企業版ふるさと納税でスポーツ支援|スポンサーとの違いと使い方

企業版ふるさと納税でスポーツ支援|スポンサーとの違いと使い方のアイキャッチ スポーツマーケティング

本社は東京にあるけれど、創業の地や工場のある町のクラブを応援したい。スポンサーになるほどの宣伝効果は見込めないが、何か形にできないか。経営者や総務の担当者から、こういう相談が出ることがあります。

結論から言うと、企業版ふるさと納税は、自治体が行うスポーツの事業に企業が寄附すると、法人関係税が最大で寄附額の約9割軽くなる制度で、プロスポーツチームとの連携事業や競技場の整備にも使われています。ただし、本社のある自治体への寄附は対象外で、寄附の見返りを受け取ることも禁じられています。この記事では、スポンサーとの違い、スポーツでの使われ方、気をつける線引きを、内閣府と自治体の資料で整理します。

企業版ふるさと納税とは自治体の事業への寄附で税が最大約9割軽くなる制度

企業版ふるさと納税でスポーツを支援するときのお金の流れの図

企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、国が認定した自治体の地方創生の事業に企業が寄附すると、法人関係税が軽くなる制度です。2016年度に始まりました。内閣府の資料は、1,000万円を寄附すると最大で約900万円の法人関係税が軽減される、と例を挙げています。

内訳は、寄附額の約3割が損金算入による軽減、最大6割が税額控除で、企業の実質的な負担は約1割です。利用は広がっていて、2024年度の寄附額は631.4億円、寄附した企業は8,464社でした。

お金の流れは、上の図のとおりです。企業は自治体に寄附し、自治体がその事業にお金を充てます。クラブに直接払うスポンサー料とは、払う相手も目的も違います。企業がスポンサーになる目的はスポーツスポンサーになる理由で紹介しています。

(参考)企業版ふるさと納税(概要資料・令和8年4月1日時点) – 内閣府地方創生推進事務局

Q. 企業版ふるさと納税はスポーツの支援に使えますか?

使えます。自治体が企業版ふるさと納税の対象として募集している事業であれば、プロスポーツチームと連携した事業や競技場の整備にも寄附できます。内閣府は、スタジアム・アリーナの分野で寄附を募集している事業の一覧を公開しています。

企業版ふるさと納税とスポンサーの違いは見返りを受け取れるかどうか

企業版ふるさと納税とスポンサーの一番の違いは、見返りです。スポンサーは露出や権利の対価としてお金を払いますが、企業版ふるさと納税は寄附なので、見返りを受け取ることが禁じられています。

方法 払う相手 受け取れるもの 税の扱い
スポンサー料 クラブや選手 社名の掲出、呼称、チケットなど(契約で決まる) 宣伝の対価は広告宣伝費
企業版ふるさと納税 自治体 感謝状、自治体の広報での社名の紹介、銘板への記載 法人関係税が最大約9割軽減
両方を使う クラブと自治体 露出は契約で、地域への貢献は寄附で それぞれの扱いに従う

スポーツを支える3つの方法の違い(出典:内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税」概要資料、同「寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与することについての解説」をもとにHuman Soarが整理)

スポンサー料|露出や権利の対価として払う

スポンサー料は、ユニフォームや看板への社名の掲出、呼称、観戦チケットといった見返りの対価です。宣伝の効果を求めるなら、こちらが向いています。

税務では、広く一般に向けた宣伝の対価は広告宣伝費として扱うのが基本です。区分の考え方はスポンサー料の勘定科目でまとめています。

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企業版ふるさと納税|税の軽減と社名の紹介を受ける

企業版ふるさと納税で受けられるのは、税の軽減と、社名の紹介です。内閣府の解説は、自治体が寄附した企業に行ってよいこととして、感謝状の贈呈、自治体のホームページや広報誌での社名の紹介、寄附で整備した施設への銘板の設置を挙げています。いずれも、ほかの寄附者と並べて紹介する形です。

一方で、ほかの利用者より安い料金で公共施設を使わせることなどは、禁じられた見返りにあたります。広告としての露出を期待する場合は、スポンサー契約を選んでください。

両方を使う|寄附と有償の契約を分けて結ぶ

地域への貢献と露出の両方を求めるなら、寄附と契約を分ける方法があります。内閣府の概要資料も、公正な手続きを経た自治体との契約は可能としています。

たとえば施設のネーミングライツです。内閣府の解説は、寄附した企業が有償のネーミングライツ契約を結ぶことについて、自治体が法令を守り、寄附した企業だけが応募できるような条件を付けず、手続きの公正さを説明できることを前提に、見返りにはあたらないとしています。

(参考)企業版ふるさと納税(概要資料・令和8年4月1日時点) – 内閣府地方創生推進事務局

(参考)「寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること」についての解説(令和4年6月27日、令和8年4月1日一部改正) – 内閣府地方創生推進事務局

スポーツでは3つの型で企業版ふるさと納税が使われている

スポーツの分野では、チームとの連携、子ども向けの事業、施設の整備という3つの型で、自治体が寄附を募っています。公式ページで確認できた例を紹介します。

チームを選んで寄附する|静岡市のプロスポーツチーム等連携プロジェクト

静岡市は「プロスポーツチーム等連携プロジェクト」で、企業版ふるさと納税を受け付けています。賛同した市外の企業が対象チームを選んで市に寄附し、市とチームが使い道を協議する仕組みです。スポーツイベントから施設の整備まで、幅広い事業に充てられます。

対象には、清水エスパルス、ベルテックス静岡、静岡ブルーレヴズなど、競技の違う6つのチームが挙がっています。福井県永平寺町も、町に本拠地を置くハンドボールチーム「福井永平寺ブルーサンダー」を支援する事業で寄附を募っています。

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子ども向けの事業に寄附する|兵庫県の地域活性化プロジェクト

兵庫県は「プロスポーツクラブと連携した地域活性化プロジェクト」を、個人と企業の両方のふるさと納税で実施しています。事業の例は、子どものプロスポーツ試合への観戦招待や、選手・スタッフによる子ども向けのスポーツ教室です。

令和7年の寄附の目標額は6,000万円とされています。クラブの露出ではなく、子どもの体験に使われることがはっきりしているので、地域貢献として説明しやすい型です。

施設の整備に寄附する|北九州市やいわき市の拠点づくり

施設の整備に充てる例もあります。北九州市は、ギラヴァンツ北九州が建設するクラブハウスの中に、市民のスポーツ交流拠点を整備する事業で寄附を募っています。いわき市は、特に寄附を募集している事業に「いわきFC・新スタジアム建設プロジェクト」を挙げています。

内閣府のポータルサイトには、スタジアム・アリーナの分野で寄附を募集している事業の一覧があり、北海道北広島市の「北海道ボールパークFビレッジ」の新駅建設や、愛媛県今治市のサッカー専用スタジアム建設などが載っています。自社にゆかりのある自治体が載っているかを、まず確かめてみてください。

(参考)静岡市プロスポーツチーム等連携プロジェクト – 静岡市

(参考)永平寺町企業版ふるさと納税を活用した「スポーツ振興によるまちづくり支援」 – 永平寺町

(参考)プロスポーツクラブと連携した地域活性化プロジェクト – 兵庫県

(参考)「新門司グラウンドのスポーツ交流拠点整備支援事業」への企業版ふるさと納税による寄附について – 北九州市

(参考)企業版ふるさと納税(特に寄附を募集している事業) – いわき市

(参考)分野別の寄附募集事業一覧(スタジアム・アリーナ) – 内閣府地方創生推進事務局

スタジアムへの寄附は専属利用と料金の優遇を避ける

寄附で整備した競技場をプロスポーツチームの本拠地にすること自体は、認められています。ただし、条件が2つあります。

内閣府の解説は、地域の住民やほかの団体の利用が排除されていないこと、利用料などの条件でほかの利用者との間に不合理な区別がないこと、の2点を挙げています。寄附した企業のチームだけが使える、そのチームだけ利用料が無料になる、といった形は見返りにあたります。

クラブを持つ会社が寄附する場合も、考え方は同じです。解説は、寄附した法人がチームの運営会社の親会社であっても、同じ基準で判断するとしています。施設をつくる自治体には、必要性や公益性について議会や住民に説明する責任がある、とも書かれています。

企業の側は、寄附の話とチームの利用条件の話を結び付けないことが大切です。利用の条件は、ほかの団体と同じ手続きで決めてもらいましょう。

(参考)「寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること」についての解説(令和4年6月27日、令和8年4月1日一部改正) – 内閣府地方創生推進事務局

企業版ふるさと納税を使う前に確かめる5つの条件

企業版ふるさと納税をスポーツ支援に使う前に確かめる5つの条件の図

使えるかどうかは、5つの条件で確かめられます。上の図は、内閣府と自治体の資料をもとに、Human Soarがまとめたものです。

寄附先は本社のある自治体以外にする

本社が所在する自治体への寄附は、制度の対象になりません。地元のクラブを本社のある市で支えたい場合は、スポンサー契約など別の方法を選びます。支社や工場、創業の地がある自治体であれば対象になり得ます。東京都など一部の自治体は、制度の対象から外れています。

寄附額は1回10万円以上にする

対象になるのは、10万円以上の寄附です。北九州市の案内も、1回あたり10万円以上の寄附が対象と説明しています。

自治体が募集している事業を選ぶ

寄附できるのは、自治体が地域再生計画に位置づけ、企業版ふるさと納税の対象として募集している事業です。支援したいクラブがあっても、その自治体に該当する事業が無ければ使えません。自治体のサイトか、内閣府のポータルサイトで確かめます。

見返りを前提にしない

寄附と引き換えに、チケットや広告枠、施設の優先利用を求めることはできません。受け取れるのは、感謝状や広報での紹介の範囲です。

制度の期限と手続きの時間を見込む

北九州市の案内によると、この制度の対象期間は令和9年度までです。寄附の申し出から納付書が届くまでに2週間ほどかかるとも書かれています。決算に間に合わせるなら、早めに自治体へ相談しておくと安心です。スポーツを使った取り組み全体の考え方は、スポーツマーケティングの基本にまとめています。

(参考)企業版ふるさと納税(概要資料・令和8年4月1日時点) – 内閣府地方創生推進事務局

(参考)「新門司グラウンドのスポーツ交流拠点整備支援事業」への企業版ふるさと納税による寄附について – 北九州市

Q. 本社のある自治体のクラブに企業版ふるさと納税は使えますか?

使えません。本社が所在する自治体への寄附は、企業版ふるさと納税の対象外です。地元のクラブを支える場合は、スポンサー契約など別の方法を選びます。支社や工場のある自治体が募集している事業であれば、対象になり得ます。

Q. 企業版ふるさと納税で広告の露出は得られますか?

得られません。寄附の見返りを受け取ることは禁じられています。受けられるのは、感謝状の贈呈や、自治体のホームページ・広報誌で社名をほかの寄附者と並べて紹介してもらうことなどです。露出が必要な場合は、寄附とは別に公正な手続きで契約を結びます。

まとめ|企業版ふるさと納税は地域への貢献に使い露出は契約で得る

企業版ふるさと納税は、スポンサーとは目的の違う支え方です。要点を振り返ります。

  • 自治体のスポーツ事業に寄附すると、法人関係税が最大で寄附額の約9割軽くなる
  • 本社のある自治体は対象外で、寄附は10万円以上、見返りは受け取れない
  • スポーツでは、チームとの連携、子ども向けの事業、施設の整備で使われている
  • 競技場への寄附は、専属利用と料金の優遇を避ける
  • 露出が必要な部分は、寄附とは別の契約で得る

まずは、支社や工場のある自治体のサイトで、企業版ふるさと納税の対象事業にスポーツの項目があるかを調べてみてください。該当する事業があれば、担当の窓口に寄附の手続きと時期を問い合わせるところから始められます。税額の計算は、顧問の税理士に確認してください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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