カーボローディングのやり方|マラソン前2日の糖質量と食事例

カーボローディングのやり方|マラソン前2日の糖質量と食事例 スポーツ栄養学

カーボローディングは、走る時間が90分を超える大会の前だけに行う食事法です。目安は大会の36〜48時間前から、体重1kgあたり1日10〜12gの糖質をとること。体重60kgなら1日600〜720gで、ごはんにすると茶碗11〜13杯ぶんにあたります。

大会の前日は練習を軽くして体は楽なのに、夕食を食べきれず「糖質をちゃんと貯められたのか」と不安になる。社内のマラソン大会や駅伝に出る人、チームの食事を預かる担当者から、そんな声をよく聞きます。ここでは米国・カナダの栄養士団体と米国スポーツ医学会の共同声明、日本スポーツ振興センターの資料、日本食品標準成分表の数値をもとに、期間・量・食事例・失敗の避け方を整理します。

カーボローディングのやり方は走る時間が90分を超えるかで分かれる

カーボローディングが必要かどうかを、走る時間が90分以内か90分を超えるかで分けた図

カーボローディングは、筋肉と肝臓にためておく糖質(グリコーゲン)を大会前に満タンへ近づける食事法です。米国栄養士会、カナダ栄養士会、米国スポーツ医学会の2016年の共同声明は、対象を「90分を超える持続的または断続的な運動」の大会としています。

つまり、10kmやそれ以下の距離を走る人、1区間が数十分で終わる駅伝の走者は、いつもの食事で足ります。完走に3時間から5時間かかる市民マラソンのランナーは対象です。ハーフマラソンは速さで分かれ、完走に90分を超えそうなら対象に入ります。

日本スポーツ振興センターのハイパフォーマンススポーツセンターも、糖質を「スポーツのエネルギー源として最も大切な栄養素」としています。足りなければ体はたんぱく質や脂肪をエネルギーに回すため、長く走る日ほど糖質の貯えが効いてきます。

社内のマラソン大会や駅伝を運営する側なら(企業の駅伝の出場チームは企業の駅伝チームの一覧にまとめています)、参加案内に「走る時間が90分を超える人だけ、2日前から糖質を増やす」と一文添えるだけで、必要のない人が食べすぎて体が重くなる事態を減らせます。

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(参考)Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance(2016年) – Academy of Nutrition and Dietetics ほか

(参考)炭水化物 – 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター

Q. カーボローディングは10kmやハーフマラソンでも必要ですか?

10kmのように走る時間が90分以内の大会では必要ありません。共同声明が対象にしているのは90分を超える運動で、ハーフマラソンは完走に90分を超えそうな人だけが対象です。それ以外は、いつもの食事に主食を少し足す程度で足ります。

カーボローディングの期間は2日間|糖質は体重1kgあたり10〜12g

期間は大会の36〜48時間前からで、およそ前々日の朝から前日の夜までの2日間です。この間、24時間ごとに体重1kgあたり10〜12gの糖質をとる、と共同声明は示しています。いつもの練習日の目安は、1時間ほどの運動で1日5〜7g、1〜3時間の運動で6〜10gなので、それより一段多い量をとることになります。

体重 前々日・前日の1日あたり(10〜12g/kg) ごはんに置き換えた杯数 大会1〜4時間前の1回あたり(1〜4g/kg)
50kg 500〜600g 9.0〜10.8杯 50〜200g
60kg 600〜720g 10.8〜12.9杯 60〜240g
70kg 700〜840g 12.6〜15.1杯 70〜280g

出典:Academy of Nutrition and Dietetics ほか「Nutrition and Athletic Performance」(2016年)の目安量に体重を掛け、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年のごはん(精白米)100gあたり炭水化物37.1gで換算したHuman Soar が計算した値。茶碗1杯は150gと仮定

1日の食事量そのものの決め方はアスリートの食事量の決め方で詳しく解説しています。この表で気づくのは、ごはんだけで満たそうとすると1日に茶碗11〜15杯が必要になることです。食べきれないときは10g/kgを下限にして、もちやうどん、バナナなど水分が少なく食べやすいものを組み合わせます。

ふだんの食事の炭水化物は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で18歳以上のエネルギーの50〜65%が目標量です。カーボローディングの2日間は、この割合を超えて糖質を増やす特別な期間と考えてください。

(参考)「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 – 厚生労働省

Q. カーボローディングをすると体重は増えますか?

増えることがあります。体にためた糖質は水分と一緒にたくわえられるため、脂肪が急に増えたわけではなく、大会が始まって使われれば戻っていきます。2日間で体重が少し増えても、食事を減らさず予定どおり進めてください。

前々日から大会中までの流れ|走りながらも1時間30〜60gをとる

カーボローディングの前々日、前日、大会当日の朝、大会中にとる糖質量を時系列で示した図

糖質をとるのは前日だけではなく、前々日から大会中まで続きます。共同声明が示す量を時系列に並べると、前々日と前日は体重1kgあたり10〜12g、大会の1〜4時間前は1〜4g、走っている間は1時間あたり30〜60gです。

大会当日の朝食は、大会の1〜4時間前に体重1kgあたり1〜4gの糖質が目安で、体重60kgなら60〜240gです。声明は、インスリンの働きで糖質の消費が進みすぎないよう、最低でも1g/kgは含めると説明しています。

走っている間は、1〜2.5時間の運動なら1時間に30〜60gです。2.5〜3時間を超える長丁場では1時間に最大90gとされています。フルマラソンを4時間かけて走る人は、後半の補給で差が出るため、水分の取り方(発汗科学と水分補給)とあわせて、ジェルや飴などの持ち方を前もって決めておきましょう。

(参考)Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance(2016年) – Academy of Nutrition and Dietetics ほか

食事例の前に知っておきたい|ごはん・もち・うどんの糖質量と食物繊維

糖質を効率よくとるなら、食物繊維が少なく、水分の少ない食品を中心にします。同じ糖質50gをとるために必要な量とエネルギーを、日本食品標準成分表の数値から計算すると、食品による差がはっきり出ます。

食品(100gあたり) 炭水化物 炭水化物50gをとる量 そのときのエネルギー そのときの食物繊維
ごはん(精白米) 37.1g 135g 210kcal 2.0g
もち 50.8g 98g 219kcal 0.5g
うどん(ゆで) 21.6g 231g 220kcal 3.0g
マカロニ・スパゲッティ(ゆで) 32.2g 155g 233kcal 4.7g
食パン 46.4g 108g 267kcal 4.5g
バナナ(生) 22.5g 222g 207kcal 2.4g

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の可食部100gあたりの値から、炭水化物50g分の量・エネルギー・食物繊維を計算したHuman Soar の集計。炭水化物には食物繊維が含まれる

もちは100gで50.8gと糖質がもっとも濃く、食物繊維は0.5gしかありません。ごはんは50gをとるのに約135gで、エネルギーは210kcalほど。食パンは約108gで足りますが、食物繊維が4.5gと多いので、前日の夜に食べすぎるとお腹が張りやすくなります。

うどんは水分が多く、炭水化物50gに230g近い量が必要です。食べきれない人は、うどんをごはんかもちに置き換えた方が楽に量を確保できます。バナナは食物繊維が2.4gと穏やかで、持ち運べる補食として使いやすい食品です。

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(参考)食品成分データベース ごはん(精白米・うるち米) – 文部科学省(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)

(参考)日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 – 文部科学省

60kgの人の前日1日の食事例|糖質約600gを6回に分けてとる

体重60kgの人が前日に10g/kgの600gをとるときの組み立て方を、先ほどの食品表の数値で計算しました。ポイントは、3回の食事で食べきろうとせず、補食を3回はさんで6回に分けることです。

時間帯 食べるもの 炭水化物の目安
朝食 ごはん250g、バナナ1本(100g) 115g
午前の補食 もち100g(2個ぶん)、バナナ1本(100g) 73g
昼食 スパゲッティ(ゆで)300g、おにぎり1個(ごはん100g) 134g
午後の補食 食パン2枚(6枚切り・計120g) 56g
夕食 ごはん400g、具だくさんの汁もの 148g
夜の補食 もち100g(2個ぶん)、バナナ1本(100g) 73g
合計 約600g(10.0g/kg)

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の炭水化物(100gあたり:ごはん37.1g、もち50.8g、スパゲッティ32.2g、食パン46.4g、バナナ22.5g)から計算したHuman Soar の食事例。分量はHuman Soar の仮定

主食だけで600gを満たすので、おかずは脂質の少ないものを少量にします。この日はごはん・もち・パン・めんを1日に合計で約1.7kg食べる計算で、普段よりずっと多いはずです。食べきれなければ、夜の補食を飲み物やゼリーに替えて、10g/kgに届くかどうかを優先しましょう。

社内の駅伝チームの食事を預かる担当者なら、この表を体重別に作り直して配ると、選手が自分の量を決めやすくなります。

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(参考)食品成分データベース マカロニ・スパゲッティ(ゆで) – 文部科学省(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)

Q. カーボローディング中は、ごはん以外に何を食べればよいですか?

もち、うどん、パスタ、食パン、バナナなど、糖質が中心の食品を組み合わせます。脂質の多い揚げ物やクリームのソースは、糖質のかわりにお腹の中に長く残るので控えめにして、食べ慣れたものを選んでください。

カーボローディングで失敗を避ける3つの対策

栄養の基本はスポーツ栄養学の解説を、マラソン選手の実際の食事は鈴木健吾選手の食事管理を参考にしてください。つまずきやすいのは、量を急に増やしてお腹をこわす、体重の増加に驚いて食事を減らす、脂質や食物繊維で重くなる、の3つです。それぞれの対処を順に見ます。

お腹の張りを防ぐ|食べ慣れたものだけにする

糖質の量を一気に増やすと、胃腸が慣れずに張りや下痢を起こすことがあります。大会の数週間前の長い練習日に、同じ食事と補給の量を試しておくと、本番での不安が減ります。食べ方も補給の持ち方も、練習日に試してから本番に臨むのが基本です。

体重増加に慌てない|水分と一緒にたくわえられる糖質

糖質は水分と一緒に体にためられるため、大会の前に体重が増える人がいます。これは脂肪が増えたのではないので、食事を減らして調整する必要はありません。練習日に同じ食べ方を試して、体重の変化と走りの調子を記録しておくと、本番でも落ち着いて受け止められます。

脂質と食物繊維で重くしない|主食を主役にする

揚げ物や生クリームは、お腹に長く残って糖質が入る余地を減らします。ごぼうや海藻、玄米などの食物繊維が多い食品も、前日の夜は控えめにします。食べ慣れたものを、いつもより主食多めにするのが基本です。

(参考)炭水化物 – 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター

Q. お腹をこわしやすい人は、カーボローディングをどう進めればよいですか?

量を急に増やさず、練習日に同じ食事を試して、食物繊維や脂質の多いものを前日の夜は減らします。それでも不安が強いときは、ごはんやもちなど消化のよい主食を回数に分けて少しずつとり、必要なら管理栄養士に相談してください。

まとめ|カーボローディングは90分を超えて走る人が2日間だけ行う

  • 対象は走る時間が90分を超える大会で、10kmなどの90分以内の運動には必要ありません。
  • 期間は大会の36〜48時間前で、およそ前々日の朝から前日の夜まで、体重1kgあたり1日10〜12gの糖質をとります。
  • 大会の1〜4時間前は1〜4g/kg、走っている間は1時間に30〜60g(2.5〜3時間を超えるときは最大90g)が目安です。
  • もち・ごはん・うどん・バナナなど食物繊維の少ない主食を、補食をはさんで6回ほどに分けるとり方が現実的です。
  • 当日に初めてのものを食べず、練習日に同じ食事と補給を試してから本番に臨みましょう。

次に取る行動は、自分の体重に10〜12gを掛けて前日の糖質量を出し、上の食事例を自分用に書き換えることです。書き換えた食事を、大会の数週間前の長い練習日に一度試してみてください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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