セッションRPE法とは、運動後の主観的な「きつさ」の点数(RPE)にトレーニング時間(分)を掛けるだけで、社員やアスリートにかかった負荷を数値化できる方法です。高価なウェアラブル端末がなくても導入でき、日本コーチング学会の研究でも陸上競技者のパフォーマンス予測に使われています。人事担当者や健康経営担当者、スポーツ関連事業の企画担当者に向けて、導入の考え方を解説します。
セッションRPE法とは何か|「主観×時間」でトレーニング負荷を可視化する仕組み
セッションRPE法とは、運動やトレーニングが終わった直後に感じる主観的なきつさを10段階で評価し、その値に運動時間(分)を掛け合わせて「負荷量」を算出する方法です。スポーツ科学者フォスター氏が2001年に提唱し、現在は陸上競技をはじめ多くの競技現場でコンディション管理に使われています。
RPE(主観的運動強度)の10段階評価とは
RPEはBorgスケールと呼ばれる主観的な運動強度の評価法をもとにしており、0を「安静」、10を「限界まで追い込んだ状態」として、本人が感じたきつさを自己申告で点数化します。特別な測定機器を使わず、運動を終えた本人に一言尋ねるだけで記録できる手軽さが特徴です。
「RPE×時間」で負荷を数値化する計算式
負荷量は「RPE(0〜10)×運動時間(分)」というシンプルな式で計算します。たとえば60分の運動でRPEが6であれば、負荷量は360という数値になります。この数値を日々記録して積み上げていくことで、個人やチームの負荷の推移を客観的な数値として比較できるようになります。
Q. セッションRPEはどうやって計算しますか?
運動終了後30分以内に本人が感じたきつさを0〜10のRPEで自己申告し、その値に運動時間(分)を掛けて算出します。特別な機器は不要で、記録用紙やスプレッドシートがあれば始められます。
陸上競技の研究が示すセッションRPEの効果|パフォーマンス予測への活用
セッションRPE法は感覚頼みの指標に見えますが、実際には競技パフォーマンスの予測にも活用されている点が特徴です。日本コーチング学会の研究発表がその根拠を示しています。
Fitness-Fatigueモデルによる負荷とパフォーマンスの関係
日本コーチング学会の研究(山元, 2020)では、陸上競技者を対象にセッションRPE法で算出した負荷データをFitness-Fatigueモデルという数理モデルに当てはめ、パフォーマンスの予測を試みています。積み上げた負荷データが、単なる「疲労の記録」ではなく「将来のコンディション予測」に使える指標であることを示す事例です。
負荷データを継続して記録する意味
この研究が示すように、セッションRPE法の価値は1回の数値そのものよりも、継続的に記録して推移を追うことにあります。急激に負荷が増えた週や、逆に負荷が落ちすぎた週を早期に把握できれば、コンディション不良やモチベーション低下のサインを見逃しにくくなります。
Q. セッションRPEのデータはパフォーマンス予測にも使えますか?
はい。日本コーチング学会が発表した陸上競技者を対象にした研究では、セッションRPE法で算出した負荷データを数理モデルに当てはめてパフォーマンスを予測する試みが報告されています。継続記録によって将来の状態を見立てる材料になります。
企業が負荷モニタリングを導入する3つの視点|社員規模・目的・予算で選ぶ
企業がセッションRPE法のような負荷モニタリングを導入する際は、いきなり手法を決めるのではなく「社員規模」「目的」「予算」という3つの視点で自社に合う運用を考えることが重要です。
社員規模|少人数ならスプレッドシート運用で十分
導入対象が数名〜数十名であれば、専用システムを入れなくてもスプレッドシートへの手入力で十分に運用できます。まずは小さく始めて、記録の習慣化ができてから対象を広げる進め方が現実的です。

目的|「不調の早期発見」か「研修効果の測定」か
目的が体調不良の早期発見であれば、負荷の急上昇・急低下に注目した週次モニタリングが向いています。一方、スポーツ研修やチームビルディング施策の効果測定が目的であれば、施策前後の負荷や満足度と合わせて比較する設計にすると納得感のあるデータになります。
予算|ゼロ円から始めるか外部ツールを使うか
予算をかけられない場合は、まずセッションRPE法のような自己申告式でゼロ円から始めるのが現実的です。継続の手応えが得られてから、次の章で紹介するウェアラブル型など客観的なデータを取れる手法への切り替えを検討すると、投資判断がしやすくなります。
あわせて読みたい健康経営の効果測定とKPI設計|投資対効果の示し方›
Q. 予算が少ない企業でも負荷モニタリングを始められますか?
始められます。セッションRPE法は専用機器が不要で、記録用紙やスプレッドシートだけで運用できるため、初期費用をかけずに導入できます。まず自己申告式で習慣化してから、必要に応じて他の手法へ広げる進め方が現実的です。
主要な負荷モニタリング手法の比較|セッションRPE法・ウェアラブル・アンケート型
負荷やコンディションを把握する手法は、セッションRPE法だけではありません。それぞれの特徴を整理すると、自社に合う組み合わせが見えてきます。
| 手法 | 主観/客観 | 導入コスト目安 | 継続のしやすさ |
|---|---|---|---|
| セッションRPE法 | 主観 | ほぼゼロ円 | 手軽で続けやすい |
| ウェアラブル型(心拍・GPS等) | 客観 | 数千円〜数万円/人 | 装着の手間がある |
| 定期アンケート型(ストレスチェック等) | 主観 | 外部委託で数十万円規模 | 頻度は低め(月次・年次) |
Human Soar編集部が各手法の一般的な特徴を独自に整理した比較表(2026年9月時点)。
セッションRPE法|日々の記録に向く手軽な手法
特別な機器を使わず毎日続けられる手軽さが最大の強みです。一方で自己申告のため、本人の性格や慣れによって点数の付け方に差が出やすい点は理解しておく必要があります。
あわせて読みたいGPSセンサーで実現するリアルタイム負荷管理の最前線›
ウェアラブル型|客観データが取れるが装着の手間がある
心拍数やGPSデータを自動で取得できるため、本人の主観に左右されない客観的な数値が得られます。ただし機器の装着や充電、データ管理の手間が発生するため、対象人数が多い企業では運用体制の設計が必要です。
定期アンケート型|法定のストレスチェックと組み合わせやすい
すでに実施しているストレスチェックなどのアンケート施策と組み合わせやすい点がメリットです。ただし実施頻度が月次・年次にとどまることが多く、日々の負荷の急変化を捉える用途には向いていません。
ストレスチェックを外部委託する場合の選び方はストレスチェック外部委託の比較記事で詳しく解説しています。
Q. ウェアラブル端末とセッションRPE法はどちらを選べばよいですか?
対象人数や予算によって使い分けます。少人数でまず始めたい場合はセッションRPE法、客観的なデータを重視する場合はウェアラブル型が向いています。両方を併用して精度を補い合う企業もあります。
健康経営のKPIとして負荷データを活用する方法|生産性向上への接続
負荷モニタリングのデータは、記録して終わりにするのではなく、健康経営の取り組みを評価するKPIとして活用することで初めて経営的な価値を持ちます。健康経営にスポーツを活用した企業事例でも、継続的な指標の記録が施策の説得力を高めています。
負荷量の推移を月次で集計し、離職率や生産性指標と並べて経営層に報告する仕組みを作れば、負荷モニタリングは単なる現場の記録から、投資判断の材料へと役割を広げられます。ウェルビーイングと健康経営の違いを踏まえたうえで、どちらの文脈でKPIを設計するかを先に決めておくと、報告の軸がぶれません。
まとめ|セッションRPE法は企業のコンディション管理を数値化する第一歩
- セッションRPE法は「RPE×運動時間」で負荷を数値化する、機器不要で始めやすい方法
- 日本コーチング学会の研究では、陸上競技者の負荷データがパフォーマンス予測にも活用されている
- 導入は社員規模・目的・予算の3つの視点で自社に合う運用を選ぶ
- ウェアラブルやアンケート型と組み合わせることで、主観と客観のデータを補い合える
- 負荷データを健康経営のKPIとして報告に組み込むことで、現場の記録が経営の判断材料になる
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