メンタルトレーニングを受けたい|スポーツチームの導入4手順

メンタルトレーニングを受けたいスポーツチームの導入4手順 スポーツ心理学

メンタルトレーニングは、専門の施設に通わなくても、「現状を言葉にする」「技法を1つ選ぶ」「練習に組み込む」「振り返る」の4手順で始められます。日本スポーツ振興センターが紹介する呼吸法やイメージ技法は、練習の前後にある短い時間から試せるものが中心です。

試合の終盤、リードを守る場面で、練習では決めていたシュートが急に入らなくなる。技術練習を増やしても改善しないとき、原因は体ではなく本番の緊張にあることがあります。

この記事では、チームや部活動にメンタルトレーニングを導入するための手順、場面別の技法の選び方、外部の専門家の使い方、活動時間への組み込み方を整理します。理論の全体像はスポーツ心理学とは|企業で緊張・目標管理・結束に使う5つの技法で解説しています。

メンタルトレーニングは実力を出せる心理状態に整える練習

スポーツのメンタルトレーニング技法を落ち着かせる・気分を高める・集中を戻す・本番に備えるに分けた図

メンタルトレーニングとは、競技に合った心理状態に自分で整える練習のことです。日本スポーツ振興センターは、緊張や興奮が強すぎても弱すぎても成績は下がると説明しており、強いときは落ち着かせ、弱いときは気分を高めるという調整を技法として紹介しています。

図の4つのグループは、同センターが紹介する技法を目的別に分けたものです。落ち着かせる呼吸法と筋弛緩法、気分を高めるサイキングアップ、ミスのあとに集中を戻す視線の固定とキューワード、本番に備えるイメージ技法と分析・振り返りがあります。分類の名前は本記事の整理です。

心理面の練習は、気持ちが弱い人のためのものではありません。むしろ、実力を安定して出すための準備として、技術練習や体力づくりと同じ位置づけで扱います。

(参考)メンタルトレーニング技法 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター

(参考)心理サポート – 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(国立スポーツ科学センター)

Q. メンタルトレーニングを受けると心が弱いと思われますか

そうではありません。国立スポーツ科学センター(JISS)の心理サポートのページは、心理サポートを受けることは心理面が弱いことを意味しないと明記しています。考えの整理、競技生活の振り返り、自己理解を深める場として使われています。

始め方の4手順|現状を言葉にして1つの技法から試す

始め方は、現状の把握、技法の選択、練習への組み込み、振り返りの4手順です。最初から複数の技法を並べず、1つの技法を一定期間続けて、合うかどうかを確かめます。

手順1|緊張する場面と強さを言葉にする

最初に、選手本人と指導者で「どの場面で、どのくらい緊張するか」を言葉にします。緊張が強すぎる場面なのか、気分が上がらない場面なのかで、選ぶ技法が変わるからです。「試合の最後の5分」「ミスの直後」のように、場面を具体的に書き出します。

(参考)メンタルトレーニング技法 – 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター

手順2|技法を1つだけ選ぶ

書き出した場面に合わせて、技法を1つだけ選びます。選び方は次の見出しの表にまとめました。最初の1つは、準備が少なく失敗しにくい呼吸法から始めると、全員が同じ練習で試せます。

手順3|練習の決まった場面に組み込む

選んだ技法は、練習の決まった場面に入れて習慣にします。たとえば、練習前の整列のあとに呼吸法を行い、ミスのあとの切り替え用に合図の言葉を決めておきます。組織の研修として導入する場合の進め方は、メンタルトレーニング企業研修の記事が参考になります。

あわせて読みたいメンタルトレーニング企業研修とは?導入効果・プログラム例と実践ポイント›

手順4|日誌で振り返りながら必要に応じて専門家へ相談する

日本スポーツ振興センターは、日誌などでトレーニングを継続的に振り返ることを勧めています。うまくいかないときは、心理サポートや個別サポートの利用が案内されています。1〜2週間続けて合わない技法は別のものに替え、それでも変化が見えない場合に外部へ相談します。

(参考)心理サポート – 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(国立スポーツ科学センター)

場面別の技法の選び方|緊張・気分・集中・本番準備で使い分ける

技法は、困っている場面から逆算して選びます。下の表は、日本スポーツ振興センターが紹介する技法を場面別に並べ、練習に組み込むときの時間の目安を加えたものです。

困っている場面 ねらい 使う技法 やり方(同センターの説明) 時間の目安
試合前に緊張が強すぎる 落ち着かせる 呼吸法 鼻から吸い、口からゆっくり長く吐くことを繰り返す 1〜3分
体が重く、気分が上がらない 気分を高める サイキングアップ 軽く体を叩く、大きな声を出す、速く短く呼吸する、アップテンポの音楽を聴く 1〜2分
力みが抜けず、体が固い 緊張をゆるめる 筋弛緩法 筋肉に力を入れてから抜き、その抜けた感覚でリラックスする 3〜5分
ミスのあとに気持ちが切れる 注意を切り替える 視線の固定・キューワード 見る対象を事前に決める。動作や心の状態を引き出す合図の言葉を使う 数秒〜1分
本番の動きを整えたい 本番に備える イメージ技法 五感や身体感覚を含めて、現実に近い形で想像する 3〜5分

出典:独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター「メンタルトレーニング技法」。「時間の目安」と「困っている場面」の列は本記事の提案・整理です。

表の中から選ぶのは1行だけで十分です。たとえば、本番で緊張して固くなる選手が多いチームなら、呼吸法と筋弛緩法の2行を試して、合うほうを残します。技法の効果は個人差があるため、効果の確認は手順4の日誌で行います。

企業の人材育成に応用する場合の事例は、データを使った個別メンタルトレーニングの進め方で、集中力と回復を整える視点は企業のマインドフルネス×スポーツ実践法で紹介しています。

Q. メンタルトレーニングは何分から始められますか

1〜3分の呼吸法から始められます。日本スポーツ振興センターが紹介する呼吸法は、座った姿勢でも仰向けでも行えます。練習の前後にある短い時間に組み込み、続けられる長さを先に決めるのがコツです(時間の目安は本記事の提案です)。

外部の専門家に頼む場合|対象と資格を確かめて相談する

自分たちで始めても変化が見えないときは、外部の専門家に相談します。国立の窓口には対象の条件があるため、先に条件を確認し、対象外なら民間や地域の専門家の資格を確かめて依頼します。

国立スポーツ科学センターの心理サポートは強化指定選手が対象

国立スポーツ科学センター(JISS)の心理サポートには、競技団体の要望に合わせた講習会と、心理スタッフとの個別サポートがあります。講習会の対象は、JOCオリンピック強化指定選手、競技団体の強化対象選手、JPCパラリンピック強化指定選手などです。個別サポートは予約制で、初回面接は90〜120分、1回あたりの相談は約60分が多いとされています。

(参考)心理サポート – 独立行政法人日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(国立スポーツ科学センター)

民間や地域の専門家には資格と守秘の扱いを確かめる

対象外のチームや部活動は、民間や地域の専門家に依頼します。国立の心理サポートでは、スポーツメンタルトレーニング(SMT)指導士、臨床心理士、公認心理師が相談を担当し、相談内容は選手の許可なく公表しない扱いです。依頼先を選ぶときも、担当者の資格と、相談内容の取り扱いを最初の面談で確認します。

あわせて読みたいメンタルコーチング企業導入事例›

Q. メンタルトレーニングはどこで受けられますか

国立スポーツ科学センターの心理サポートがありますが、対象はJOCやJPCの強化指定選手などに限られます。一般のチームや部活動は、スポーツメンタルトレーニング指導士、臨床心理士、公認心理師といった資格を持つ担当者に頼み、守秘の扱いを確かめてから始めます。

活動時間の上限に収める|練習2時間のうち8分を心理練習にあてる

メンタルトレーニングを練習前・練習中・練習後の合計8分に組み込む流れの図

メンタルトレーニングは、既存の練習時間の中に短く組み込めば、活動時間を増やさずに続けられます。スポーツ庁と文化庁の部活動改革のガイドライン骨子(令和7年10月)では、学校部活動の活動時間を平日は1日2時間程度以内、休日は1日3時間程度以内とし、休養日を週2日以上設けるとしています。

平日の上限2時間(120分)のうち、練習前の呼吸法に3分、練習後の日誌に5分をあてると、合計8分で約6.7%です(割合は本記事の計算です)。練習中は、ミスのあとに使う合図の言葉を決めておくだけなので、追加の時間はかかりません。

休養日や活動時間の枠は、地域クラブ活動の認定要件にもなっています。指導体制や時間の整え方は、地域移行の現場の課題とあわせて検討すると、導入の順序が整理しやすくなります。

あわせて読みたい部活動の地域移行はなぜ進まないのか|現場の課題›

(参考)「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」骨子(令和7年10月) – スポーツ庁・文化庁

まとめ|メンタルトレーニングは短い時間から4手順で始める

チームへの導入で押さえる要点は、次の5つです。

  • 実力を出すには、緊張が強すぎても弱すぎても成績が下がるため、競技に合った心理状態に整える
  • 始め方は、場面を言葉にする、技法を1つ選ぶ、練習に組み込む、日誌で振り返るの4手順
  • 技法は困っている場面から選び、最初は準備が少ない呼吸法から試す
  • 国立の心理サポートは強化指定選手などが対象で、一般のチームは資格と守秘の扱いを確かめて依頼する
  • 平日2時間の上限の中でも、8分ほどの組み込みなら活動時間を増やさずに続けられる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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