現役を退いた翌日から、これまでの生活は一変します。毎日決まった時間に始まっていた練習も、遠征も、チームメイトとの時間もなくなり、「これから何をすればいいのか」という問いに向き合うアスリートは少なくありません。競技実績が輝かしいほど、引退後の落差に戸惑う声も聞かれます。
この落差は「アイデンティティ・クライシス」とも呼ばれ、長年「競技者としての自分」を軸に生きてきた人ほど大きく影響を受けるとされています。
この記事では、アスリートのセカンドキャリアを支える国際的な取り組みと、日本国内の支援策、企業がどう関われるかを整理します。
国際的に広がるアスリート支援の考え方
国際オリンピック委員会(IOC)は、現役中から引退後を見据えたキャリア形成を支援する取り組みを進めており、教育・就労・スキル開発の機会を提供するプログラムを各国のオリンピック委員会と連携して展開しています。競技一本に集中する時代から、競技と並行してキャリアを準備する「デュアルキャリア」の考え方が国際的に広がりつつあります。国内の競技団体・大学・企業も、こうした国際的な潮流を踏まえながら、独自のキャリア支援の仕組みづくりを進めています。
「引退してから考える」では遅い理由
引退のタイミングは怪我や年齢によって急に訪れることもあります。現役中から少しずつキャリアの選択肢を広げておかないと、いざという時に何から手をつけていいか分からず、貴重な準備期間を失ってしまいます。国際的な支援の考え方も、引退後ではなく現役中からの並行準備を重視する方向にシフトしています。
日本国内の支援策と企業の役割
日本国内でも、アスリートのキャリア形成を後押しする政策が進められています。スポーツ庁は第3期スポーツ基本計画のなかで、アスリートが競技と学業・仕事を両立できる環境整備や、引退後のキャリア形成支援を政策目標として掲げています。背景には、競技実績はあっても社会人経験が少ないまま引退を迎える選手が一定数存在し、その後のキャリア形成に苦労するケースが課題視されてきたことがあります。
| 支援の担い手 | 主な役割 | 企業との接点 |
|---|---|---|
| 国・スポーツ庁 | 制度・環境整備 | 研修プログラムとの連携 |
| 競技団体 | 現役中のキャリア相談窓口 | インターン受け入れ先の紹介 |
| 企業 | 雇用・就労機会の提供 | 採用・デュアルキャリア雇用 |
アスリートのセカンドキャリアを支える担い手と役割
国・スポーツ庁|制度・環境整備
競技と学業・仕事の両立を認める制度づくりや、引退後の相談窓口の整備が進められています。制度が整うことで、現役中からキャリアを考える文化そのものが根づきやすくなります。
競技団体|現役中の相談窓口
一部の競技団体では、現役選手向けにキャリア相談窓口を設け、引退後を見据えた資格取得やインターンシップの情報を提供しています。早い段階から相談できる環境があることで、引退の衝撃を和らげられます。
企業|雇用・就労機会の提供
企業側は、現役中の選手を「デュアルキャリア雇用」として受け入れたり、引退後の選手を正社員として採用したりする形で関わることができます。競技経験を活かせる職種を用意することで、双方にとって価値のある関係が築けます。実際に営業・広報・人事・法人企画など、競技経験と相性の良い職種は幅広く存在します。
企業が支援に関わるメリット
アスリートのセカンドキャリア支援に関わることは、単なる社会貢献にとどまりません。競技経験者ならではの規律・目標達成力を組織に取り込めるほか、スポーツ団体との関係構築を通じてブランドイメージの向上にもつながります。
特に若手社員の育成という観点でも効果が期待できます。目標に向けて努力を継続してきたアスリートが同じ職場にいることで、周囲の社員のモチベーションにも良い影響を与えるという声も現場では聞かれます。競技経験者を単なる「広報の顔」として扱うのではなく、実務のなかで力を発揮できる配置を用意することが定着の鍵になります。
今日から検討できる3つの関わり方
大規模な制度を新設しなくても、企業は段階的にアスリート支援に関わり始められます。
まとめ
- IOCは現役中からのデュアルキャリア形成を国際的に後押ししている
- 日本もスポーツ庁の政策として、競技と仕事の両立・引退後の支援を掲げている
- 企業は現役中のインターン受け入れから段階的に関われる
- 採用は競技経験が活きる職務を具体的に描くことから始める
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