女性の健康に関する制度や研修を用意しても、使われなければ形だけで終わります。スポーツ医学の現場にある相談の組み立てを職場向けに置き換え、制度の棚卸し、相談先の案内、管理職の手引き、匿名調査による見直しまでを整えます。会社が個人の健康情報を集めない形で進めます。
対象となるお客さま
- 健康経営や福利厚生を担当している人事・総務の方
- 女性活躍の行動計画を見直している担当者
- 現場の働きやすさに課題を感じている経営者・事業責任者
よくあるお悩み
- 制度を用意したのに、利用が増えない
- 研修を開いても、参加者が限られている
- 相談を受けた管理職が、どこまで聞いてよいか迷っている
課題|制度や研修があっても、使われなければ形だけになる
女性の健康への取り組みは、実施したかどうかだけでは足りません。必要な人が必要なときに使えて、初めて意味を持ちます。経済産業省は、月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療の4項目による労働損失等の経済損失を、社会全体で年間約3.4兆円と推計しています(ボストン コンサルティング グループの試算)。
一方で、用意したものが届いていない様子も数字に表れています。令和5年度の健康経営度調査(大規模法人3,520法人が回答)では、知識を得るための研修などに取り組む法人が8割を超えました。ただ、2022年度の参加率の中央値は全管理職で85.4%、全女性従業員で34.2%、全従業員では15%でした。
令和7年度の雇用均等基本調査では、2024年4月から2025年3月に生理休暇の請求者がいた事業所は4.9%、請求した女性労働者は1.1%でした。生理休暇は就業が著しく困難な場合に請求するものなので、この数字だけで不足とは言えません。それでも、請求が少ない理由を確かめないままでは、制度が役に立っているかは分かりません。
原因|言い出しにくさを残したまま、制度の有無で点検を止めている
担当者の熱意や、社員の関心の問題ではありません。原因は次の3つです。
- 申し出る相手が上司に偏っている:体調の話を、評価する相手に伝えることになります。
- 使っている人が見えない:前例が見えないと、自分が使ってよいのかを判断できません。
- 点検が制度の有無で止まっている:使われない理由を確かめていないので、次に何を直すかが決まりません。
厚生労働省の資料が紹介する民間調査(日経BP、2021年、20〜40代の働く女性1,956人)では、生理休暇の利用しにくさとして「男性上司に申請しにくい」が61.8%、「利用している人が少ないので申請しにくい」が50.5%でした。生理による不快な症状が強いのに我慢している人は66.4%です。
経済産業省の効果検証プロジェクトの資料(2025年3月時点の案)も、利用率が低いときは理由を特定するよう示しています。制度の内容が足りないのか、利用しづらい体制や雰囲気なのかで、直すところが変わるからです。
スポーツ知見|スポーツ医学の現場は、相談を全員に開き、決めるのは本人に任せる
国立スポーツ科学センター(JISS)のスポーツクリニックには、「女性アスリートトータルサポート」という取り組みがあります。メディカルチェックのときに看護師が女性アスリート全員と面談し、女性特有の課題を聞き取って、情報提供や受診の調整を行うものです。2024年度は554名が受診し、65.2%(361名)に何らかの課題がありました。組み立てには、次の4つの特徴があります。
- 全員に機会を用意する:困っている人だけを呼び出す形にしていません。
- 話しにくい話題を一覧にする:相談する機会が少ないと思われる課題を20項目に整理し、希望があれば情報を提供します。
- つなぐ基準を決める:医学的に介入が必要と思われる場合は受診を勧め、それ以外は情報提供にとどめます。相談窓口でも、女性看護師が受けて、必要に応じて診療や外部機関を案内しています。
- 選ぶのは本人:担当の看護師は、「自分のために知って、自分で選ぶ」ことが大切だと述べています。
個別に見る理由は研究にもあります。月経周期と競技や運動の成績の関係は、研究で一貫した結論が出ていません。McNultyらのレビュー(Sports Medicine、2020年)は78研究を分析し、卵胞期前期の成績の低下はごくわずかで、研究の質は「低い」と評価しました。そのうえで一律の指針は作れないとし、一人ひとりの反応に基づく対応を勧めています。国内でも、体育系大学の女性アスリート51名を調べた須永らの報告(Journal of High Performance Sport、2019年)で、症状の変化は3つのタイプに分かれました。
(参考)HPSC Female Sport Vol.5(令和7年10月) – 国立スポーツ科学センター 女性アスリート研究・支援プロジェクト
(参考)女性アスリート相談窓口 – ハイパフォーマンススポーツセンター
(参考)月経周期が女性アスリートの生理的・心理的コンディションに与える影響(2019年) – Journal of High Performance Sport
ただし、試合と仕事は同じではありません。JISSの取り組みの対象はトップレベルの競技者で、一般の会社員で確かめたものではありません。また、話を聞くのは医療者ですが、会社は評価や配置の権限を持つ雇用主です。そこで面談を全員に課す形は移さず、同じ案内を全員に届けます。体調の記録は求めず、月経周期に合わせて業務を割り当てることもしません。
解決策|制度を場面から引ける形にし、相談と業務の調整を分ける
新しい制度を足す前に、いまある制度を使える形に直します。見直すのは次の3つです。
- 制度を場面から引く:休暇、時差出勤、テレワーク、検診の支援などを、「体調が悪い日」「通院したい」「更年期かもしれない」といった場面から引ける一覧にします。申請先と、理由を伝える必要があるかも書き出します。
- 案内は全員に同じ形で:産業医や保健師、外部の相談先、オンラインの健康相談を1枚にまとめ、全員に届けます。相談した内容が会社に伝わるのかどうかも、案内に明記します。
- 管理職は業務の調整まで:理由を聞き出さず、症状の判断もしません。業務の調整と相談先の案内までを役割とします。診断や治療の話は医療職に任せます。
個人の健康情報の扱いは最初に決めます。厚生労働省の指針によると、健康管理を通じて得た情報のほとんどは要配慮個人情報にあたり、健康相談の結果などを会社が集めるには、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です。同意しないことを理由に不利益に扱うこともできません。
女性活躍推進法にもとづく事業主行動計画策定指針も、職場での女性の健康上の特性に関する取り組みが望ましいとする一方で、プライバシー保護への留意を求めています。性別を問わず使いやすい特別休暇など、働く人全体を対象にすることも有効としています。個別の規程の判断は、社会保険労務士や弁護士などの専門家にご確認ください。
(参考)労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針(令和4年3月31日改正) – 厚生労働省
進め方|1部門で試し、匿名調査で直してから全社へ広げる
案内や手引きは、実際に使ってみないと直すところが分かりません。まず1部門で試し、言い出しやすさが変わるかを確かめてから広げます。
診断では、制度と規程を書き出し、任意回答の匿名調査で、知っているか、使えたか、使わなかった理由は何かを聞きます。設計・試行では、棚卸し表と案内、管理職の手引きを作り、1部門で使います。定着では、全社に広げ、年1回の調査と見直しを社内の予定に組み込みます。
期間は目安です。棚卸しだけ、管理職の手引きだけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意、聞き取り、調査の設計と集計、文書化を担います。御社には規程の共有、試す部門の決定、産業医や保健師など社内外の専門職との調整をお願いします。
成果物|担当者が替わっても点検を続けられる4つの仕組み
成果物は、御社の規程と調査の結果をもとに一緒に作ります。
最初に作るのが「制度と利用しにくさの棚卸し表」です。人事の担当者が、制度ごとの場面、申請先、使いにくい点を一覧にし、経営への報告にも使います。次の「相談先の案内」は全従業員向けの1枚で、入社時や年1回の周知で配り、相談先と情報の扱いを伝えます。
「管理職の対応手引き」は、部下から体調の話があったときに開くものです。聞いてよいこと、聞かないこと、業務の調整の仕方、つなぐ先を書きます。最後の「匿名調査の設問と見直し手順」は、年1回、人事の担当者が使います。回答者が少ない単位では集計を出さないなど、個人が特定されない決まりも入れます。
期待できる効果|個人を追わず、制度が使える状態かを数字で見る
経営にとっては、制度を置いたかどうかではなく、使える状態かどうかで取り組みを判断できるようになります。管理職は、どこまで聞くかで迷わず、業務の調整に集中できます。従業員は、上司に理由を話さなくても相談先を知ることができます。人事の担当者は、次に何を直すかを調査の結果から決められます。
見る数字は、匿名調査で「必要なときに使える制度や相談先を知っている」と答えた人の割合です。もう1つ、研修の全従業員の参加率も見ます。利用件数の増加は目標にしません。件数は体調に左右されるうえ、個人を追うことにつながるからです。健康状態の改善を約束するものではなく、スライドのセルフチェックで2つ以上当てはまれば、見直しの時期と考えます。
Human Soarからのコメント
体調の話は、会社が踏み込みすぎても、距離を置きすぎてもうまくいきません。スポーツ医学の現場が大切にしている「全員に機会を用意し、選ぶのは本人」という考え方は、その間を決める手がかりになります。御社の制度と働き方に合わせて、無理なく使える形を一緒に作ります。
よくあるご質問
Q. 社員に月経周期や体調の記録をつけてもらう必要はありますか?
ありません。記録は本人が自分や医師のために選んで使うもので、会社が求めたり集めたりはしません。このプログラムで会社が見るのは、制度の認知や使いやすさを聞く匿名調査の集計だけです。
Q. 産業医や保健師がいない会社でも進められますか?
進められます。社内に専門職がいない場合は、外部の相談先やオンラインの健康相談を案内に載せます。診断や治療の判断は医療機関に任せ、会社は業務の調整と案内を担う形に整えます。
Q. 生理休暇を有給にすれば、使われるようになりますか?
それだけで使われるとは言えません。使わない理由が賃金なのか、上司に言いにくいことなのかは会社ごとに違います。先に匿名調査で理由を確かめ、合う手を選びます。賃金や就業規則の変更は、社会保険労務士などの専門家にもご確認ください。
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