スポーツ映像制作会社3社の特徴|球団担当者が知る選び方

スポーツ映像制作会社の比較|中継・アーカイブ・ドキュメンタリーの特徴 スポーツビジネス

試合終了のホイッスルが鳴った数分後には、ハイライト映像がすでにファンのタイムラインに流れている。オリンピックの開会式では、何十台ものカメラが捉えた映像が一瞬で世界中に配信される。こうした「スポーツを映像で届ける」仕事は、放送局だけで完結しているわけではありません。中継の技術基盤を支える会社、番組そのものを制作する会社、選手個人にカメラを向けてドキュメンタリーを紡ぐ会社まで、役割の異なる映像制作会社がそれぞれの持ち場でスポーツコンテンツを支えています。

この記事では、スポーツの中継・ハイライト・ドキュメンタリー制作を担う映像制作会社の実像を、各社の公式サイトで確認できる一次情報をもとに紹介します。あわせて、放送コンテンツの海外輸出データやJリーグの放映権契約の推移も見ながら、この業界がどう動いているかを解説します。

SELF CHECK

その疲れは、
どこから来ているのか

12の質問で、いま自分に効いている負荷を「量とペース/裁量/人間関係/回復」の4つに切り分けます。約2分・登録不要、回答は保存されません。

セルフチェックをする ▶

結果はLINEで受け取れます。結果コードを送ると、あなたの型に合わせた進め方が届きます。

  1. スポーツ映像制作という仕事|中継からドキュメンタリーまで守備範囲は幅広い
  2. 放送コンテンツ海外輸出額1,147億円のうちスポーツはわずか0.74億円という実態
  3. Jリーグの放映権契約はなぜ11年で約300億円伸びたのか|3度の契約から見える変化
    1. 2017年契約|DAZNとの独占契約でスポーツ配信市場に参入
    2. 2020年見直し|新型コロナウイルスによる試合中断を受けた契約調整
    3. 2023年新契約|地上波露出を増やしファン層拡大を目指す方向転換
  4. スポーツ映像制作会社3社の特徴|中継からアーカイブまで守備範囲が違う理由
    1. 株式会社フォトロン|Jリーグと提携する映像アーカイブとクラウド伝送の会社
    2. 株式会社共同テレビジョン|オリンピック中継を手がける1958年創業の制作会社
    3. デキサホールディングス株式会社|アスリート個人に密着するドキュメンタリー専門の小規模プロダクション
  5. 映像制作会社が担う3つの業務レイヤー|企画からアーカイブまでの構造
    1. ①企画・演出レイヤー|試合前後の演出と選手個人のストーリー設計
    2. ②撮影・伝送レイヤー|会場でのカメラ撮影とライブ配信の技術基盤
    3. ③編集・アーカイブレイヤー|二次利用を見据えた映像の保管と提供
  6. スポーツ映像制作会社に発注・提携するときに確認すべき3つのポイント
    1. ①過去の実績が自社の競技・大会規模と合っているか
    2. ②映像の権利処理とアーカイブ体制が整っているか
    3. ③リーグ・球団との継続的な協業実績があるか
  7. よくある質問
    1. スポーツ映像制作会社と一般的な映像制作会社の違いは何ですか?
    2. 中継技術に強い会社と企画・演出に強い会社はどちらを選ぶべきですか?
    3. 小規模な大会やチームでも映像制作会社に依頼できますか?
  8. まとめ

スポーツ映像制作という仕事|中継からドキュメンタリーまで守備範囲は幅広い

「スポーツ映像制作会社」とひとことで言っても、実際に手がける業務は会社によって大きく異なります。試合を生中継するための伝送・収録技術を担う会社もあれば、オリンピックのような大型大会で放送局と組んで番組そのものを作る会社もあります。さらに、選手個人にフォーカスしたドキュメンタリーや、フォームをバイオメカニクスの視点で解析する映像を専門にする会社も存在します。

発注する側から見ると、この違いを理解しないまま「映像制作会社」とひとくくりに探してしまうと、求めている専門性を持たない会社に依頼してミスマッチが起きることがあります。次のセクションでは、この業界の市場規模を国のデータから確認したうえで、実際にどんな会社があるのかを見ていきます。

放送コンテンツ海外輸出額1,147億円のうちスポーツはわずか0.74億円という実態

総務省は毎年、日本の放送コンテンツがどれだけ海外に輸出されているかを調査しています。最新の令和8年4月公表資料によると、2024年度の放送コンテンツ海外輸出額は約1,147.3億円(前年度比311.5億円増)でした。ジャンル別の内訳を見ると、最も大きいのは「アニメ」で951.8億円、次いで「ドラマ」が105.6億円と続きます。

一方で「スポーツ」ジャンルの海外輸出額は0.74億円(74百万円)にとどまっています。これは輸出額全体(1,147.3億円)のわずか0.06%にあたる金額です(74百万円 ÷ 114,730百万円で算出)。アニメやドラマのようにフォーマットごと海外に販売しやすいジャンルと比べ、スポーツ映像は権利関係が複雑で、リーグや大会の主催者が持つ放映権と結びついているぶん、単純な番組販売という形での海外展開が進みにくい構造があると考えられます。

裏を返せば、スポーツ映像の価値は「海外に番組を売る」ことよりも、国内のファンや自国リーグの放映権契約の中で発揮されている割合が大きいということです。次のセクションでは、実際にJリーグの放映権契約がどう推移してきたかを見ていきます。

(参考)放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2024年度) – 総務省 情報流通行政局

Jリーグの放映権契約はなぜ11年で約300億円伸びたのか|3度の契約から見える変化

スポーツの映像に対する評価額を測るうえで分かりやすい指標のひとつが、リーグと放送・配信事業者との放映権契約です。Jリーグは2017年以降、DAZNとの契約を3度見直しており、その推移から映像コンテンツとしてのスポーツの価値がどう変化してきたかが読み取れます。

契約時期 契約期間 契約金額
2017年契約 2017〜2026シーズン(10年間) 約2,100億円
2020年見直し 2017〜2028シーズン(12年間) 約2,239億円
2023年新契約 2023〜2033シーズン(11年間) 約2,395億円

Jリーグ公式サイトの発表資料をもとに作成

2017年契約|DAZNとの独占契約でスポーツ配信市場に参入

2017年、JリーグはDAZNと10年間・約2,100億円という放映権契約を締結しました。これはJ1・J2・J3の全試合をライブストリーミング配信するという、当時としては大規模な契約でした。この契約をきっかけに、DAZNは日本国内でのスポーツ配信サービスとしての基盤を築いていくことになります。

2020年見直し|新型コロナウイルスによる試合中断を受けた契約調整

2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大でJリーグの試合が一時中断したことを受け、契約期間を12年間に延長し、総額を約2,239億円に見直しました。試合数が減った年があっても、両者が長期的なパートナーシップを維持する形で調整された点が特徴です。

2023年新契約|地上波露出を増やしファン層拡大を目指す方向転換

2023年には2033年までの11年契約・約2,395億円という契約に更新されました。今回の変更点は、DAZNでの独占配信を強めるのではなく、地上波でのテレビ中継を増やして無料の接点を拡大し、そこからDAZN加入者の増加につなげるという方向転換です。単に契約金額を積み上げるのではなく、露出チャネルの設計そのものを見直している点が、成熟してきたスポーツ配信市場の特徴といえます。

あわせて読みたいプロリーグ運営会社の仕組みと収益構造

(参考)JリーグとDAZNの新たな放映権契約について – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

スポーツ映像制作会社3社の特徴|中継からアーカイブまで守備範囲が違う理由

実際にスポーツ映像を手がける会社を、公式サイトで確認できる情報をもとに3社紹介します。同じ「スポーツ映像制作」でも、得意とする領域が異なることが分かります。

企業名 主な事業内容 特徴
株式会社フォトロン 映像アーカイブ、中継・配信コンテンツ制作、映像制作ソリューション Jリーグのサポーティングカンパニー。クラウド活用の伝送技術に強み
株式会社共同テレビジョン スポーツ映像制作、番組企画、中継・編集 1958年設立の老舗。オリンピック・ラグビーW杯の国際映像制作実績
デキサホールディングス株式会社 スポーツドキュメンタリー、映像解析、CG制作 アスリート個人に密着したドキュメンタリー演出が強み

各社公式サイトの情報をもとに作成(2026年8月確認)

株式会社フォトロン|Jリーグと提携する映像アーカイブとクラウド伝送の会社

株式会社フォトロンは、映像・画像計測機器を手がけるIMAGICA GROUPの企業で、スポーツ分野では映像アーカイブ事業を中心に、中継・配信コンテンツ制作、クラウドを活用した映像制作環境の構築までをワンストップで提供しています。同社は2026年1月、Jリーグとサポーティングカンパニー契約を締結したと公式発表しており、Jリーグ公式サイトのオフィシャルパートナー一覧にも名前が掲載されています。

試合映像の収録・保管だけでなく、権利保有者(ライツホルダー)への映像分岐・提供まで担う点が特徴で、単発の撮影よりも継続的な映像インフラの運用に強みを持つ会社だといえます。

(参考)スポーツ映像伝送・制作 プロダクションサービス – 株式会社フォトロン

株式会社共同テレビジョン|オリンピック中継を手がける1958年創業の制作会社

株式会社共同テレビジョンは1958年7月28日設立、資本金1億5,000万円、従業員150名(2026年3月末現在)の映像制作会社です。フジ・メディア・ホールディングスをはじめとする在阪・在名の放送局が主要株主に名を連ねる、放送業界と関係の深い会社です。

社内に「スポーツ制作室」を設置しており、東京2020オリンピック・パラリンピック、北京2022冬季オリンピック、ラグビーワールドカップ、Jリーグ公式映像制作など、国際大会クラスの中継・編集実績を持ちます。近年は試合そのものの中継だけでなく、試合前後に演出を加える「スポーツプレゼンテーション」と呼ばれる企画・制作にも力を入れています。

設立1958年7月28日
資本金1億5,000万円
従業員数150名(2026年3月末)

あわせて読みたいスポーツ放映権ビジネスの仕組みと収益構造

(参考)会社概要 – 株式会社共同テレビジョン

デキサホールディングス株式会社|アスリート個人に密着するドキュメンタリー専門の小規模プロダクション

デキサホールディングス株式会社は2012年8月に法人化された東京都大田区の映像制作会社です。前身の有限会社シェイクの時代から数えると20年以上の実績があり、代表取締役の奥山正次氏が自ら演出を手がけることもある小規模プロダクションです。

公式サイトでは、大林素子氏、井上康生氏、伊東浩司氏、山下泰裕氏といった著名なアスリートの映像を手がけてきたことを紹介しています。テレビ番組のドキュメンタリー制作出身のスタッフが、選手の努力や人となりを掘り下げて描く演出力に加え、医療映像で培ったバイオメカニクスの視点からフォームを解析する映像制作も強みとしています。大手2社とは異なり、選手個人にカメラを向けた「人物のドラマ」を描くことに特化している点が特徴です。

(参考)スポーツ映像制作 – 映像制作会社デキサ(デキサホールディングス株式会社)

映像制作会社が担う3つの業務レイヤー|企画からアーカイブまでの構造

ここまで紹介した3社を見比べると、スポーツ映像制作の仕事は大きく3つの業務レイヤーに分解できることが分かります。どの会社がどのレイヤーを得意としているかを整理すると、発注先を選ぶときの判断軸になります。

1企画・演出レイヤー:試合前後の演出企画や、選手個人に密着するドキュメンタリーのストーリー設計を行う工程。共同テレビジョンの「スポーツプレゼンテーション」やデキサのドキュメンタリー演出がここにあたる
2撮影・伝送レイヤー:試合会場でのカメラ撮影、IP伝送やクラウドを使ったライブ配信の技術基盤を構築する工程。フォトロンのクラウド活用サービスが代表例
3編集・アーカイブレイヤー:撮影した映像を番組や二次利用コンテンツに編集し、将来の再利用に備えて保管する工程。フォトロンの映像アーカイブ事業がこの領域を担っている

①企画・演出レイヤー|試合前後の演出と選手個人のストーリー設計

試合前後の演出企画や、選手個人に密着するドキュメンタリーのストーリー設計を行う工程です。共同テレビジョンが手がける「スポーツプレゼンテーション」や、デキサホールディングスのドキュメンタリー演出がこのレイヤーにあたります。競技のルールや選手の背景を理解したうえで、どんな物語として映像にまとめるかを設計する、企画段階の仕事です。

②撮影・伝送レイヤー|会場でのカメラ撮影とライブ配信の技術基盤

試合会場でのカメラ撮影、IP伝送やクラウドを使ったライブ配信の技術基盤を構築する工程です。フォトロンが提供するクラウド活用の映像伝送サービスが代表例で、複数アングルの映像を安定して放送局・配信プラットフォームに届けるための技術力が問われます。会場という制約の多い環境で、機材トラブルなく中継を成立させる実務力がこのレイヤーの価値です。

③編集・アーカイブレイヤー|二次利用を見据えた映像の保管と提供

撮影した映像を番組や二次利用コンテンツに編集し、将来の再利用に備えて保管する工程です。フォトロンの映像アーカイブ事業がこの領域を担っており、試合映像の収録・保管だけでなく、権利保有者への映像分岐・提供までを含みます。単発の編集にとどまらず、数年単位で映像資産をどう管理するかという視点が求められます。

この3つのレイヤーは独立しているわけではなく、実際には複数のレイヤーを1社が担うケースも多くあります。共同テレビジョンのように企画から中継・編集まで一貫して対応する会社もあれば、フォトロンのように伝送・アーカイブという技術基盤に特化する会社もあります。発注する側は、自社が求めているのがどのレイヤーの専門性かを整理してから会社を探すと、ミスマッチを避けやすくなります。

スポーツ映像制作会社に発注・提携するときに確認すべき3つのポイント

実際に映像制作会社への発注や業務提携を検討する企業・球団担当者向けに、公式サイトの情報から読み取れる確認ポイントを整理します。

①過去の実績が自社の競技・大会規模と合っているか

共同テレビジョンのようにオリンピック・ラグビーワールドカップ級の大型大会実績を持つ会社と、デキサのように個人アスリートのドキュメンタリーを得意とする会社とでは、想定している案件の規模がまったく異なります。公式サイトの実績紹介ページを見て、自社が依頼したい規模・競技の実績があるかを必ず確認しましょう。

②映像の権利処理とアーカイブ体制が整っているか

試合映像は放映権・二次利用権など複数の権利が絡むため、撮影して終わりではなく「その映像を誰がどう保管し、誰に分岐提供するか」という体制が重要になります。フォトロンのように映像アーカイブ事業を明示している会社であれば、将来的な二次利用(過去の名場面を使ったプロモーション映像の制作など)を見据えた相談がしやすくなります。

③リーグ・球団との継続的な協業実績があるか

単発の撮影ではなく、シーズンを通じた中継・配信を任せる場合は、リーグや球団と継続的に協業してきた実績があるかが判断材料になります。フォトロンのJリーグサポーティングカンパニー契約のように、公式パートナーとして名前が公開されているかどうかは、信頼度を確認する一つの目安です。

あわせて読みたいプロスポーツチームの経営と収益化の仕組み

よくある質問

スポーツ映像制作会社と一般的な映像制作会社の違いは何ですか?

競技のルールや試合の流れを理解したうえで、決定的な瞬間を逃さず撮影・編集するノウハウが必要な点が大きな違いです。共同テレビジョンやデキサのように、スポーツ専門のチームや制作室を社内に持つ会社は、こうした競技理解を前提に映像を設計できる点が強みです。

中継技術に強い会社と企画・演出に強い会社はどちらを選ぶべきですか?

依頼したい内容によって異なります。試合をそのまま届けたい場合は伝送・アーカイブに強い会社、選手個人のストーリーを伝えたい場合は企画・演出に強い会社が適しています。本記事で紹介した3つの業務レイヤーを参考に、自社が求める工程を先に整理してから会社を探すと選びやすくなります。

小規模な大会やチームでも映像制作会社に依頼できますか?

会社によって対応可能な規模は異なりますが、デキサホールディングスのように小規模プロダクションとして個々の案件に丁寧に対応する会社もあります。大手だけでなく、実績ページで自社の競技・規模に近い事例があるかを確認したうえで問い合わせることをおすすめします。

まとめ

  • スポーツ映像制作は「企画・演出」「撮影・伝送」「編集・アーカイブ」という3つの業務レイヤーに分解でき、会社ごとに得意領域が異なる
  • 放送コンテンツ全体の海外輸出額(1,147.3億円)のうち、スポーツジャンルは0.06%にとどまり、スポーツ映像の価値は海外販売よりも国内の放映権契約の中で発揮されている
  • Jリーグの放映権契約は2017年の約2,100億円から2023年の約2,395億円へと拡大し、契約の中身も「独占配信」から「地上波との併用」へと戦略が変化してきた
  • フォトロン(伝送・アーカイブ)、共同テレビジョン(大型大会中継)、デキサホールディングス(個人ドキュメンタリー)と、3社はそれぞれ異なる強みを持つ
  • 発注時は、実績の規模感・権利処理体制・継続的な協業実績の3点を公式サイトで確認するとミスマッチを避けやすい

ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ

お問い合わせはこちら →
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

Human Soar では、スポーツビジネス/ウェルビーイング/研修/教育の4領域を中心に、公的統計や一次データにもとづく記事と調査レポートを執筆・監修しています(記事935本、資料7本/2026年8月時点)。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました