練習日誌・トレーニング記録アプリは、社員やチームの運動習慣を「見える化」し継続させるうえで、企業がもっとも導入しやすい健康経営施策のひとつです。本記事ではStrava・TrainingPeaksなど代表的な10製品を比較し、自社の目的(個人記録/チーム管理/AIコーチング)に合うタイプの見極め方を解説します。
練習日誌・トレーニング記録アプリとは|企業が導入する意味
練習日誌・トレーニング記録アプリとは、走行距離や心拍数、練習内容などの運動データをスマートフォンやウェアラブル端末で記録し、振り返りや目標管理に活用するツールの総称です。個人のランナー向けのシンプルな記録アプリから、実業団やクラブチームのコーチが選手の負荷データを一元管理するプラットフォームまで幅広く含まれます。
企業がこの領域に注目する理由は、社員の運動習慣づくりや実業団・社内クラブの運営に「記録の継続」が欠かせないためです。スポーツ庁が令和8年3月に公表した令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、20歳以上の週1日以上のスポーツ実施率は51.7%、1週間あたりの運動・スポーツ実施時間の中央値は69.0分にとどまっており、特に20代〜50代の子育て・働き盛り世代で運動時間が短い傾向が示されています。記録アプリによる可視化は、こうした層の運動習慣づくりを後押しする手段として位置づけられます。
(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果を公表します – スポーツ庁
Q. 練習日誌アプリとトレーニング管理システムの違いは何ですか?
練習日誌アプリは個人やチームの練習内容・距離・心拍数などを記録し振り返るためのツールです。一方トレーニング管理システムは、コーチが複数選手の負荷データを一元管理し指導計画に活かす、より組織向けの仕組みを指すことが多く、本記事で紹介する10製品にはどちらのタイプも含まれます。
主要10製品を比較する一覧表|代表的なトレーニング記録アプリ・サービス
本記事では、公式サイトで機能・提供元を確認できた代表的な練習日誌・トレーニング記録アプリ・サービスのうち、国内外で広く使われている10製品を掲載しています。上位数製品は機能・強みまで踏み込み、残りは要点を絞って紹介します。
| 製品名 | 提供元 | 主な機能・特徴 | 対応プラットフォーム |
|---|---|---|---|
| Strava | Strava, Inc. | GPSでラン・サイクル等を記録し、1億人超のコミュニティで共有・比較 | iOS/Android/Web |
| TrainingPeaks | TrainingPeaks, LLC | TSS・CTL等の指標でコーチが練習計画を管理、多数のデバイスと同期 | iOS/Android/Web |
| Final Surge | Final Surge, LLC | コーチと選手のワークアウトログ共有、コーチ向けの選手管理機能 | iOS/Android/Web |
| TrainAsONE | Anticipatory Health Limited | AIが練習後にプランを毎回再計算するアダプティブ・ランニングコーチ | iOS/Android/Garmin/Web |
| Runkeeper | ASICS Digital | ガイド付きトレーニングとコーチによる音声ガイドが中心 | iOS/Android |
| Nike Run Club | Nike, Inc. | 無料のランニング記録、オーディオガイド、コミュニティチャレンジ | iOS/Android |
| Polar Flow | Polar Electro | Polarデバイスの活動・睡眠・回復データを一元管理 | iOS/Android/Web |
| Garmin Connect | Garmin Ltd. | Garminデバイスの活動記録・分析・共有プラットフォーム | iOS/Android/Web |
| TrainHeroic | TrainHeroic, Inc. | 筋力トレーニング特化のコーチ向けプログラム配信・進捗管理 | iOS/Android/Web |
| Suunto app | Suunto | Suuntoデバイス連携、ルート計画、200以上のパートナーサービスと連携 | iOS/Android/Web |
表1:主要な練習日誌・トレーニング記録アプリ・サービス10製品の比較(各社公式サイト記載内容にもとづき作成、2026年9月時点)
Strava|1億人超のコミュニティで走行データを共有
Stravaは、GPSを使ってランニングやサイクリングの走行データを記録し、世界中のユーザーとセグメント(区間)タイムを競い合える点が特徴です。企業の実業団やランニング部では、社員同士がフォローし合い、練習の様子を見える化することでモチベーション維持につなげる使い方が広がっています。無料プランでも基本的な記録・共有機能は利用でき、有料プランではより詳細な分析機能が解放されます。
ランニングフォームそのものを分析したい場合は、下記のようなフォーム分析専用アプリと併用する企業も増えています。
ランニングフォーム分析アプリ10選|健康経営担当者向けでは、フォームの癖を可視化する専用アプリを比較しています。
(参考)Strava 公式サイト – Strava, Inc.
TrainingPeaks|TSS・CTLで練習負荷を数値管理
TrainingPeaksは、コーチと選手が練習負荷を「TSS(トレーニングストレススコア)」や「CTL(慢性的トレーニング負荷)」といった指標で共有できる、コーチ向け機能が充実したプラットフォームです。実業団やクラブチームでは、複数選手の疲労度・回復状況を一元管理し、オーバートレーニングを防ぐ目的で導入されるケースが多く見られます。強度別のトレーニングプラン配信や、屋内トレーニング向けの「TrainingPeaks Virtual」も提供されています。
(参考)TrainingPeaks 公式サイト – TrainingPeaks, LLC
Final Surge|コーチと選手をつなぐシンプルな記録共有
Final Surgeは、コーチが複数の選手に練習メニューを配信し、選手側が結果や体調フィードバックを書き込む、双方向のコミュニケーションに強みを持つサービスです。高校・大学の部活動やクラブチームでの導入事例が多く、ワークアウトビルダー機能によってコーチの練習メニュー作成の手間を減らせる点が評価されています。
(参考)Final Surge 公式サイト – Final Surge, LLC
TrainAsONE|AIが毎回プランを組み直すランニングコーチ
TrainAsONEは、1億キロメートルを超える実走データをもとに学習したAIが、走るたびに個人の体への負荷を分析し、翌日以降の練習メニューを自動で再計算する点が特徴です。決まったテンプレート通りの練習ではなく、その人の回復状況に合わせて強度を上下させるため、オーバートレーニングによる怪我のリスクを抑えたい社員向けの運動施策との相性が良いとされています。Garmin・Apple Watch・Coros・Suunto・Polar・Stravaなど主要デバイスと連携できます。
(参考)TrainAsONE 公式サイト – Anticipatory Health Limited
Runkeeper|音声コーチによるガイド付きトレーニング
Runkeeperは、ASICSグループが提供するランニングアプリで、コーチの音声ガイドを聞きながら走れるガイド付きワークアウトが特徴です。初めて運動を始める社員でも取り組みやすいシンプルな操作性を持ち、フレキシブルなトレーニングプランで無理のないペースアップを提案します。
(参考)Runkeeper 公式サイト – ASICS Digital
Nike Run Club|無料で使えるコミュニティ機能
Nike Run Clubは無料で使えるランニングアプリで、ペース・距離・心拍数などの記録に加えて、家族や同僚と「3マイル走ろう」といったチャレンジを作成できるコミュニティ機能が特徴です。社内で気軽に運動促進イベントを企画したい場合に導入しやすい選択肢です。
(参考)Nike Run Club 公式サイト – Nike, Inc.
Polar Flow|睡眠・回復データまで一元管理
Polar Flowは、Polar製デバイスと連携し、活動量だけでなく睡眠の質や心拍変動にもとづく回復状況までを一元的に可視化できるプラットフォームです。トレーニング期分けの計画機能や、170種類以上のスポーツに対応したカスタマイズ性も備えています。
心拍・自律神経(HRV)の測定に特化したアプリ・デバイスをより詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考になります。
心拍・自律神経(HRV)を測るアプリ・デバイス比較で他の選択肢を確認できます。
(参考)Polar Flow 公式サイト – Polar Electro
Garmin Connect|Garminデバイスの活動データ基盤
Garmin Connectは、Garmin製のスマートウォッチやサイクルコンピューターで取得した活動データを記録・分析・共有できる基盤アプリです。ランニングやサイクリングだけでなく水泳やゴルフなど幅広いスポーツに対応し、社内のGarminユーザー同士でチャレンジ機能を使った競い合いもできます。
あわせて読みたい活動量計4選比較|スポーツ・運動量を毎日データ化›
(参考)Garmin Connect 公式サイト – Garmin Ltd.
TrainHeroic|筋力トレーニングに特化したコーチ支援
TrainHeroicは、筋力トレーニングのプログラム作成・配信・進捗管理に特化したコーチ向けプラットフォームです。動画付きのプログラムをマーケットプレイスで購入することもでき、遠隔でのパーソナルコーチングを受けたい選手・社員に向いています。
(参考)TrainHeroic 公式サイト – TrainHeroic, Inc.
Suunto app|アウトドア向けルート計画と200以上の連携
Suunto appは、Suuntoのスポーツウォッチ・ダイビングコンピューターと連携し、ルート計画やヒートマップ表示など屋外での活動に強みを持つアプリです。Strava・TrainingPeaks・komootなど200以上のパートナーサービスと接続でき、既に別のツールを使っているチームでも移行のハードルが低い点が特徴です。
Q. 無料で使える練習日誌アプリはありますか?
Strava、Nike Run Club、Runkeeperは基本機能を無料で利用できます。TrainAsONEも21日間の無料トライアルを提供しています。有料プランは詳細な分析機能やコーチ向け機能の解放が中心です(2026年9月時点の各社公式サイト記載内容)。
Q. スマートウォッチと連携できるアプリはどれですか?
Polar Flow、Garmin Connect、Suunto appはそれぞれ自社デバイスとの連携が前提です。StravaやTrainAsONEはGarmin・Polar・Suuntoなど複数メーカーのデバイスと連携できます。導入前に自社で使用中の端末との互換性を公式サイトで確認してください。
練習日誌アプリの4タイプ分類|自社の運用に合うタイプを見極める
10製品は機能が似ているようで、実は「誰が使うか」「記録の深さ」で明確に4つのタイプに分かれます。導入前にこの分類を押さえておくと、候補選びで迷いにくくなります。

AI・データ分析特化型|TrainAsONE・Polar Flow・Garmin Connect・Suunto app
個人の生体データを解析し、次の練習内容をアプリ側が提案してくれるタイプです。特にTrainAsONEは走るたびにプランを自動で組み直す点が際立っており、コーチが常にそばにいなくても負荷管理をしたい社員向けの運動施策と相性が良い分類です。
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コーチング・データ管理特化型|TrainingPeaks・TrainHeroic
コーチが複数の選手・社員の負荷データを一元管理し、指導計画に反映させるタイプです。実業団やクラブチームのように専属コーチがいる組織での導入が中心で、選手ごとの疲労度を数値で比較できる点が強みです。
気軽な記録・コミュニティ型|Nike Run Club・Runkeeper・Strava
個人が手軽に走行記録を残し、SNS的にシェアして楽しむタイプです。導入・利用のハードルが低く、まず社員に運動習慣を持ってもらうための最初の一歩として選ばれやすい分類です。
チーム間コミュニケーション型|Final Surge
コーチと選手がシンプルな記録を通じてやり取りするタイプです。高度な分析機能よりも、練習メニューの配信と体調フィードバックの往復をスムーズにすることに重点が置かれています。
自社に合う練習日誌アプリを選ぶ4ステップ|比較検討から定着まで
タイプが分かったら、実際の導入は「現状把握→候補比較→試用→本導入」の順に進めると失敗が少なくなります。

①現状把握|既存ツールと運動習慣の棚卸し
まずは社員やチームがすでに使っているアプリやウェアラブル端末の有無、運動習慣の実態を洗い出します。ここを飛ばして製品選びから始めると、既存のGarminやPolarのデバイスと連携できない製品を選んでしまう失敗が起きやすくなります。
最新のウェアラブル端末の動向を押さえておくと、この棚卸しの精度が上がります。スポーツテクノロジートレンド2026|AI・データ・ウェアラブル最前線もあわせてご覧ください。
②候補比較|目的別に2〜3個へ絞り込む
「個人記録」「チーム管理」「AIコーチング」のどれを優先するかを決め、前章の4タイプ分類から2〜3個の候補に絞ります。無理に1つに決めず、複数製品を並行して試すのがこの段階でのポイントです。
あわせて読みたいスポーツ向けウェアラブルデバイス選び方ガイド2026›
③試用・トライアル|無料プランで使い勝手を確認
StravaやNike Run Clubの無料プラン、TrainAsONEの無料トライアルなどを使い、実際の操作感や既存デバイスとの連携状況を確かめます。この段階で社員の一部に試してもらい、使いにくい点を洗い出しておくと本導入後の定着率が上がります。
④本導入・定着|運用ルールを決めて習慣化を後押し
製品を決めたら、記録の入力頻度や共有範囲などの運用ルールを決め、継続を後押しする仕組み(社内での週間チャレンジ、記録の共有会など)を整えます。ツールを配るだけでは定着しないため、この最後のステップが最も重要です。
Q. 導入までどれくらいの期間がかかりますか?
個人利用中心のアプリであれば候補比較から試用開始まで数日で始められます。TrainingPeaksやTrainHeroicのようなコーチ向けプラットフォームは、運用ルールの整備を含めると導入から定着まで1〜2ヶ月程度を見込むのが現実的です。
導入企業が注意すべき実務ポイント|データ管理とコストの見極め方
練習日誌アプリの導入では、機能面だけでなくデータの扱い方とコスト構造を事前に確認しておくことがトラブル防止につながります。
まず、社員の心拍数や睡眠データなど個人の健康情報を扱うことになるため、各サービスのプライバシーポリシーを確認し、データの利用範囲について社内で説明できる状態にしておく必要があります。特にコーチ向けプラットフォームでは、選手・社員本人以外(コーチや人事担当者)がデータを閲覧できる設計になっていることが多く、閲覧権限の設計を事前に決めておくと安心です。
また、価格体系は無料プランのある製品と、選手数に応じた従量課金の製品とで大きく異なります。複数のツールを併用すると管理が煩雑になるため、既存の健康経営施策や勤怠管理システムとの連携可否も含めて比較検討することをおすすめします。
Q. 価格はどのくらいですか?
Strava・Nike Run Club・Runkeeperは無料プランがあり、有料プランは月額1,000円前後からのサービスが中心です。TrainingPeaksやTrainHeroicなどコーチ向けプラットフォームは選手数に応じた料金体系のため、正確な金額は各社公式サイトでの見積もりが必要です(価格は変動するため2026年9月時点の公式サイト記載に基づく目安です)。
まとめ|自社に合う練習日誌アプリで運動習慣を定着させる
練習日誌・トレーニング記録アプリは、目的に合ったタイプを選べば、社員やチームの運動習慣づくりを無理なく後押しできます。
- 練習日誌アプリは「AI・データ分析特化型」「コーチング・データ管理特化型」「気軽な記録・コミュニティ型」「チーム間コミュニケーション型」の4タイプに分かれる
- Strava・TrainingPeaks・Final Surge・TrainAsONE・Runkeeper・Nike Run Club・Polar Flow・Garmin Connect・TrainHeroic・Suunto appの10製品を公式サイトの情報にもとづき比較した
- 導入は「現状把握→候補比較→試用・トライアル→本導入・定着」の4ステップで進めると失敗が少ない
- 社員の健康データを扱うため、閲覧権限やプライバシーポリシーの確認を導入前に済ませる
- スポーツ庁の調査でも子育て・働き盛り世代の運動時間の短さが課題とされており、記録アプリによる可視化は運動習慣の後押しに役立つ
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