展示会や社内イベント、周年行事の安全を、担当者の経験だけに任せない。英国のスポーツ施設の安全指針の考え方を使い、受け入れ人数、当日の判断役、中止の基準を開催前に決めて、毎回使える社内の決まりに整えます。
対象となるお客さま
- 展示会や販促イベントを主催する広報・マーケティングの担当者
- 社内イベントや周年行事を取りまとめる総務・人事の担当者
- 催しごとの安全の決まりをそろえたい経営者・リスク管理の担当者
よくあるお悩み
- 来場者の動線や混雑への対応が、担当者の経験で決まっている
- 緊急時に、誰が止めると決めるのかがはっきりしていない
- 前回の気づきが次の催しに引き継がれない
課題|安全の責任は主催者にあるのに、決まりがなければ担当者任せになる
来場者の動線、混雑したときの対応、緊急時に誰が何を決めるか。この3つに社内の決まりがなければ、判断はその日の担当者に任されます。催しが無事に終わっても、たまたま問題が起きなかっただけなのかは分かりません。
和歌山県警察の雑踏警備実施要領は、雑踏事故の防止は「第一次的には主催者の責任においてなされるもの」としています。対策の範囲は会場内に限らず、雑踏の影響が及ぶ会場外も含みます。警察庁の令和6年版警察白書も、行事やイベントの主催者に必要な安全対策をとるよう指導していると説明しています。
消防の手続きは開催地で異なります。東京消防庁の管内では、観覧場や展示場で概ね1000人以上を収容する催しに、開催の3日前までの届出が必要です(防火対象物一時使用届出書を出す場合を除く)。屋内展示場で喫煙、裸火の使用、危険物品の持込みをするには、消防署長の承認が要ります。平成25年の福知山市の花火大会の火災(死者3人、負傷者56人)を受けて火災予防条例(例)が改正され、消防長が指定する大規模な屋外イベントでは、防火担当者の選任と計画の提出が義務づけられました。
こうした届出の対象にならない規模でも、来場者の安全を確かめる必要がなくなるわけではありません。届出とは別に、主催者として決めておくことがあります。
(参考)令和6年版 警察白書 第6章 公安の維持と災害対策 – 警察庁
(参考)観覧場又は展示場における催物の開催届出書 – 東京消防庁
原因|人数・判断役・中止の基準が、開催前に決まっていない
担当者の注意不足の問題ではありません。原因は、担当者が判断するための決まりがないことです。
- 人数を定員だけで見る:席数や会場の定員に収まっていても、入口の待ち列や狭い通路、出口の混雑は別に起こります。
- 当日の判断役が決まっていない:進行や来賓の対応と安全の判断を同じ人が兼ねると、混雑や急病への対応が後回しになります。
- 止める基準がない:基準がないと、当日に損失や関係者への影響と比べながら、その場で決めることになります。
公的な手引きも、判断役と基準を事前に決めるよう示しています。徳島県の「EAP(緊急時対応計画)策定の手引き」(令和7年12月)は、主催者に安全管理責任者の設置、危機事象ごとの中止判断の目安、決定の手順、周知先の一覧をあらかじめ用意するよう示しています。対象は県が関わる大規模イベントなどで、企業の催しすべてに求めるものではありませんが、確かめる項目は企業の催しにも当てはまります。
スポーツ知見|英国のスタジアムは、最も低い人数と判断役で安全を管理する
英国の Sports Grounds Safety Authority(SGSA、スポーツ施設の安全に関する政府の助言機関)は、Guide to Safety at Sports Grounds(通称 Green Guide、第6版は2018年)と、その補足指針 SG03 を発行しています。スタジアムの観客の安全を、次の3つの決まりで管理する考え方です。
- 安全な収容人数:座席の数では決めません。入場、場内の収容、通常の退場、緊急時の退場の4つをそれぞれ算定し、最も低い値を最終の収容人数とします。退場の算定は、門の幅ではなく経路の最も狭い箇所で行います。この人数を超えて入場させてはならないとしています。
- Safety Officer(安全責任者):当日の運用上の安全を統括する役割です。上層部や主催者に諮らなくても安全の判断ができる権限を持ち、当日はほかの役割を持ちません。不在に備えて代理も置きます。
- 緊急時計画:起きたことの結末を4つに分けます。計画なしで対応して続行、計画を使って通常どおり続行、運用を変えて続行、そして遅延・中止・延期です。
SGSAは、財務上の損失や評判への影響を避けるためだけに、安全上のリスクを知りながら開催や続行をしてはならないとも述べています。催しの後には、当日のうちに関係者で事後の確認を行い、必要なら後日あらためて検証して、計画を見直します。
(参考)Calculating safe capacity – Sports Grounds Safety Authority
(参考)Safety Officer – Sports Grounds Safety Authority
(参考)Contingency planning – Sports Grounds Safety Authority
(参考)Risk management – Sports Grounds Safety Authority
(参考)Supplementary Guidance 03: Event Safety Management – Sports Grounds Safety Authority
(参考)Guide to Safety Certification – Sports Grounds Safety Authority
ただし、試合と仕事は同じではありません。英国のスタジアムは常設の施設で、指定を受けたものは安全証明書の法制度のもとで運用され、規模も企業の催しとは違います。企業の催しは借りた会場で開くこともあり、建物の管理者や消防の手続きが別にあります。そこで、Green Guideの計算方法や数値はそのまま使いません。使うのは考え方だけで、人数は会場の実測と施設管理者の情報をもとに決めます。
解決策|受け入れ人数・判断役・中止基準の3つを開催前に決める
新しい設備を入れる話ではありません。催しごとに、次の3つを同じ様式で決めます。
- 受け入れ人数:入口の処理人数、場内の人数、通常の退場、緊急時の退場を会場で確かめ、最も低い人数を上限にします。建物の定員や消防の決まりを超えないことが前提です。
- 判断役:安全責任者とその代理を指名し、当日はほかの役割を持たせません。入場の制限や避難誘導の開始は、上司に諮らず決められるようにします。中止の最終決定を誰と行うかも決めておきます。
- 中止基準:地震、台風、落雷、暑さ、火災、混雑ごとに目安を決めます。当日の判断は「続行」「対応して続行」「条件を変えて続行」「延期・中止」の4段階にそろえます。
決めた内容は、スタッフと来場者に伝える方法まで書いておきます。避難の呼びかけの文言や周知先の一覧を用意しておくと、当日の混乱を抑えられます。障がいのある方や外国語を使う方への案内も、このときに決めます。
進め方|次の催し1件で試し、年間の催しへ広げる
すべての催しを一度に変えると、担当者の負担が増えて続きません。まず次の催し1件で決まりを使い、手間と効果を確かめます。
診断では、直近の催しの資料を読み、担当者に聞き取り、会場を確かめます。設計・試行では、確認表、役割と権限の一覧、判断基準を作り、次の催しの当日に使います。定着では、規模に応じて使う項目を分け、年間の催しに広げます。
期間は目安です。診断だけ、催し1件だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意、聞き取り、会場確認の同行、文書化を担います。御社には過去の資料と会場図面の共有、安全責任者の指名、会場の管理者・消防署・警察署・警備会社への確認をお願いします。
成果物|催しのたびに社内で使える4つの安全管理マニュアル
成果物は、御社の実際の催しをもとに一緒に作ります。規模の違う催しでも使えるよう、必ず確かめる項目と、規模に応じて足す項目を分けます。
開催が決まったら、担当者が「会場リスク確認表」を使います。入口、通路、階段、出口、避難経路、周辺の道を確かめ、受け入れ人数の上限を書き込みます。準備の段階では「役割と権限の一覧」で、安全責任者と代理、各持ち場の担当、緊急時の連絡先を決めます。
当日は「判断基準表」を安全責任者が手元に置きます。どの事態で何を確かめ、4段階のどれにするか、誰に伝えるかが1枚で分かります。催しの後は「事後レビューの手順」に沿って、当日中に短く確認し、後日あらためて改善点と担当を決めます。
期待できる効果|経営・担当者・現場スタッフの3つが変わる
経営にとっては、催しごとの安全の確かめ方がそろい、判断の根拠が記録に残ります。担当者は、経験だけに頼らず同じ様式で準備でき、異動があっても引き継げます。現場スタッフは、持ち場と連絡先、止める条件を開催前に知ることができます。
見る数字は「開催前に確認表を終えた催しの割合」です。もう1つ「事後レビューで決めた改善のうち、次の催しまでに実施した割合」を見ると、前回の気づきが生かされているかが分かります。この取り組みは事故が起きないことを保証するものではありません。リスクを減らし、起きたときに動ける状態を作るものです。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、決まりを見直す時期です。
Human Soarからのコメント
催しの準備では、集客や演出など決めることがたくさんあります。だからこそ、安全の決まりは担当者の努力に頼らず、開催前に決めておきたいところです。スタジアムの指針が教えてくれるのは、止める判断をする人を先に決めておく大切さです。御社の催しを一緒に確かめながら、毎回使える形に整えます。
よくあるご質問
Q. 小規模な社内イベントでも必要ですか?
必要な範囲に絞れば、小規模な催しでも使えます。受け入れ人数と判断役、緊急時の連絡先だけを1枚にまとめる形もご提案します。運動を伴う催しのように、少人数でもけがや体調不良が起きやすいものは、救護の手順まで決めます。
Q. 会場の管理者や警備会社に任せていれば十分ですか?
十分とは言えません。会場の設備や警備の専門的な判断は任せられますが、何人受け入れるか、いつ止めるかは主催者が決めることです。主催者の決まりを先に作ると、施設や警備会社との打ち合わせで確認する点も明確になります。
Q. 届出や法令の確認も任せられますか?
届出の代行や法的な判断は行いません。届出の要否は開催地の条例と催しの内容で変わるため、所轄の消防署・警察署と会場に確認していただきます。個別の法的な判断は弁護士などの専門家にご相談ください。Human Soarは確認する項目の整理を支援します。
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