松元克央に学ぶ自信の再建法|企業が活かす環境変化の力

松元克央がイギリス留学でコンディションを再構築する様子を象徴する競泳プールの写真 スポーツアスリート

東京五輪の予選落ちで自信を失った競泳・松元克央選手は、短期のイギリス留学でライバルたちの「苦しい練習を全力で楽しむ」姿勢に触れたことで、日本選手権での自己ベスト更新という結果を引き寄せました。本記事では、その再起の過程と、企業の人材育成にも応用できる環境変化の力を解説します。

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東京五輪の予選落ちが松元克央から奪った自信

2019年の世界水泳選手権で200m自由形の銀メダルを獲得した松元克央選手は、五輪・世界水泳を通じてこの種目で日本人初のメダルという快挙を引っさげ、東京五輪に臨みました。ところが結果はまさかの予選落ち。プールを後にする表情には「今は何も考えられません」という言葉がふさわしいほどの放心が浮かんでいました。

そこから松元選手は、何をしても自信が持てない期間に入ります。レース前になると、いつも心のどこかに「大丈夫かな」という不安がある状態が続いたそうです。敗北をきっかけに心の整え方を変えたアスリートは他にも多く、勝負の世界で結果が出ない期間をどう過ごすかは、企業で成果を求められるビジネスパーソンにも重なるテーマだと思います。

イギリス留学で見つけた「楽しむ姿勢」という答え

自信を取り戻せないまま出場した2022年の世界水泳ブダペストでも、200m自由形は準決勝敗退。東京五輪前には肩を並べていた選手たちに、大きく引き離されてしまった現実を突きつけられます。このときに松元選手が考えたのが「世界のトップ選手たちとは、レースに至るまでの過程に差があるのではないか」という仮説でした。

そこで松元選手は短期間ながら単身でのイギリス留学を決意します。行き先は、ライバルであり東京五輪金メダリストのトム・ディーン選手が所属するチーム。そこで目にしたのは、キツくてもしんどくても、それが目標への糧になるなら喜んで全力で取り組む選手たちの姿でした。「水泳って楽しまないとダメなんだ」。この気づきを得たことで、松元選手の迷いは消えていったそうです。

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Q. 松元克央選手はなぜイギリス留学を決意したのですか?

世界水泳ブダペストでの準決勝敗退を経て、世界のトップ選手との差はレースに至る過程にあるのではと考えたためです。ライバルであるトム・ディーン選手のチームに身を置き、練習への取り組み方そのものを学び直そうとしました。

(参考)イギリス留学で取り戻せた自信 松元克央は世界水泳を全力で楽しむ – Yahoo!ニュース エキスパート(田坂友暁)

自己ベストと日本新記録が示す再起の記録推移

イギリスで見つけた答えを頼りに、肉体改造と泳ぎ・練習への取り組みの改善に取り組んだ松元選手は、2023年の日本選手権で目に見える成果を手にします。ここまでの記録の推移を年表で整理すると、松元選手がどのように苦しい時期を乗り越えてきたかが見えてきます。

松元克央の200m自由形における2019年から2023年までの記録推移を示す年表図解

図:松元克央選手の200m自由形における主要大会での記録推移

2019年世界水泳のメダルと重圧

2019年の世界水泳選手権で200m自由形の銀メダルを獲得したことは、日本人としてこの種目で初めての快挙でした。この結果が周囲からの期待を一気に高め、東京五輪でも「メダルを期待される選手」という重圧を背負うことになります。

2021年東京五輪の予選落ち

その重圧のなかで迎えた東京五輪は、まさかの予選落ちに終わりました。銀メダリストという実績があったからこそ、この結果は松元選手本人にとっても、周囲にとっても衝撃の大きい出来事だったと言えます。

2022年世界水泳ブダペストでの準決勝敗退

翌年の世界水泳ブダペストでも状況は好転せず、200m自由形は準決勝で敗退しました。かつて肩を並べていたライバルたちとの差がタイムにはっきりと表れ、自分に足りないものを直視せざるを得ない結果となりました。

2023年日本選手権での自己ベストと日本新記録

イギリス留学から帰国した後の日本選手権では、100m自由形で日本新記録、200m自由形でも1分44秒98という、前年の世界水泳の銅メダル相当のタイムを記録します。数字の変化だけでなく、松元選手自身の表情にも自信が戻ってきたことがうかがえる結果でした。

世界水泳福岡で見せた「楽しむ」という覚悟

日本選手権での結果を受けて臨んだ世界水泳福岡について、松元選手は「まず自分のパフォーマンスをしっかり出し切ること」「メダルを持ち帰って、お世話になった人たちにかけてあげたい」と語っています。同時に「水泳を楽しむということは忘れずに最後まで泳ぎたい」という言葉も残しており、結果だけでなく過程を大切にする姿勢が根づいたことが伝わってきます。

もう、レースの度に自信を失い、不安に押しつぶされそうになっていた松元選手はそこにいません。レース後の疲労回復と調整サイクルを整えたアスリートにも共通しますが、結果が出ない時期を過ごした選手ほど、回復後のコンディション管理には具体的な裏付けが伴っている印象があります。

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Q. 松元克央選手の東京五輪後の成績はどう変化しましたか?

東京五輪の予選落ち、翌年の世界水泳ブダペストでの準決勝敗退を経て、2023年の日本選手権で100m自由形の日本新記録と200m自由形の自己ベストに近いタイムを記録しました。低迷から回復までに約2年を要しています。

環境を変える力を企業の人材育成に活かす方法

松元選手の再起の起点は、単に練習量を増やしたことではなく、環境そのものを変えて「取り組み方の差」に気づいたことにありました。企業の人材育成においても、成果が伸び悩む社員に同じ研修や同じ職場環境を繰り返すだけでは、本人が気づけない視点は見えてこないことが多いと感じます。

短期留学のように、あえて普段と違うチームや現場に社員を送り出し、そこでの取り組み方の違いを体感させることは、組織の評価軸を見直したアスリートの事例とも重なる、環境変化を人材育成に生かす具体的な手段の一つだと思います。また、留学のような大きな移動でなくても、部署をまたいだ短期のプロジェクト参加や、他社との合同研修といった形で「取り組み方の違いに触れる機会」を意図的に設計することもできます。

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Q. 環境を変えて気づきを得る手法は他の社員にも当てはまりますか?

成果が伸び悩んでいるものの原因がはっきりしない社員には特に有効だと考えられます。本人が「やり方」自体を疑えていないケースが多いため、異なる環境に触れることで比較対象ができ、自分の取り組み方を客観視しやすくなります。

Q. 松元克央選手が所属していたイギリスのチームにはどんな特徴がありましたか?

東京五輪金メダリストのトム・ディーン選手が所属するチームで、苦しい練習であっても全力で楽しみながら取り組む雰囲気が特徴でした。結果ではなく過程そのものを前向きに捉える姿勢が、松元選手の意識を変えるきっかけになっています。

まとめ|松元克央の再起に学ぶコンディション管理

  • 東京五輪の予選落ちから約2年、松元克央選手は自信を失った状態が続いていた
  • 世界水泳ブダペストでの準決勝敗退を経て、イギリス留学という決断に至った
  • トム・ディーン選手のチームで「苦しさを楽しむ」姿勢に触れたことが転機になった
  • 2023年の日本選手権で100m自由形の日本新記録・200m自由形の自己ベストに近いタイムを記録した
  • 環境を変えて取り組み方の違いに気づかせる発想は、企業の人材育成にも応用できる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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