ダブルチェックが形骸化する企業へ|サッカーのVARに学ぶ確認の設計

ダブルチェックが形骸化する企業へ|サッカーのVARに学ぶ確認の設計 ソリューション
SOLUTION|業務品質 × ミス防止

ダブルチェックをしているのに、請求や発注のミスがお客さまに届いてしまう。確認の手間ばかり増えて、効き目が見えない。サッカーのVAR(ビデオ判定の担当審判)の決まりを参考に、確認する項目を絞り、元の情報と突き合わせる確認の手順に組み直します。

業務改善ミス防止内部統制組織開発

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対象となるお客さま

  • 請求・受発注・経費精算などでミスが続いている経理・総務・業務部門の責任者
  • ダブルチェックを増やしてもミスが減らず、手間だけが増えている管理職
  • 確認の手順を見直したい品質管理・内部統制の担当者

よくあるお悩み

  • 2人で確認したはずの請求書の金額が違っていた
  • 確認欄に印は押されているが、何を見たのか誰も答えられない
  • 確認する人が忙しく、確認そのものが後回しになる
ISSUE

課題|確認を重ねても、誤りは通り抜けている

確認工程再設計プログラム|ダブルチェックをしても誤りが通り抜ける流れと、ダブルチェックに関連した医療事故165件の内訳

ミスが起きたとき、よくとられる対策が確認を1つ増やすことです。作った人が見て、別の人がもう一度見る。それでも誤りが通り抜けることがあります。2人目が見せられたものに印を押すだけなら、確認は1回と変わりません。

確認を最も厳しく行う医療の現場でも、同じことが起きています。日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業では、2020年1月〜2022年12月に報告された事故のうち、ダブルチェックに関連した165件を分析しました。84件は「ダブルチェックを行ったが誤りに気付かなかった」事例、81件は「行うことになっていたが行わなかった」事例でした。行わなかった理由は、確認する人がいなかった(19件)、焦っていた(11件)が上位です。

つまり、確認を増やすだけでは足りません。何を、何と突き合わせて、誰が確認するのかまで決める必要があります。

(参考)医療事故情報収集等事業 第73回報告書 – 公益財団法人日本医療機能評価機構

CAUSE

原因|確認する人が、正しい元の情報と見比べていない

確認工程再設計プログラム|ダブルチェックが効かない3つの原因と、誤りに気付かなかった84件の分類

確認する人の注意力の問題ではありません。原因は確認のやり方にあり、次の3つです。

  • 見せられたものを承認している:作った人が出した資料だけを見て、元の発注書や契約書と見比べていません。作った人と同じ誤りを、そのまま通してしまいます。
  • 全部を同じ深さで見ている:宛名の敬称も金額の桁も同じ重さで確認すると、時間が足りなくなり、肝心の項目の確認が薄くなります。
  • 誤りが責任ごと移る:確認を通ったら「確認した人の責任」と受け止められると、作った人は確認に頼り、確認する人は責任を避けて印だけを押します。

同じ事業の第72回報告書では、「ダブルチェックを行ったが誤りに気付かなかった」84件を分類しています。最も多いのは、手元に正しい情報があったのに、薬剤などのモノと照合しなかった事例で35件でした。そのうち26件は、確認する人が情報とモノを見比べていませんでした。また10件は、手元に正しい情報がない状態で「確認した」としていました。

(参考)医療事故情報収集等事業 第72回報告書 – 公益財団法人日本医療機能評価機構

SPORTS INSIGHT

スポーツ知見|確認の対象を絞り、判定は担当者に残す

確認工程再設計プログラム|サッカーのVARが確認の対象を絞り、判定を主審に残している決まりと、職場への置き換え

サッカーには、主審の判定を映像で確認するビデオアシスタントレフェリー(VAR)という審判員がいます。日本サッカー協会(JFA)が発行する「サッカー競技規則2026/27」のVARの実施手順には、確認の仕組みとして参考になる決まりがいくつもあります。

まず、VARが主審を援助するのは「はっきりとした、明白な間違い」か「見逃された重大な事象」があった場合だけです。対象も、得点かどうか、ペナルティーキックかどうか、退場、人違い(別の選手に警告や退場を命じた)といった、試合を左右する判定などに限られます。VARはこれらをすべて映像でチェックしますが、間違いがなければ主審に何も伝えません。これを「サイレントチェック」と呼びます。

次に、判定を下すのは常に主審です。VARは、試合映像に自分でアクセスできる審判員として、レビューを勧めるだけです。さらに映像の見方も分けています。スロー再生は反則の位置や接触した箇所などの事実の確認に使い、反則の強さの判断には通常の速さの映像を使います。

(参考)サッカー競技規則2026/27(ビデオアシスタントレフェリー(VAR)の実施手順) – 公益財団法人日本サッカー協会

ただし、試合と仕事は同じではありません。試合はすべての場面が映像に残りますが、仕事では元の情報が口頭やメモにしか残っていないことがあります。そのため、確認の仕組みより先に、照合に使う元の情報をどこに残すかを決めます。

SOLUTION

解決策|確認を4つの決まりで組み直す

確認工程再設計プログラム|確認を組み直す4つの決まりと、向いている業務

確認の回数を増やすのではなく、確認のやり方を変えます。ダブルチェックそのものはやめません。

  • 重要項目の限定:金額・数量・宛先・期日など、間違えるとお客さまや会社に損が出る項目だけを、確認する項目として決める
  • 元データとの照合:確認する人は、作った人の資料ではなく、発注書・契約書・システムの登録内容を自分で開いて見比べる
  • 最終判断は作成者:確認する人は差し戻しを勧めるだけにし、出すかどうかの判断と責任は作った人に残す
  • 確認結果の記録:「問題なし」も含めて記録し、確認で見つけた誤りと、お客さまに届いてから見つかった誤りを数える

中心になるのは元データとの照合です。原因で見たとおり、誤りに気付かなかった確認の多くは、正しい情報と見比べていませんでした。見比べる相手を元の情報に変えることで、2人目の確認が意味を持ちます。

APPROACH

進め方|1つの業務で試してから、ほかの業務に広げる

確認工程再設計プログラム|診断・設計と試行・定着の3つのフェーズで、やること・役割分担・期間の目安

最初からすべての業務の確認を変えると、現場が混乱します。まず請求や受発注など、ミスの影響が大きい1つの業務で試してから広げます。

診断では、直近のミスと差し戻しを一緒に棚卸しし、いまの確認で誰が何を何と見比べているかを一覧にします。設計・試行では、1つの業務で重要項目と照合する元データを決め、3か月ほど新しい手順で回します。定着では、ほかの業務に広げ、毎月の記録をもとに確認項目を見直します。

期間は目安です。診断だけ、1業務だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・手順書の作成・月次レビューの進行を担い、御社にはミスと差し戻しの記録の共有と、試す業務の決定をお願いします。

OUTPUT

成果物|支援が終わっても社内で回せる4つの仕組み

確認工程再設計プログラム|プロジェクトの4つの成果物と活用場面

成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の実際の業務とミスの記録をもとに、一緒に作ります。

最初にできるのが「確認工程の棚卸し表」です。業務ごとに、誰が、何を、何と見比べているかを一覧にしたもので、どこに確認の穴があるかを経営に説明できます。次に、業務ごとの「重要項目リスト」を作ります。確認する人が、どの項目を必ず見て、どの項目は見なくてよいかを迷わず決められるようにします。

運用に入ると、「照合手順書」に沿って、確認する人が元データを開いて見比べます。手順書には、元データの置き場所と見比べ方を業務ごとに書きます。最後に「確認記録シート」と月次レビューの手順を整えるので、確認で見つけた誤りの数を毎月追い、確認項目を社内だけで見直し続けられます。

VALUE

期待できる効果|経営・管理職・担当者の3つが変わる

確認工程再設計プログラム|経営・管理職・担当者の3つの効果と、確認の見直しどきを確かめるセルフチェック

経営にとっては、ミスが社外に出る前にどれだけ止められているかを、毎月の数字で追えるようになります。管理職は、どの業務のどの項目に確認の時間を使うかが決まっているので、人手が足りない月でも確認が後回しになりにくくなります。担当者は、確認で何を見ればよいかが分かり、印を押すだけの確認から抜け出せます。

見る数字は、確認した件数ではなく「確認で見つけた誤りの数」です。これが0件の月が続く業務は、確認の対象がずれているかもしれません。もう1つ「お客さまに届いてから見つかった誤りの数」を見ると、確認の効き目が分かります。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、確認のやり方を見直す時期です。

COMMENT

Human Soarからのコメント

サッカーのVARは、すべての判定をやり直す仕組みではありません。試合を左右する判定だけを、映像という元の情報と見比べ、判定そのものは主審に残しています。確認を増やして疲れている職場ほど、確認を減らして深くする余地があります。御社の業務とミスの記録をもとに、どこを、何と見比べるかを一緒に決めます。

FAQ

よくあるご質問

Q. ダブルチェックをやめて、1人の確認に戻すのですか?

やめません。確認する項目を絞り、見比べる相手を元の情報に変えます。重要項目は2人目が元データと照合し、それ以外の項目は作った人が自分で確認する形にするので、確認にかける時間を大事な項目に集められます。

Q. システムで自動チェックすれば、人の確認はいらなくなりませんか?

形の誤りはシステムに任せるのがおすすめです。桁数や必須項目の入力漏れは、人より確実に見つけられます。一方で、取引の条件に合っているかなど意味の確認は人が行う必要があり、その部分を元データとの照合で確かめます。

Q. 確認する人を置けない小さな部署でも依頼できますか?

できます。2人目を置けない場合は、作った人が時間を空けてから、元データと見比べて自分で確認する手順にします。重要項目リストと記録シートはそのまま使えるので、人数が少ない組織でも同じ仕組みで運用できます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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