福岡国際マラソンで14年ぶりの日本人優勝を果たし、東京五輪の男子マラソン代表にも選ばれた服部勇馬選手。長く第一線で走り続ける土台には、長距離選手特有の課題と向き合いながら積み上げてきた食事管理と、故障を経て見直した練習と回復のバランスがある。本人インタビューをもとに整理する。
貧血対策としての栄養バランスと補給の工夫
服部選手は「競技特性上貧血になりやすいので、栄養バランスの良い食事を大切にしています」と語っている。長距離走は着地の衝撃による赤血球の破壊や発汗による鉄分の喪失が起こりやすく、貧血は多くのランナーが向き合う課題だ。大学進学後は管理栄養士によるサポートを受けるようになり、「出されたものをしっかり食べるように意識しています」と話す。大学・社会人になってからは血液検査を毎月実施し、その結果に応じて不足する栄養素をサプリメントで補うという、数値に基づいた調整も行っている。海外合宿ではチームの管理栄養士が帯同し普段とあまり変わらない食事を摂れる一方、レース当日は電子レンジで温めるご飯など自分で用意できる補給食を持参するといい、国内にいる時でもポイント練習の日をパン食にすることで海外遠征時の食事にあらかじめ対応できるようにしていると明かしている。
腸内環境への意識という長距離選手特有の課題
「試合前に便通が良くないと、コンディションが悪いなと感じますし、お腹を下しているときは走れません」と語る服部選手にとって、腸のコンディションは日々意識するテーマだ。長距離ランナーは胃腸炎に絶対なってはいけないと述べており、腸内環境の改善が報告されている食材を積極的に取り入れたいとも話している。ジュニアアスリートへのアドバイスとして「食べ物の好き嫌いがあるので、あまり強くは言えない」としながらも「まずは出されたものを満遍なく食べるのが大切」と述べ、体重よりも走るために必要な栄養摂取を優先する考え方を伝えている。
(参考)プロアスリートを支える食事に迫る。第27回 陸上・服部勇馬選手インタビュー – きのこらぼ
故障を経てたどり着いた練習と回復のバランス
トヨタ自動車入社1年目、服部選手は当時の指導者から「ゆっくりでいいから120分とか150分とか、長い時間を走るように」と言われていたが、時間を意識した走りが苦手で素直に取り組めなかった時期があったという。結果が出ず、2年目には大きな故障を経験している。そこから自分のやり方に固執せず、指導者の言葉に向き合って練習を信じてやり始めたことで、課題だった終盤の失速がなくなっていったと振り返る。2018年12月の福岡国際マラソンでは2時間7分27秒の自己ベストで優勝し、終盤の走りを弱点から長所に変えられたレースだったと語る。この結果が自身の走り方への自信につながり、東京五輪代表を懸けたMGCでの好走にもつながったという。
リラックス法としてのサウナ習慣
リラックス方法についてサウナを挙げ、「疲労回復だけでなく、リフレッシュできて、思考の整理もできる」と話す。寮にサウナがあり基本的に毎日入るといい、休日などはより多くのセットをこなすこともあるという。栄養面の管理に加えて、こうした日常的なリカバリー習慣も長期にわたり高いパフォーマンスを維持する土台の一部になっている。
ジュニア期から積み上げた食習慣とメンタルの支え
兄弟で陸上競技を続けてきた実家では、中学で成績が出始めてから母親が消化のよい食事を用意するようになった一方、プロテインやサプリメントの摂取には慎重で、食事から栄養を摂る意識が根づいていたという。座右の銘として「心で走る」という言葉を大切にしていると明かす服部選手。走りながら降ってきた言葉だといい、苦しい場面で自分自身を奮い立たせる支えになっているという。栄養管理や練習の積み重ねだけでなく、レース終盤の苦しさに向き合うメンタル面の準備も長距離種目には欠かせない要素になっている。ジュニアアスリートへのアドバイスとして「自分のためだけに競技を続けていくことには限界があります。応援してくれる誰かのために頑張る」とも語っており、具体的な取り組みの土台にこうした精神的な支えがあることも見逃せない。
忘れられない東京五輪という経験
忘れられないシーンとして挙げるのは東京五輪だ。本番では熱中症に苦しんだというが、そこに至るまでの過程も含めて「今後絶対に忘れることができないレース」だと振り返っている。栄養や体調管理を突き詰めても、当日の気温や体調によって想定外の事態が起こり得ることを示すエピソードでもある。現在はマラソン日本記録(当時2時間4分56秒)の更新と、故障をせずに練習を継続することを目標に掲げており、栄養管理や腸のコンディション維持は、その土台を支える欠かせない要素として位置づけられている。
数字で見る競技実績の重み
高校時代からトップレベルで活躍し、東洋大では箱根駅伝の花の2区で2年連続の区間賞を獲得。トヨタ自動車入社後は2018年の福岡国際マラソンで日本人として14年ぶりの優勝を果たし、翌2019年のMGCで2位に入り東京五輪代表権を獲得した。こうした積み重ねの背景には、日々の食事管理という地味だが継続的な取り組みがある。
よくある質問
服部勇馬選手はなぜ栄養バランスを重視するのですか
長距離走特有の貧血リスクを避けるためだと語っている。特定の食材に頼るのではなく、日々の食事全体でバランスを整えることを意識している。
海外遠征時の食事はどうしていますか
チームの管理栄養士が帯同する海外合宿では普段に近い食事を摂れる一方、レース当日は電子レンジ対応のご飯など自分で用意できるものを持参しているという。
ジュニア選手への食事アドバイスはありますか
体重をあまり気にしすぎず、成長期にはしっかり食べることが必要だと述べている。好き嫌いを認めつつ、出されたものを満遍なく食べる姿勢を勧めている。
まとめ
- 服部勇馬選手は長距離選手特有の貧血リスクを踏まえ、栄養バランスの良い食事を重視している
- 大学以降は管理栄養士のサポートと毎月の血液検査を組み合わせ、不足栄養素をサプリメントで補っている
- 故障を経て指導者の練習方針を信じて取り組んだことで、レース終盤の失速という弱点を克服した
- 腸のコンディションを日々意識し、胃腸炎を防ぐことを長距離選手として特に重視している
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