アスリートのソフトスキルを研修で企業人材に転換

アスリートのソフトスキルを企業研修に転換する方法を示すアイキャッチ画像 スポーツ人材

「元アスリートを採用したいが、研修プログラムをどう設計すればいいか分からない」。人材育成担当者からこうした相談を受けることが増えています。競技経験そのものは魅力的でも、それを企業内でどう言語化し、他の社員にも応用可能なスキルとして落とし込むかは、意外と体系化されていません。

この記事では、アスリートが持つソフトスキルの特徴を整理したうえで、研修設計への落とし込み方と、実際の導入企業・支援団体の取り組みを紹介します。

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アスリートが持つソフトスキルの特徴

日本オリンピック委員会(JOC)は「JOCキャリアアカデミー」を通じて、現役時代から就職支援・キャリアカウンセリング・教育研修を行い、企業と現役トップアスリートをマッチングする「アスナビ」制度を運営しています。競技以外の世界に視野を広げることが、アスリート個々の人生を豊かにすると同時に、競技力向上にもつながるという考え方に基づいた取り組みです。

アスリートが競技活動を通じて培うソフトスキルは、大きく3つに整理できます。目標から逆算して計画を修正し続ける「PDCAの実践力」、結果が出ない時期も継続する「精神的な強靭さ」、そして限られた時間で最大の成果を出すための「体力・自己管理能力」です。これらは競技特有の能力に見えて、実は多くの職種で応用可能な汎用スキルです。

(参考)アスリートのキャリア支援 – 日本オリンピック委員会(JOC)

研修設計への落とし込み方

アスリートのソフトスキルをそのまま「精神論」として語るだけでは、研修として機能しません。実際に企業研修に落とし込む際は、競技経験の要素を業務スキルの言葉に翻訳する作業が必要です。

競技経験の要素 業務スキルへの翻訳 研修での扱い方
シーズンを通じた目標設定 中長期の目標管理・逆算思考 目標設定研修のケーススタディ役
スランプからの立て直し 失敗からの学習・レジリエンス 若手向けメンタルタフネス研修
コンディション管理 自己管理・セルフモニタリング 健康経営・生産性研修の実例紹介

JOCキャリアアカデミーが整理するアスリートの就職支援・教育研修の考え方をもとに、Human Soarが業務スキルへの翻訳例として作成。

体験談だけで終わらせない

アスリートを講師として招く研修にありがちな失敗は、競技人生の体験談を語って終わってしまうことです。体験談の後に「自分の業務に置き換えるとどうなるか」を参加者自身に書き出させるワークを必ず組み込むと、研修としての定着率が上がります。

翻訳表を事前に講師と共有する

アスリート講師は自身の経験がどのビジネススキルに対応するか、必ずしも整理できているとは限りません。事前に翻訳表を共有し、講演内容をビジネス用語に紐づけてもらうよう依頼することで、研修の質が安定します。

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導入企業・支援団体の取り組み

JOCの「アスナビ」は、現役を続けながら就職したいアスリートと、アスリート採用を希望する企業をマッチングする制度として、企業説明会を継続的に開催しています。企業側にとっては、採用後にアスリートの経験を社内研修へ還元してもらうことで、採用コストを人材育成の投資として回収する動きにもつながっています。

採用と研修講師起用をセットで設計する

アスリート採用を「稀有な人材の獲得」だけで終わらせず、入社後に社内研修の講師役を担ってもらう設計にすると、採用効果が本人以外の社員にも波及します。

現役後のキャリアも見据える

アスナビのような制度は現役続行を前提にしていますが、引退後のキャリア移行を見据えて早い段階から社内での役割を用意しておくと、長期的な人材育成の投資として機能します。

よくある質問

研修予算が限られる中小企業でも導入できますか

できます。翻訳表の作成と体験談後のワークは、外部講師料をかけずに社内で運用できる部分です。アスリート講師の起用は、まずアスナビの企業説明会など既存の窓口を活用すると、初期コストを抑えて接点をつくれます。

競技経験が異なる複数のアスリートを起用する場合はどうすればいいですか

競技種目が違っても、PDCAの実践力・精神的な強靭さ・自己管理能力という3つの軸は共通して当てはめられます。研修設計側がこの3軸を先に用意しておけば、講師が変わっても一貫した研修構成を維持できます。

アスリートのソフトスキルは「翻訳」次第で企業の資産になる

まとめると、アスリートのソフトスキルを企業研修に活かす鍵は、精神論として語ることではなく、業務スキルへの翻訳作業にあります。

  • PDCAの実践力・精神的な強靭さ・自己管理能力の3つに整理する
  • 競技経験の要素を業務スキルの言葉に翻訳する表を用意する
  • 体験談で終わらせず、参加者自身に置き換えさせるワークを組み込む
  • 採用と研修講師起用をセットで設計し、引退後のキャリアも見据える

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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