中途採用のオンボーディング手順|スポーツ心理学で役割を明確にする

中途採用のオンボーディング手順|スポーツ心理学で役割を明確にする ソリューション
SOLUTION|中途採用 × スポーツ心理学

即戦力として採った人が、力を出す前に迷っていませんか。スポーツ心理学の「役割のあいまいさ」の研究をもとに、担当の範囲・仕事の進め方・評価のされ方・できないときの対応の4点を入社前後に確かめ、相談相手の割り当てと30・60・90日の確認までを仕組みにします。

中途採用オンボーディング人材定着組織開発

このプログラムについて相談する

対象となるお客さま

  • 中途採用を増やしているが、受け入れは配属先に任せている人事責任者
  • 経験者を採ったのに、なかなか任せられないと感じる事業責任者
  • 中途入社者の受け入れを担当する現場の管理職

よくあるお悩み

  • 中途入社者が1年もたたずに辞めてしまう
  • 経験はあるはずなのに、力を出すまで時間がかかる
  • 何を説明するかが、配属先や上司によって違う
ISSUE

課題|中途入社は増えても、入社時の説明を行う事業所は約半数

中途入社オンボーディング設計プログラム|転職者に行った教育訓練の種類の割合と、転職入職者と新規学卒者の比較

中途入社は、新卒を大きく上回る規模です。厚生労働省の令和7年雇用動向調査では、パートタイムを除く一般労働者の転職入職者は約318万人(前年は約305万人)で、新規学卒者の約89万人と比べると、計算上は約3.6倍です。

採る理由には、早く力を出してほしいという期待が表れています。令和7年転職者実態調査(5人以上の常用労働者を雇う事業所が対象、2025年10月1日現在)で転職者を採用した理由(3つまで)を聞くと、専門的・技術的な仕事では「経験を活かし即戦力になるから」が64.1%、管理的な仕事では60.7%で、どちらも最も多くなっています。

一方で、受け入れの手順は事業所ごとに差があります。転職者がいる事業所のうち、教育訓練を実施したのは82.6%でした。実施した事業所でも、内容が「入職時のガイダンス」なのは53.9%で、転職者がいる事業所全体で計算すると約45%です。

転職者本人に今後の希望を聞くと、「今の職場で今後も働きたい」は55.1%で、「機会があれば転職したい」が20.6%、「わからない」が22.9%でした。これは働き続ける意向の数字で、実際の定着率ではありません。定着や力を出すまでの期間は、診断で御社の数字を確かめます。

(参考)令和7年 雇用動向調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)令和7年転職者実態調査の概況 – 厚生労働省

CAUSE

原因|即戦力という期待が先に立ち、役割の説明が後回しになる

中途入社オンボーディング設計プログラム|中途入社者が迷う3つの原因と、転職者が受けたと感じた受け入れの数

本人の適性だけの問題とは限りません。受け入れる側には、次の3つの原因があります。

  • 経験者だからと説明を省く:任せる範囲や評価の見方を伝えないまま仕事が始まると、本人は手探りで成果を出そうとします。
  • 前職とのやり方の違いを話さない:社内の暗黙の決まりは、聞かなければ分かりません。前職のやり方をいったん手放すこと(アンラーニング)も、本人任せになります。
  • 相談相手が上司に偏る:評価者でもある上司にしか聞けないと、小さな疑問を抱えたままになります。

労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告書は、中途入社者には入社後すぐ結果を求められることが多いと指摘し、適応の課題として暗黙のルールの理解やアンラーニングを挙げた研究と、中小企業では上司のサポートしか機能していない可能性を示した研究を紹介しています。

同じ報告書の調査(2020年12月実施、30〜54歳が対象。転職者4,205人を分析)で、内定から入社直後までに会社がしてくれたと本人が答えた受け入れの数は、平均で公式のサポートが5項目中0.80、上司・先輩・同僚の支えが3項目中0.52、中途入社者どうしの交流や紹介が3項目中0.17でした。受けたと答えた人ほど、会社についての理解が進み、組織への愛着と定着の意欲が高いという結果も出ています。本人の回答をもとにした分析なので因果までは言い切れませんが、受け入れの中身を見直す手がかりになります。

(参考)労働政策研究報告書No.215 ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成(2022年) – 独立行政法人労働政策研究・研修機構

SPORTS INSIGHT

スポーツ知見|スポーツ心理学は、役割のあいまいさを4つの面に分けて測る

中途入社オンボーディング設計プログラム|スポーツ心理学の研究が示した役割のあいまいさの4つの面と、役割への自信との関係

スポーツ心理学には、チームの中で自分の役割がはっきりしない状態(役割のあいまいさ)を調べた研究があります。Beauchamp らは中等学校の男子ラグビー選手271人を調べ、あいまいさと役割上の働きの負の関係は、役割をこなせるという自信(役割効力感)を介して説明されると報告しました(Group Dynamics、2002年)。このとき測った、あいまいさの4つの面は次のとおりです。

  • 責任の範囲:自分の責任がどこまでか
  • 行動:責任を果たすために何をすればよいか
  • 評価:自分の働きがどう評価されるか
  • 結果:責任を果たせないと何が起きるか

時期との関係も調べられています。中等学校のラグビーとフィールドホッケーの選手277人(33チーム)の研究では、シーズン初めのあいまいさが、1か月後の役割への自信のばらつきを攻撃で20.70%、守備で22.45%説明しました(Psychology of Sport and Exercise、2005年)。Eys らの研究(Journal of Sport & Exercise Psychology、2003年)では、あいまいさはシーズン序盤から終盤にかけて下がり、序盤は1年目の選手がベテランより大きく、終盤には差がなくなりました。選手151人に理由を聞いた研究(Small Group Research、2005年)では、原因はコーチなどの伝える側、本人、状況の3つに分かれました。

経験者が新しいチームへ移る場面の研究もあります。Owiti と Hauw は、プロや代表クラスのバスケットボール選手20人(クラブの移籍経験3〜10回)に聞き取りを行いました(Frontiers in Sports and Active Living、2021年)。挙がった困難は、指導者との間が38件、チームメイトとの間が27件、クラブとの間が27件、家族や友人との間が15件でした。移籍を重ねた選手でも、出場時間の減少や結果への重圧、チームメイトとの関係に苦労しています。

(参考)Role Ambiguity, Role Efficacy, and Role Performance – Beauchamp, Bray, Eys & Carron(2002)

(参考)A multilevel investigation of the relationship between role ambiguity and role efficacy in sport – Beauchamp, Bray, Fielding & Eys(2005)

(参考)Role Ambiguity in Sport Teams – Eys, Carron, Beauchamp & Bray(2003)

(参考)Athletes’ Perceptions of the Sources of Role Ambiguity – Eys, Carron, Beauchamp & Bray(2005)

(参考)The Problematic Experience of Players’ Mutations Between Clubs – Owiti & Hauw(2021)

ただし、試合と仕事は同じではありません。これらの研究の対象は選手で、中等学校の選手や、移籍を振り返った20人の話が中心です。会社員で確かめたものではなく、関連を見た研究なので、因果は言い切れません。序盤のあいまいさが終盤の満足度を予測しなかった研究もあります(Journal of Sports Sciences、2003年)。また仕事の成果は試合のようにすぐには見えず、上司は評価者でもあります。

そこで4つの面は、効果を約束するものではなく、確かめる項目の枠組みとして使います。組織の新人については、70の標本をまとめたメタ分析(Journal of Applied Psychology、2007年)が、役割の明確さ・自信・周囲からの受け入れを、受け入れの取り組みと満足度・業績・離職などをつなぐものとして報告しています。合うかどうかは、御社の入社者で90日の確認を通して確かめます。

(参考)Role ambiguity and athlete satisfaction – Eys, Carron, Bray & Beauchamp(2003)

(参考)Newcomer adjustment during organizational socialization – Bauer, Bodner, Erdogan, Truxillo & Tucker(2007)

SOLUTION

解決策|役割を4点で確かめ、相談相手と90日までの確認を決める

中途入社オンボーディング設計プログラム|入社前の情報・役割の確認・相談相手の割り当て・30・60・90日の確認の4つの手順

研修を増やすのではなく、入社前から90日までに、誰が何を確かめるかを決めます。経験を尊重しつつ、自社での役割は確かめ直します。

  • 入社前の情報:配属先、最初に任せる仕事、初週の予定、使う道具を内定後に知らせ、本人の質問を受けます。
  • 役割の確認:配属初日に上司と本人で、担当の範囲、仕事の進め方、評価のされ方、できないときの対応の4点を話します。前職で身につけた進め方も聞き、自社と違う点をその場で確かめます。
  • 相談相手の割り当て:上司とは別に受け入れ担当を1人決め、先に中途入社した社員も紹介します。受け入れ担当の業務量は、その分を調整します。
  • 30・60・90日の確認:30日で4点を本人の言葉で言い直し、60日で前職との違いと任せる範囲を見直し、90日で評価の見方と次の3か月の担当を決めます。

確認の結果は受け入れの改善に使い、人事評価には使いません。上司へ伝える内容は本人の了解を取ります。新卒の受け入れは前提が違うため、新卒の早期離職対策のプログラムで扱っています。

APPROACH

進め方|過去の入社者に聞き取り、次の中途入社者で90日試してから広げる

中途入社オンボーディング設計プログラム|診断・設計と試行・定着の3つのフェーズで、やること・役割分担・期間の目安

受け入れの手順を全社で一度に変えると、配属先の実情に合わないものが残ります。まず1〜2部署で、次の中途入社者を対象に試します。

診断では、過去の中途入社者の在籍期間を確かめ、本人と上司に聞き取りをして、4点のどこで迷いが起きたかを整理します。設計・試行では、様式と担当を決めて、内定から入社後90日までを実際に回します。定着では、ほかの部署へ広げ、採用から受け入れまでを人事の手順に組み込みます。

期間は目安で、入社の時期によって変わります。Human Soarは聞き取り、様式の用意、初回の確認の同席を担い、御社には入社者の情報の共有と、試す部署と受け入れ担当の決定をお願いします。

OUTPUT

成果物|入社前から90日までを社内で回す4つの道具

中途入社オンボーディング設計プログラム|入社前から90日までに使う4つの成果物と使う人

成果物は、御社の職種と配属先に合わせて一緒に作ります。入社のたびに、同じ手順で使えるようにするためです。

内定後に使うのが「入社前情報チェックリスト」です。人事と配属先が、知らせる内容と担当を確かめます。入社前には人事が「相談相手の割当表」で受け入れ担当を決め、配属初日に上司と本人が「役割確認シート」で4点を話します。

入社後は、受け入れ担当が「30・60・90日確認の手順書」に沿って話を聞き、人事が結果を集めます。半年ごとに結果を見直し、チェックリストとシートの項目を直します。

VALUE

期待できる効果|本人が役割と相談先を説明できる状態で90日を終える

中途入社オンボーディング設計プログラム|経営・受け入れ部署・入社者の変化と見る数字、受け入れを見直す時期かを確かめるセルフチェック

経営にとっては、部署ごとの受け入れの差が見えるようになり、採用した人が力を出すまでの状況を同じ物差しで話せます。受け入れ部署では、説明の抜けと担当者任せが減り、上司が替わっても同じ手順で迎えられます。入社者は、任された範囲と評価の見方、聞く相手が分かった状態で仕事に集中できます。

見る数字は「入社90日の時点で、役割の4点を自分の言葉で説明できる入社者の割合」です。あわせて「入社1年以内の離職率」を追います。数字の改善を約束するものではなく、入社者の数が少ない間は聞き取りとあわせて読みます。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、受け入れを見直す時期です。

COMMENT

Human Soarからのコメント

経験のある人ほど、入社してすぐに「分かりません」とは言いにくいものです。だからこそ、受け入れる側から確かめる項目と順番を決めておく意味があります。経験を生かしてもらうために、御社での役割を一緒に言葉にしていきます。

FAQ

よくあるご質問

Q. 中途採用のオンボーディングは、新卒の受け入れと何が違いますか?

前提が違います。中途入社者は経験があるため早く成果を求められやすく、前職とのやり方の違いも問題になります。そのため集合研修よりも先に、役割の4点の確認と、前職との違いの話し合いを置きます。

Q. 中途入社が年に数人の会社でも進められますか?

進められます。入社のたびに同じ様式を使うだけなので、人数が少なくても手順は変わりません。数字だけでは傾向が読めないため、本人と上司への聞き取りとあわせて見直します。

Q. 役割確認シートで労働条件は変わりますか?

変わりません。シートは仕事の進め方をそろえるためのもので、労働条件は労働基準法第15条にもとづき書面などで明示します。2024年4月からは就業場所と業務の変更の範囲の明示も必要です。内容が食い違わないよう確かめ、個別の判断は社会保険労務士などの専門家に確認します。

(参考)2024年4月から労働条件明示のルールが変わります – 厚生労働省

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました