江村美咲の燃え尽き克服法|企業が学ぶ休む勇気

江村美咲が燃え尽き症候群と向き合うフェンシング選手の様子を象徴する写真 スポーツアスリート

パリ五輪後に年間王者となった江村美咲選手は、シーズン中盤で「また違う形の燃え尽き」を経験しました。その後、コーチと話し合い練習量そのものを見直したことで、試合結果にも変化が表れています。本記事では、その調整方法と企業のバーンアウト予防に活かせる視点を解説します。

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年間王者になった直後に訪れた燃え尽き症候群

2024年のパリ五輪で団体銅メダルを獲得し、翌シーズンにはワールドランキングで年間王者にも輝いた江村美咲選手。順調に見える戦績の裏側で、シーズン途中に「また違う形の燃え尽き方をしてしまった」と振り返っています。パリという大舞台の華やかさを経験した後に、お客さんの少ない地道な日々に戻るギャップを強く感じたそうです。

フェンシングが人生の中心にあるからこそ、競技の状態がプライベートな気持ちのアップダウンに直結してしまう。地元・大分での合宿で気持ちが落ちているのに笑顔を作って対応しなければならず、「自分の感情に嘘をついて接することに疲れてしまった」という言葉には、トップアスリートならではの苦しさがにじんでいます。

「やらされる練習」から「やりたい練習」への見直し手順

この状態を変えるために江村選手が行ったのが、コーチと話し合いながら練習量そのものを見直すことでした。フェンシングは相手が必要な練習が多く、ヘッドコーチが全員に同じメニューを課すのが基本だったため、個人ごとに調整するという発想自体がそれまでなかったといいます。そこから始まった見直しの手順を、4つのステップで整理しました。

江村美咲が実践した練習量見直しの4ステップを示す縦積み図解

図:江村美咲選手が実践した練習量見直しの4ステップ

①コーチと練習量を話し合う

まず着手したのが、コーチとの対話を通じて練習量そのものを見直すことでした。全員一律だったメニューを、個人の状態に応じて調整できる形に変えていったといいます。

②自分だけ休む時間を作る

次に、自分だけが休む時間を確保することを初めて実践しました。「練習をやらされる」のではなく「やりたいと思ってできる」状態を作ることを意識した結果だそうです。

③試合ごとのビデオ研究を導入

それまでは出場したすべての大会映像を振り返る習慣がなく、ほぼ自分の感覚だけに頼るスタイルでした。今シーズンからは自分自身でコーチに依頼し、全大会のビデオ研究を継続する体制を作っています。

④アジア選手権で復帰

今年の春はケガで3大会をキャンセルする状況にありましたが、6月のアジア選手権で3カ月ぶりに復帰し、団体戦で銀メダルを獲得しました。見直しの効果が、結果として表れ始めています。

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Q. 江村美咲選手が経験した燃え尽きとはどんな状態でしたか?

パリ五輪という大舞台を経験した後、お客さんの少ない地道な日々に戻るギャップから気持ちが落ち込み、それでも笑顔を作って周囲に対応することに疲れてしまった状態です。感情と行動のずれが本人の負担になっていました。

(参考)フェンシング江村美咲が「本当に生きづらい性格」という理由 ロス五輪へ「金メダル、金メダル」と言われることへの違和感 – web Sportiva(了戒美子)

大分合宿で気づいた「感情に嘘をつく」疲れ

地元・大分で行われた合宿では、応援してくれる人が多い分、気持ちが落ちていても笑顔で対応しなければならない場面が続きました。敗北や不調から心を立て直したアスリートにも共通しますが、周囲の期待に応え続けることと、本人のコンディションを守ることは、必ずしも両立しやすいものではありません。

江村選手はこの経験を「反省」という言葉で振り返っています。ストレスになっている状態でも、やりたくない気持ちのままやらなければならない状況を作ってしまったことへの反省です。この気づきがあったからこそ、練習量の見直しという具体的な行動につながったのだと思います。

金メダルという言葉への違和感が示す本当の優先順位

ロサンゼルス五輪に向けて「団体・金メダル」を目標に掲げる一方で、江村選手は「金メダル、金メダルと言われると、少し違和感がある」とも語っています。パリの舞台で「楽しむ」という目標を立てたにもかかわらず、頭が凝り固まってしまい、出し切った感覚が得られなかった経験があるためです。

だからこそ本人の中での優先順位は、結果そのものよりも「出しきったと思える試合をすること」が一番上にあるといいます。結果は後からついてくるという考え方は、成果を急ぐあまり過程を見失いがちな組織にとっても示唆的だと思います。

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Q. 江村美咲選手はロサンゼルス五輪に向けてどんな目標を掲げていますか?

団体戦・個人戦の両方で金メダルを目指すと語っています。ただし本人が最も重視しているのは結果そのものより「出しきったと思える試合をすること」で、結果は後からついてくるものと位置づけています。

バーンアウト予防を企業の人材マネジメントに活かす方法

江村選手のケースから読み取れるのは、成果を出し続けている人ほど、周囲からは不調が見えづらいという点です。年間王者という実績があっても、本人の内側では消耗が進んでいることがあります。企業においても、評価の高い社員ほど「大丈夫だろう」という前提で見過ごされがちで、不調のサインに気づいた時にはすでに深刻な状態というケースが少なくありません。

江村選手のように、画一的な負荷のかけ方を見直し、本人と話し合いながら個別に調整する仕組みを作ることは、企業のバーンアウト予防にもそのまま応用できる考え方だと思います。定期的な1on1で本人の状態を確認し、必要に応じて業務量やペースを個別に調整できる体制があるかどうかは、離職や不調の予防に直結するポイントです。

まとめ|江村美咲の燃え尽き克服から学ぶこと

  • 年間王者になった直後にも、シーズン中盤で燃え尽きを経験することがある
  • コーチと話し合い練習量を個人単位で見直したことが回復のきっかけになった
  • 自分だけ休む時間を作り、ビデオ研究を自ら導入したことで結果に変化が出た
  • 周囲の期待に応え続けることと本人のコンディション維持は両立が難しい場合がある
  • 画一的な負荷を見直し個別に調整する発想は、企業のバーンアウト予防にも応用できる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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