戦力外通告を受けた選手のセカンドキャリア支援は、「即戦力雇用」ではなく「移行期の伴走」として設計したほうが定着率が上がります。本記事では、通告後に選手が直面する現実と、企業が具体的に取れる4つの支援策を、JOCアスナビの実績データとともに解説します。
戦力外通告後、選手はいま何に困っているのか
戦力外通告を受けた選手の多くは、競技を続けるか引退するかの決断と同時に、収入源を失うという現実に直面します。プロ契約が中心の競技では雇用保険の対象外であることも多く、退団と同時に社会的な後ろ盾が一気になくなるのが実情です。
さらに深刻なのは、選手自身が「競技以外の職務経験がない」ことへの不安を強く持っている点です。面接で自分の強みを言語化できず、応募自体をためらうケースも珍しくありません。人事担当者から見ると、この不安を解消する情報提供こそが最初の支援になります。
Q. 戦力外通告とはどのような制度ですか?
戦力外通告とは、プロスポーツチームが選手との契約を更新しない意思を伝える通知です。プロ野球やJリーグなどで毎年シーズン終了後に行われ、通告を受けた選手は退団後の進路を自分で決める必要があります。
Q. 戦力外通告を受けた選手はすぐに就職できますか?
競技によりますが、通告時期がシーズン終了直後に集中するため、一般の中途採用市場とはタイミングがずれやすい傾向があります。JOCアスナビのような専門の就職支援ルートを使うと、企業側の採用意図とタイミングを合わせやすくなります。
企業が実践できる4つのセカンドキャリア支援策
戦力外通告を受けた選手を受け入れる企業は、単発の採用イベントに頼らず、①雇用制度の設計 ②公的な就職支援ルートの活用 ③実務研修 ④社内メンター制度、の4つを組み合わせることで定着率を高めています。
①アスリート雇用制度の設計|勤務形態を先に決める
アスリート雇用でつまずく企業の多くは、選手の練習・試合スケジュールと通常勤務の折り合いをつけないまま採用してしまうケースです。フレックスタイムや時短勤務、週数日の在宅勤務など、あらかじめ勤務形態の選択肢を制度として用意しておくと、採用後のミスマッチを防げます。
特に戦力外通告を受けた選手のなかには、引退せずに現役を継続しながら働く道を探している人もいます。制度設計の段階で「現役継続前提」か「引退前提」かを分けておくと、配属先の業務内容も決めやすくなります。
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②JOCアスナビの活用|公的な就職支援ルートを使う
JOC(日本オリンピック委員会)は、トップアスリートの就職を支援する「アスナビ」という制度を運営しています。企業がアスナビに登録すると、競技を続けながら働く意思のある選手とマッチングでき、独自に採用広報を行うよりも早く候補者に出会えます。
JOCの発表によると、アスナビを通じた就職実績(内定者含む)は延べ238社・団体、431名に達しています(2025年8月21日時点)。単発の採用ではなく、継続的に活用している企業が多い制度だとわかります。
(参考)トップアスリート就職ナビゲーション「アスナビ」による選手の就職決定について – 日本オリンピック委員会(JOC)
③実務研修・リスキリング支援|競技経験を職務スキルに翻訳する
選手が持つ「目標設定」「フィードバックを受けて修正する力」「本番への準備力」は、営業や企画職でもそのまま生きる能力です。ただし本人はそれを職務スキルとして言語化できていないことが多いため、入社後に数週間の実務研修を組み、業務用語への「翻訳」を手伝う企業が増えています。
研修の中身は難しいものである必要はなく、業務マニュアルの読み合わせと、簡単なロールプレイだけでも十分に効果があります。重要なのは「競技で培った力が、今の仕事のどこで使えるか」を本人と一緒に言葉にする工程です。
④社内メンター制度|孤立を防ぐ伴走役をつける
戦力外通告を受けた選手は、それまでの人間関係の大半がチーム内で完結していたケースが多く、入社後に社内で孤立しやすい傾向があります。年齢や社歴の近い社員をメンターとしてつけ、業務外の相談にも乗れる体制を作ることで、早期離職を防いでいる企業があります。
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支援ルートを比較する|自社雇用・アスナビ・人材紹介の使い分け
戦力外通告を受けた選手を受け入れる方法は一つではありません。自社で直接雇用枠を作る方法、JOCアスナビを使う方法、スポーツ人材専門の紹介会社を使う方法の3つを、費用と向いている企業規模の観点で整理しました。
| 支援ルート | 費用感 | 向いている企業規模 |
|---|---|---|
| 自社雇用枠の新設 | 制度設計・広報費が中心 | 継続的にアスリート採用を行う企業 |
| JOCアスナビ経由 | 登録・利用は原則無料 | 初めてアスリート採用に取り組む企業 |
| 人材紹介会社の活用 | 成功報酬型が中心 | 採用工数を割けない中小企業 |
Human Soar編集部が各ルートの公式情報をもとに整理(2026年9月時点)。
自社雇用枠の新設|継続採用する企業向け
毎年一定数のアスリートを受け入れる方針がある企業では、専用の雇用枠を制度化したほうが長期的にコストを抑えられます。採用基準や勤務条件をテンプレート化できるため、担当者が変わっても運用がぶれにくくなります。
JOCアスナビ経由|初めての企業向け
アスナビは登録・利用が原則無料で、企業説明会を通じて選手と直接会える機会が定期的に用意されています。初めてアスリート採用に取り組む企業にとっては、採用ノウハウを持つJOCの担当者に相談しながら進められる点が心強い選択肢です。
人材紹介会社の活用|採用工数が割けない企業向け
採用担当者の人数が限られる中小企業では、成功報酬型の人材紹介会社を使うことで、候補者探しと条件交渉の負担を外部に任せられます。費用は発生しますが、採用工数をかけられない企業にとっては現実的な選択肢です。
支援策を選ぶ4ステップの判断フロー
どの支援策から着手すべきか迷う企業のために、Human Soarでは検討順序を4ステップに整理しました。自社の採用体制の成熟度に応じて、ステップ1から順に検討すると判断しやすくなります。
Q. アスリート雇用に補助金はありますか?
アスリート雇用そのものを対象にした国の補助金は限定的です。ただし人材育成・キャリア形成支援に関する既存の助成金制度の対象になる場合があるため、社会保険労務士など専門家への確認をおすすめします。
Q. アスリート採用は中小企業でも取り組めますか?
取り組めます。JOCアスナビの実績238社・団体のなかには中小企業も多く含まれており、採用工数を抑えたい場合は人材紹介会社と組み合わせる方法も有効です。
まとめ|戦力外通告後の選手支援で企業が得られるもの
戦力外通告を受けた選手のセカンドキャリア支援は、社会貢献にとどまらず、目標達成力や本番対応力を持つ人材を採用できる実利的な取り組みでもあります。制度化して初めて、単発の採用イベントでは得られない定着率につながります。
- 戦力外通告後の選手は収入面・キャリア言語化の両面で不安を抱えている
- 企業側の支援は雇用制度設計・JOCアスナビ活用・実務研修・メンター制度の4本柱で考える
- JOCアスナビの就職実績は延べ238社・団体431名(2025年8月21日時点)
- 自社雇用・アスナビ・人材紹介は企業規模と採用実績の有無で使い分ける
- 受け入れ体制は4ステップで段階的に制度化すると定着率が上がる
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