アスリート腸活の食物繊維摂取量|栄養サポート実践ガイド

食物繊維が豊富な食品とアスリートの腸活をイメージした写真 スポーツ栄養学

アスリートの腸内環境は、高たんぱく・高糖質に偏った食事やグリコーゲンローディングの影響で乱れやすいことが指摘されています。文部科学省の食品成分データをもとに食物繊維を多く含む食品を独自に整理すると、練習前後で摂り方を変える工夫が見えてきます。本記事では栄養サポート担当者・アスリート自身が実践できる、腸活のための食物繊維摂取のポイントを解説します。

「体づくりのためにたんぱく質は増やしたのに、なぜかお腹の調子が優れない」——実業団やクラブチームで栄養サポートを担当していると、選手からこうした相談を受けることは珍しくありません。原因を探ると、練習量に見合うだけの食物繊維が食事から抜け落ちているケースが多く見られます。

SELF CHECK

その疲れは、
どこから来ているのか

12の質問で、いま自分に効いている負荷を「量とペース/裁量/人間関係/回復」の4つに切り分けます。約2分・登録不要、回答は保存されません。

セルフチェックをする ▶

アスリートの腸内環境が乱れやすい理由|高たんぱく・グリコーゲンローディングの影響

アスリートの食事は、体づくりのためのたんぱく質や、競技前のエネルギー確保のための糖質を優先しがちです。とくに競技直前はグリコーゲンローディングのために食物繊維の少ない単糖類中心の食事が推奨される場面もあり、結果として食物繊維の摂取量が不足しやすくなります。

食物繊維の不足は腸内細菌の多様性の低下や、短鎖脂肪酸の産生量の減少につながる可能性が研究で指摘されています。詳しい体づくり全体の考え方は一流アスリートのコンディショニング完全ガイドでも整理しています。

食物繊維を多く含む主要食品の含有量一覧|文部科学省データを独自集計

文部科学省が公表する日本食品標準成分表(八訂)増補2023年のデータをもとに、アスリートの食事に取り入れやすい食物繊維が豊富な食品を独自に集計しました。同じ「食物繊維が多い食品」でも、水溶性・不溶性のどちらが主体かによって体への働き方が異なります。

食品(100gあたり目安) 食物繊維の主な種類 アスリートにとっての特徴
オートミール(乾燥) 水溶性・不溶性の両方 主食の置き換えとして摂取しやすい
ごぼう 不溶性中心 腸のぜん動運動を促す
さつまいも 水溶性・不溶性の両方 エネルギー補給と同時に摂取できる
納豆 水溶性中心+発酵食品 腸内細菌のエサになりやすい

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」のデータをもとにHuman Soarが独自に整理(2026年8月時点)

オートミール|練習前後に手軽に摂れる主食代替

オートミールは水溶性・不溶性の両方の食物繊維をバランスよく含み、白米やパンの代わりに主食として取り入れやすい食品です。練習前後どちらでも量を調整しながら食べやすく、遠征先でも準備しやすい点がアスリートに向いています。

ごぼう|不溶性食物繊維で腸のぜん動運動を促す

ごぼうは不溶性食物繊維を多く含み、腸のぜん動運動を促す働きが期待できます。ただし不溶性食物繊維は水分を吸ってかさを増やす性質があるため、練習直前に大量に摂ると消化管への負担になりやすい点には注意が必要です。

さつまいも|エネルギー補給と食物繊維を同時に摂れる

さつまいもは糖質によるエネルギー補給と食物繊維の摂取を同時に行える食品です。練習量が多い時期でも、白米だけに偏らずさつまいもを組み合わせることで、食物繊維の不足を補いやすくなります。

納豆|水溶性食物繊維と発酵食品の相乗効果

納豆は水溶性食物繊維に加えて発酵食品としての菌体成分も含み、腸内細菌のエサになりやすい食品とされています。たんぱく質も同時に摂れるため、体づくりと腸活を両立させたいアスリートに取り入れやすい選択肢です。

あわせて読みたいスポーツ栄養学とは|マクロ栄養素・水分補給・資格を解説

(参考)日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 – 文部科学省

Q. アスリートはなぜ腸内環境が乱れやすいのですか?

高たんぱく・高糖質の食事やグリコーゲンローディングを優先するあまり、食物繊維の摂取量が不足しがちだからです。単糖類中心の食事は腸内細菌の多様性を下げ、短鎖脂肪酸の産生を減らす可能性が指摘されています。

Q. 食物繊維はどのくらい摂ればよいですか?

食品ごとの含有量は文部科学省の日本食品標準成分表で確認できますが、練習量や体格によって必要量は個人差が大きいため、管理栄養士など専門家と相談しながら食事全体で調整するのが現実的です。

アスリートの腸活に役立つ「摂取タイミング×食物繊維タイプ」の分類

食物繊維は摂るタイミングによって体への影響が変わります。練習前後とオフ日とで、水溶性・不溶性のどちらを中心に摂るかを整理すると、消化トラブルを避けながら腸活を進めやすくなります。

練習前後消化に負担をかけにくい水溶性中心の食品を少量取り入れる
オフ日不溶性食物繊維も含めてしっかり摂り、腸内細菌の多様性を高める

練習前後の摂取タイミング|消化負担を避ける工夫

練習の直前・直後は消化管への血流が優先されにくいタイミングのため、不溶性食物繊維を多く含む食品を大量に摂ると、お腹の張りや下痢につながることがあります。さつまいもやオートミールなど、水溶性を含みつつ消化への負担が比較的軽い食品を少量取り入れるのが現実的です。

オフ日の摂取タイミング|腸内細菌の多様性を高める

練習負荷が低いオフ日は、ごぼうや納豆など不溶性・発酵食品を含めてしっかり食物繊維を摂れるタイミングです。1週間のなかで摂取量にメリハリをつけることで、消化トラブルを避けながら腸内細菌の多様性を高めやすくなります。

腸内環境がパフォーマンスに影響する仕組み|短鎖脂肪酸と腸内細菌叢の役割

腸内細菌が食物繊維を発酵させる過程でつくる短鎖脂肪酸は、エネルギー代謝や免疫機能に関わるとされています。日本スポーツ振興センター(JSC)も、正しい食事がスポーツ選手の体重管理や身体組成の獲得に役立つという国際オリンピック委員会の合意声明を紹介しており、食事全体のバランスを整えることの重要性を発信しています。

腸内環境の状態には個人差が大きく、食物繊維の摂取だけで必ずしも体調が改善するわけではありません。体調不良が続く場合は自己判断で食事を変えるのではなく、管理栄養士など専門家に相談することが望ましいです。

(参考)スポーツ栄養 – 日本スポーツ振興センター(ハイパフォーマンススポーツセンター)

Q. 練習前に食物繊維を摂ると消化に悪いですか?

不溶性食物繊維を多く含む食品を練習直前に大量に摂ると、消化管への負担でお腹の張りや下痢につながることがあります。練習前は控えめにし、オフ日や練習後にまとめて摂る配分が実践しやすい方法です。

栄養サポート担当者が現場で実践できる3つのポイント

食物繊維による腸活を選手個人の努力任せにせず、栄養サポート担当者が仕組みとして支援するには、個別化・記録・専門家連携という3つのポイントが役立ちます。

個別化|競技特性と練習フェーズに合わせて配分を変える

持久系競技と瞬発系競技では食物繊維の必要量や摂取しやすいタイミングが異なります。シーズン中とオフシーズンでも練習負荷が変わるため、画一的なメニューではなく、選手ごと・時期ごとに食物繊維の配分を調整する視点が欠かせません。

記録|体調と食事内容を紐づけて振り返る

お腹の張りや排便のリズムといった体調の変化を、食事内容と合わせて記録しておくと、どの食品・タイミングが選手に合っているかを把握しやすくなります。感覚だけに頼らず、簡単な記録を習慣化することが改善への近道です。

あわせて読みたいプラントベース栄養がスポーツパフォーマンスに与える効果

専門家連携|管理栄養士・医療機関との橋渡し役になる

腸内環境の不調が長引く場合は、栄養サポート担当者だけで抱え込まず、管理栄養士や医療機関につなぐ判断も必要です。企業やチームが栄養サポート体制を整える取り組みは、職場のウェルビーイングと食事・栄養で紹介している企業の食環境整備の考え方とも共通しています。選手個人の栄養戦略の実例は久保建英の食事管理術も参考になります。

Q. 腸内環境はスポーツのパフォーマンスに関係しますか?

腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸はエネルギー代謝や免疫機能に関わるとされ、腸内環境の乱れは体調管理のしにくさにつながる可能性があります。ただし個人差が大きく、食物繊維だけで解決する話ではない点には注意が必要です。

まとめ|アスリートの腸活は食物繊維の「量」より「配分」がポイント

アスリートの腸活は、食物繊維をただ増やすだけでなく、摂るタイミングと種類を配分することが実践のポイントになります。

  • 高たんぱく・高糖質に偏った食事やグリコーゲンローディングは食物繊維不足を招きやすい
  • オートミール・ごぼう・さつまいも・納豆は、水溶性・不溶性のバランスが異なる代表的な食物繊維源
  • 練習前後は消化負担の少ない摂り方、オフ日はしっかり摂る配分にメリハリをつける
  • 短鎖脂肪酸などを通じて腸内環境はパフォーマンスに関わるが、個人差が大きく食物繊維だけで解決しない
  • 栄養サポート担当者は個別化・記録・専門家連携の3点で選手の腸活を仕組みとして支える

ご質問・ご相談はお気軽にどうぞ

お問い合わせはこちら →
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました