「フィットネス事業に参入したいが、スイミングスクールはどんな会社が運営しているのか」という相談を、健康経営・レジャー関連の事業者から受けることがあります。結論から言うと、運営会社は総合フィットネス内包型・異業種資本の多角化型・専業運営型の3つに分かれ、母体となる業種によって収益構造や参入障壁が大きく異なります。本記事では実在する運営会社10社を調べ、運営モデル別に整理しました。
- スイミングスクール業界の市場規模はどう推移しているか
- スイミングスクール運営会社10社|運営モデルの比較
- セントラルスポーツ株式会社|オリンピアンを輩出してきた業界最大手
- コナミスポーツクラブ|公共施設運営受託で全国展開する複合フィットネス
- 株式会社ルネサンス|M&Aで店舗網を拡大する複合フィットネス大手
- イトマンスイミングスクール|水泳指導を専業としたビジネスモデルの先駆け
- スポーツクラブNAS株式会社|大和ハウスグループの不動産活用モデル
- 株式会社東祥(ホリデイスポーツクラブ)|ロードサイド型で全国展開する上場企業
- 住友不動産エスフォルタ株式会社|都心オフィスビルの高級キッズスイム業態
- 株式会社セサミ(セサミスポーツクラブ)|太平洋セメントグループの地域密着運営
- 株式会社クリスタルスポーツクラブ|不動産会社トーセイ傘下のスポーツ施設運営
- 株式会社エヌ・エス・アイ(NSI)|大阪・兵庫を拠点とする専業運営会社
- 運営モデルは3つの類型に分かれる
- 参入・提携時に見落としやすい3つの注意点
- 自社に合う関わり方の選び方
- まとめ
スイミングスクール業界の市場規模はどう推移しているか
経済産業省は「特定サービス産業動態統計調査」でフィットネスクラブ業を継続的に調査しており、この統計は中小企業庁の事業再構築補助金においても「成長分野」の市場拡大要件を示す根拠資料の一つとして指定されています。スイミングスクールは単独の統計区分ではなく、フィットネスクラブ・スポーツクラブ業の一部として運営されているケースが大半です。
スイミングスクールの運営主体を見ると、体操・水泳・サッカーなど複数種目を展開する総合フィットネス企業の一事業として組み込まれている場合と、水泳指導そのものを専業とする企業が運営する場合の2パターンがあります。前者は集客基盤や複合施設の設備を活かせる一方、後者は指導ノウハウの専門性で差別化する傾向があります。
Q. スイミングスクールの市場規模はどこで確認できますか?
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」がフィットネスクラブ業を継続調査しています。スイミングスクール単独の統計区分はなく、多くは総合フィットネスクラブ業の一部として集計されています。
スイミングスクール運営会社10社|運営モデルの比較
ここでは、スイミングスクール事業を主要事業または中核事業として公式サイトで確認できる国内企業10社を取り上げます。選定条件は、スイミングスクールの直営・運営実績が一次情報として確認できることです。上位4社は事業モデルを詳しく解説し、残りは要点に絞って紹介します。
| 会社名 | 運営モデル | 特徴 |
|---|---|---|
| セントラルスポーツ株式会社 | 総合フィットネス内包型 | 1970年設立・東証プライム上場、全国250店舗規模 |
| コナミスポーツクラブ(コナミグループ株式会社) | 総合フィットネス内包型 | 公共施設運営受託や学校支援事業も展開 |
| 株式会社ルネサンス | 総合フィットネス内包型 | 1982年設立・東証プライム上場、スポーツオアシスを吸収合併 |
| イトマンスイミングスクール(株式会社イトマン) | 専業運営型 | 1972年創業、水泳指導専業のビジネスモデルを確立 |
| スポーツクラブNAS株式会社 | 異業種資本の多角化型 | 大和ハウス工業グループ、全国56施設を運営 |
| 株式会社東祥(ホリデイスポーツクラブ) | 総合フィットネス内包型 | 東証スタンダード上場、ロードサイド型95店舗で「メイサンスイミングクラブ」を運営 |
| 住友不動産エスフォルタ株式会社 | 異業種資本の多角化型 | 住友不動産グループ、都心オフィスビル内でキッズ向け高級業態を展開 |
| 株式会社セサミ(セサミスポーツクラブ) | 異業種資本の多角化型 | 太平洋セメントグループ、首都圏4店舗の地域密着運営 |
| 株式会社クリスタルスポーツクラブ | 異業種資本の多角化型 | 不動産会社トーセイが2014年に株式取得、2店舗を運営 |
| 株式会社エヌ・エス・アイ(NSI) | 専業運営型 | 大阪・兵庫を拠点にスイミングスクール運営を専業とする |
各社の公式サイト・IR情報を2026年9月時点で確認し作成。運営モデルの分類はHuman Soarによる独自区分。
セントラルスポーツ株式会社|オリンピアンを輩出してきた業界最大手
1970年設立、東証プライム上場のセントラルスポーツは、1969年の東京オリンピック水泳・体操代表選手が創業した経緯を持ちます。全国250店舗規模を展開し、これまでに11大会延べ40名以上のオリンピアン・パラリンピアンを輩出してきました。
総合フィットネスクラブの一事業としてスイミングスクールを運営するモデルは、プール・ジム・スタジオを併設することで会員の生涯利用単価を高めやすい利点があります。一方、施設の建設・維持費が重く、出店には相応の投資体力が必要です。
コナミスポーツクラブ|公共施設運営受託で全国展開する複合フィットネス
コナミグループ株式会社が展開するコナミスポーツクラブは、フィットネスクラブ運営に加え、自治体からの公共スポーツ施設の運営受託や学校の授業・部活動支援まで手掛けています。子ども向けスクールでは「運動塾デジタルノート」というICTを活用した指導可視化サービスを2022年から導入しています。
公共施設の運営受託を組み合わせるモデルは、自社出店だけに頼らず地域のインフラを活用して展開できる点が強みです。指導ノウハウをテクノロジーで可視化する取り組みは、他の専業スクールとの差別化要素になっています。
株式会社ルネサンス|M&Aで店舗網を拡大する複合フィットネス大手
1982年設立、東証プライム上場のルネサンスは、2024年3月に東急不動産から株式会社スポーツオアシスの全株式を譲り受け、2025年4月には東急スポーツオアシスを吸収合併しました。ジム・スタジオ・プール・テニスコートなどを備えた複合型施設を全国展開しています。
同業他社の買収によって店舗網を拡大するモデルは、自社出店より短期間でエリアカバレッジを広げられる利点があります。一方で、統合後のブランド・オペレーションの一本化には時間とコストがかかります。
イトマンスイミングスクール|水泳指導を専業としたビジネスモデルの先駆け
1972年創業のイトマンスイミングスクールは、水泳指導をビジネスとして確立させた先駆け企業とされています。オリコン顧客満足度調査では小学生部門で総合1位を獲得するなど、指導品質そのものをブランドの核に据えています。
専業運営型は、複合フィットネスのような多角的な収益源を持たない分、水泳指導の専門性・実績が集客の生命線になります。総合フィットネス系列と異なり、設備投資を水泳関連に集中できる点は強みです。
スポーツクラブNAS株式会社|大和ハウスグループの不動産活用モデル
スポーツクラブNAS株式会社は大和ハウス工業グループの企業で、全国56施設でスポーツクラブを展開し、同ブランドで水泳・テニス・ゴルフなど各種スクールを運営しています。不動産開発を本業とするグループの遊休地・複合施設活用の一環として位置づけられます。
株式会社東祥(ホリデイスポーツクラブ)|ロードサイド型で全国展開する上場企業
東証スタンダード上場の株式会社東祥は、1996年の三河安城第1号店以来、自動車利用者を主な対象としたロードサイド型店舗で全国95店舗を展開しています。スイミングスクール「メイサンスイミングクラブ」を各店舗で運営しています。
住友不動産エスフォルタ株式会社|都心オフィスビルの高級キッズスイム業態
1986年設立の住友不動産エスフォルタは、住友不動産グループのフィットネス事業会社です。2024年には東京都千代田区のオフィスビル内に、未就学児から小学生を対象とした高級業態のキッズ専用スイミングスクール「KIDS SWIM esforta prime」を開業しました。
株式会社セサミ(セサミスポーツクラブ)|太平洋セメントグループの地域密着運営
株式会社セサミは太平洋セメントグループの企業で、神奈川県大船・東京都三鷹と東久留米の首都圏4店舗で総合スポーツクラブ・スイミングスクールを運営しています。大手チェーンほど店舗数は多くありませんが、地域に根差した運営を続けています。
株式会社クリスタルスポーツクラブ|不動産会社トーセイ傘下のスポーツ施設運営
株式会社クリスタルスポーツクラブは、不動産事業を展開するトーセイ株式会社が2014年に全株式を取得した企業です。世田谷店・八柱店の2店舗を運営しており、不動産会社によるスポーツ施設運営会社の買収事例の一つです。
株式会社エヌ・エス・アイ(NSI)|大阪・兵庫を拠点とする専業運営会社
株式会社エヌ・エス・アイ(NSI)は、大阪・兵庫エリアでスイミングスクールとスポーツクラブの運営を専業とする企業です。有限会社として創立された後に株式会社化しており、地域密着で直営施設を展開しています。
あわせて読みたい日本スポーツ業界の8つの課題|15兆円市場とDX動向›
運営モデルは3つの類型に分かれる
10社の事業内容を整理すると、スイミングスクールの運営主体は大きく3つの型に分類できます。母体となる業種によって、参入障壁や収益構造が異なります。
①総合フィットネス内包型|複合施設で会員単価を上げる
ジム・スタジオ・プールなどを併設し、スイミングスクールを複合施設の一機能として提供する型です。会員が複数サービスを利用することで生涯利用単価を高めやすい一方、店舗ごとの初期投資・維持費が重くなります。
②異業種資本の多角化型|不動産・素材メーカーが遊休資産を活用する
不動産会社やセメントメーカーなど、本業が異なる企業がスポーツ施設運営会社に資本参加・買収する型です。自社の不動産・遊休資産を活用しながら、フィットネス市場の成長を取り込む狙いがあります。
③専業運営型|指導ノウハウの専門性で差別化する
水泳指導そのものを本業とし、他のスポーツ種目を持たない型です。複合施設のような多角的な収益源がない分、指導品質・実績を前面に出したブランディングが集客の生命線になります。
Q. スイミングスクール事業に新規参入する場合、どの型が現実的ですか?
既に不動産や複合施設を保有する企業は、遊休資産を活用できる②や①の型が着手しやすい傾向があります。指導者・コーチ人材に強みがある場合は、③の専業運営型でブランドを確立する選択肢も現実的です。
参入・提携時に見落としやすい3つの注意点
スイミングスクール事業に関わる際、店舗の見た目だけでは分かりにくい実務上の論点があります。ここでは3つに絞って整理します。
①プール設備は建設・維持コストが重い
ジムやスタジオと異なり、プールは水質管理・温水設備・法定点検などの維持コストが継続的に発生します。総合フィットネス内包型で複数機能と併設することで、固定費を分散する狙いがあります。
②指導者(コーチ)の確保・育成が事業の生命線になる
専業運営型・総合フィットネス型を問わず、水泳指導の質は指導者の技量に大きく依存します。イトマンスイミングスクールやコナミスポーツクラブのように、指導の可視化・体系化に投資する企業が増えています。
③異業種資本の参入は既存店舗の買収から始まるケースが多い
住友不動産・トーセイ・太平洋セメントグループなど、異業種企業がゼロから新設するより既存の運営会社を買収・資本参加する形で参入する事例が目立ちます。ノウハウを持つ運営会社との提携・買収が、新規参入のハードルを下げる現実的な手段になっています。
自社に合う関わり方の選び方
ここまで見た3つの型は、自社が既に持っている資産によって向き不向きが決まります。複合施設やジムを既に運営している企業は総合フィットネス内包型、不動産・遊休資産を活用したい企業は多角化型(買収・資本参加)、指導ノウハウで差別化したい企業は専業運営型が候補になります。
いずれの型でも、10社の事例に共通していたのは、プールという重い設備投資を前提に、複合施設化・異業種資本の活用・専門性のいずれかで収益構造を成立させている点です。単純な新設開業だけでなく、既存運営会社との提携・買収という選択肢も検討材料になります。
あわせて読みたいキャンプ場運営会社10社|参入企業向け事業モデル比較›
Q. スイミングスクール運営会社への出資・買収は珍しくないのですか?
珍しくありません。住友不動産・トーセイ・太平洋セメントグループ・大和ハウス工業グループなど、異業種の企業がスポーツ施設運営会社に資本参加・買収する事例が複数確認できます。フィットネス市場の成長を取り込む手段として活用されています。
まとめ
スイミングスクール運営会社10社の事例から、運営モデルは大きく3つに分かれることが分かりました。
- スイミングスクールは経済産業省の統計調査対象であるフィットネスクラブ業の一部として運営されるケースが多い
- 運営モデルは「総合フィットネス内包型」「異業種資本の多角化型」「専業運営型」の3つに分類できる
- 異業種資本による多角化は、新設よりも既存運営会社の買収・資本参加という形が目立つ
- プールの設備・維持コストの重さと、指導者の確保・育成が事業の生命線になる
- 自社に合う関わり方は、複合施設・不動産資産・指導ノウハウのいずれを活かすかで決まる
FREE DOCUMENT
関連する資料を無料でダウンロード
ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ
お問い合わせはこちら →




コメント