ルール40とは|スポンサー企業が大会期間中にできること

ルール40とは|スポンサー企業が大会期間中にできることのアイキャッチ スポーツマーケティング

何年も支えてきた選手が、ついに代表に決まった。自社のSNSでお祝いを伝えたいし、メダルを取ったら大きく広告を出したい。ところが広報から「大会期間中はそれ、出せません」と止められる。スポンサーをしていると、一度はぶつかる場面です。

結論から言うと、ルール40とは、オリンピックの参加選手の名前や写真を、大会期間中に広告へ使うことを制限する決まりです。選手を個人で支援するスポンサー企業は、事前に確認書を出し、大会を連想させない継続中の広告に限って使えます。お祝いの広告や、選手の投稿のリポストは期間中できません。この記事では、スポンサー企業にできること・できないこと、4つの条件、手続きを、日本オリンピック委員会(JOC)のガイドラインで整理します。

ルール40とは大会期間中に選手の肖像を広告に使うことを制限する決まり

ルール40は、オリンピック憲章の規則40付属細則3にもとづく決まりで、大会に参加する選手の名前・写真・映像を、大会期間中に宣伝の目的で使うことを制限しています。公式のパートナーの権利を守り、権利を持たない企業の便乗広告(アンブッシュマーケティング)を防ぐためのものです。

適用される期間は、選手村が開く日から閉会式の2日後までです。ミラノ・コルティナ2026冬季大会では、2026年1月30日から2月24日まででした。大会そのものは2月6日から22日なので、前後を含めて約4週間が対象になります。

決まりを守ることは、選手の大会参加資格の条件になっています。JOCのガイドラインは、違反は参加資格の剥奪にもつながると説明しています。スポンサー企業が違反した場合も、今後の国際総合競技大会で、期間中に参加者の肖像を使えなくなる可能性があります。

オリンピックだけの話ではありません。2026年の愛知・名古屋アジア競技大会でも、JOCは同じ考え方の肖像使用規制を設け、期間を2026年9月2日から10月6日までとしました。スポンサーの基本はスポーツスポンサーとはで整理しています。

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関する手続きについて(Rule40) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)愛知・名古屋アジア大会TEAM JAPAN等の肖像使用に関する手続きについて – 公益財団法人日本オリンピック委員会

Q. ルール40とは何ですか?

オリンピック憲章にもとづく決まりで、大会に参加する選手の名前や写真を、大会期間中に広告へ使うことを制限するものです。期間は選手村が開く日から閉会式の2日後までで、ミラノ・コルティナ2026冬季大会では2026年1月30日から2月24日まででした。

ルール40でできることは企業の立場で3つに分かれる

期間中に選手の肖像を使えるかどうかは、企業や団体の立場で変わります。JOCのガイドラインは、3つに分けて説明しています。

立場 期間中の選手の肖像の使用 必要な手続き
オリンピックパートナー パートナー向けの規定に合えば、選手が出演する広告を使える 事前にJOCへ必要書類を提出
個人スポンサー等 大会を連想させない継続中の広告に限って使える 確認書を競技団体経由で提出
非営利団体 非商業的な活動に限って使える 企業と結び付けない

ルール40の適用期間中にできること(出典:日本オリンピック委員会「第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン」。Human Soarが整理)

オリンピックパートナー|契約した分野の広告に選手を起用できる

ワールドワイドオリンピックパートナーとTEAM JAPANパートナーは、規定に合い、事前にJOCへ書類を出せば、選手が出演する広告を期間中も使えます。ただし、契約した分野以外の商品やサービスについては、個人スポンサーとしての手続きが要ります。

個人スポンサー等|継続中の広告だけを続けられる

個人スポンサー等とは、選手を物品や資金で継続的に支援し、肖像を使う契約を結んでいる企業のほか、選手を雇用している所属先、マネジメント会社を指します。確認書を出し、後で述べる4つの条件を守る場合に限って、期間中も選手の肖像を使えます。

どちらにも当てはまらない営利企業は、期間中、商業目的で選手の肖像を使えません。選手と契約を結ぶ段階で、自社がどの立場になるのかを確かめておきましょう。

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非営利団体|企業のロゴを外して発信する

自治体や学校、競技団体などの非営利団体は、非商業的な活動に限って、大会や選手に触れた発信ができます。ただし、大会と営利企業を結び付けることはできません。JOCのガイドラインは、選手の内定やメダル獲得をサイトやSNSで伝える場合、パートナー以外の企業名やロゴをすべて外すよう求めています。

壮行会や報告会を自治体が開くときに、会見の背景に選手の個人スポンサーのロゴを並べる形も認められていません。自社が後援する自治体の行事では、ロゴの扱いを事前に相談しておくと行き違いを防げます。

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

個人スポンサーが期間中に広告を続けるための4つの条件

ルール40で個人スポンサーが期間中に守る4つの条件の図

個人スポンサーが期間中も選手の広告を続けるには、4つの条件をすべて満たす必要があります。大会を連想させない、ふだんどおりの広告(ジェネリック広告)であることが前提です。

掲出時期|開村日の90日前より前から使っている素材にする

期間中に使えるのは、選手村が開く日の90日前より前から使っている広告素材です。ミラノ・コルティナ2026冬季大会では、2025年11月1日以降に使い始めた新しいデザインや企画の広告は、期間中に掲出できませんでした。

代表に決まってから広告を作るのでは間に合いません。大会の3か月以上前から、同じ素材を継続して出しておく必要があります。

広告表現|大会を連想させる言葉や映像を入れない

広告の中身は、大会やTEAM JAPANをテーマにせず、連想もさせないことが条件です。大会に関する映像や音声などの知的財産は使えず、商品と選手の競技での成績を結び付ける表現も認められません。

ガイドラインは、別の大会への「おめでとう広告」や「ありがとう広告」であっても、どの大会のことかがはっきりしない場合は認められないとしています。

掲出する場所|中継番組や特集記事と連動させない

広告を出す場所にも条件があります。大会の中継番組や特集番組で、番組の内容と連動する形で選手を起用したCMを流すことや、特集記事と連動させた新聞・雑誌広告は、便乗広告と判断されます。オリンピックの特集サイトへの広告の出稿も、表現にかかわらずできません。

自社のサイトで選手の写真を使う場合も、対象になります。一方、掲載面を指定しない運用型のネット広告が、たまたま関連するページに表示されることは問題ないとされています。

出稿量|期間に合わせて広告を増やさない

4つ目は量です。ふだんの広告や広報の活動と比べて、期間に合わせて出稿を大きく増やすと、便乗の意図があると見なされる可能性があります。量を変えずに続けるのが条件です。

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

Q. ルール40の期間はいつからいつまでですか?

選手村が開く日から閉会式の2日後までです。ミラノ・コルティナ2026冬季大会では2026年1月30日から2月24日まででした。愛知・名古屋アジア競技大会でも同様の肖像使用規制があり、期間は2026年9月2日から10月6日までとされました。

お祝いや応援の発信は期間が終わってから行う

スポンサー企業が最もつまずきやすいのが、お祝いと応援の発信です。期間中は、大会に触れる発信そのものができません。

JOCの知的財産のガイドラインは、企業として出場選手への応援や祝福を発信することを、便乗広告の例に挙げています。メダルの獲得を使ったキャンペーンも同じ扱いです。壮行会や祝勝会についても、個人スポンサーは対外的な発信ができません。ニュースリリースやSNSへの投稿を伴わず、社内に限って開くことは認められています。

選手の側には、一定の自由があります。選手は、大会に関する表現を使わないなどの条件を満たせば、個人スポンサーへの感謝のメッセージをSNSで発信できます。ただし企業の側は、大会期間中、その投稿をリポストしたりシェアしたりできません。

大会の名称やマークは、法律でも守られています。JOCは、オリンピックに関する知的財産が商標法や不正競争防止法などで保護されていると説明しています。経済産業省の解説によると、不正競争防止法は、広く知られた他人の商品等表示と混同させる行為や、著名な表示を自分のもののように使う行為を不正競争と定めています。特許庁は、商標が登録されると、権利者は登録商標を独占的に使え、第三者による同じ商標や似た商標の使用を排除できると説明しています。

つまり、祝福や報告は期間が終わってから出すのが基本です。期間中は、前から続けている広告を変えずに出し続ける。この2つを分けて計画しておくと、現場が迷いません。選手との契約で確かめておく点は、スポーツスポンサーになる理由の記事でも、契約前に決めておくこととして紹介しています。

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)不正競争防止法の概要 – 経済産業省

(参考)商標制度の概要 – 経済産業省 特許庁

Q. スポンサー企業は大会期間中に選手の投稿をリポストできますか?

できません。選手は条件を満たせば個人スポンサーへの感謝のメッセージを発信できますが、日本オリンピック委員会のガイドラインは、個人スポンサー等は大会期間中、リポストとシェアができないとしています。

ルール40の手続きは確認書を競技団体経由で提出する

ルール40の確認書を競技団体経由で提出する流れの図

個人スポンサーが期間中も肖像を使うには、事前の手続きが要ります。確認書を、選手が所属する競技団体を通じて、JOCのルール40事務局に出します。

出す書類は、選手本人が作る確認書Aと、スポンサー企業が作る確認書Bの2種類です。確認書Bには、どの媒体にどの素材をいつから出しているかを書く別紙を添えます。広告を最初に出した日も記入するので、掲出時期の条件に合っているかが確かめられます。

期限は大会ごとに決まります。ミラノ・コルティナ2026冬季大会は2025年12月19日、愛知・名古屋アジア競技大会は2026年9月4日でした。期限の時点で代表に決まっていなくても、肖像を使う可能性があれば提出するよう求められています。

事務局が内容を確かめ、不備がなければ使用できます。判断に迷う表現は、事務局に相談するよう案内されています。

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2026年6月 ver2.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

次の大会に向けてスポンサー企業が今から準備する3つのこと

ルールの細かい内容は大会ごとに定められますが、これまでの考え方は共通しています。次の大会に向けて、今からできる準備を3つ挙げます。

選手を起用した広告を早い時期から続けておく

期間中に使えるのは、開村日の90日前より前から使っている素材でした。大会の年に入ってから作り始めるのではなく、前の年から同じ素材を出し続ける計画にしておきます。

契約に大会期間中の取り決めを入れておく

選手との契約に、期間中の広告の扱い、SNSでの発信、確認書の提出への協力を書いておきます。選手の投稿に自社の商品を入れる場合の表示の決まりも、あわせて取り決めておくと安心です。税務の面はスポンサー料の勘定科目で整理しています。

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期間が明けた日の発信を先に用意しておく

お祝いや報告は、期間が終わってから出せます。期間が明ける日を確かめ、その日に出す文面と素材を先に用意しておくと、機会を逃しません。大会の知的財産を使えるのは公式のパートナーだけ、という点は期間の外でも変わらないので、表現は事前にJOCのガイドラインと照らしてください。協賛全体の考え方はスポーツマーケティングの基本でも扱っています。

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

まとめ|ルール40は継続中の広告を続け祝福は期間後に出す

ルール40は、選手を支える企業にも直接かかわる決まりです。要点を振り返ります。

  • 大会期間中に参加選手の肖像を広告に使うことを制限する決まりで、期間は開村日から閉会式の2日後まで
  • 個人スポンサーは、確認書を出し、大会を連想させない継続中の広告に限って使える
  • 条件は、掲出時期・広告表現・掲出する場所・出稿量の4つ
  • お祝いや応援の発信、選手の投稿のリポストは期間中できない
  • アジア競技大会でも、同じ考え方の規制が設けられた

まずは、支援している選手が出る可能性のある大会と、その期間を書き出してみてください。次に、今出している広告の素材と掲出を始めた日を一覧にしておけば、確認書の準備がそのまま進みます。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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