午後3時、オフィスの給湯室でエナジードリンクを立て続けに開ける社員がいる。集中力が切れるたびに糖分を補給し、夕方には頭が重くなる。この悪循環に心当たりがある人事担当者は少なくないはずだ。
一方、トップアスリートの世界では、パフォーマンスを左右する要素として食事管理が当たり前に組み込まれている。「アスリート式の食事管理を、自社の健康経営に取り入れられないか」という相談は年々増えている。本記事では、アスリート式食事管理の考え方と、企業が導入する際の進め方、注意点を解説する。
アスリート式食事管理の基本的な考え方
アスリート式食事管理とは、単にカロリーを制限することではなく、練習・試合というパフォーマンスを発揮すべきタイミングに合わせて、必要な栄養素を計画的に摂取する考え方を指す。ビジネスパーソンに置き換えれば、重要な会議や集中作業の前後に何を食べるかを設計する発想に近い。
タイミング設計|いつ食べるかが成果を左右する
アスリートは試合前に消化の良い炭水化物を摂り、試合後には回復を早めるたんぱく質を意識的に補給する。ビジネスの現場でも、集中力が求められる時間帯の前に血糖値を急上昇させない食事を選ぶといった応用が可能だ。
個別最適化|画一的な食事指導からの脱却
体格や運動量、体質によって必要な栄養素は異なるため、アスリートの食事管理は個人に合わせて設計されるのが基本だ。企業が導入する際も、全社員一律のルールではなく、個別性を許容する仕組みが求められる。
日本人の栄養摂取の実態から見える課題
厚生労働省の調査によると、日本人成人の食物繊維摂取量の平均は1日18.1gにとどまる。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病の重症化予防の観点から、成人男性で1日20g以上、女性で1日18g以上という目標量が新たに設定された。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 現状の平均摂取量 | 18.1g/日 |
| 目標量(男性) | 20g以上/日 |
| 目標量(女性) | 18g以上/日 |
表:食物繊維摂取量の現状と目標量(厚生労働省調査・食事摂取基準2025年版より作成)
この数字が示すのは、多くの働く世代が知らないうちに栄養バランスの目標を下回っているという実態だ。アスリートの食事管理で重視される「腸内環境を整える食物繊維の確保」は、実は多くの企業の従業員にとっても手つかずの課題である可能性が高い。
(参考)国民健康・栄養調査 – 厚生労働省(政府統計の総合窓口)
企業がアスリート式食事管理を導入する進め方
アスリート式の考え方をそのまま企業に持ち込むのではなく、段階を踏んで自社に合った形に落とし込むことが定着の鍵になる。
社員食堂・オフィス軽食のメニュー設計から始める
いきなり個別の栄養指導を導入するのはハードルが高いため、まずは社員食堂やオフィスに置く軽食のメニューを、血糖値の急上昇を避けられる構成に見直すところから着手する企業が多い。
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専門家監修のセミナーで理解を広げる
管理栄養士やスポーツ栄養の専門家によるセミナーを実施し、食事とパフォーマンスの関係を社員自身に理解してもらうことで、その後の食習慣の見直しにつながりやすくなる。
選択肢を増やす形で導入し強制しない
特定の食事法を強制すると反発を招きやすい。プラントベースの選択肢を増やすなど、社員が自分に合った方法を選べる形で選択肢を広げることが、無理のない定着につながる。
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導入時に注意したいポイント
アスリート式食事管理を企業に導入する際は、健康経営としての位置づけを明確にしておく必要がある。
医療的な指導が必要なケースとの線引き
持病やアレルギーを持つ社員に対しては、一般的な栄養指導ではなく医療専門職の関与が必要になる場合がある。導入前に対象範囲と例外対応を整理しておくことが望ましい。
効果測定の指標を事前に決めておく
体調不良による欠勤の減少や、集中力に関するアンケート結果など、具体的な指標を事前に設定しておくことで、施策の効果を客観的に検証できる。
よくある質問
Q. アスリート式食事管理はどの部署から導入するとよいですか
まずは希望者を募った小規模なパイロット導入から始め、効果や社員の反応を確認したうえで対象を広げる進め方が現実的だ。
Q. 食物繊維を意識するだけでも効果はありますか
食物繊維は腸内環境を整え、血糖値の急上昇を抑える働きがあるため、他の栄養素とあわせて意識するだけでも体調管理の一助になる。ただし特定の栄養素だけに偏らないバランスが重要だ。
Q. プラントベースの食事は全社員に推奨すべきですか
一律に推奨するのではなく、選択肢の一つとして提示するのが望ましい。体質や好みに応じて社員自身が選べる環境を整えることが定着につながる。
まとめ
- アスリート式食事管理は「タイミング設計」と「個別最適化」が基本の考え方だ
- 日本人成人の食物繊維摂取量は平均18.1gで、目標量を下回る人が多い実態がある
- 社員食堂のメニュー見直しやセミナー実施から段階的に導入するのが現実的だ
- 強制ではなく選択肢を増やす形で導入すると、無理なく定着しやすい
- 医療的配慮が必要なケースの線引きと、効果測定の指標を事前に決めておくことが重要だ
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