デュアルキャリアとは|アスリートの競技と仕事の両立支援

デュアルキャリアと競技と仕事の両立支援 スポーツ人材

「現役アスリートを雇用したいが、競技と仕事の両立をどう支援すればいいか分からない」という人事担当者は多いのではないでしょうか。

この記事では、「デュアルキャリア」の考え方と、アスリートが競技と仕事を両立するために企業が取り組める支援策を紹介します。

デュアルキャリアとは何か

デュアルキャリアとは、アスリートが「人」としての人生を歩みながら「競技者」としての人生も同時に歩むという考え方です。平成21年頃に欧州を中心に広まり、日本でも第一期スポーツ基本計画で初めて言及されました。競技一本に専念するのではなく、就学や就労と両立させながら競技生活を続けることを指します。

従来は「競技に専念しないと一流になれない」という価値観が根強くありましたが、引退後に社会適応で苦労する選手が少なくないことが課題視され、現役時代からキャリア形成を並行して進める考え方が広まってきました。特に10代からトップレベルの競技に打ち込んできた選手ほど、就労経験や学業の機会が限られ、引退後の選択肢の狭さに直面しやすい傾向が指摘されています。

スポーツ庁は「スポーツキャリアサポート支援事業」を通じて、現役時代から引退後を見据えたキャリア形成を支援しており、企業・学校・地域での運動指導や教育活動など、活躍の場を広げる取り組みを推進しています。国としてこの分野への支援を強化していることは、企業側にとってもデュアルキャリア支援に取り組みやすい環境が整いつつあることを意味します。

(参考)スポーツキャリアサポート戦略 – スポーツ庁

企業がデュアルキャリアを支援する意義

企業にとって現役アスリートの雇用は、単なる社会貢献にとどまらない意味を持ちます。ここでは3つの観点を紹介します。

特に地方に拠点を持つ企業にとっては、地域に密着した実業団やクラブチームとの連携が、地域社会との関係構築にもつながりやすいという側面があります。

①採用ブランディングへの効果

現役アスリートの活躍を支援する企業姿勢は、採用市場における企業イメージの向上につながります。特にスポーツに親和性の高い若年層への訴求力が高まりやすい傾向があります。地域リーグのチームを支援する場合は、地元での知名度向上や採用説明会への集客効果も期待できます。採用広報の一環として、支援を受けるアスリート自身の活動をSNSや自社サイトで発信する企業も増えています。

②組織の多様性・活力の向上

競技と仕事を両立する社員の存在は、既存社員にとっても目標に向かって努力する姿を間近で見る機会になり、組織全体の士気向上につながるケースがあります。大会で結果を出した際の社内発表や表彰の機会を設けることで、他の社員のモチベーション向上にもつながりやすくなります。

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③引退後の戦力化を見据えた早期関係構築

現役時代から関係を築いておくことで、引退後もそのまま自社の戦力として活躍してもらいやすくなります。競技引退のタイミングは選手本人にとっても不確実性が高い時期であり、現役時代からの信頼関係が、引退後の進路選択における安心材料になることも少なくありません。デュアルキャリア支援は、採用と長期的な人材確保を同時に進める取り組みともいえます。引退のタイミングで初めて採用活動を始めるより、現役時代からの関係構築の方が、本人の人柄や適性を長期的に見極められるという利点もあります。

両立を支援する具体的な制度設計

実際にデュアルキャリアを支援する企業では、勤務時間の柔軟化や遠征時の休暇制度など、競技活動に配慮した人事制度を整えています。制度設計にあたっては、対象となる選手が置かれている競技環境や大会スケジュールの特殊性を、人事担当者が丁寧にヒアリングすることが出発点になります。フルタイム勤務にこだわらず、業務量や勤務日数を個別に調整できる契約形態を用意する企業も増えています。海外遠征が多い競技では、リモートワークを組み合わせた勤務形態が特に有効です。

重要なのは、支援制度を用意するだけでなく、現場のマネージャーや同僚が競技活動への理解を持てるよう、社内での情報共有や説明の機会を設けることです。制度の存在だけを社内周知しても、なぜその制度が必要なのかという背景まで伝わらなければ、現場では「特別扱い」という受け止め方になりかねません。制度があっても現場の理解が伴わなければ、実際には使いにくい支援になってしまいます。導入初期は人事部門が個別に運用をフォローし、うまくいった事例を社内に共有していくことで、現場の理解が徐々に広がっていきます。

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すぐ使えるアクションプラン:支援制度設計の3ステップ

デュアルキャリア支援を検討する企業向けに、制度設計の3ステップを紹介します。

1本人の競技スケジュールを把握する:遠征・合宿・大会の年間スケジュールを事前にすり合わせる
2柔軟な勤務制度を用意する:時短勤務・フレックス・遠征休暇など複数の選択肢を整える
3社内理解を広げる場を設ける:同僚・マネージャー向けに支援制度の意図を説明する機会を作る

まとめ

  • デュアルキャリアとは、競技者としての人生と社会人としての人生を同時に歩む考え方
  • 企業にとっては採用ブランディングや組織活性化、引退後の戦力化につながる取り組み
  • 柔軟な勤務制度と現場の理解の両方が両立支援の実効性を左右する
  • 本人の競技スケジュールの把握が制度設計の出発点になる
  • 導入初期は人事部門による個別フォローと成功事例の共有が現場理解を広げる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業にてメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。
現在は独立し、About The New株式会社を設立。教育コンテンツの研究・開発を行い、スポーツの知見を活かした人材育成プログラムを提供している。

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