柔道女子78kg超級で世界選手権を制し、現在は医学部で医師を目指しながら競技を続ける朝比奈沙羅選手。多忙な二刀流生活を支えているのが、遠征先でも崩さない睡眠へのこだわりだ。海外のホテルで悩まされてきた不眠と、その改善のきっかけになった出来事、現在の睡眠管理の実際を一次情報から整理する。
海外遠征で直面した眠れない夜
朝比奈選手は本人インタビューで「海外のホテルでは、ベッドが十分な大きさではなかったり、マットレスの反発力が合わなかったりすることが多くある」と明かしている。柔道は腰に負担がかかる競技であるため、朝起きた時に腰が痛いことも少なくなかったという。睡眠時間をしっかりとり、質も高めたいと考えていた本人にとって、遠征のたびに繰り返される寝具の問題は大きな悩みだった。組み合って投げ合う柔道は腰椎や股関節への負荷が大きく、日中の練習で蓄積した負担を夜間の睡眠でどれだけ回復できるかが翌日のコンディションを左右する。合わない寝具のまま眠ることは、この回復のプロセスそのものを妨げてしまい、蓄積した疲労が抜けきらないまま次の練習や試合に臨むことにもつながりかねない。
オルティス選手との出会いという転機
転機になったのは、柔道界のレジェンドであるキューバのイダリス・オルティス選手が、遠征先にマットレスを持ち運んでいる姿を目にしたことだった。朝比奈選手は「当時の私は、マットレスを遠征先に持ち込むことなど考えもしませんでした」と振り返り、「睡眠に対する取り組みの違いによって、オルティス選手との差を、まざまざと思い知らされました」と語っている。トップ選手ほど、睡眠環境そのものを準備の一部として持ち歩いているという気づきが、その後の行動を変えるきっかけになった。一流選手同士でも、こうした環境づくりへの意識の差が結果に表れうるという実感は、多くの競技者にとって示唆に富む。
(参考)朝比奈沙羅(柔道)|アスリートサポートプログラム – nishikawa AiR
マットレスと睡眠アプリで実感した変化
自宅と遠征先の両方でマットレスを使うようになった朝比奈選手は、「毎日のトレーニングと勉強が終わった後に、あのマットレスの元に帰りたい、と恋い焦がれる様な寝心地」と表現するほど、睡眠の質の変化を実感したという。スマートフォンの睡眠アプリも併用しながら、8〜10時間の睡眠時間の確保と、睡眠の質の両方を追求していると明かしている。感覚だけに頼らず、実際の睡眠時間や深さをアプリで記録することで、遠征や試験期間などで生活リズムが乱れやすい時期にも睡眠の変化に早く気づき、修正しやすくなる。数値として可視化できることは、多忙な二刀流生活の中で自分の状態を客観的に把握する助けにもなっている。
体のラインに合わせて選ぶという発想
ショールームでレギュラータイプとハードタイプを試した結果、現在はハードタイプを使用しているという。「身体のラインにフィットした、点で支えてくれる感じが、よい寝心地を創ってくれている」と述べており、硬さの好みは体格や癖によって異なるため、実際に試して選ぶ姿勢がうかがえる。マットレスは一度選んだら終わりではなく、体調やコンディションの変化に合わせて見直す消耗品と捉える視点も、負荷の大きい競技を続ける選手には参考になる。
医学生としての知見と重ね合わせる睡眠観
朝比奈選手は「睡眠によって身体の疲労を解消するだけではなく、成長ホルモンの分泌が促進され、痛めた身体を修復すると聞いたことがある」とも語っている。医学部で学ぶ立場から、睡眠が単なる休息ではなく身体の修復プロセスそのものであるという理解を持って実践に落とし込んでいる点が特徴的だ。深い睡眠の段階で成長ホルモンの分泌が高まり、筋肉や結合組織の修復が進むという知見はスポーツ医科学の分野でも広く共有されており、柔道のように身体への負荷が大きい競技では、この修復プロセスを妨げないことが長期的な故障予防にもつながる。
柔道と勉強という二刀流を支える基盤
2014年から2016年にかけて講道館杯全日本柔道体重別選手権大会を三連覇し、2017年には世界柔道選手権(無差別)を制するなど、10代から20代にかけて世界のトップに立ち続けてきた朝比奈選手。柔道でオリンピック優勝を目指す一方、セカンドキャリアとして医師を志し、柔道の練習に加えて毎日の勉強も続けている。限られた睡眠時間の中でいかに質を落とさないかという工夫の積み重ねが、この両立を可能にしている。恵まれた身体をより機能的に動かすための身体づくりを、現在も課題として挙げるほど、トップレベルであっても「これで十分」という到達点はないという姿勢がうかがえる。
遠征生活における環境づくりの工夫
海外遠征では言語や食事だけでなく、寝室の温度・湿度・明るさといった睡眠環境そのものが日本の自宅とは異なる。朝比奈選手のように寝具を持ち込む、あるいは自分に合った寝具を事前にリサーチしておくといった準備は、慣れない環境でも睡眠の質を大きく落とさないための手段になる。長時間のフライトや時差移動が続く国際大会では、移動そのものによる疲労が睡眠の質にも影響しやすく、到着後すぐに現地の生活リズムに合わせて眠る時間を調整するなど、身体を早く慣らす工夫も遠征を重ねる中で身についていくものと考えられる。アスリートサポートプログラムのように、寝具メーカーが選手の睡眠環境を支援する仕組みも広がっており、こうした外部のサポートを活用できるかどうかも、遠征が多い競技人生における睡眠の質を左右する要素になっている。
特別な機材がなくても、就寝前のスマートフォン使用を控える、部屋の照明を落とすといった基本的な工夫を積み重ねることが入眠のしやすさに影響する。朝比奈選手のように「試して合うものを選ぶ」姿勢は、寝具に限らず睡眠環境全般に応用できる考え方だ。
よくある質問
朝比奈沙羅選手はどのような睡眠の悩みを抱えていましたか
海外遠征のホテルでベッドの大きさやマットレスの反発力が合わず、朝起きた時に腰が痛くなることが多かったと語っている。
睡眠環境を見直すきっかけは何でしたか
柔道界のレジェンドであるキューバのイダリス・オルティス選手が、遠征先にマットレスを持ち運んでいる姿を見たことがきっかけだったという。
現在はどのくらいの睡眠時間をとっていますか
スマートフォンの睡眠アプリも活用しながら、8〜10時間の睡眠時間の確保と質の向上の両方を追求していると明かしている。
まとめ
- 朝比奈沙羅選手は海外遠征のホテルで、寝具が合わないことによる不眠や腰の痛みに悩まされてきた
- キューバのオルティス選手がマットレスを持ち運ぶ姿を見たことが、睡眠環境を見直す転機になった
- 自宅と遠征先でマットレスを使い、睡眠アプリも活用しながら8〜10時間の睡眠時間と質の両方を追求している
- 医学生としての知見も踏まえ、睡眠を身体の修復プロセスとして捉えている
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