少子高齢化による労働力人口の減少が進むなか、企業の採用・人事担当者にとって「どこから優秀な人材を確保するか」は共通の悩みです。近年、注目を集めているのが、競技引退後のトップアスリートを積極的に採用する「元アスリート採用」です。この記事では、元アスリート採用が注目される理由と、タレントパイプライン構築の考え方、企業の導入事例を紹介します。
元アスリート採用が注目される理由
企業がアスリートに求めているのは、職業アスリートとしてポジションをキープし続けてきた「強靭なメンタル」、結果を出すために改善計画を回し続ける「問題解決能力(PDCA力)」、そして競技を支えてきた「体力」といった能力です。これらは職種を問わず、ビジネスの現場でも高く評価される資質です。
少子高齢化による労働力人口の減少という構造的な背景もあり、従来の新卒・中途採用だけに頼らない、新しい採用チャネルとしてセカンドキャリア支援の枠組みが注目されるようになりました。
アスリート採用を支える官民の仕組み
日本オリンピック委員会(JOC)は2010年から、現役トップアスリートと企業を結びつける就職支援事業「アスナビ」を展開しています。世界を目指すアスリートの生活環境を安定させ、競技を続けながら安心して働ける環境をつくることが目的です。
| 支援の担い手 | 役割 |
|---|---|
| JOC「アスナビ」 | 現役トップアスリートと企業のマッチングを支援 |
| 民間キャリア支援会社 | 引退後の就職相談・研修・企業紹介を担う |
| 受け入れ企業 | 競技と両立できる勤務体系や研修制度を整備 |
JOC「アスナビ」公表情報をもとに作成
JOC「アスナビ」が担う就職支援の役割
アスナビは、企業とトップアスリートをWin-Winの関係で結びつけることを目的とした無料の就職支援制度です。2025年11月時点で、延べ243社・団体、442名の就職実績(内定者含む)を積み上げています。
民間キャリア支援会社が担う伴走の役割
引退後のキャリアに悩むアスリートに対し、就職相談から企業とのマッチング、ビジネスマナー研修まで一貫してサポートする民間サービスも増えています。競技経験をビジネススキルへ翻訳する橋渡し役を担っています。
受け入れ企業が担う環境整備の役割
アスリート採用を成功させている企業は、競技活動との両立を前提とした勤務体系や、入社後の研修プログラムを整備しています。単に採用するだけでなく、活躍できる環境をセットで用意することが定着の鍵になります。
(参考)アスナビ──現役アスリートの就職支援 – 日本オリンピック委員会
タレントパイプライン構築の考え方
タレントパイプラインとは、将来必要となる人材をあらかじめ見据え、継続的に候補者との関係を築いておく採用の考え方です。元アスリート採用をこの枠組みに組み込むことで、単発の採用活動ではなく、中長期的な人材確保の仕組みとして機能させることができます。
現役時代から企業がスポンサーやアスナビを通じて関係を築いておくことで、引退のタイミングで自然な形での入社につなげやすくなる点も、タレントパイプラインとしての強みです。
単年度の採用計画に組み込むのではなく、複数年にわたって現役アスリートとの関係を育てていく発想が求められます。スポンサー契約や社内イベントへの登壇機会を通じて、早い段階から企業文化への理解を深めてもらうことも、入社後のミスマッチを防ぐうえで効果的です。
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企業の導入事例に見る成功のポイント
元アスリートを採用している企業の多くは、営業や広報、人材育成といった職種で強靭なメンタルとPDCA力を活かしてもらう配属を行っています。入社後は、競技経験で培った目標設定力やチームマネジメントの知見を、社内研修の講師として社員教育に還元してもらうケースも見られます。
採用担当者にとって重要なのは、競技実績だけで評価するのではなく、面接や研修を通じて「どのような思考プロセスで結果を出してきたか」を丁寧に見極めることです。競技種目や実績にとらわれすぎず、ポータブルスキルとしての強みを見抜く視点が、採用のミスマッチを防ぎます。
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まとめ
- 元アスリート採用は強靭なメンタル・PDCA力・体力という資質が評価されている
- JOCの「アスナビ」は延べ243社・団体、442名の就職実績を積み上げている
- タレントパイプラインの枠組みに組み込むことで中長期的な人材確保につながる
- 受け入れ企業は競技との両立を前提とした環境整備が定着の鍵になる
- 競技実績だけでなく思考プロセスを見極める視点が採用の成否を分ける
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