ジュニアの栄養指導の課題|指導者が知る現場の対策

ジュニアアスリートへの栄養指導の課題と対策を示すアイキャッチ画像 スポーツ栄養学

練習後にコンビニのおにぎり1個だけで済ませる中学生、体重を気にして炭水化物を減らしてしまう高校生の女子選手。ジュニアクラブや部活動の指導現場では、こうした「なんとなく良くなさそうだけど、どう指導すればいいか分からない」食事の場面に日常的に出会います。栄養士がいないクラブがほとんどのなか、指導者が唯一の情報源になっているケースも少なくありません。

この記事では、成長期の選手に起きやすい栄養課題を厚生労働省の最新データをもとに確認し、現場の栄養指導がうまくいかない理由と、保護者と共有すべき食事の基本ルールを解説します。

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成長期の選手に起きやすい栄養課題

厚生労働省は2024年10月11日、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書を公表しました。エネルギー・たんぱく質に加え、鉄をはじめとするミネラルについて年代別の推奨量が整理されており、成長期(12〜17歳ごろ)は身体づくりに必要なエネルギー要求量が生涯で最も高い時期の一つと位置づけられています。

現場で特に見落とされやすいのが「エネルギー不足」と「鉄不足」です。運動量に見合う食事量が確保できていないと、身長や骨密度の伸びに使われるはずのエネルギーが日々の運動で消費されてしまい、成長そのものが遅れるリスクがあります。また月経が始まった女子選手は、鉄の必要量が増える一方で摂取量が追いつかず、貧血気味のまま練習を続けてしまう例が目立ちます。

(参考)「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 – 厚生労働省

現場の栄養指導がうまくいかない3つの理由

栄養士が常駐していないクラブでよく見られる失敗パターンを整理すると、次の3つに集約できます。指導者が善意で行っている指導が、かえって逆効果になっているケースも少なくありません。

よくある失敗 起きていること 見直しの方向性
①体重管理の一律指導 「炭水化物を減らせ」と全員に同じ指示 成長期は減量よりエネルギー確保を優先
②補食の未活用 3食のみで練習量に対して総量が不足 練習前後の補食を「4食目」として位置づける
③個別事情の未把握 月経の有無・貧血傾向を指導者が把握していない 保護者との情報共有シートで個別に把握

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の年代別推奨量をもとに、Human Soarが現場でよくある失敗パターンとして整理。

①体重管理の一律指導をやめる

見た目の体形を気にして食事量を減らす選手は、女子だけでなく男子にも見られます。しかし成長期にエネルギー不足の状態が続くと、身長の伸びや骨密度の形成に必要な分まで削られてしまいます。指導者は「痩せる」ではなく「必要な分をしっかり食べたうえで動ける身体をつくる」という方向に声かけを変える必要があります。

②補食を「4食目」として設計する

部活の後にすぐ帰宅して夕食まで数時間空く選手は多く、その間のエネルギー不足を補食で埋める発想がないと、1日の総摂取量が慢性的に足りなくなります。おにぎりやバナナ、牛乳など、練習前後に手軽に摂れるものをクラブとして推奨リストにしておくと、家庭でも取り入れやすくなります。

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③個別事情を保護者と共有する仕組みをつくる

月経の有無や貧血の既往は、指導者からは見えにくい情報です。年度初めに保護者へ簡単な確認シートを配布し、個別配慮が必要な選手を事前に把握しておくだけで、栄養指導の的外れな一律化を避けられます。

指導者が保護者と共有する食事の基本ルール

専門的な栄養計算をクラブ単位で行うのは現実的ではありません。指導者ができるのは、家庭が実践しやすいシンプルなルールを繰り返し伝えることです。

「主食を減らさない」を最優先ルールにする

おかずやサプリメントより先に、ご飯・パンなどの主食量を確保することを最優先で伝えます。エネルギー不足の多くは主食を減らすことから始まるため、ここを守るだけで大きな改善につながります。

鉄分は「毎日少しずつ」を意識する

レバーや赤身肉を毎日食べるのは現実的ではないため、鉄分を含む食品(小松菜、ひじき、卵など)を複数の食事に分散させる考え方を伝えます。極端な鉄剤摂取ではなく、日常の食事の積み重ねで対応する方針が現実的です。

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よくある質問

栄養士がいないクラブでもできることはありますか

あります。本記事で紹介した「主食を減らさない」「補食を4食目にする」の2点は、専門知識がなくても指導者が今日から伝えられる内容です。

保護者の協力が得られない場合はどうすればいいですか

いきなり食事内容の変更を求めるのではなく、まず月経・貧血などの個別事情を把握するための確認シート配布から始めると、協力を得やすくなります。

ジュニア年代の栄養指導は「専門家頼み」にしない仕組みが鍵

成長期の栄養課題は個人差が大きく、専門的な対応にはスポーツ栄養士の力が欠かせません。一方で、日常の指導レベルでできることも確実にあります。

  • 体重管理より成長期のエネルギー確保を優先する
  • 練習前後の補食を「4食目」として推奨リスト化する
  • 月経・貧血などの個別事情を保護者と共有する仕組みをつくる
  • 「主食を減らさない」「鉄分は毎日少しずつ」を基本ルールとして繰り返し伝える

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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