アリーナ稼働率を上げるホテル式収益化プラン

アリーナ稼働率を上げるホテル式収益化プラン|非試合日の空き時間をレベニューマネジメントで収益化するHuman Soarソリューション ソリューション

週末はほぼ満席になるアリーナが、平日の午後はしんと静まり返っている。照明も空調も稼働させたまま、コートにも客席にも誰もいない時間が、月に何日も積み上がっていく。

「この空白、収益に変えられないんですか」と聞かれて、即答できる運営者は多くありません。試合のある日だけを見ていると、非試合日の稼働率の低さは”仕方のないこと”に見えてしまうからです。

けれど非試合日の空き時間は、ホテルの空室や航空機の空席と同じ「その日を過ぎたら消える在庫」です。この在庫を埋める発想と技術は、すぐ隣の業界にすでにあります。

全国でアリーナ新設が相次ぐ一方、スポーツ庁は2025年6月に経済産業省と改訂した「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>」のなかで、収益源の複線化と利用用途の多様化を、まちづくりの核として重要な検討事項に位置づけています。競合施設が増えるほど、この空白の埋め方の巧拙が経営体力の差になっていきます。

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック(第3版) – スポーツ庁

  1. プランの概要|非試合日をホテルの発想で設計し直す
  2. 課題解決の流れ|稼働率の壁をレベニューマネジメントで越える
    1. 現状の課題|非試合日は”空白”のまま残っている
    2. 問題の要因|稼働率を測る発想そのものが無い
    3. 解決策|需要予測×価格設計×在庫管理の3点セット
  3. 模倣されにくい理由|アリーナの空き時間が”3つの理由”で差別化に効く
    1. ①在庫が消える|非試合日は”売れ残ったら終わり”の資産
    2. ②模倣されにくい|需要予測モデルは施設固有のデータが無いと作れない
    3. ③提供主体の強み|スポーツ現場とデータ分析の両方に日常的に接している
  4. プランの具体的な内容|3つの利用枠モデル
    1. ベーシック枠|地域とのつながりを収益化の起点にする
    2. スタンダード枠|企業研修・MICE需要を取り込む
    3. プレミアム枠|AIダイナミックプライシングで機会損失を最小化する
  5. 導入ロードマップ|検証・標準化・成果報酬化の3フェーズ
    1. 0〜3ヶ月|検証フェーズ
    2. 3〜6ヶ月|標準化フェーズ
    3. 6〜12ヶ月|成果報酬化フェーズ
  6. データが収益を動かす仕組み|稼働率改善の経路とKPI・リスク管理
    1. KPIの設計|仮説としての目安
    2. リスクと対応策
    3. 続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく
  7. 料金モデルという選択肢|稼働率に応じた成果報酬型への転換
    1. 買い切り型の限界
    2. 新モデルの仕組み
    3. 導入時の注意点
  8. 対象となる組織・読者|3つのタイプ
    1. 新設アリーナの運営を任された施設責任者
    2. 既存施設の稼働率改善を任された指定管理者
    3. 施設部門を抱えるプロスポーツチームの経営層
  9. 期待できる効果|3つの流れ
    1. 収益の流れ|非試合日が「主要な収益源」に変わる
    2. 組織の流れ|営業がデータドリブンな意思決定に変わる
    3. 地域の流れ|非試合日の賑わいが地域経済に波及する
  10. よくある質問
    1. アリーナの稼働率を上げるには何から始めればいいですか?
    2. 非試合日の収益化に成果報酬型は本当に向いていますか?
    3. 既存の興行スケジュールと衝突しませんか?
  11. まとめ

プランの概要|非試合日をホテルの発想で設計し直す

  • 対象:年間を通じて稼働率の伸び悩みに悩むアリーナ・スタジアムの運営者、指定管理者、プロスポーツチームの施設部門
  • 課題:非試合日の空き時間が「収益源」として設計されず、値引き頼みの単発貸出にとどまっている
  • 導入期間の目安:検証フェーズ3ヶ月、本格運用まで12ヶ月程度

本プランは、ホテル業界のレベニューマネジメント(需要予測に基づいて価格と在庫を動的に最適化する手法)の考え方を、アリーナの非試合日運営に移植するものです。試合日の興行収益とは切り離し、非試合日を独立した収益ラインとして設計し直します。

課題解決の流れ|稼働率の壁をレベニューマネジメントで越える

非試合日の稼働率が上がらない背景には、営業努力の不足だけでは説明できない構造的な要因があります。ここでは現状の課題から解決策までを順に整理します。

アリーナ稼働率の課題解決フロー|現状の課題から問題の要因、解決策までの3段階

現状の課題|非試合日は”空白”のまま残っている

  • 【稼働率が可視化されていない】非試合日の利用実績を日次で追っている施設は少なく、「空いている」という感覚が数字になっていません。
  • 【営業が属人化】法人利用やイベント利用の窓口が固定電話や紹介ベースにとどまり、問い合わせを逃した機会損失が把握できていません。

問題の要因|稼働率を測る発想そのものが無い

  • 【収益源が興行収入に一元化】チケット収入・放映権料・スポンサー収入が主要KPIとされ、空間貸しは長年”副業”として扱われてきました。
  • 【需要予測の専門人材が不在】ホテルや航空業界では当たり前のレベニューマネージャーという職種が、アリーナ運営組織にはほぼ存在しません。

解決策|需要予測×価格設計×在庫管理の3点セット

  • 【需要予測】曜日・季節・周辺イベントの実績データから、非試合日ごとの稼働見込みを算出します。
  • 【価格設計】用途別・時間帯別に変動する料金体系を構築し、需要が低い枠は価格を下げて埋めます。
  • 【在庫管理】興行スケジュールと空き枠を一元管理し、営業チームがリアルタイムに提案できる状態を作ります。

この3点セットの発想は、スポーツ興行の収益モデル|経営者向け4つの参入判断軸で解説した「収益源の多角化」という論点とも重なります。

模倣されにくい理由|アリーナの空き時間が”3つの理由”で差別化に効く

価格競争に巻き込まれやすい貸し会場ビジネスの中で、なぜこの掛け合わせが差別化になるのか。理由は3つあります。

アリーナ収益化プランの差別化ポジショニング|模倣されやすさと専門性の2軸マトリクス

①在庫が消える|非試合日は”売れ残ったら終わり”の資産

非試合日の空き時間は、ホテルの部屋と同じで、その日が過ぎれば二度と売れない「消える在庫」です。値引きしてでも埋めるという発想を先に持った運営者が、収益機会を独占します。

②模倣されにくい|需要予測モデルは施設固有のデータが無いと作れない

このモデルの精度は、その施設の過去の稼働実績・周辺人口・競合施設の稼働状況といった固有データに依存します。仕組みだけを真似ても、蓄積されたデータが無ければ同じ精度は再現できません。

③提供主体の強み|スポーツ現場とデータ分析の両方に日常的に接している

スポーツの試合運営・興行スケジュールの実務を理解した上で、レベニューマネジメントのデータ分析ができる主体は限られます。この両輪を持つことが、絵に描いた餅で終わらせない実行力の裏付けになります。

プランの具体的な内容|3つの利用枠モデル

非試合日の空き時間は、一律の貸し会場料金ではなく、用途別に3つの枠に分けて設計します。

枠 想定用途 価格設定方式 想定稼働日
ベーシック枠 地域イベント・住民利用 低単価の定額制 平日日中
スタンダード枠 企業研修・MICE利用 需要連動の変動価格 平日夜間・週末昼
プレミアム枠 コンサート・興行イベント AIによるダイナミックプライシング 週末・祝日

出典:スポーツ庁・経済産業省「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック(第3版)」の利用用途区分をもとに筆者が想定モデルとして整理

ベーシック枠|地域とのつながりを収益化の起点にする

単価は低くても、地域住民の利用実績はスタジアム・アリーナが「まちのシンボル」として認識される土台になります。低価格でも稼働日数を積み上げることで、需要予測モデルの学習データを早期に蓄積できるという副次効果もあります。

スタンダード枠|企業研修・MICE需要を取り込む

広い空間と大型モニター等の設備を持つアリーナは、企業研修やビジネスイベント(MICE)との親和性が高い用途です。需要が読みやすい平日夜間・週末昼の枠は、変動価格でも比較的安定した収益源になります。

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プレミアム枠|AIダイナミックプライシングで機会損失を最小化する

プロ野球やJリーグでは、AIが試合前6週間から需要を分析し、チケット価格を15分ごとに自動更新するダイナミックプライシングがすでに定着しています。この仕組みを非試合日の興行枠にも応用すれば、需要が集中する週末・祝日の値付けを取りこぼしません。

興行イベント枠では、スタジアムグルメ運営会社10社|企業の参入モデル比較のような飲食パートナーとの連携も、客単価を押し上げる有効な手段です。

(参考)スタジアム・アリーナ改革ガイドブック<第3版>(概要) – スポーツ庁・経済産業省

(参考)野球業界におけるダイナミックプライシングの導入事例とは? – チケットラボ

導入ロードマップ|検証・標準化・成果報酬化の3フェーズ

いきなり全面稼働を目指すと、既存の興行スケジュールと衝突します。段階を踏む理由も含めて解説します。

アリーナ稼働率向上の導入ロードマップ|検証・標準化・成果報酬化の3フェーズ

0〜3ヶ月|検証フェーズ

まず1〜2種類の枠に絞り、興行スケジュールと空き枠を一元管理するシステムを整えます。稼働実績データを日次で記録し、需要予測モデルの精度を検証する期間です。

3〜6ヶ月|標準化フェーズ

検証で効果が確認できた枠を全枠に拡大し、価格設計のルールを標準化します。営業チームがリアルタイムで空き枠を提案できる体制も、このフェーズで整えます。

6〜12ヶ月|成果報酬化フェーズ

稼働率・収益の改善実績が積み上がった段階で、料金モデルを固定報酬から成果報酬型へ段階的に移行します。1年目の年間稼働率を基準値として、以降の目標を設定します。

データが収益を動かす仕組み|稼働率改善の経路とKPI・リスク管理

非試合日の稼働率改善は、施策を導入した瞬間ではなく、需要予測と価格設計が運用として回り始めてから効いてきます。稼働率の向上(客単価に相当する平均利用料の向上)×リピート利用率の向上という2つの経路が掛け合わさることで、非試合日の収益は時間差を伴って積み上がっていきます。

特に注意したいのは、施策導入直後の1〜2ヶ月は稼働率がほとんど動かないという点です。営業チームが新しい料金体系に慣れ、既存の利用者に周知が行き渡るまでのタイムラグを見込んでおく必要があります。

KPIの設計|仮説としての目安

自社のベースライン把握が前提です。以下は一般的なレベニューマネジメント導入事例を参考にした仮説上の目安であり、自施設の過去実績と比較しながら調整してください。

フェーズ 指標 目安値
検証フェーズ(0〜3ヶ月) 非試合日の稼働率 現状比+5%
標準化フェーズ(3〜6ヶ月) 平均利用料(客単価相当) 現状比+10%
成果報酬化フェーズ(6〜12ヶ月) 年間稼働率 現状比+15〜20%

出典:一般的なレベニューマネジメント導入事例をもとにした仮説値(自社データでの検証が前提)

特に重要なのは1行目の「非試合日の稼働率」です。ここが動かない限り、平均利用料や年間稼働率の数値も検証しようがないため、最初の3ヶ月はこの1指標に絞って追いかけることをおすすめします。

リスクと対応策

リスク 対応策
需要予測の誤差による機会損失 最初の3ヶ月は人的な最終確認を残し、予測と実績のズレを毎月記録して補正する
既存の興行スケジュールとの競合 興行スケジュールが確定してから非試合日の枠を公開する運用にし、優先順位を明文化する

出典:一般的な稼働率改善プロジェクトの実務課題をもとに整理

とりわけ見落とされがちなのが1つ目の需要予測誤差です。精度が低いまま値付けを自動化すると、逆に安売りしすぎて平均利用料が下がるケースもあるため、最初の数ヶ月は人の目によるチェックを残すことが安全策になります。

続行・撤退の判断基準|どの数値で見直すかを事前に決めておく

6ヶ月経っても非試合日の稼働率が5%以上改善しない場合は、価格設計そのものを見直します。12ヶ月経っても年間稼働率の改善が10%に届かない場合は、成果報酬型への移行を延期し、固定報酬型のまま運用を継続するか撤退するかを判断します。

料金モデルという選択肢|稼働率に応じた成果報酬型への転換

単なる料金プランの紹介ではなく、なぜ今このテーマに成果報酬型が合うのかという構造の話です。非試合日の稼働率は、施策の効果が数値としてそのまま現れる珍しい領域だからこそ、成果報酬型との相性が良いといえます。

買い切り型の限界

従来の固定報酬・買い切り型のコンサルティングは、需要予測モデルの構築が完了した時点で契約が終わってしまいがちです。しかし非試合日の稼働率改善は、モデルを作って終わりではなく、継続的にデータを学習させて精度を上げていく運用がすべてを決めます。

新モデルの仕組み

初期の需要予測モデル・料金設計の構築費は固定報酬で受け取り、稼働率や収益の改善幅に応じた成果報酬を四半期ごとに上乗せするハイブリッド型を採用します。導入側は初期投資を抑えられ、提供側は運用を続けるほど収益が積み上がる設計です。

導入時の注意点

成果報酬の基準となる「ベースラインの稼働率」をどう定義するかで、双方の納得感が大きく変わります。契約前に過去12ヶ月分の稼働実績を共有し、改善幅の計測方法を書面で合意しておくことが欠かせません。

対象となる組織・読者|3つのタイプ

本プランが特に効果を発揮する読者を、3つのタイプに分けて紹介します。

新設アリーナの運営を任された施設責任者

開業から数年は知名度も低く、非試合日の利用申し込みそのものが少ない時期です。価格を下げるだけの営業に頼らず、需要予測に基づいた価格設計を最初から組み込むことで、認知拡大と収益化を同時に進められます。

既存施設の稼働率改善を任された指定管理者

すでに一定の利用実績があるからこそ、感覚的な料金設定から抜け出しにくいという悩みを抱えています。過去の稼働データがすでに蓄積されている分、需要予測モデルの立ち上げは新設施設より早く進みます。

施設部門を抱えるプロスポーツチームの経営層

チケット収入への依存度を下げたいという課題に直面しています。非試合日を独立した収益ラインとして育てることは、興行成績に左右されない安定収益の確保につながります。

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期待できる効果|3つの流れ

効果は単発ではなく、3つの流れとして積み上がっていきます。

収益の流れ|非試合日が「主要な収益源」に変わる

試合日の興行収入に次ぐ第2の収益の柱として、非試合日の売上が経営指標に組み込まれるようになります。年間稼働率が5〜10%改善するだけでも、施設全体の収支構造は大きく変わります。

組織の流れ|営業がデータドリブンな意思決定に変わる

「なんとなく埋まっている」から「この曜日・この時間帯は需要が高いから値上げする」という説明可能な意思決定に変わります。営業担当者の勘と経験に依存していた業務が、再現性のある仕組みに置き換わります。スポーツマネジメントとは|企業が活用する3つの場面で触れた意思決定の型とも共通する変化です。

地域の流れ|非試合日の賑わいが地域経済に波及する

非試合日にも人が集まるようになることで、周辺の飲食店・宿泊施設への経済波及効果も生まれます。まちづくりの観点からも、アリーナが「試合の日だけの施設」から「毎日賑わいを生む施設」へと役割を広げていきます。

よくある質問

アリーナの稼働率を上げるには何から始めればいいですか?

まず非試合日の空き時間を「消える在庫」として日次で可視化することから始めます。稼働実績のデータが無いまま値引きや値上げを議論しても、効果を検証できないためです。

非試合日の収益化に成果報酬型は本当に向いていますか?

はい、稼働率という結果が数値で測れる施策のため成果報酬型と相性が良いです。ただし予測モデルの構築費まで丸ごと成果報酬にすると提供側のリスクが過大になるため、固定報酬と組み合わせるハイブリッド型が現実的です。

既存の興行スケジュールと衝突しませんか?

衝突を避けるため、導入ロードマップの検証フェーズで興行スケジュールと空き枠を一元管理する仕組みを先に整えます。試合日程が確定した後に、残りの空き時間だけを販売対象とする運用にすれば競合しません。

まとめ

  • 非試合日の空き時間は、ホテルの空室と同じ「消える在庫」として扱うと収益化の発想が変わります
  • 稼働率が上がらない要因は営業努力不足ではなく、需要予測・価格設計・在庫管理の仕組みが無いことにあります
  • 差別化の源泉は、模倣されにくい需要予測モデルと、スポーツ現場とデータ分析の両方に接している提供主体の強みです
  • 導入は検証→標準化→成果報酬化の3段階で進め、続行・撤退の判断基準を事前に決めておくことがリスク管理になります
  • 料金モデルも固定報酬型から、稼働率改善に連動するハイブリッド型へ転換する余地があります

「この空白、収益に変えられないんですか」という問いが頭に浮かんだ時点が、相談を始めるタイミングです。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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