福利厚生で法人契約しているジムから、ある朝「閉店のお知らせ」が届く。前払いした利用料の扱いを総務に確認しながら、従業員への案内文を書き直す。そんな場面が、珍しい話ではなくなってきました。
フィットネスクラブの倒産は、東京商工リサーチの集計で2026年1〜8月に26件と、前年同期の2.6倍に達しています。理由は利用者が減ったことではなく、店舗が増えすぎて1店あたりの会員が薄くなったことです。経済産業省の統計を計算し直すと、1事業所あたりの会員数は2019年から2024年のあいだに約26%減っていました。
この記事では、倒産件数の実数、増えている理由、料金の動きを一次情報で整理します。そのうえで、法人契約を結ぶ企業と、クラブを運営する企業のそれぞれが見るべき指標をまとめました。
フィットネスクラブの倒産は2026年に過去最多ペースで増えている
フィットネスクラブの倒産は、調査会社2社のどちらの集計でも2026年に過去最多の水準へ向かっています。帝国データバンクと東京商工リサーチは集計の対象と期間が違うため、件数を足したり1本の推移としてつなげたりはできません。まず2社の数字を並べて、それぞれの定義を確認しておきます。
| 調査会社 | 集計期間 | 倒産件数 | 比較 | 倒産の定義 |
|---|---|---|---|---|
| 帝国データバンク | 2026年1〜7月 | 23件 | 前年同期は19件 | 負債1000万円以上・法的整理 |
| 東京商工リサーチ | 2026年1〜8月 | 26件 | 前年同期比160.0%増 | 日本標準産業分類の「フィットネスクラブ」・負債1,000万円以上 |
フィットネスクラブの倒産件数(2026年)。出典:帝国データバンク「『フィットネスクラブ』の倒産動向(2026年1-7月)」(2026年8月13日公表)、東京商工リサーチ「2026年1-8月『フィットネスクラブ』倒産動向」(2026年9月7日公表)
帝国データバンクの集計|1〜7月で23件
帝国データバンクは2026年8月13日、2026年1〜7月のフィットネスクラブ事業者の倒産が23件だったと公表しました。前年同期の19件を上回っており、同社は2025年を「年間で過去最多だった前年」と位置づけたうえで、2026年は年間で初めて40件に届く可能性があるとしています。
23件のうち6件は、事業内容にパーソナルジムを含む企業でした。集計の対象は負債1000万円以上で、法的整理による倒産に限られています。つまり、借入を残さずに店を閉めた廃業や、事業譲渡で看板が変わったケースはこの数字に入っていません。
(参考)「フィットネスクラブ」の倒産動向(2026年1-7月) – 帝国データバンク
東京商工リサーチの集計|1〜8月で26件
東京商工リサーチは2026年9月7日、2026年1〜8月の倒産が26件(前年同期比160.0%増)だったと公表しました。これまで同じ期間で最も多かった2023年の16件を上回っています。年間の最多は2023年の27件で、同社は2026年について40件台も視野に入るとみています。
原因別では「販売不振」が19件で、全体の73.0%を占めました。設備の事故や不祥事ではなく、会員が集まらず売上が立たなかった倒産が中心ということですね。
(参考)「フィットネスクラブ」の倒産が過去最多を更新へ 1-8月は26件、市場拡大もレッドオーシャンの兆し – 東京商工リサーチ
Q. フィットネスクラブの倒産件数は何件ですか?
東京商工リサーチの集計では2026年1〜8月に26件、帝国データバンクの集計では2026年1〜7月に23件です。どちらも負債1,000万円以上の倒産が対象で、前年の同じ期間を上回っています。2社は集計の対象が違うため、件数を合算することはできません。
倒産が増える理由は1店あたりの会員が約26%減ったこと
倒産が増えている一番の理由は、会員の総数が戻りきらないうちに店舗だけが増え、1店あたりの会員が薄くなったことです。経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」のフィットネスクラブの実数から、3つの指標を計算し直しました。
| 指標 | 2015年 | 2019年 | 2021年 | 2024年 | 2019年→2024年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1事業所あたり会員数 | 2,742人 | 2,302人 | 1,711人 | 1,695人 | -26.3% |
| 1事業所あたり売上高 | 2.86億円 | 2.29億円 | 1.63億円 | 1.71億円 | -25.3% |
| 会員1人あたり売上高 | 104,303円 | 99,549円 | 95,075円 | 100,973円 | +1.4% |
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」長期データ(フィットネスクラブ・年次実数、2026年10月6日取得)の売上高・会員数合計・事業所数からHuman Soarが算出。売上高は1〜12月の合計、会員数と事業所数は12月時点。対象は年間売上高のおおむね7割をカバーする売上高上位の企業で、2015年1月分と2020年7月分に調査対象の追加があるため前後の比較には幅を持たせる必要があります。同調査は2024年12月分で終了しています。
1事業所あたり会員数は2,302人から1,695人に減った
1事業所あたりの会員数は、2019年の2,302人から2024年は1,695人へ、26.3%減りました。会員数の合計は3,362,965人から2,882,341人へと約14%減った一方で、事業所数は1,461から1,700へと約16%増えています。
分母の店舗が増え、分子の会員が減ったので、1店が抱えられる会員は4分の3ほどになりました。2021年の1,711人からほとんど戻っていない点が、倒産が2022年以降に高止まりしている背景と重なります。
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1事業所あたり売上高は2.29億円から1.71億円に下がった
1事業所あたりの年間売上高は、2019年の2.29億円から2024年は1.71億円へ、25.3%下がりました。売上高の合計は2024年に2,910億円まで回復しましたが、2019年の3,348億円と比べると86.9%の水準です。
家賃やマシンのリース料は、会員が減っても同じ額が出ていきます。1店あたりの売上が4分の1減ると、固定費を払ったあとに残る利益は、それ以上の割合で削られることになります。
会員1人あたり売上高は約10万円で横ばいが続く
会員1人あたりの年間売上高は、2019年が99,549円、2024年が100,973円で、差は+1.4%にとどまります。会員が払う金額は、この5年でほとんど変わっていません。
つまり、経営を圧迫しているのは単価の下落ではなく、1店あたりの人数の減少です。帝国データバンクも、限られた商圏に出店が集中する「オーバーストア状態」を倒産の背景に挙げています。業界全体の市場規模や成長領域は上の記事で扱っているので、ここでは倒産と経営指標に絞って見ていきます。
(参考)長期データ|特定サービス産業動態統計調査 – 経済産業省
(参考)調査の概要|特定サービス産業動態統計調査 – 経済産業省
Q. フィットネスクラブの倒産はなぜ急増しているのですか?
店舗が増えすぎて、1店あたりの会員数が減ったためです。経済産業省の統計から計算すると、1事業所あたりの会員数は2019年の2,302人から2024年は1,695人へ約26%減りました。そこに人件費と光熱費の上昇が重なり、資金に余裕のない小規模な事業者から倒産しています。
割引で集めた会員が正規価格で離れ小規模な事業者から倒れる

倒産に至る流れは、出店の集中から始まり、割引での集客、正規価格での離脱、資金の枯渇へと進みます。帝国データバンクは2026年8月の調査で、「入会金無料」や「特別割引」といった販促キャンペーンが常態化し、キャンペーン価格で入会した会員が正規価格になると離脱していると指摘しました。
この流れに耐えられないのは、資金の厚みがない事業者です。規模と業態の両面から、どこで倒産が起きているかを確認します。
資本金1千万円未満の事業者が9割を占める
東京商工リサーチの集計では、2026年1〜8月の倒産26件のうち、資本金1千万円未満が24件で92.3%を占めました。従業員数でも5人未満が23件(88.4%)と、ごく小さな事業者に集中しています。
負債額は1千万円以上5千万円未満が19件で最も多く、大型の倒産は限られます。1〜2店舗を運営する事業者が、開業時の借入を返しきれずに行き詰まる姿が数字から読み取れます。なお帝国データバンクによると、同社が集計した23件のうち6件はパーソナルジムを手がける企業でした。
(参考)「フィットネスクラブ」の倒産が過去最多を更新へ 1-8月は26件、市場拡大もレッドオーシャンの兆し – 東京商工リサーチ
社名が公表された倒産は会員制ジムとヨガスタジオに見られる
調査会社の件数レポートは、倒産した企業名の一覧を載せていません。個別の速報で社名を確認できる例として、会員制フィットネスジム「BVEATS」を運営していたBVEATS株式会社(東京都渋谷区)があります。東京商工リサーチによると、同社は2026年6月29日に東京地裁へ破産を申請し、負債総額は約2億3000万円でした。大手が安価なトレーニングジムの展開を加速して競争が激しくなり、売上が落ちたと報じられています。
隣接する業態では、ヨガ・ピラティス教室「スタジオ・ヨギー」を都内中心に20店舗以上展開していた株式会社ヨギーが破産開始決定を受けました(東京商工リサーチ、2025年8月4日公表)。負債総額は約6億2000万円で、債権者約2500名のうち約2200名が一般の利用者です。前払いの会費や回数券を持っていた利用者が、そのまま債権者になったわけですね。
(参考)会員制フィットネスジム「BVEATS」運営会社が破産 – 東京商工リサーチ
(参考)ヨガスタジオとしては過去最大の倒産 ヨガ・ピラティス教室運営の(株)ヨギー(東京)が破産 – 東京商工リサーチ
Q. 倒産したフィットネスクラブの企業名の一覧はありますか?
網羅的な一覧は公表されていません。帝国データバンクと東京商工リサーチの件数レポートには企業名が載っておらず、個別の倒産は各社の速報で1件ずつ確認する形になります。2026年の例では、会員制ジムを運営していたBVEATS株式会社が6月29日に破産を申請しています。
人件費の上昇で会費の値上げが続き料金は月3,278円から19,080円まで開いた

フィットネスクラブの料金は、人件費と光熱費の上昇を受けて総合型で値上げが進み、低価格ジムとの差が月額で約6倍に開いています。コストの動きと、公式ページで確認できる料金を順に見ていきます。
最低賃金の全国加重平均は901円から1,177円へ上がる
厚生労働省によると、地域別最低賃金の全国加重平均額は2019年度の901円から、2025年度は1,121円、2026年度の答申額は1,177円になりました。7年間で276円、率にして約31%の上昇です。2026年度の改定額は、2026年10月1日から12月2日にかけて順次発効する予定とされています。
フィットネスクラブは受付や清掃、インストラクターにパート・アルバイトを多く配置する業態なので、最低賃金の引き上げがそのまま人件費に響きます。会員1人あたりの売上が約10万円で横ばいのまま、時給だけが3割上がったと考えると、利益が残りにくくなった構図が見えてきます。
総合型は会費を改定し低価格ジムは月3,278円を掲げる
コナミスポーツは2026年2月16日、「昨今の人件費や諸物価の高騰」を理由に、2026年4月度からの会費改定を公表しました。公式サイトの月会費プランでは、回数制限のない「好きなだけフリー」が施設のカテゴリ別に月12,680円〜19,080円(税込、2026年4月からの価格)です。法人会員についても、2025年12月度から「好きなだけフリー(法人)」を月10,010〜14,850円から10,780〜15,950円(税込)へ改定しています。
一方、RIZAPグループが展開するchocoZAPは、公式サイトで月額2,980円(税込3,278円)を掲げています。同じ「ジムに通う」でも、プールやスタジオを備えた総合型と、マシン中心の無人型では料金が大きく違います。福利厚生で契約するときは、従業員が何を使いたいのかを先に確かめると、費用のかけ方を決めやすくなります。
(参考)フィットネス向け月会費プラン – コナミスポーツクラブ
(参考)会費(法人会員)改定のご案内 – コナミスポーツクラブ
(参考)chocoZAP|24時間使えるコンビニジム – RIZAP
Q. フィットネスクラブの料金はいくらですか?
公式サイトで確認できる範囲では、月額3,278円から19,080円(いずれも税込)まで幅があります。無人型のchocoZAPが月3,278円、総合型のコナミスポーツクラブは回数制限のないプランが月12,680円〜19,080円です(2026年10月6日確認)。店舗や施設のカテゴリによって金額が変わるため、契約前に利用する店舗の料金表を確認してください。
法人契約を結ぶ企業が契約前に確かめる3つの点
法人契約では、運営会社の体力、前払いの長さ、利用実績の3つを契約前に確かめると、倒産や閉店の影響を小さくできます。スポーツ庁の令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(2026年3月11日公表)では、従業員が勤務先に希望する取組の2位が、職場外のスポーツジムの法人契約・優待利用などの金銭補助(26.1%)でした。需要がある施策だからこそ、契約先の選び方が成果を左右します。
運営会社の規模と店舗網を確かめる
最初に確かめるのは、契約先の運営会社の規模と店舗数です。2026年1〜8月の倒産は、資本金1千万円未満が92.3%、従業員5人未満が88.4%でした。規模の小さい事業者を避けるべきという話ではなく、1店舗だけの契約に従業員の運動機会を預けきらないことが大切です。
複数の店舗やブランドを使える契約にしておくと、1店が閉まっても従業員は別の店に通えます。法人契約の基本的な仕組みやプランの比べ方は、スポーツジムの法人契約を扱った記事で整理しています。
あわせて読みたいスポーツジム法人契約|健康経営担当者向け導入メリット3選›
前払いの期間を短くして損失を抑える
次に、利用料を何か月分まとめて払う契約なのかを確認します。ヨギーの破産では、債権者約2500名のうち約2200名が一般の利用者でした。前払いした分は、運営会社が倒産すると債権として届け出る立場になり、全額が戻るとは限りません。
年払いの割引は魅力ですが、月払いや都度利用のプランにしておけば、失う金額は最大でも1か月分で済みます。割引額と、倒産したときに戻らない金額を並べて比べてみてください。施設ごとの契約形態の違いは、スポーツ施設の法人契約を比較した記事も参考になります。
利用実績を毎月受け取り従業員の運動につなげる
3つ目は、利用者数と利用回数の実績を毎月受け取れるかどうかです。スポーツ庁の同じ調査では、勤務先に運動・スポーツの取組がある就業者の週1日以上の実施率は71.1%で、取組がない場合より25.9ポイント高い結果でした。ただし、契約しただけで使われなければ、この差は生まれません。
実績が毎月届けば、使われていない部署に声をかけたり、オフィスで行うフィットネスプログラムと組み合わせたりする判断ができます。利用が極端に少ない店舗は、閉店の候補になりやすい店舗でもあります。導入した企業の進め方は、下の導入事例の記事にまとめています。
あわせて読みたいフィットネス福利厚生の導入事例|効果と選び方›
(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果を公表します – スポーツ庁
運営する企業は会員単価より1店あたり会員数を先に立て直す
クラブを運営する側が最初に見る指標は、会員単価ではなく1店あたりの在籍会員数です。先ほどの計算のとおり、会員1人あたりの売上は5年間ほぼ変わらず、落ちたのは1店あたりの人数でした。値上げと出店のどちらを先に考えるかで、打ち手の順番が変わります。
出店を増やす前に既存店の在籍を戻す
新しい店を出す前に、既存店の在籍会員数を2019年の水準に近づけることが先です。帝国データバンクの業界動向調査(2025年5月16日公表)によると、主要な大手15社の店舗数は2024年度末に6500店前後となる見込みで、10年前の2.3倍に増えました。同じ調査では、2024年度の損益が判明した企業のうち黒字は48.8%、赤字は31.7%と二極化しています。
店舗が2倍以上に増えた市場で、さらに出店で売上を伸ばそうとすれば、自社の既存店とも会員を取り合うことになります。入会後に通い続けてもらう仕組みづくりは、会員定着率を高める運営プランで具体策を紹介しています。
(参考)「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2024年度) – 帝国データバンク
キャンペーン入会者の正規価格移行後の在籍率を月次で追う
集客の成果は、入会数ではなく、正規価格に切り替わったあとの在籍率で測ります。帝国データバンクが指摘するように、キャンペーン価格で入った会員が正規価格で離脱すると、初期の売上が立たないまま広告費と入会特典の費用だけが残ります。
入会月ごとに、割引が終わった翌月と3か月後の在籍率を並べてみてください。在籍率の低いキャンペーンをやめるだけで、集客コストを下げながら1店あたりの会員数を保ちやすくなります。スポーツ産業全体に共通する収益構造の課題は、日本スポーツ業界の課題をまとめた記事でも整理しています。
(参考)「フィットネスクラブ」の倒産動向(2026年1-7月) – 帝国データバンク
まとめ|フィットネスクラブの倒産は1店あたり会員数で読み解く
フィットネスクラブの倒産は、需要の消失ではなく店舗の増えすぎで起きています。要点を振り返ります。
- 倒産は2026年1〜8月に26件(東京商工リサーチ)、1〜7月に23件(帝国データバンク)で、どちらも過去最多のペース
- 1事業所あたり会員数は2019年の2,302人から2024年の1,695人へ約26%減少(経済産業省の統計から算出)
- 倒産の9割は資本金1千万円未満の事業者で、原因の7割は販売不振
- 料金は月3,278円から19,080円まで幅があり、総合型では値上げが続く
- 法人契約では、運営会社の規模、前払いの期間、利用実績の3点を契約前に確かめる
法人契約を結んでいる場合は、まず現在の契約書で前払いの期間と、利用できる店舗の数を確認してみてください。運営する側であれば、既存店ごとの在籍会員数を2019年と並べるところから始めるのがおすすめです。
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