鈴木啓太の腸内細菌研究|サプリと検査を企業目線で整理

鈴木啓太の腸内細菌研究|サプリと検査を企業目線で整理 スポーツアスリート

健康施策の候補に「腸活」が挙がったとき、名前を目にすることが多いのが、元サッカー日本代表の鈴木啓太さんです。ただ、鈴木啓太さんが腸内細菌で何をしていて、サプリや検査がどこまで根拠のあるものなのかを、社内で説明できる人は多くありません。

先に要点をまとめます。鈴木啓太さんは2015年10月、現役最後のシーズン中に腸内細菌の研究会社AuB(オーブ)を設立しました。同社は2025年7月時点で、アスリート1,200人以上・2,600検体以上の便を集めて解析しています。事業の柱は、サプリメント「aub BASE」と腸内細菌検査「GUT PARTNER」の2つです。

一方で、アスリートの腸内細菌についての知見は、同社の公式発表と学会発表の段階にあります。この記事では、公式の情報で確認できたことと、まだ確かめられていないことを分けて整理します。

鈴木啓太が腸内細菌の会社を始めた理由は母の教えと現役時代の実感

鈴木啓太さんが腸内細菌の事業を始めた原点となる母の教え「人間は腸が一番大事」の引用

鈴木啓太さんが腸内細菌の事業を始めた出発点は、子どもの頃からの母親の教えです。AuBの代表挨拶で、鈴木さんは「私は幼少の頃から『人間は腸が一番大事』ということを母に教えられて育ってきました」と書いています。小学館の子育てメディアHugKumの取材(2023年10月)では、母親から「腸は大事だから、毎日うんちを見なさい」と言われて育ったと話しています。

現役時代もお腹のケアを続けていました。同じ取材によると、食事のあとは必ず温かい緑茶を飲み、梅干しを食べる習慣を海外遠征でも続けていたそうです。nippon.comの記事(2022年11月)は、2004年のアテネ五輪アジア最終予選で遠征メンバー23人中18人が下痢に苦しむなか、鈴木さんは体調を崩さなかったと伝えています。鈴木さんはこのときを振り返り、「人間は腸が大切だと母が言っていたことは本当でした。初めて心の底から母に感謝しました」と語っています。

起業の理由について、代表挨拶には「腸を整えること」の大切さをスポーツ界やファン・サポーターのヘルスケアに生かすことで「恩返しができるのではないだろうか。と、考えたのが起業のきっかけです」とあります。自分の体で確かめてきた習慣を、データで説明できる形にしたい。それが事業の原点だと読み取れます。

(参考)ABOUT(代表挨拶・沿革) – AuB株式会社

(参考)元サッカー日本代表の鈴木啓太さん「幼少期から毎日うんちを見るのは母の影響」(2023年10月23日) – HugKum(小学館)

(参考)茶色のダイヤ:トップアスリートの腸内環境を解析ー元浦和レッズ・鈴木啓太さん(2022年11月18日) – nippon.com

Q. 鈴木啓太さんはなぜ腸内細菌の会社を起業したのですか?

母親から「人間は腸が一番大事」と教えられて育ち、現役時代に腸を整える大切さを実感していたためです。AuBの代表挨拶では、その経験をスポーツ界やファン・サポーターのヘルスケアに生かして恩返しをしたいと考えたのがきっかけだと説明しています。会社の設立は2015年10月で、現役最後のシーズン中でした。

2015年の会社設立から検査の刷新まで|鈴木啓太とAuBの歩み

AuBの歩みは、研究だけに集中した最初の約4年と、商品・検査を世に出したその後に分かれます。鈴木啓太さんは浦和レッズに16年間在籍し、2015シーズンをもって現役を引退しました。会社の設立日は2015年10月15日なので、引退より先に会社ができていたことになります。同社の沿革とリリースから、主な節目を4つの時期にまとめました。

時期 主な出来事 この時期の意味
2015年10月〜2019年3月 会社設立。アスリートの便のデータが500人分・1,000検体を突破 商品を出さず研究に専念
2019年4月〜12月 資金難、大正製薬などから約3億円を調達、サプリ「AuB BASE」発売 研究から事業へ移行
2020年〜2021年 新しいビフィズス菌「AuB-001」を発見、浦和レッズとパートナー契約 成果をスポーツ界へ還元
2025年 医療機関向けブランド開始、検体は1,200人以上・2,600検体以上に、検査を「GUT PARTNER」へ刷新 検査と伴走支援を強化

出典:AuB株式会社「ABOUT」の沿革、同社リリース(2025年2月7日・7月7日・10月22日)をもとにHuman Soarが作成。

2015年〜2019年3月|商品を出さず研究に専念した約4年

設立からの約4年間、AuBは商品もサービスも出していません。同社の研究ページには「設立から約4年間、商品やサービスなどの事業を行わず、研究に注力してきました」とあります。この間に集めたアスリートの便のデータは、2019年3月に500人分・1,000検体を超えました。

nippon.comの記事によると、設立当時の鈴木さんはまだ現役で、ビジネスプランも明確ではなかったそうです。売るものを決める前に、まずデータを集めることから始めた会社だと言えます。

(参考)RESEARCH – AuB株式会社

(参考)鈴木氏の引退試合を開催【浦和】 – Jリーグ公式サイト

2019年|資金難を越えて最初のサプリを発売

研究だけの期間は、資金面では厳しいものでした。沿革には2019年4月に「資金難で危機的状況に陥る」とあり、翌5月に大正製薬などから約3億円の資金調達に成功したと記されています。同年12月、最初の商品であるサプリメント「AuB BASE」が発売されました。

4年分の研究を商品という形にして、ようやく事業が回り始めた年です。アスリートが体調管理をどう組み立てているかは、アスリートのコンディショニングをまとめた記事でも紹介しています。

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2020年〜2021年|新しい菌の発見と浦和レッズとの契約

沿革には、2020年9月に新機能をもつビフィズス菌「AuB-001」を発見したこと、2021年2月に古巣の浦和レッズとパートナー契約を結んだことが記されています。同社は沿革のなかで、研究成果を事業にし、事業で得た成果をまたアスリートへ還元するという考えを示しています。

アスリートから預かった検体で研究し、その成果を競技の現場に戻す。この循環ができたのがこの時期です。

2025年|医療機関向けブランドと検査サービスの刷新

2025年2月、AuBは医療機関向けの新ブランド「aub for medical」を立ち上げました。同年7月のリリースでは、保有する検体が1,200人以上・2,600検体以上になったと公表しています。競技の種類は、2月時点で45種を超えています。

10月には検査会社のサイキンソーと業務提携し、検査キットの名称を「BENTRE」から「GUT PARTNER」に変更しました。創業10周年の節目に、検査とその後の支援を作り直した形です。

(参考)ABOUT(代表挨拶・沿革) – AuB株式会社

(参考)サッカー元日本代表 鈴木啓太が率いる腸活ビジネスの「AuB」が医療機関向け新ブランド「aub for medical」を立ち上げ(2025年2月7日) – AuB株式会社

(参考)2025年10月15日で創立10周年を迎えるAuB。特設サイトを開設。(2025年7月7日) – AuB株式会社

(参考)腸内環境の可視化と伴走支援を強化──AuB×サイキンソーが提携、腸内検査キット「GUT PARTNER」を販売開始(2025年10月22日) – AuB株式会社

AuBの研究で分かっていること|アスリートの腸内細菌は種類が多い

AuBが公式に発表している主な知見は、アスリートは一般の人より腸内細菌の種類が多く、酪酸菌を多く持つという2点です。ただし、どちらもアスリートと一般の人を比べた結果で、原因と結果の関係までを示したものではありません。

公式に発表されている知見は多様性と酪酸菌

AuBの研究ページには、「研究の結果、アスリートは一般の人より腸内細菌の種類が多いことが分かりました」「AuBの研究で、アスリートは『酪酸菌』を一般人の2倍以上持つことが分かりました」と書かれています。酪酸菌は、腸の中で酪酸という物質を作る菌の総称です。

同社がここから導いた考え方は、特定の菌に頼らないことです。研究ページは「AuBが導き出したキーワードは『多様性』です」とまとめています。nippon.comの記事は、腸内細菌全体のうち酪酸菌の割合が一般の人は2〜5%、アスリートは5〜10%だという同社の説明を紹介しています。

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(参考)RESEARCH – AuB株式会社

(参考)茶色のダイヤ:トップアスリートの腸内環境を解析ー元浦和レッズ・鈴木啓太さん(2022年11月18日) – nippon.com

比較の結果として読み因果は別に確かめる

これらの知見を読むときは、3つの点に気をつけてください。1つ目は、アスリートと一般の人の比較であることです。運動をしたから菌の種類が増えたのか、食事や生活の違いによるのかは、この結果だけでは分かりません。2つ目は、比較した人数や統計の数値が公式ページに載っていないことです。

3つ目は、発表の形です。沿革には、2018年3月に農芸化学会で発表したと記されています。当メディアが確認できた範囲で、同社の研究が査読つきの国際学術誌に載ったのは、2026年1月の「サイエンティフィック・リポーツ」掲載の論文です。これは香川大学との共同研究で、米麹が酪酸菌を増やす仕組みを培養実験で調べたものでした。同社も「腸内環境の改善につながる可能性があることを示唆する結果」と表現しています。

社内で紹介するときは、「アスリートは腸内細菌の種類が多いという報告がある」までにとどめるのが正確です。「腸内細菌を整えれば仕事の成果が上がる」とまでは、公開されている資料からは言えません。

(参考)【AuB論文発表】米麹が腸内の善玉菌を増やすメカニズムを解明 α-アミラーゼが増殖のカギ – AuB株式会社

Q. AuBの研究では何が分かっていますか?

アスリートは一般の人より腸内細菌の種類が多く、酪酸菌を2倍以上持つことが分かったと、AuBは公式サイトで発表しています。同社は2025年7月時点で1,200人以上・2,600検体以上のアスリートの便を保有しています。ただしこれは比較の結果で、運動が原因で菌が増えたという因果関係までは示されていません。

鈴木啓太の会社のサプリはaub BASE|約30種類の菌を配合

鈴木啓太さんの会社が販売している代表的なサプリは「aub BASE(オーブベース)」です。酪酸菌を中心に、約30種類の菌を1つにまとめています。医薬品ではなく食品で、公式の説明も「サポート」という表現にとどまっています。

aub BASEは3粒に酪酸菌約3,000万個|単品8,140円

公式の商品ページは、aub BASEを「腸内フローラをケアする酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌など約30種類の菌を配合したサプリメントです。毎日を健やかに生活するための体調管理の土台づくりをサポートします」と説明しています。1日の目安は3粒で、3粒に酪酸菌が約3,000万個、乳酸菌やビフィズス菌が約30億個含まれます。

価格は、2026年10月時点の公式ストアで単品8,140円(税込・約30日分)、定期コースは初回6,980円、2回目以降5,980円です。アンチ・ドーピング認証の「インフォームド・スポーツ」を取得していると記載されています。商品ページに機能性表示食品の表示は確認できませんでした。

(参考)aub BASE(商品ページ) – aub store(AuB株式会社)

大学サッカー部20人の検証は可能性を示した段階

サプリに使われている菌の素材について、AuBは2021年8月に検証結果を公表しています。大学の男子サッカー部員20人が1日3粒を3週間とり、練習の前後で唾液に含まれる抗体(IgA)の量を比べました。練習後の低下幅は、とり始める前が約47%減、3週目は約25%減で、約22ポイントの差があったという内容です。

ただし、サプリをとらないグループとの比較は行われておらず、人数も20人です。同社のリリースも、低下を抑える効果が「期待できる可能性が示されました」という書き方にとどめています。商品ページのよくある質問には、腸の状態によって膨満感などを感じる人がまれにいるため、1粒や2粒から始める方法もあると書かれています。

福利厚生などで配ることを考える場合は、効果を約束する言い方を避け、体質に合わないときはやめられるようにしておくのが安全です。

(参考)アスリート・ビオ・ミックスの摂取で抗体(IgA)の低下を抑制、感染症予防に向けた可能性示す結果に(2021年8月10日) – AuB株式会社

Q. 鈴木啓太さんの会社の腸内細菌サプリは何ですか?

代表的なサプリは「aub BASE」で、酪酸菌を中心に約30種類の菌を配合しています。2019年12月に発売され、2026年10月時点の公式ストアでは単品8,140円(税込)です。医薬品ではなく、公式の説明は「体調管理の土台づくりをサポート」という表現です。

腸内細菌検査はGUT PARTNER|便を郵送して3〜5週間で結果

鈴木啓太さんの会社AuBの腸内細菌検査GUT PARTNERの流れを示した図

鈴木啓太さんの会社の腸内細菌検査は「GUT PARTNER(ガットパートナー)」という名前で、個人向けに販売されています。自宅で便を採ってポストに投函すると、3〜5週間でレポートがメールで届きます。価格は2026年10月時点で22,000円(税込)です。

この検査は、以前は「BENTRE(ベントレ)」という名前でした。2025年10月22日、AuBは検査会社のサイキンソーとの業務提携に合わせて名称を変更しています。企画・販売はAuB、解析協力はサイキンソーです。

レポートでは、腸内細菌の多様性などの指標で状態を評価します。あわせて、太りやすさ、疲労・睡眠、メンタル、免疫力、筋肉など9つのテーマについて、関連する腸内細菌の結果とアドバイスが示されます。AuBはリリースで「医薬品的な効能を標榜するものではありません。検査結果は生活習慣の見直しに活用いただく情報提供を目的としています」と明記しています。病気の診断に使うものではありません。

名称について鈴木さんは、「検査して終わりではなく、ともに整えていく存在でありたい。そういう思いで『PARTNER』という名をつけました」とコメントしています。なお、医療機関向けには別の検査サービスが用意されています。

(参考)腸内環境の可視化と伴走支援を強化──AuB×サイキンソーが提携、腸内検査キット「GUT PARTNER」を販売開始(2025年10月22日) – AuB株式会社

(参考)GUT PARTNER(商品ページ) – aub store(AuB株式会社)

Q. 鈴木啓太さんの会社の腸内細菌検査はいくらですか?

腸内細菌検査「GUT PARTNER」は、2026年10月時点の公式ストアで22,000円(税込)です。自宅で採った便を郵送し、3〜5週間でレポートが届きます。病気の診断ではなく、生活習慣を見直すための情報提供を目的とした検査です。

企業が腸内環境に取り組むなら食物繊維の不足から確かめる

企業が従業員の腸内環境に関わるなら、検査やサプリの前に、毎日の食事で食物繊維が足りているかを見るのが近道です。当メディアが確認した範囲では、AuBが企業の福利厚生向けに検査を提供しているという公式発表は見当たりませんでした。会社としてできることは、食事の環境づくりが中心になります。

働く世代の食物繊維は目標量に届いていない

厚生労働省の「令和6年国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の食物繊維の摂取量は1日あたり男性19.2g、女性17.1gです。年代別では、30〜50代の男性が18.1〜18.9g、女性が14.9〜16.8gでした。

これに対し「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の目標量は、30〜64歳の男性で1日22g以上、18〜74歳の女性で18g以上です。年齢の区切りは2つの資料で少し違いますが、働く世代は男性で3〜4g、女性で1〜3gほど足りていない計算になります。

あわせて読みたいアスリート腸活の食物繊維摂取量|栄養サポート実践ガイド›

(参考)令和6年国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省

(参考)日本人の食事摂取基準(2025年版)スライド集 – 厚生労働省

食物繊維は量に加えて種類を増やす

AuBは2023年7月、20〜50歳の一般男女160人の便と食習慣アンケートを調べた結果を学会で発表しています。食物繊維は「量」より「種類数」の多さが、腸内細菌の多様性と酪酸菌の割合の両方に良い影響を与えていた、という内容です。一時点の調査なので、種類を増やせば必ず改善するとまでは言えませんが、鈴木啓太さんの会社が掲げる「多様性」という考え方とつながります。

社員食堂や置き型の食事サービスがある会社なら、野菜・海藻・豆・きのこ・雑穀など、食物繊維のとり方の選択肢を増やすことから始められます。検査やサプリは、希望する人が自分で選べる形にとどめるのがよいでしょう。検査結果は個人の健康に関わる情報なので、会社が集めない設計にしておくと安心です。食事面の施策はスポーツ栄養学の基本、制度としての進め方はウェルビーイング経営の全体像も参考にしてください。

(参考)重要なのは量 or 種類数?食物繊維の何が腸内フローラに与えるのか(2023年7月28日) – AuB株式会社

まとめ|鈴木啓太の腸内細菌研究は多様性を軸に読む

鈴木啓太さんと腸内細菌について、公式の情報で確認できたことを振り返ります。

  • 鈴木啓太さんは母親の教えと現役時代の実感をもとに、2015年10月にAuBを設立した
  • AuBは2025年7月時点で、アスリート1,200人以上・2,600検体以上の便を保有している
  • 公式に発表されている知見は「アスリートは腸内細菌の種類が多く、酪酸菌が多い」で、比較の結果にとどまる
  • サプリは「aub BASE」(単品8,140円)、腸内細菌検査は「GUT PARTNER」(22,000円)で、いずれも医薬品や診断ではない
  • 企業の施策としては、働く世代で不足している食物繊維を、種類を増やしながら補うことから始められる

まずは自社の食堂や食事補助のメニューで、食物繊維をとれる選択肢がいくつあるかを数えてみてください。そのうえで検査やサプリを紹介するなら、効果を約束せず、公式の但し書きも一緒に伝えるのが誠実な進め方です。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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