で先駆けたグランピング事業
株式会社ピカは富士急行株式会社のグループ会社で、1995年から「日本のキャンプは疲れる」という課題意識のもとアウトドアリゾート事業を始めました。現在は富士北麓地域を中心に、秩父や初島など複数エリアでグランピング施設や飲食・温浴施設を運営しています。
親会社が持つ観光地の土地・集客インフラを活用できる点が、この参入モデルの強みです。単独のキャンプ場運営会社にはない、周辺の遊園地・温浴施設との回遊導線を最初から組み込める点が差別化要素になっています。
株式会社にしがき|国内最多クラスの施設数を持つグランピング専業グループ
京都府京丹後市に本社を置く株式会社にしがきは、昭和25年創業のリゾート・観光企業です。「グランドーム」ブランドで京都・滋賀・千葉・山梨など全国十数か所にグランピング施設を展開しており、運営施設数は国内トップクラスとされています。
単一ブランドを複数拠点に横展開する戦略は、施設ごとの企画・運営ノウハウを標準化しやすく、新規開業のスピードを上げられる利点があります。一方で拠点が全国に分散するため、各地域の集客・スタッフ確保を同時並行で管理する運営体制が求められます。
株式会社R.project|遊休不動産・公設施設のリニューアル運営を手掛ける
株式会社R.projectは、ホテル・旅館向けシステム開発を手がけてきた株式会社スペースキーと資本提携関係にあり、キャンプ場検索サイト「なっぷ」の運営基盤を持つグループの一員として、公設キャンプ場や遊休不動産のリニューアル運営を担っています。
自治体や地域の遊休施設を再生する受託型のモデルは、初期投資を自社だけで抱え込まずに済む場合がある一方、契約期間や指定管理の更新条件など、行政との調整業務が発生する点が独立系の運営会社とは異なります。
株式会社Recamp|キャンプ場予約プラットフォームとの合弁で誕生した運営会社
株式会社Recampは、株式会社スペースキーと株式会社R.projectの合弁により2019年に設立された会社で、公設・民間のキャンプ場運営に特化しています。予約サイト「なっぷ」を持つグループの集客力を活かせる点が特徴です。
株式会社千葉フィールズパートナーズ|青少年向け公共施設の管理運営
株式会社千葉フィールズパートナーズは、千葉市内の青少年向けアウトドア施設や公共施設の管理運営、宿泊施設の運営、野外教育支援を行う企業です。教育・地域振興の色合いが強い受託運営モデルの一例といえます。
カトープレジャーグループ|ホテル運営の実績を活かしたグランピング展開
カトープレジャーグループ(KPG)はホテル・レジャー施設運営を軸とする企業グループで、グランピング施設「GRAX」の企画・運営支援を手がけています。宿泊業のオペレーションノウハウをグランピングに転用する多角化モデルです。
株式会社ザファーム|農業体験と宿泊を組み合わせた独自コンセプト
2016年5月設立の株式会社ザファームは、「THE FARM」ブランドで農業体験と宿泊を掛け合わせた施設を運営しています。他の専業運営会社と異なり、農業という別軸のコンテンツを核に据えている点が独自性です。
株式会社パシュート|複数施設を直営するキャンプ場運営専業会社
株式会社パシュートはキャンプ場運営事業を専業とし、複数のキャンプフィールドを直営で展開しています。特定の親会社グループに属さず、キャンプ場運営そのものを本業とする独立系モデルの代表例です。
株式会社キャンプマナビス|単独大規模施設に特化した運営会社
株式会社キャンプマナビスは、千葉県館山市の南房総エリアで約7,000坪超の敷地を持つキャンプ場「キャンプマナビス」を運営しています。複数拠点への展開ではなく、1施設の規模と体験価値を高める方向に資源を集中させているのが特徴です。
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参入モデルは4つの類型に分かれる
10社の事業内容を整理すると、キャンプ場運営への参入経路は大きく4つの型に分類できます。どの型を選ぶかによって、必要な初期資本・スピード・運営体制が変わるため、自社の強みと照らし合わせて検討する材料になります。
①アウトドア専業からの拡張型|製品体験を宿泊事業に変える
自社ブランドの認知や顧客基盤を既に持つ企業が採用しやすい型です。集客コストを抑えられる一方、キャンプ場運営に必要な施設管理・接客ノウハウは新たに構築する必要があります。
②観光・宿泊業からの多角化型|既存インフラを転用する
ホテル・観光施設の運営実績がある企業が、周辺の遊休地や関連ブランドとしてグランピング事業を追加する型です。集客導線・スタッフ体制を既存事業と共有できるため、立ち上げスピードが速い傾向があります。
③地域資源活用の受託・パートナー型|行政・地域と組む
自治体の公設キャンプ場や遊休不動産を、指定管理や業務委託の形で運営する型です。初期投資の負担が軽くなる場合がある一方、契約更新や地域との調整業務が継続的に発生します。
④独立系・専業運営型|運営そのものを本業にする
特定の親会社グループに依存せず、キャンプ場運営を単独事業として磨き込む型です。意思決定が速く独自コンセプトを追求しやすい半面、集客・資金調達は自社の努力に依存する部分が大きくなります。
Q. キャンプ場運営に参入する場合、どの型から始めるのが現実的ですか?
既存の観光・宿泊事業や自社ブランドを持つ企業は、その資産を転用できる②や①の型が立ち上げやすい傾向があります。土地・資本はあるが運営ノウハウが無い場合は、③の受託・パートナー型で専業事業者と組む選択肢も現実的です。
参入時に見落としやすい3つの注意点
市場が成長業種として認定されているとはいえ、実際の運営では季節変動や稼働率の管理など、事前に見落とされやすい論点があります。ここでは3つに絞って整理します。
①稼働率は営業日数ベースと年間ベースで大きく異なる
キャンプ場は冬季に休業する施設が多く、年間を通じた稼働率は営業日数ベースの数値より低く出ます。事業計画を立てる際は、どちらの基準で稼働率を見ているのかを必ず確認する必要があります。
②グランピングは初期投資が重く、資金回収期間が長い
テント泊のキャンプ場と異なり、グランピング施設はコテージやドーム型構造物への設備投資が必要です。中小企業庁の成長分野認定・事業再構築補助金のような支援制度の活用も含め、資金計画を早期に検討することが求められます。
③繁忙期・閑散期でスタッフ体制の柔軟性が必要になる
週末・連休に利用が集中するため、平日と週末で必要人員が大きく変動します。地域雇用と連携した柔軟なシフト体制を組めるかどうかが、受託・パートナー型の運営品質を左右します。
自社に合う参入モデルの選び方
ここまで見た4つの型は、優劣ではなく「自社が既に持っている資産」によって向き不向きが決まります。自社ブランドの体験価値を伝えたいならアウトドア専業型、既存の観光インフラを活かしたいなら多角化型、初期投資を抑えたいなら受託・パートナー型、独自コンセプトを追求したいなら専業運営型が候補になります。
いずれの型でも、10社の事例に共通していたのは「立地の魅力」だけに頼らず、体験設計・ブランド・運営体制のいずれかで独自性を持たせている点です。市場が成長しているからこそ、模倣だけの参入は競争が激化した際に埋没しやすいことは念頭に置く必要があります。
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Q. キャンプ場・グランピング事業への参入で使える補助金はありますか?
中小企業庁の事業再構築補助金では、キャンプ場・グランピング施設宿泊業が成長分野進出枠の対象業種に指定されています。新規事業として参入する中小企業・中堅企業は、この枠組みでの申請を検討する余地があります。
まとめ
キャンプ場運営会社10社の事例から、参入モデルは大きく4つに分かれることが分かりました。
- キャンプ場・グランピング事業は中小企業庁の成長分野進出枠に指定された、統計的に裏付けのある成長市場である
- 参入モデルは「アウトドア専業からの拡張」「観光・宿泊業からの多角化」「地域資源活用の受託・パートナー型」「独立系・専業運営型」の4つに分類できる
- 自社に合う型は、保有するブランド・インフラ・資本のいずれを活かすかで決まる
- 稼働率の基準・初期投資の重さ・繁忙期の人員体制は、事前に見落とされやすい論点である
- 模倣だけの参入では、市場拡大に伴う競争激化で埋没するリスクがある
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