体育祭のリレー走で無理な体勢のまま転んだ社員が、そのまま立ち上がれなくなる。多くの企業はこの瞬間まで「労災保険で足りる」と思い込んでいる。実際には労災の対象は業務に限られ、任意参加の社内運動会や部活動は対象外になりやすい。
企業が使えるスポーツ保険は主要10商品あり、「個人か団体か」「単発か通年か」という2つの軸で整理すれば迷わず選べる。本記事ではこの10商品を比較しながら、自社に合う1つの選び方を解説する。
- 社内運動会のケガは労災の対象外になりやすい|熱中症は過去最多1,803人
- 企業がスポーツ保険を選ぶ視点|個人か団体か・単発か通年か
- 企業が使える主要スポーツ保険10商品を比較する
- スポーツ安全保険|4名以上の団体なら年額800円から入れる
- 公認スポーツ指導者総合保険|指導活動中の賠償リスクに備える
- レジャー・サービス施設費用保険|イベント主催企業の賠償・見舞金に対応
- レクリエーション傷害保険|参加者20人以上のイベントを前日まで申込める
- ケガの保険 日常の事故|スポーツ以外の日常事故もまとめて補償
- 楽天超かんたん保険(スポーツプラン)|本人・夫婦・家族型を月払いで選べる
- スポレク1日ほけん|1日400円からスマホで直前加入
- 1日傷害(スポーツ)保険|最短1日・最長28日の柔軟な設計
- スポーツ保険 スマQplay/スマQplay+|アーバンスポーツ特化の年間契約
- トータルアシストからだの保険(傷害定額)|熱中症・個人賠償までまとめて備える
- 自社に合うスポーツ保険を選ぶ3つのステップ
- まとめ|スポーツ保険は「単位×期間」で選べば迷わない
社内運動会のケガは労災の対象外になりやすい|熱中症は過去最多1,803人
労災保険は「業務上の負傷」を補償する制度で、就業時間中の事故が対象になる。だが社内運動会や有志で参加するスポーツ大会、部活動指導のような任意参加の活動は、業務との関連性が薄いと判断されると労災の対象から外れることがある。
ケガをした社員自身の医療費だけでなく、他の参加者を負傷させてしまった場合の賠償責任も、労災保険ではカバーされない。企業が任意で加入する保険で補う必要がある部分だ。
熱中症のリスクも見過ごせない。厚生労働省の確定値によると、2025年(令和7年)に職場で発生した熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1,803人で、前年から546人・約43%増え、統計開始以来最多となった。
運動を伴う社内行事は、屋内オフィスでの就業よりも熱中症のリスクが高く、任意参加の行事ほど「誰が責任を持つか」が曖昧になりやすい。
Q. 社内運動会でのケガは労災になりますか?
業務命令として全員参加が義務付けられている場合は労災の対象になり得ますが、有志参加や任意参加の運動会は業務との関連性が薄いとみなされ、対象外と判断されるケースが多くあります。判断が難しい場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に個別に確認するのが確実です。
Q. スポーツ保険と労災保険はどう違いますか?
労災保険は業務中の事故を国が補償する強制保険で、企業側の申請は不要ですが対象は業務に限られます。スポーツ保険は任意加入の民間保険で、労災の対象外になりやすい運動会や部活動、クラブ活動中のケガや賠償責任を補うために使います。
(参考)令和7年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値) – 厚生労働省
企業がスポーツ保険を選ぶ視点|個人か団体か・単発か通年か
スポーツ保険と一言でいっても、対象や契約期間の違う商品が並んでいて選びにくい。まずは「個人単位か団体単位か」「単発イベントか通年契約か」という2つの軸で頭を整理すると、候補が一気に絞り込める。

例えば年に一度の社内運動会だけを補償したいなら「団体×単発型」、部活動やクラブ活動を1年通じて運営するなら「団体×通年契約」を軸に探すことになる。個人の運動習慣に備えたいなら「個人×通年契約」、出張先での単発の運動なら「個人×単発型」が候補になる。
スポーツ庁が策定した第3期スポーツ基本計画では、「スポーツを実施する者の安全・安心の確保」が政策の柱の一つに掲げられており、スポーツ市場の拡大とあわせて、活動する人を守る仕組みの整備が国の方針としても位置づけられている。スポーツ業界全体の動向は日本のスポーツ業界が抱える構造的な課題でも詳しく解説している。
Q. 1回限りのイベントでも保険に入れますか?
入れます。損保ジャパンの「レクリエーション傷害保険」や三井住友海上の「レジャー・サービス施設費用保険」など、参加者20人以上のイベント単位で契約できる商品があり、開催前日までWEBで申し込めるものもあります。
(参考)スポーツの成長産業化(第3期スポーツ基本計画) – スポーツ庁
企業が使える主要スポーツ保険10商品を比較する
ここでは、企業や社員が実際に加入できる主要なスポーツ保険・傷害保険を10商品取り上げる。公式サイトで補償内容と契約条件を確認できる商品のうち、社内運動会・部活動運営・個人の運動習慣のいずれかに対応できるものを選定した。
団体で加入先をまとめて検討する「団体比較」でも、個人で入る1つを探す「個人比較」でも、まずはこの10商品から出発できる。単発イベントだけを見たい「1日比較」なら、契約単位が「1日〜」「イベント単位」となっている商品に絞り込めばよい。
| 商品名 | 提供元 | 対象 | 契約単位 | 主な補償 |
|---|---|---|---|---|
| スポーツ安全保険 | 公益財団法人スポーツ安全協会 | 団体(4名以上) | 年間 | 傷害・賠償責任・突然死葬祭費用 |
| 公認スポーツ指導者総合保険 | 公益財団法人日本スポーツ協会 | 個人(公認指導者) | 年間 | 施設所有者賠償責任+傷害 |
| レジャー・サービス施設費用保険 | 三井住友海上 | 団体(施設・イベント主催者) | イベント単位 | 被災者対応費用・見舞金等 |
| レクリエーション傷害保険 | 損保ジャパン | 団体(20人以上) | イベント単位(1日〜) | 傷害・熱中症・食中毒・往復途上 |
| ケガの保険 日常の事故 | au損保 | 個人 | 年間 | 傷害・個人賠償責任(最大1億円) |
| 楽天超かんたん保険(スポーツプラン) | 楽天損保 | 個人/夫婦/家族 | 年間自動継続 | 傷害死亡・入院・賠償責任 |
| スポレク1日ほけん | MSプラスワン少額短期保険 | 個人(1〜6名) | 1日〜7日 | 傷害・熱中症・食中毒・賠償責任 |
| 1日傷害(スポーツ)保険 | ソニー少額短期保険 | 個人 | 1日〜28日 | 傷害・個人賠償責任(選択) |
| スポーツ保険 スマQplay/スマQplay+ | 東急少額短期保険 | 個人 | 年間 | 傷害・賠償責任(plusのみ) |
| トータルアシストからだの保険(傷害定額) | 東京海上日動 | 個人 | 年間 | 傷害・熱中症・個人賠償責任 |
企業や社員が公式サイトで補償内容・契約条件を確認できるスポーツ保険・傷害保険10商品(2026年9月時点の情報にもとづく)。
スポーツ安全保険|4名以上の団体なら年額800円から入れる
公益財団法人スポーツ安全協会が運営する、団体加入専用の保険。4名以上のスポーツ団体・文化活動団体・ボランティア団体が対象で、部活動やクラブ、地域のスポーツ少年団などに広く使われている。
傷害保険・賠償責任保険・突然死葬祭費用保険の3つを1つの契約でカバーし、掛金は年齢や活動内容に応じて年額800円/人からと安い。2026年度からは、大人(64歳以下)の個人活動中の熱中症も補償対象に加わった。
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Q. スポーツ安全保険は何人から加入できますか?
4名以上のアマチュア団体・グループから加入できます。スポーツ団体だけでなく、文化活動団体や地域のボランティア団体、放課後児童クラブなども対象です。
公認スポーツ指導者総合保険|指導活動中の賠償リスクに備える
公益財団法人日本スポーツ協会が公認スポーツ指導者向けに用意している保険で、対象は同協会が認定する指導者資格の保持者に限られる。施設所有(管理)者賠償責任保険と団体総合生活補償保険を組み合わせており、指導中に発生した事故で第三者に賠償責任を負った場合や、指導者自身がケガをした場合を補償する。
加入タイプによっては、職業として指導している時間のケガが対象外になる区分もあるため、契約前に加入タイプの違いを確認する必要がある。
(参考)公認スポーツ指導者総合保険 – 公益財団法人日本スポーツ協会
レジャー・サービス施設費用保険|イベント主催企業の賠償・見舞金に対応
三井住友海上が法人向けに提供する保険で、ホテルや競技場、催物会場などの施設利用者が事故に遭った場合の被災者対応費用や見舞金、おわび広告の費用までを補償する。
通常はレジャー施設に該当しない学校や事務所を、社内運動会やスポーツ大会のために一時的に会場として使う場合も、イベント期間中に限定して契約できる。参加者本人のケガの補償を目的とする他の商品とは役割が異なり、企業が主催者としてイベントを開く際の対人対応コストに備える商品だ。
レクリエーション傷害保険|参加者20人以上のイベントを前日まで申込める
損保ジャパンが提供する、参加者20人以上の運動会や地域クラブ活動などを対象にした傷害保険。WEBで3ステップの入力を終えれば、イベント開催の前日まで申し込める手軽さが特徴で、直前に開催が決まった社内行事にも対応しやすい。
熱中症・食中毒・自宅と会場間の往復中の事故も自動セットで補償され、悪天候でイベントが順延になった場合も契約が自動的に順延日へ切り替わる。運動を伴う行事の熱対策そのものはアスリートに学ぶ暑熱順化の5日間対策も参考になる。
ケガの保険 日常の事故|スポーツ以外の日常事故もまとめて補償
au損保が個人向けに提供する傷害保険で、月々410円からの3コースで加入できる。サッカーや野球、バスケットボールなど競技別のケガの事例を挙げて訴求しており、運動中の事故だけでなく、通勤中の自転車事故や買い物中の賠償事故まで日常生活全般をカバーする。
個人賠償責任補償は全コース共通で最大1億円まで対応し、示談交渉サービスも付帯する。社員個人にスポーツ保険への加入を促す福利厚生施策の紹介先としても使いやすい。
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楽天超かんたん保険(スポーツプラン)|本人・夫婦・家族型を月払いで選べる
楽天損害保険が引受保険会社となり、楽天インシュアランスプランニングが取り扱う商品。かつて販売していた1日単位の「楽天1日スポーツ保険」は2024年6月に販売終了しており、現在は年払い・月払いで自動継続するスポーツプランに一本化されている。
本人型・夫婦型・家族型と3つの支払コースを組み合わせて選べ、楽天ポイントでの支払いにも対応する。
(参考)スポーツプラン(楽天超かんたん保険) – 楽天損害保険
スポレク1日ほけん|1日400円からスマホで直前加入
MSプラスワン少額短期保険が提供する、1日単位で加入できる傷害保険。正式名称は「レジャー・スポーツ傷害保険(1日型)」で、スポーツ・レジャー全般やゴルフ、ハイキング、スキー・スノボ、キャンプ・BBQの5プランから選べる。
ケガや賠償責任に加え、熱中症・食中毒も補償対象で、1名から最大6名まで同時に加入できるため、少人数の部署単位のレクリエーションにも向いている。
1日傷害(スポーツ)保険|最短1日・最長28日の柔軟な設計
ソニー少額短期保険が展開する保険で、スマートフォンから最短1日(24時間)から28日までの範囲で保険期間を選べる。ケガ保険を基本に、個人賠償責任やホールインワン費用(ゴルフプラン)、食中毒、捜索救助費用まで、目的に応じてプランを組み合わせられる。
加入した当日から補償を開始できるため、急に決まった出張先での運動やイベント参加にも対応しやすい。
スポーツ保険 スマQplay/スマQplay+|アーバンスポーツ特化の年間契約
東急少額短期保険が展開する「スマQ」シリーズのうち、クライミングやボルダリングなど日常のスポーツ・レジャーに備える「スマQplay」と、スケートボードやBMX、パルクールなどアーバンスポーツ中の賠償責任まで補償する「スマQplay+」の2商品がある。
年3,720円〜6,000円程度とスポーツ保険の中では手頃な価格帯で、WEBから当日加入も可能。同社は他にもスキー・スノーボード向けやゴルファー向けなど、種目別に細分化した保険を展開している。
トータルアシストからだの保険(傷害定額)|熱中症・個人賠償までまとめて備える
東京海上日動が個人向けに展開する「からだの保険」シリーズの中核商品で、正式名称は「トータルアシストからだの保険(傷害定額)」。日常生活や趣味の登山・スキー・スノーボードなどのスポーツ中の急激・偶然・外来の事故によるケガを24時間補償し、熱中症も対象に含まれる。
個人賠償責任補償特約を付ければ、スポーツ中に他人にケガをさせてしまった場合の賠償にも備えられる。サイクリング特化やゴルファー特化など、種目別のバリエーションも用意されている。
(参考)トータルアシストからだの保険(傷害定額) – 東京海上日動火災保険
自社に合うスポーツ保険を選ぶ3つのステップ
10商品を並べても、自社にとって最適な1つを選ぶには手順が要る。次の3つのステップで整理すると、候補を絞り込みやすい。

①活動の形を洗い出す
まず、補償の対象にしたい活動が「単発のイベントか」「年間を通じた継続活動か」を明確にする。社内運動会や1回限りの大会であれば損保ジャパンの「レクリエーション傷害保険」やMSプラスワンの「スポレク1日ほけん」のような単発型が候補になり、部活動やクラブ活動を通年で運営するなら「スポーツ安全保険」のような年間契約が適している。
②対象人数と期間を決める
次に、補償の対象になる人数と契約期間を確定する。参加者が数名程度の少人数なら個人単位の商品を人数分契約する方法もあるが、20人を超える団体行事では団体向けの商品のほうが手続きが簡単になりやすい。
参加者名簿の管理が必要な商品も多いため、チーム・部活動の名簿を日常的に管理している場合は、既存のツールをそのまま活用できる。
③補償内容を突き合わせる
最後に、想定するリスクと補償内容を1つずつ突き合わせる。屋外での活動なら熱中症の補償があるか、賠償事故が起きやすい競技なら個人賠償責任やレジャー・サービス施設費用保険のような賠償系の商品が必要かを確認する。
複数の商品を比較する際は、本記事の比較表と2つの軸の図を出発点にすると、条件に合わない商品を早い段階で除外できる。
Q. 複数の保険を組み合わせて加入できますか?
可能です。例えば団体向けの「スポーツ安全保険」で日常の部活動を補償しつつ、遠征や合宿など特定のイベントだけ別の商品を追加するという組み合わせ方をしている団体もあります。ただし補償の重複や免責の条件は商品ごとに異なるため、契約前に代理店や保険会社に確認してください。
まとめ|スポーツ保険は「単位×期間」で選べば迷わない
- 社内運動会や部活動のケガ・賠償事故は、労災保険では対象外になりやすい
- 企業が使えるスポーツ保険は主要10商品あり、「個人か団体か」「単発か通年か」の2軸で整理できる
- 団体・年間契約ならスポーツ安全保険、単発イベントなら損保ジャパンやMSプラスワンの1日型が候補になる
- 熱中症や賠償責任など、想定するリスクごとに補償内容を比較表で突き合わせることが欠かせない
- 複数の保険を組み合わせて使う団体もあるため、契約前に代理店へ相談するのが確実
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