クレアチンとは|スポーツでの効果・摂取量と指導者の注意点

クレアチンとは|スポーツでの効果と注意点のアイキャッチ(クレアチンの摂取量・副作用) スポーツ栄養学

クレアチンは、短時間で力を出し切る運動で効果が報告されている成分です。ただし効果には個人差があり、腎機能への配慮や、競技会に出る選手の禁止物質の混入確認も欠かせません。

練習の後半、最後のダッシュで脚が止まる。ウエイトの最後の1セットが上がらない。そんな場面を前に、チームの選手や従業員の運動習慣づくりでサプリメントを勧めてよいのか迷う指導者・管理担当者は少なくないはずです。広告の言葉だけで決めず、国の研究機関や国際学会の情報で「どこまで言えて、どこから言えないか」を整理しました。

クレアチンは筋肉の瞬発力を支えるエネルギーを補う成分です

クレアチンが筋肉のエネルギーを補う仕組みの図解|クレアチンとは

クレアチンはアミノ酸由来の成分で、筋肉のなかでエネルギーのやり取りを助けます。国立の研究機関である医薬基盤・健康・栄養研究所の健康食品データベースによると、体内のクレアチンの約90%は骨格筋にあり、多くはクレアチンリン酸という形で蓄えられています。

クレアチンリン酸は、筋肉が力を出すときに使うエネルギー(ATP)を作り直す役目を持ちます。ダッシュやジャンプのように数秒で全力を出す動きは、この仕組みに頼る割合が高いと考えられています。

クレアチンは食事からも摂れます。MSDマニュアル家庭版は、牛乳や赤身の肉、一部の魚に含まれると説明しています。サプリメントではクレアチン一水和物という形が最もよく使われます。栄養全体の考え方はスポーツ栄養学の基本で整理しています。

(参考)クレアチン(健康食品の安全性・有効性情報) – 医薬基盤・健康・栄養研究所

(参考)クレアチン(MSDマニュアル家庭版) – MSD

効果が見込めるのは短時間の高強度運動と筋力トレーニングです

効果の根拠は、複数の試験を束ねたメタ解析で見るのが確実です。健康食品データベースに載る3つの切り口を、次の表にまとめました。結果にはばらつきがあるため、「誰でも必ず伸びる成分」ではなく「条件が合えば伸びが期待できる成分」として読むのが妥当です。

対象 束ねた試験 報告された結果
サッカー選手 RCT9件(検索は2019年1月まで) 嫌気性能力の改善が9件中5件。結果のばらつきが大きく、有酸素能力やリン酸系代謝との関連は見られない
対象を限定しない RCT60件(検索は2014年9月まで) 最大スクワット、レッグプレス合計、大腿四頭筋の成績、下肢の筋力の向上と関連
中高年(2つの解析) 45歳以上12件(6週間超)/50歳以上13件 45歳以上は体重・除脂肪量・脚と胸の筋力・30秒椅子立ち上がりが増加。50歳以上は胸の筋力と除脂肪量が増え、脚の筋力は増えない

出典:医薬基盤・健康・栄養研究所「クレアチン」に載るメタ解析を、本記事で対象別に整理(RCT=ランダム化比較試験)

サッカー選手では嫌気性能力の改善が9件中5件にとどまる

サッカー選手を対象にした9件のRCT(2019年1月までの検索)では、嫌気性能力(酸素を使わずに出せる力)が良くなったのは5件でした。結果の幅が広く、有酸素能力との関連は見られていません。

個別の試験でも結果は割れています。ラグビー選手14人に1日20gを5日間とった試験では、嫌気性能力もスプリントも変わりませんでした。一方、女子サッカー選手30人(うち10人がクレアチン)に1日20gを1週間、その後1日5gを5週間とった試験では、8種目のジャンプ測定のうち3種目、4種目のスプリントのうち1種目が改善しています。

(参考)クレアチン(健康食品の安全性・有効性情報) – 医薬基盤・健康・栄養研究所

60件のメタ解析では下半身の筋力指標の向上と関連する

60件のRCT(2014年9月までの検索)を束ねたメタ解析では、最大スクワット、レッグプレスの合計、大腿四頭筋の成績、下肢の筋力の向上と関連していました。脚の力を出す競技や、ウエイトトレーニングを組み込んだ強化には、検討する意味があります。

ただし、トレーニングをしていない男性22人に1日20gを7日間とった試験では、筋力も嫌気性能力も体重も変わりませんでした。短期間の摂取だけで体が変わるわけではない点は、導入前に共有しておきたいところです。

(参考)クレアチン(健康食品の安全性・有効性情報) – 医薬基盤・健康・栄養研究所

中高年は筋力トレーニングと組み合わせると差が出やすい

45歳以上を対象にした12件のRCT(6週間超)では、筋力トレーニングと組み合わせた場合に、体重、除脂肪量、脚と胸の筋力、30秒間の椅子立ち上がりの成績が増えました。50歳以上の13件の解析では、胸の筋力と除脂肪量は増えた一方、脚の筋力は増えていません。

骨量が少ない閉経後の女性60人を対象にした24週間の試験では、クレアチンと筋力トレーニングの組み合わせは、筋力トレーニングだけの場合より胸の筋力と四肢の除脂肪量が改善しました。クレアチンだけでは効果が見られなかったため、「飲めば衰えない」ではなく、運動とセットで考える成分です。従業員向けの運動プログラムに絡める場合も、順番は運動が先です。

(参考)クレアチン(健康食品の安全性・有効性情報) – 医薬基盤・健康・栄養研究所

Q. クレアチンは飲めば誰でも効果が出ますか?

いいえ、効果の出方には個人差があります。健康食品データベースに載る試験でも、トレーニングをしていない男性22人(1日20gを7日間)や活動的な男子学生40人(1日6gを6日間)では、筋力や嫌気性能力に変化がありませんでした。

摂取量はローディング期と維持期に分けて考えます

クレアチンのローディング期の摂取量を体重から求める計算の図解

クレアチンの量は、最初の数日に多めにとる「ローディング期」と、その後に量を落として続ける「維持期」に分ける方法が知られています。医薬基盤・健康・栄養研究所のデータベースは試験で使われた量(体重1kgあたり0.03〜0.3g、または1日1〜25g)を載せるだけで、推奨量や上限は示していません。そのため、量の目安は国際スポーツ栄養学会(ISSN)が2017年に公表した見解を軸に見ていきます。

ローディング期は体重1kgあたり0.3gを5〜7日間とる

ISSNの見解では、筋肉中のクレアチンを短期間で高める方法として、1日あたり体重1kgにつき0.3gを5〜7日間とる方法が示されています。体重70kgの人なら、0.3g×70kgで1日あたり約21gです(本記事の計算値)。これを数回に分けてとります。

量が多いぶん、体重の増加や胃の不調を感じる人が出る時期でもあります。チームで試す場合は、全員を同時に開始せず、まず少人数で様子を見るのが現実的です。

(参考)International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine(2017) – 国際スポーツ栄養学会

維持期は1日3〜5gを続けるのが基本になる

ISSNの見解では、ローディング後は1日3〜5gで筋肉中の高い量を保てるとされています。ローディングを行わず、最初から1日3〜5gを続ける方法もあり、その場合は筋肉中の量が上がるまでに時間がかかります。

毎日の運用で大切なのは、量を決めたら記録することです。体重、練習内容、体調の変化を数週間残しておくと、「効いたのか、気のせいか」を後から振り返れます。

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(参考)International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine(2017) – 国際スポーツ栄養学会

Q. クレアチンは1日どれくらい飲めばよいですか?

ISSNの見解では、体重1kgあたり0.3gを5〜7日間とるローディング期のあと、1日3〜5gの維持期に移る方法が示されています。体重70kgならローディング期は約21gが目安ですが、持病や服薬がある場合は始める前に医師へ相談してください。

副作用は体重増加と胃腸の不調が中心で腎機能に注意が要ります

クレアチンは比較的安全と位置づけられていますが、起こりうる反応と、避けたほうがよい人は押さえておく必要があります。MSDマニュアル家庭版と健康食品データベースの両方に目を通すと、体重の変化、胃腸の症状、腎臓への配慮の3点に整理できます。

体重の増加は試験でも報告されている

テニス選手36人(うち24人がクレアチン)に体重1kgあたり0.3gを6日間、その後0.03gを28日間とった試験では、体重が増えています。筋力、スプリント、テニスの成績に変化はありませんでした。テコンドー選手12人に体重1kgあたり50mgを6週間とった試験でも、体脂肪率と血中中性脂肪が増えています。

体重階級のある競技や、軽さが求められる競技では、この点が弱点になりえます。導入前に「増えた体重が競技に有利か」を競技ごとに確認してください。

(参考)クレアチン(健康食品の安全性・有効性情報) – 医薬基盤・健康・栄養研究所

胃のむかつき・頭痛・けいれんなどが起こることがある

MSDマニュアル家庭版は、まれな副作用として、軽い胃の不調、頭痛、脱水、いらだちや攻撃性、むくみ、筋肉のけいれんを挙げています。高温環境での試験では、活動的な男性12人が1日21.6gを7日間とっても、水分状態や体温調節、心拍数、血圧に変化はありませんでした。

とはいえ、暑い時期の練習では水分補給の管理を普段より丁寧にするのが無難です。違和感が出た人は量を減らす、または中止する、と事前にルール化しておくと、現場で迷いません。

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(参考)クレアチン(MSDマニュアル家庭版) – MSD

(参考)クレアチン(健康食品の安全性・有効性情報) – 医薬基盤・健康・栄養研究所

腎機能に不安がある人と服薬中の人は摂取を避ける

MSDマニュアル家庭版は、クレアチンの摂取で尿中や血中のクレアチン量が上がり、腎機能の低下につながる可能性があると説明しています。腎臓の病気の既往がある人や、腎機能に影響する薬(解熱鎮痛薬のNSAIDsなど)を使っている人は、サプリメントを避けるよう勧めています。

一方でISSNの見解は、健康な人が適切な量で使う限り、短期でも長期でも有害な影響を示す証拠はないとしています。つまり「全員が避けるべき」でも「全員が安心」でもなく、個人の健康状態で判断が分かれます。参加者を募るときは、申し込みの段階で既往歴と服薬の確認欄を設けると運用しやすくなります。

(参考)クレアチン(MSDマニュアル家庭版) – MSD

(参考)International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine(2017) – 国際スポーツ栄養学会

Q. クレアチンは腎臓に負担がかかりますか?

腎臓の病気の既往がある人や、NSAIDsなど腎機能に影響する薬を使っている人は、避けるよう勧められています。MSDマニュアル家庭版は、クレアチン量の上昇が腎機能の低下につながる可能性を指摘しているためです。該当する場合は、始める前に医師へ相談してください。

チームや従業員に勧める前の確認は医師・食事・禁止物質の3点です

クレアチンを勧める前に医師・食事・禁止物質を確認する分岐の図解

スポーツ関連の健康づくりや、チームの強化でクレアチンを取り入れるとき、導入側が最初に決めるのは「何を、誰に、どの順で確認するか」です。確認の順番は、腎機能と服薬、食事で足りているか、競技会に出る選手の禁止物質の3点で足ります。

腎機能と服薬は始める前に医師へ確認する

先に確認すべきなのは、前の章で見た腎臓への配慮です。参加者に腎臓の病気の既往や、継続して飲んでいる薬があるかを聞き、該当する人には医師への相談を先に案内します。

企業の健康づくり施策で運動習慣支援にサプリメントを絡める場合は、人事・健康経営の担当者が個人の健康情報を直接集めることになるため、申告は任意にし、相談先を産業医や医療機関に案内する形が安全です。

(参考)クレアチン(MSDマニュアル家庭版) – MSD

サプリの前に食事で足りているかを見る

クレアチンは牛乳や赤身の肉、一部の魚にも含まれます。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の教材は、サプリメントは食事を補う位置づけであり、食事を抜いてサプリメントだけで栄養をとることは避けるよう呼びかけています。

クレアチンを試す前に、朝食や補食を含む食事の記録を見直すと、サプリメントの前にできることが見つかる場合があります。筋トレに取り組む人のたんぱく質の考え方は、サプリメントを使い分ける選手の事例やプラントベースプロテインの科学的根拠も参考になります。

(参考)クレアチン(MSDマニュアル家庭版) – MSD

(参考)アンチ・ドーピングを通して考える―スポーツのフェアとは何か― 第3章(2013年3月) – 日本アンチ・ドーピング機構

競技会に出る選手は禁止物質の混入を確かめる

JADAの教材は、サプリメントのなかに、特に海外から通販で買ったものを中心に、禁止物質が含まれていた事例があると注意しています。サプリメントは医薬品と違い、すべての成分を表示する義務が法律上ありません。

大会に出る選手に勧める場合は、必要性があるか、禁止物質が含まれていないかを、本人と指導者が確かめてから使うことが前提です。広告の効果の言葉に引きずられないよう、JADAは注意を促しています。

(参考)アンチ・ドーピングを通して考える―スポーツのフェアとは何か― 第3章(2013年3月) – 日本アンチ・ドーピング機構

Q. 競技会に出る選手がサプリメントを使うときの注意点は?

必要性を確認したうえで、禁止物質が含まれていないことを確かめてから使ってください。JADAの教材は、特に海外から通販で買ったサプリメントに禁止物質が混入していた事例があると注意しており、サプリメントだけで栄養をまかなうことも避けるよう勧めています。

まとめ|クレアチンは条件を確かめてから試す成分です

要点を振り返ります。

  • クレアチンは筋肉中でATPの再生を助け、短時間で力を出す運動に関わる成分です。
  • 効果は試験で割れており、サッカー選手では9件中5件、筋力トレーニングを伴う中高年では運動とセットで差が出ています。
  • 量はISSNの見解で、体重1kgあたり0.3gを5〜7日間、その後は1日3〜5gです。
  • 体重増加や胃の不調に加え、腎機能に不安がある人と服薬中の人は避けるよう勧められています。
  • 勧める前に、医師への確認、食事の見直し、競技会に出る選手の禁止物質の確認を順に行います。

次の一歩としては、まず食事の記録を数日分とり、腎機能や服薬の不安がないかを確認してください。そのうえで試す場合は、少人数・少量から始め、体重と体調を記録しながら判断するのが現実的です。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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