スポーツ心理学とは、スポーツや運動をする人の心の働きを心理学の方法で調べ、現場の課題に役立てる学問です。日本スポーツ心理学会は、主に応用心理学の立場からスポーツの現場の課題に取り組むスポーツ科学の一分野だと位置づけています。
職場では、商談やプレゼンの緊張、目標管理、新しい仕事への自信、チームの結束、ストレスへの対処に使えます。厚生労働省の指針が事業者に求める、社員自身のセルフケアと管理職によるラインケアの教育にも、そのまま組み込めます。ここでは学問の定義を短く押さえたうえで、職場の課題ごとに使える技法と、取り入れるときの注意点、外部の専門家に頼む手順を整理します。
スポーツ心理学とは|応用心理学でスポーツの現場の課題を扱う学問
スポーツ心理学は、心の状態が運動や競技にどう影響するか、運動が心にどう影響するかを調べ、その知見を現場で使える技法にする学問です。日本スポーツ心理学会は1973年に発足した学術団体で、心と体をつなぐ心身相関や、イメージなど心のさまざまな機能も研究の対象にしています。
国の研究区分ではスポーツ科学の一分野
日本学術振興会が科研費の審査に使う区分では、小区分「スポーツ科学関連」の内容の例として、スポーツ生理学、スポーツ医学、スポーツ社会学、スポーツ経営学、スポーツ心理学、トレーニング科学など10の分野が挙がっています。スポーツ心理学は、体の側から運動を調べる生理学やバイオメカニクスと並ぶ、心の側の担当です。ほかの9分野が職場のどんな課題に役立つかは、スポーツ科学の7つの分野と健康経営への活かし方で整理しています。
(参考)審査区分表(小区分一覧) – 独立行政法人日本学術振興会
対象は競技だけでなく健康運動やレクリエーションまで
日本スポーツ心理学会は、日本のスポーツは競技だけを意味するのではなく、体育、野外活動、武道、健康運動、レクリエーションなど身体活動全般を含むと説明しています。そのうえで、スポーツが人々にウェルビーイングをもたらすあり方を心理学の視点から探ることを、これからの課題に挙げています。
つまり、トップ選手の勝負強さだけでなく、ふだん体を動かす人の気持ちや、運動を続ける理由も研究の範囲です。職場で社員の緊張やストレス、チームの関係を扱うときに知見を借りられるのは、この広さがあるからです。
Q. スポーツ心理学とは簡単にいうとどんな学問ですか?
スポーツや運動をする人の心の働きを、心理学の方法で調べて現場の課題に役立てる学問です。日本スポーツ心理学会は、主に応用心理学の立場からスポーツの現場の課題に取り組むスポーツ科学の一分野だと説明しています。対象は競技に限らず、健康運動やレクリエーションなど身体活動全般に及びます。
スポーツ心理学の5つの技法と職場の課題|対応表
スポーツ心理学で使われる技法を職場の課題に当てはめると、次の5つになります。困っている課題から逆に引いて、最初に試す一手を決めるための表です。
| 職場の課題 | スポーツ心理学の技法 | 職場での最初の一手 |
|---|---|---|
| プレゼン・商談の緊張 | あがりの徴候を知る、腹式呼吸 | 自分の徴候を書き出し、本番前に呼吸を整える |
| 目標管理が結果だけになる | 結果目標とプロセス目標 | 結果の目標に、毎日の行動の目標を足す |
| 新しい仕事に自信が持てない | 自己効力感の4つの情報源 | 小さな成功体験と手本になる人を用意する |
| チームがまとまらない | 良いチームの4つの特徴 | 共通の目標と一人ひとりの役割を言葉にする |
| ストレスがたまる | 2種類のコーピング、セルフトーク | 問題への対処と気分転換を使い分ける |
出典:青森県スポーツ科学センター「スタッフコラム」No.6・14・17・25・34・43・46 をもとに Human Soar 作成
プレゼンや商談の緊張|あがりの徴候を知って呼吸で整える
大事な場面で力を出せなくなる状態を、スポーツ心理学では「チョーキング(あがり)」と呼びます。青森県スポーツ科学センターのコラムは、あがりの徴候を心理・生理・行動の3つの面に分けて紹介しています。心理面では悲観的な考えや他人の目が気になる、生理面では心拍数や血圧が上がり手のひらに汗をかく、行動面では口数が増えたり減ったり、動作が小さくなったりします。
あがりは、場面の重要度が高いとき、自信が低く不安が高いとき、自分への意識が過度に高まったときに起こりやすいとされています。同じコラムは、まず自分のあがりの徴候と原因を知っておくことが大切だとしています。商談やプレゼンの前に、自分がどんなときにどう崩れるかを書き出しておくと、本番での立て直しが早くなります。
体から整える方法として勧められているのが腹式呼吸です。主に横隔膜を使う腹式呼吸は副交感神経を優位にするとされ、リラックスするには「体から心へ」の順番が重要で、「心を落ち着けよう」と頑張るとかえって逆効果になる場合が多いと紹介されています。厚生労働省の「こころの耳」も、職場で見ながら実践できるセルフケアの動画で腹式呼吸やストレッチを取り上げています。プレッシャーへの強さを日頃から鍛える方法はプレッシャー耐性を鍛えるスポーツ心理学的手法で解説しています。
あわせて読みたい呼吸法でストレス軽減|スポーツ現場の手法を職場へ›
(参考)スタッフコラム No.43 プレッシャーによるパフォーマンス低下 – 青森県スポーツ科学センター
(参考)スタッフコラム No.17 身体と心の調整(前編) – 青森県スポーツ科学センター
(参考)動画で学ぶメンタルヘルス教室(ストレスと上手につきあおう リラクセーションのすすめ) – 厚生労働省 こころの耳
目標管理|結果目標とプロセス目標を分けて立てる
スポーツ心理学では、目標を「結果目標」と「プロセス目標」に分けて考えます。結果目標は「全国大会優勝」のようなゴール、プロセス目標は「毎朝5kmのランニング」のような、ゴールまでの道のりにあたる行動です。青森県スポーツ科学センターのコラムは、適切な目標設定には不安を減らす、自信を持たせる、集中させる、満足感を与える、内発的な動機づけにするといった効果があるとし、不適切な目標は逆効果になりうると注意しています。
同じコラムは、目標設定の最大の目的は目標を立てることではなく、行動を明確にして後押しすることだと述べています。職場の目標管理でも、売上や件数などの結果の目標だけで終わらせず、それを達成するために毎日・毎週やる行動を目標として書き足すと、期の途中で何をすればよいかがはっきりします。期首の目標設定研修への組み込み方はスポーツ心理学をビジネス研修に応用する方法で紹介しています。
(参考)スタッフコラム No.14 目標設定技法 – 青森県スポーツ科学センター
新しい仕事への自信|成功体験と手本と励ましで自己効力感を高める
自己効力感とは「自分ならできる」という感覚のことです。心理学者バンデューラは、これを高める情報源として、自分でやり遂げる経験、他人がうまくいくのを見る経験、他人からの言葉による説得、体と気持ちの状態の4つを挙げました。青森県スポーツ科学センターのコラムは、日ごと・週ごとの目標で成功体験を積む、チームメートのプレーを見て「自分にもできる」と思う、うまくいったときに認めてもらう、心身の状態に目を向ける、という順に紹介しています。
同じコラムは、結果から得る自信とは別に、続けてきた過程から得る自信があり、後者を持つ選手は成功につながりやすいとされていると説明しています。異動や昇格で新しい仕事を任された社員には、週ごとの小さな目標、手本になる先輩の仕事を見る機会、できたことを言葉で認める場を用意すると、この4つの情報源をそろえられます。自信を育てる考え方はスポーツ心理学に学ぶ自信構築でも取り上げています。
(参考)スタッフコラム No.34 試合に向けた自信の高め方 – 青森県スポーツ科学センター
チームの結束|共通目標と役割と規範をそろえる
青森県スポーツ科学センターのコラムは、集団の生産性は一人ひとりの力の合計より大きくなることも小さくなることもあるという指摘を紹介し、優れたチームの特徴として4点を挙げています。全員で共有する共通の目標があること、一人ひとりに役割がある安定した人間関係があること、メンバーの行動の基準になる規範があること、自分たちのチームだという愛着があることです。
共通の目標は、勝敗や記録などの結果だけでなく、どんなチームを目指すかまで言葉にすることが勧められています。役割も、リーダーのような公式のものだけでなく、ムードメーカーのような非公式のものまで含めて考えます。職場のチームでも、部署の目標、各自の役割、守る約束ごとを言葉にしてそろえることが、結束づくりの出発点になります。発言しやすい関係づくりは心理的安全性をスポーツで高める職場づくりで解説しています。
(参考)スタッフコラム No.46 「良いチーム」になるために – 青森県スポーツ科学センター
ストレス対処|問題への対処と気分転換を使い分ける
ストレスへの対処法(コーピング)は、問題そのものに向き合って解決を目指す「問題焦点型」と、気分転換などで気持ちを立て直す「情動焦点型」に大きく分かれます。青森県スポーツ科学センターのコラムは、このほか呼吸法や漸進的筋弛緩法などのリラクセーション法も挙げ、ストレスは「倒す」より「上手く付き合う」と考えたほうがよいとしています。
自分にかける言葉を意図して選ぶ「セルフトーク」も、よく使われる技法です。同じセンターの別のコラムは、セルフトークには教示と動機づけの2つの機能があり、肯定的なセルフトークは集中力やモチベーションを高め、否定的なセルフトークは不安や自信の喪失を招くと報告されていると紹介しています。
体を動かすこと自体もストレス対処になります。厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023は、世界保健機関のガイドラインを引き、身体活動によってうつや不安の症状が軽くなるとしています。職場で運動をメンタルヘルスの予防に使う方法はメンタルヘルスと運動|企業の一次予防を進める施策でまとめています。
(参考)スタッフコラム No.6 ストレスマネジメント – 青森県スポーツ科学センター
(参考)スタッフコラム No.25 セルフトークの有用性 – 青森県スポーツ科学センター
(参考)健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 – 厚生労働省
Q. スポーツ心理学の具体例にはどんなものがありますか?
本番の緊張への対処、目標設定、自信の高め方、チームづくり、ストレスへの対処などがあります。たとえば緊張には腹式呼吸、目標管理には結果目標とプロセス目標を分ける方法が使われます。職場では、商談やプレゼンの前の準備や、期首の目標設定にそのまま応用できます。
職場のメンタルヘルス対策との関係|セルフケアとラインケアの教育に生かす

スポーツ心理学の技法は、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が定める4つのケアのうち、セルフケアとラインによるケアの教育に組み込めます。上の図は、技法とケア、指針が挙げる教育の項目の対応を示したものです。
この指針は平成18年3月31日に策定され、平成27年11月30日に改正されました。社員自身がストレスに気づいて対処する「セルフケア」、管理監督者が職場環境の改善や相談対応を行う「ラインによるケア」、産業医などによる「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、外部の機関や専門家による「事業場外資源によるケア」の4つを、継続的かつ計画的に行うよう求めています。あわせて、不調を未然に防ぐ一次予防、早く見つけて対応する二次予防、職場復帰を支える三次予防が円滑に行われるようにすることも求めています。
(参考)労働者の心の健康の保持増進のための指針 – 厚生労働省
セルフケアの教育に「ストレスへの対処の方法」として入れる
指針は、事業者がセルフケアを促すために全ての労働者に行う教育の内容として7つの項目を挙げ、そのなかに「ストレスへの気づき方」と「ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法」を含めています。あがりの徴候を知る、腹式呼吸で整える、セルフトークを選ぶといったスポーツ心理学の技法は、この2つの項目にそのまま当てはまります。
ストレスチェックの指針も、結果を本人に通知するときに、セルフケアに関する助言・指導もあわせて通知させることが望ましいとしています。ストレスチェック制度は、一次予防を強化するための仕組みと位置づけられています。労働者数50人未満の事業場でも、令和7年の法改正でストレスチェックが義務になり、令和10年4月1日に施行されます。義務化の範囲と準備はストレスチェック義務化の解説で確認できます。
あわせて読みたいストレスチェックにスポーツ心理学|フォロー面談の4つの視点›
(参考)心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針 – 厚生労働省
(参考)小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) – 厚生労働省
ラインによるケアの教育に目標設定とチームづくりを入れる
指針は、管理監督者への教育の内容として11の項目を挙げ、そのなかに「職場環境等の評価及び改善の方法」と「労働者からの相談対応」を含めています。さらに、職場レイアウト、作業方法、コミュニケーション、職場組織の改善などを通じた職場環境等の改善は、労働者の心の健康の保持増進に効果的だとしています。
管理職が部下と目標を話し合う場面では、結果目標とプロセス目標を分ける考え方が使えます。チームの共通目標や役割、約束ごとをそろえる取り組みは、コミュニケーションや職場組織の改善そのものです。ストレスチェックの集団分析の結果を職場の改善につなげる手順はストレスチェックの職場環境改善の5手順で解説しています。
(参考)労働者の心の健康の保持増進のための指針 – 厚生労働省
Q. スポーツ心理学は職場のメンタルヘルス対策に使えますか?
使えます。厚生労働省の指針が事業者に求めるセルフケアの教育には「ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法」が含まれ、呼吸法やセルフトークはこの内容に当てはまります。ただし治療の代わりにはならないため、心身の不調が疑われる場合は産業医などにつなぎます。
スポーツ心理学を職場に移すときの注意点|目的と相談先と情報の扱い

スポーツ心理学の技法は、競技力を高めるために磨かれてきたものです。職場に移すときは、目的、不調が疑われるときの相談先、心の情報の扱いの3点を、競技の現場とは違う前提で決めておく必要があります。競技の現場の目的は競技力の向上ですが、職場で目指すのは社員の健康と働きやすさです。
メンタルトレーニングは治療ではない|不調の兆しは産業医につなぐ
日本スポーツ心理学会が認定するスポーツメンタルトレーニング指導士は、競技力向上のための心理的スキルを中心に指導や相談を行う資格です。学会の倫理綱領も、会員に自らの専門性の限界を認識し、サービスの提供が専門性の範囲を超えないよう求めています。心の病気の診断や治療は医師の役割です。
厚生労働省のメンタルヘルス指針は「メンタルヘルス不調」を、精神障害や自殺だけでなく、ストレスや強い悩み、不安など心身の健康や生活の質に影響する問題まで幅広く含むものと定義しています。研修や面談で眠れない、気分の落ち込みが続くといった訴えが出たら、技法で対処しようとせず、産業医や保健師などの事業場内産業保健スタッフにつなぎます。指針は、精神科・心療内科などの医師や心理職を「心の健康づくり専門スタッフ」として位置づけています。高ストレスと判定された人への対応はストレスチェックの高ストレス者の基準と対応で解説しています。
(参考)スポーツメンタルトレーニング指導士 – 日本スポーツ心理学会
(参考)日本スポーツ心理学会倫理綱領 – 日本スポーツ心理学会
(参考)労働者の心の健康の保持増進のための指針 – 厚生労働省
合う技法は一人ずつ違う|本人が選べる形で試す
緊張は、低すぎても高すぎても力を出しにくくなります。青森県スポーツ科学センターのコラムは、気分が乗らないような過度なリラックスの状態では力を出しにくく、最適な水準は個人の特性や競技の特性によって一人ひとり異なると説明しています。セルフトークについても、効果的な言葉は人によって異なると考えられるとしています。
職場で取り入れるときは、全員に同じ呼吸法や同じ言葉を求めるのではなく、いくつかの技法を体験してもらい、本人が自分に合うものを選べる形にします。本番前に気持ちを落ち着けたい人もいれば、反対に気持ちを高めたい人もいるためです。
(参考)スタッフコラム No.18 身体と心の調整(後編) – 青森県スポーツ科学センター
心の情報は取扱規程を決めてから集める
心理検査やアンケートで社員の心の状態を集める場合は、その扱いを先に決めます。厚生労働省の指針は、事業者が健康管理を通じて得た労働者の心身の状態の情報について、そのほとんどが個人情報保護法の「要配慮個人情報」に当たる機微な情報だとしています。そのうえで、事業場ごとに情報の取扱規程を定めて、扱いを明確にすることを求めています。
スポーツの心理サポートでも、秋田県スポーツ科学センターのコラムは、口約束で始めず、選手の個人情報の扱い方や実施の場所・日程・回数を依頼者と確認して契約するよう勧めています。ストレスチェックの結果を誰が見られるかはストレスチェック結果の閲覧範囲と同意で整理しています。
(参考)労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針 – 厚生労働省
(参考)スポーツコラム 令和6年度第4号 心理サポートの内容について – 秋田県スポーツ科学センター
スポーツ心理学の専門家に頼む手順|申し込み・計画・評価の3段階

外部の専門家に研修や個別のサポートを頼む場合は、申し込み、計画と準備、実施と評価の3段階で進めます。秋田県スポーツ科学センターのコラムが紹介するスポーツの心理サポートの流れを、職場向けに当てはめたものが上の図です。
依頼先の目安になるのが、日本スポーツ心理学会が2000年4月に始めたスポーツメンタルトレーニング指導士の資格です。原則として大学院でスポーツ心理学や関連領域を学び修士号を得た人が対象で、学会に2年以上在会し、学術上の業績5点以上、研修実績10点以上、指導実績30時間以上などを満たして審査に合格する必要があります。資格の有効期限は5年間で、学会は自らが認定する資格はこの1つだけだと注意を呼びかけています。
(参考)スポーツメンタルトレーニング指導士 – 日本スポーツ心理学会
(参考)スポーツメンタルトレーニング指導士 資格の概要 – 日本スポーツ心理学会
申し込み|個人情報の扱いと回数を契約で決める
最初に、何のために頼むのかと、対象の人数、実施の場所・日程・回数、集めた情報の扱いを決めて契約します。サポートの形には、個人への個別サポート、チームへのサポート、講習会形式、オンラインがあり、目的と人数に合わせて選びます。日本スポーツ心理学会の倫理綱領は、会員に対象者への説明と同意、活動で得た情報の守秘を義務づけているので、契約の際にその扱いを具体的に確かめます。
メンタルヘルス指針は、外部の専門家を使う場合に、サービスを適切に実施できる体制や情報管理の体制が整っているかを事前に確かめることが望ましいとしています。外部に任せきりにして事業者が主体性を失わないよう、産業医などの事業場内産業保健スタッフ等が窓口になって連携することも求めています。社員の相談窓口を外部に持つ方法はEAPサービスの比較と選び方で比べています。
あわせて読みたいスポーツメンタルコーチとは|有資格者157人の所属と企業活用›
(参考)日本スポーツ心理学会倫理綱領 – 日本スポーツ心理学会
(参考)労働者の心の健康の保持増進のための指針 – 厚生労働省
計画と準備|面接と心理検査で現状をつかむ
次に、専門家が面接や心理検査で対象者やチームの状態をつかみ、その結果をもとにサポートの計画を作ります。職場であれば、ストレスチェックの集団分析の結果や、研修前のアンケートを材料にする方法も考えられます。どの部署にどの技法から試すかを、この段階で絞り込みます。研修の組み立て方はメンタルトレーニング企業研修のプログラム例で紹介しています。
(参考)スポーツコラム 令和6年度第4号 心理サポートの内容について – 秋田県スポーツ科学センター
実施と評価|途中と終了後に効果を確かめる
計画どおりに進めるだけでなく、途中や終了後に心理検査などでプログラムの効果を確かめます。一区切りついたら、続けるかどうかを依頼者と専門家で話し合って決めます。職場では、始める前と後で同じアンケートや指標を使うと、続けるかどうかを社内で判断しやすくなります。
(参考)スポーツコラム 令和6年度第4号 心理サポートの内容について – 秋田県スポーツ科学センター
Q. スポーツ心理学の専門家に職場の研修を頼むにはどうすればよいですか?
日本スポーツ心理学会が認定するスポーツメンタルトレーニング指導士を探し、申し込み、計画と準備、実施と評価の順に進めます。申し込みの段階で、個人情報の扱いや実施の回数、日程を契約で決めておきます。社内では産業医や衛生管理者などが窓口になり、外部任せにしないことが大切です。
スポーツ心理学のまとめ
スポーツ心理学は選手のための学問にとどまらず、職場の緊張、目標、自信、チーム、ストレスの課題に技法を持っています。要点は次のとおりです。出典は本文の各セクションに記載しています。
- スポーツ心理学は、応用心理学の立場からスポーツの現場の課題を扱うスポーツ科学の一分野で、対象は健康運動やレクリエーションまで含みます
- 緊張にはあがりの徴候の把握と腹式呼吸、目標管理には結果目標とプロセス目標、自信には自己効力感の4つの情報源、チームには共通目標と役割、ストレスにはコーピングとセルフトークが使えます
- 技法は、厚生労働省の指針が定める4つのケアのうち、セルフケアとラインによるケアの教育に組み込めます
- メンタルトレーニングは治療ではないため、不調が疑われる人は産業医などにつなぎ、心の情報は取扱規程を決めてから集めます
- 外部の専門家に頼むときは、申し込み、計画と準備、実施と評価の3段階で進め、社内の窓口を決めておきます
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