健康診断の運動習慣の質問|スポーツ施策に生かす企業の使い方

健康診断の運動習慣の質問|スポーツ施策に生かす企業の使い方 スポーツウェルビーイング

健康診断の運動習慣の質問は、厚生労働省の「標準的な質問票」にある3問で、運動の習慣、日常の歩行時間、歩く速度を「はい」「いいえ」で聞いています。回答を部署や年代ごとの割合に集計すれば、どの層にどんなスポーツ施策が要るかを決める材料になり、翌年の健診で同じ質問を見れば効果も確かめられます。ただし健康に関する情報なので、個人の回答を会社が扱うには本人の同意と社内のルールづくりが欠かせません。

毎年の健康診断で「軽く汗をかく運動をしていますか」という質問に、なんとなく「いいえ」と丸を付けている。会社の側も、その回答が数千人分たまっているのに、施策づくりには使えていない。ここでは、この質問の中身と全国の数字、社内で集計するときの注意点、回答からスポーツ施策を選ぶ方法を順に整理します。

健康診断の運動習慣の質問は3問|質問票の10番から12番

健康診断の運動習慣の質問は、厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」の標準的な質問票にある、10番から12番の3問です。質問票は全部で22問あり、服薬や喫煙、食事、飲酒、睡眠と並んで運動を聞いています。

番号 質問 何を把握するか
10 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施 スポーツや体力づくりなど、余暇に行う運動の習慣があるか
11 日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施 通勤や仕事、家事での歩行や身体活動の時間
12 ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速い 身体活動の強さと、その元になる体力

出典:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」第2編 別紙3 標準的な質問票と、その解説をもとに Human Soar 作成。回答はいずれも「はい」「いいえ」

この質問票は、主に40〜74歳を対象にした特定健康診査(いわゆるメタボ健診)で使われるものです。会社の定期健康診断の問診票に、同じ質問がそのまま入っていることもあります。3問はそれぞれ別のものを測っているので、順に見ていきます。

質問10|余暇に運動する習慣があるか

質問10の「運動」は、余暇の時間に目的を持って行う身体活動、つまりスポーツや体力づくりを指すと、質問票の解説に書かれています。仕事や通勤で体を動かしていても、ここでは数えません。「週2日以上」と「1年以上」の両方を満たして初めて「はい」になるので、最近ジムに通い始めた人は「いいえ」と答えることになります。

(参考)標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)第2編 別紙3・4 標準的な質問票等 – 厚生労働省

質問11|通勤や家事で1日1時間歩いているか

質問11は、家事、仕事、移動など日常生活での歩行や身体活動の時間を聞いています。解説では、60分の歩行や身体活動は歩数にしておよそ8,000〜10,000歩に相当するとされています。運動の習慣がなくても、通勤でよく歩く人はここで「はい」になります。

質問12|同年代と比べて歩くのが速いか

質問12は、ふだんの歩く速度から、身体活動の強さとその元になる体力を把握するための質問です。解説では、歩行速度が秒速0.1m遅いと早期死亡のリスクが12%高いことを示唆したメタ解析も紹介されています。本人の感覚で答える質問ですが、体力の目安として使えます。

Q. 健康診断の運動習慣の質問では何を聞いていますか?

厚生労働省の標準的な質問票では、運動の習慣、日常の歩行や身体活動の時間、歩く速度の3つを「はい」「いいえ」で聞いています。具体的には「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」「日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施」「ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速い」の3問です。

運動習慣者の割合は20〜64歳で男性27.2%|国の目標30%が物差し

健康診断の運動習慣の比較に使える全国の数字(20〜64歳の運動習慣者の割合 男性27.2%・女性23.4%と国の目標30%)を円の大きさで比べた図

社内の回答を集計したら、全国の数字と比べると自社の位置が分かります。令和6年国民健康・栄養調査(2024年10〜11月実施)では、運動習慣のある人の割合は20歳以上で男性38.5%、女性31.5%でした。ただし働く世代の20〜64歳に限ると、男性27.2%、女性23.4%まで下がります。

この調査の「運動習慣のある者」は、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている人です。健診の質問10とほぼ同じ条件なので、社内の「はい」の割合と並べる目安になります。年代別では男女とも30〜40歳代が低く、男性は30歳代と40歳代がともに23.4%、女性は40歳代が17.2%でした。

健康日本21(第三次)の目標は20〜64歳で30%

国の健康づくりの計画である健康日本21(第三次)は、運動習慣者の割合を令和14年度に40%(年齢調整値)にする目標を掲げています。年代別には、20〜64歳は男女とも30%、65歳以上は男女とも50%です。計画をつくった時点(令和元年)の20〜64歳は男性23.5%、女性16.9%だったので、上がってはいるものの目標にはまだ届いていません。

社内の目標を決めるときは、この30%をひとつの物差しにできます。社内で30%を超えている層と下回っている層を分けるだけでも、施策を集中させる先が見えてきます。

(参考)令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)健康日本21(第三次)推進のための説明資料 – 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会

国が勧める運動量は週60分

どのくらい動けばよいかは、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が目安を示しています。成人には、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを勧めています。あわせて、歩行と同じかそれ以上の強さの身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)行うことも勧めています。

社内のスポーツ施策を組むときは、この週60分を超えられる回数と長さになっているかを確かめておくと、健診の質問と施策の狙いがそろいます。

(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 – 厚生労働省

Q. 運動習慣がある人の割合は全国でどのくらいですか?

令和6年国民健康・栄養調査では、20歳以上で男性38.5%、女性31.5%です。働く世代の20〜64歳に限ると男性27.2%、女性23.4%と低くなり、健康日本21(第三次)が掲げる20〜64歳の目標30%を男女とも下回っています。

健康診断の回答を集計する前に本人同意と取扱規程を決める

健康診断の回答は、病歴などと同じく慎重に扱うべき健康の情報です。集計を始める前に、誰がどの形で回答を見るのかを社内のルールとして決めておきます。

法定外の情報は本人の同意が前提

厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月公示、令和4年3月改正)は、会社が扱う健康の情報を3つに分けています。法律で決まった健康診断の項目の結果は、本人の同意がなくても会社が集められる一方、法定外の項目の結果は、あらかじめ本人の同意を得ることが必要な情報とされています。

運動習慣の質問を会社が個人単位で受け取る場合は、後者として扱うと考えておくのが安全です。どの情報をどの区分にするかは、会社ごとに定める取扱規程で決めることになっているので、産業医や社会保険労務士に確認したうえで規程に書き込みます。また指針は、同意しないことを理由に不利益な扱いをすることを認めていません。

(参考)労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針 – 厚生労働省

個人ではなく集団の割合で見る

スポーツ施策を決めるのに、誰が「いいえ」と答えたかまでは要りません。部署別、年代別、性別などの区分ごとに「はい」の割合を出せば足ります。

注意したいのは、人数の少ない区分です。数人しかいない部署の割合を出すと、誰の回答か推測できてしまいます。人数の少ない区分はほかとまとめる、集計は健診機関や健康保険組合に頼んで割合だけを受け取る、といった方法をとります(本記事の提案)。

健康保険組合と一緒に集計する

40歳以上の特定健康診査の結果は、健康保険組合などの保険者が持っています。保険者と組んで集計すれば、会社が個人の回答に触れずに傾向をつかめます。会社と保険者が一緒に健康づくりを進めることはコラボヘルスと呼ばれます。

厚生労働省、経済産業省、日本健康会議が作る「健康スコアリングレポート」は、各健保組合の加入者の健康状態や医療費などを、全健保組合の平均や業態の平均と比べて見える化したものです。レセプトと特定健診などのデータから作られており、2018年度は健保組合と国家公務員共済組合に通知されました。自社の健保組合に届いていないかを、まず問い合わせてみるとよいでしょう。

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(参考)健康スコアリングレポートの概要 – 厚生労働省

Q. 会社は健康診断の運動習慣の回答を見てもよいですか?

個人ごとの回答を見る場合は、本人の同意と社内の取扱規程が前提になると考えておくのが安全です。厚生労働省の指針は、法定外の健康診断の結果をあらかじめ本人の同意が必要な情報に分類しています。運動習慣の質問の扱いは会社や健診の契約によって違うので、産業医や社会保険労務士に確認してください。

健康診断の回答の傾向からスポーツ施策を選ぶ4つのパターン

健康診断の運動習慣の回答の傾向(運動の習慣がない・歩く時間が短い・歩く速度が遅い・始める気持ちがある)から選ぶスポーツ施策と翌年見直す質問の対応図

集計した回答は、どの質問で「いいえ」が多いかによって、効きやすい施策が変わります。よくある4つの傾向と、それに合わせたスポーツ施策の選び方を整理します(本記事の整理)。

質問10で「いいえ」が多い層には週1回の運動の場

運動の習慣がない人が多い層には、まず定期的に体を動かす場を用意します。質問票の解説は、週末1回だけの運動やスポーツでも、生活習慣病などの発症リスクが低いことが示唆されたと紹介しています。週1回の社内サークルやランニング会、チーム対抗のスポーツイベントなど、続けやすい頻度から始めるのが現実的です。

プログラムを組む手順は健康経営にスポーツプログラムを導入する手順にまとめています。

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(参考)標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)第2編 別紙3・4 標準的な質問票等 – 厚生労働省

質問11で「いいえ」が多い層には歩く機会を増やす

日常の歩行が1日1時間に届かない人が多い層には、歩数を競うウォーキングイベントや、ひと駅歩きの呼びかけなど、仕事の流れの中で歩く時間を増やす施策が合います。とくにデスクワーク中心の部署では、移動そのものが少なくなりやすい点も意識しておきます。身体活動・運動ガイド2023が示す1日約8,000歩を目標にすると、参加者にも分かりやすくなります。

質問12で「いいえ」が多い層には速歩きと体力づくり

歩く速度が遅いと答える人が多い層は、体力そのものが落ちている可能性があります。質問票の解説は、時間を増やすだけでなく「いつもより速く歩く」など強さを上げることでも身体活動を増やせるとしています。速歩きの講習や、ガイドが勧める週2〜3日の筋力トレーニングを取り入れた体力測定会などが候補になります。

質問21で改善の意思がある層には体験会で入口をつくる

標準的な質問票の21番は、運動や食生活などの生活習慣を改善してみようと思うかを5段階で聞いています。「改善するつもりである(概ね6か月以内)」などと答えた人は、きっかけさえあれば動き出せる層です。質問票の解説も、運動そのものを勧めるより、近くで参加できる教室の情報を伝えるほうが効果的だとしています。初心者向けの体験会や、社外のスポーツ教室の案内から始めると参加を得やすくなります。

(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 – 厚生労働省

翌年の健康診断で同じ質問を比べて効果を確かめる

健康診断の質問は毎年同じ形で聞かれるので、スポーツ施策の効果を見る指標としてそのまま使えます。施策を始める前の年の割合を記録しておき、翌年以降と比べます。

質問10の変化は1年以上たってから表れる

質問10は「1年以上実施」していることが条件なので、今年始めた運動は、翌年の健診ではまだ「はい」にならない場合があります。施策を始めて1年目に数字が動かなくても、失敗と決めつけないことが大切です。経営層に報告するときも、この点を最初に伝えておくと誤解を防げます。

先に動く質問11・12・21を見る

1年目は、歩行時間を聞く質問11、歩く速度を聞く質問12、改善の意思を聞く質問21の変化を先に追います。施策への参加率や参加者のアンケートと組み合わせれば、質問10が動く前でも手応えを示せます。指標の組み立て方は健康経営の効果測定とKPI設計で詳しく解説しています。

こうした取り組みは、健康経営の認定やスポーツ庁のスポーツエールカンパニーの申請で、自社の取り組みを説明する材料にもなります。健康経営そのものの全体像は健康経営とは|認定要件・申請手順とスポーツ施策の入れ方を参考にしてください。

Q. スポーツ施策の効果は健康診断の質問でいつ分かりますか?

運動習慣の質問で変化が出るまでには、早くても1年以上かかります。質問が「1年以上実施」しているかを聞いているためです。それまでは、歩行の時間や歩く速度、生活習慣を改善するつもりがあるかといった質問の変化を先に見ていきます。

健康診断の運動習慣の質問を生かすまとめ

健康診断の運動習慣の質問は、すでに毎年集まっている社員の運動の実態です。扱い方のルールを決めたうえで集団の割合として読めば、スポーツ施策の狙いを決め、効果を確かめる材料になります。

  • 運動習慣の質問は標準的な質問票の10〜12番で、運動の習慣、日常の歩行時間、歩く速度を聞いている
  • 全国の20〜64歳の運動習慣者は男性27.2%、女性23.4%で、国の目標30%が比較の物差しになる
  • 個人の回答を扱うなら本人の同意と取扱規程が前提で、施策づくりには集団の割合で足りる
  • どの質問で「いいえ」が多いかで、運動の場、歩く機会、体力づくり、体験会と施策を選び分ける
  • 質問10の変化は1年以上かかるので、1年目は質問11・12・21の変化を先に見る

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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