異動や退職、育休のたびに「聞いていない仕事」が出てきていませんか。陸上のリレーが決めている「渡す区間」と「渡し終わりの瞬間」の考え方で、業務の引き継ぎを組み直します。
対象となるお客さま
- 異動・退職・育休で、担当者の交代が毎年続く企業の経営者・事業責任者
- 引き継ぎのルールや様式を整えたい人事・総務の担当者
- 部下の交代のたびに、自分が穴を埋めている管理職
よくあるお悩み
- 引き継ぎ書はあるのに、交代の後でお客さまからの問い合わせに答えられない
- 月末や年度末だけの仕事が、引き継ぎから抜けている
- 前任者の最終日の数日前になって、慌てて引き継ぎが始まる
課題|引き継ぎ漏れは、異動・退職・育休のたびに起きる
担当者が代わると、仕事は「引き継ぎ書に書いてあること」だけが残ります。書いていなかった判断の基準や、お客さまとの約束、月に1回しか来ない作業は、交代の後に初めて見つかります。気づくのはたいてい、お客さまからの問い合わせや締切の直前です。
担当者の交代は、もう特別なことではありません。厚生労働省の令和7年 雇用動向調査では、1年間の離職者は7,052.6千人(約705万人)、離職率は13.7%でした。さらに令和7年度 雇用均等基本調査では、男性の育児休業取得率が50.9%と、前年度の40.5%から大きく上がりました。退職だけでなく、休む人への一時的な引き継ぎも毎年増えています。
交代が増えるほど、引き継ぎを担当者まかせにしておく損は大きくなります。引き継ぎは、個人の丁寧さではなく、会社の仕組みとして決めておく必要があります。
原因|「いつ終わったか」を誰も決めていない
引き継ぐ人の注意不足ではありません。原因は次の3つです。
- 期間が最終日から逆算されるだけ:前任者と後任者が一緒に仕事をする期間が、残りの日数で決まります。業務の周期で決めていないため、月末や年度末の仕事が期間中に一度も来ません。
- 完了の基準が「資料を渡した」:引き継ぎ書を渡した時点で終わりにすると、後任者が一人で回せるかは誰も確かめません。
- 途中の責任者がいない:引き継ぎの最中に漏れが見つかったとき、前任者・後任者・上司の誰が直すのかが決まっていません。
短い不在が何度も起きることも、期間の決め方を難しくしています。令和7年度 雇用均等基本調査では、育児休業から復職した男性のうち、取得期間が1か月未満の人は計48.9%(5日未満6.8%、5日〜2週間未満14.1%、2週間〜1か月未満28.0%の合計)でした。2回に分けて取得した人も18.6%います。数週間の不在に、数週間前から準備する引き継ぎは間に合いません。
スポーツ知見|受け渡しは区間の中で、渡し終わる瞬間まで決めておく
陸上競技のリレーでは、バトンを渡してよい区間が決まっています。日本陸上競技連盟の競技規則(TR24)では、4×100mリレーのテイク・オーバー・ゾーンは30mです。次の走者は、このゾーンに入ってから受け取る動作を始めます。
規則は、受け渡しの始まりと終わりも決めています。受け渡しは、受け取る走者にバトンが触れた時点で始まり、受け取る走者の手の中に完全に渡って、ただ一人の保持者になった瞬間に成立します。判定に使うのはバトンの位置で、走者の体の位置ではありません。受け渡しの途中でバトンを落としたら渡す側が拾い、渡し終えた後なら受け取った側が拾います。
つまりリレーは、「どこで渡すか」「いつ渡し終わったか」「途中で落としたら誰が拾うか」を、走る前に全部決めています。業務の引き継ぎに足りないのは、この3つです。
(参考)日本陸上競技連盟競技規則 第2部 トラック競技(TR24 リレー競走) – 公益財団法人日本陸上競技連盟
ただし、試合と仕事は同じではありません。リレーの受け渡しは数秒で終わり、バトンは目で見えます。仕事の引き継ぎは数週間かかり、渡したかどうかは目に見えません。そのため、渡し終わりを「資料を渡した」ではなく「後任者が一人で1回やり終えた」で判定し、期間中に来ない仕事は模擬で1回通します。
解決策|引き継ぎを「4つの決めごと」にする
引き継ぎ書の書き方を細かくするのではなく、交代の進め方そのものを先に決めます。決めるのは次の4つです。
- 重なり期間:前任者と後任者が一緒に仕事をする期間を、残りの日数ではなく業務の周期から決める
- 完了の基準:業務ごとに「後任者が一人で1回やり終えた」を完了とし、上司が確認する
- 途中の責任者:完了するまでは前任者と上司、完了した後は後任者が持つ
- 開始の合図:内示や休業の申出があった日に引き継ぎを始める
いちばん効くのは完了の基準です。引き継ぎ書がどれだけ詳しくても、後任者が一度も自分でやっていない仕事は、本番で止まります。業務ごとに「済」の印を付けていけば、どこが渡りきっていないかが交代の前に分かります。
進め方|次の異動・育休で1部署から試す
引き継ぎのルールは、実際の交代で使ってみないと穴が分かりません。そのため、次に予定されている異動や育休を題材に、1部署で試してから広げます。
診断では、直近1年の交代で起きた漏れを聞き取り、どの業務が、どの理由で抜けたかを一覧にします。設計・試行では、1部署の業務を周期ごとに洗い出し、次の交代で4つの決めごとを使ってみます。定着では、異動・退職・育休それぞれの進め方を社内のルールにして、交代のたびに見直します。
期間は目安です。診断だけ、1部署だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・ルールの文書化・試行中の確認を担い、御社には業務の一覧の共有と試す部署の決定をお願いします。
成果物|交代のたびに使い回せる4つの様式とルール
成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の実際の業務をもとに、一緒に作ります。
最初に作るのが「業務周期カレンダー」です。部署の仕事を毎日・毎週・毎月・年1回・例外対応に分けて、いつ来るかを1枚にしたもので、重なり期間を決める根拠になります。交代が決まったら、上司と前任者が「引き継ぎ計画書」を作り、重なり期間・業務ごとの担当・完了の予定日を決めます。
引き継ぎの最中は、「完了確認シート」に、後任者が一人でやり終えた業務から印を付けていきます。最後に、異動・退職・育休それぞれで、いつ始めて誰が確認するかをまとめた「引き継ぎ運用ルール」を整えるので、支援が終わった後も、交代のたびに同じ手順で回せます。
期待できる効果|交代しても、仕事が止まらない
経営にとっては、異動や育休を止めずに人を動かせるようになります。交代のたびに起きていた取引先への迷惑や、締切の遅れを減らせます。管理職は、どの業務が渡りきっていないかが交代の前に分かるので、自分で穴を埋める場面が減ります。前任者は最終日まで詰め込まずに済み、後任者は一度やった仕事として本番を迎えられます。
見る数字は、引き継ぎ書の枚数ではなく「交代の後3か月以内に、前任者へ問い合わせた件数」です。この件数が多い業務ほど、完了の基準が甘かったことになります。もう1つ「交代の日までに完了の印が付いた業務の割合」を見ると、重なり期間が足りていたかが分かります。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、引き継ぎの進め方を見直す時期です。
Human Soarからのコメント
リレーの規則は、バトンの受け渡しを走者の気配りに任せず、渡す区間と、渡し終わる瞬間をあらかじめ決めています。会社の引き継ぎも、担当者の丁寧さに任せるのではなく、交代の瞬間を仕組みとして決めておけば、その後の数か月の混乱を小さくできます。御社の業務に合わせて、無理のない引き継ぎの形を一緒に考えます。
よくあるご質問
Q. 引き継ぎ書のひな形があれば十分ではありませんか?
ひな形だけでは漏れは減りません。漏れの多くは、書いてあったのに後任者が一度もやっていない仕事で起きるためです。このプログラムでは、書く中身よりも、重なり期間と「一人で1回やり終えた」という完了の基準を先に決めます。
Q. 退職が急に決まり、重なり期間が取れない場合はどうしますか?
その場合も、業務周期カレンダーで優先順位を付けて対応します。期間中に来る仕事から先に後任者に通してもらい、来ない仕事は模擬で1回通します。前任者に問い合わせられる期間と窓口も、退職の前に決めておきます。
Q. 育休のように、戻ってくる人への引き継ぎも対象ですか?
対象です。休む前の引き継ぎに加えて、復職するときに業務を戻す引き継ぎも同じ決めごとで進めます。数週間の短い休業にも使えるよう、休業の申出があった日に始める手順にしています。
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