女性のクレアチン摂取は、2020年に発表された統合解析で死亡や重篤な有害事象が報告されておらず、研究で使われてきた量は1日5g前後です。ただし、クレアチンを調べた研究のうち女性だけを対象にしたものは約9%にとどまり、妊娠中のヒトを対象にした試験は見つかっていません。
チームや施設で女性選手にクレアチンを勧めるかどうかを判断する指導者・管理担当者に向けて、ここでは女性を対象にした2本の研究論文と、MSDマニュアル、日本アンチ・ドーピング機構の資料をもとに、効果・摂取量・注意点を整理します。クレアチン全般の基本はクレアチンとは|スポーツでの効果・摂取量と指導者の注意点、栄養全体の考え方はスポーツ栄養学とは|企業が職場の食事と水分補給に使う基準にまとめています。
女性対象のクレアチン研究は全体の約9%|統合解析では重篤な有害事象の報告がなかった
2020年にNutrients誌に載った統合解析(de Guingandら)は、クレアチンを主な介入とした656件の研究のうち、女性だけを対象にしたものは58件(9%)だったと報告しています。性別を問わない研究が大半で、女性に絞った安全性のデータは限られています。
この解析が有害事象を調べていた29件・951人を対象に集計したところ、死亡や重篤な有害事象の報告はありませんでした。有害事象の合計は、クレアチンを摂った群と摂らなかった群でリスク比1.24(95%信頼区間0.51〜2.98)、消化器の症状は1.09(0.53〜2.24)で、どちらも差があるとは言えませんでした。信頼区間が1をまたぐと、増えたとも減ったとも判断できません。
体重の群間差は、介入前で1.24kg、介入後で1.37kgでした。どちらも信頼区間がゼロをまたいでおり、統計的な差とは言えません。腎機能と肝機能の指標にも有意な差は出ませんでした。ただし著者らは、今後の研究では有害事象を継続して調べ、きちんと報告するよう求めています。
一方、MSDマニュアル家庭版は副作用として体重増加や軽い胃の不調、頭痛、筋けいれんなどを挙げています。統合解析で差が出なかったことと、副作用が起こりうることは両立します。使い始めたあとは、体重や胃腸の様子を見ておく必要があります。
(参考)クレアチン(2025年7月更新) – MSDマニュアル家庭版
Q. 女性がクレアチンを飲むと太りますか?
2020年の統合解析では、クレアチンを摂った女性とそうでない女性の体重の差は、統計的に有意ではありませんでした。ただしMSDマニュアルは副作用として体重増加を挙げているため、使い始めてからの体重の変化は記録しておくと安心です。
筋力と無酸素能力で効果が報告され|効かなかった研究も並ぶ
女性のクレアチン研究を整理した2021年のレビュー(Smith-Ryanら)では、筋内のクレアチン量、筋力、無酸素作業能力に効果を示した報告がある一方で、追加の効果が見られなかった研究も並んでいます。次の表は、このレビューが挙げた結果を4つに分けたものです。
| 指標 | 報告された結果 | 研究 |
|---|---|---|
| 筋内のクレアチン量 | ローディング(短期間の大量摂取)で約19%増え、男性と同程度 | Smith-Ryanらのレビューの整理 |
| 閉経前の女性の筋力 | 10週間でレッグプレスなどの1-RM(1回だけ挙げられる最大重量)の伸びが、プラセボ群より20〜25%大きかった | Vandenbergheらの研究 |
| 無酸素作業能力 | 5日間のローディングで22%上がった(ほかの研究では10〜15%) | Eckersonらの研究ほか |
| 追加の効果が見られなかった研究 | トレーニングだけの場合と比べた筋力の上乗せは見られなかった | FergusonとSyrotuik、Wilbornらの研究 |
出典:Smith-Ryan AE ほか「Creatine Supplementation in Women’s Health: A Lifespan Perspective」Nutrients 2021;13(3):877 の記述をもとに Human Soar が整理。上記は個々の研究の報告で、すべての女性に同じ効果が出ることを示すものではない。
筋内のクレアチン量はローディングで約19%増えて男性と同程度になる
クレアチンを摂る目的は、筋肉に蓄える量を増やして、短時間の強い運動を支えることです。レビューは、ローディングによって女性の筋内のクレアチン総量が約19%増えると整理していて、この増え方は男性と同程度だとしています。つまり、体にためられるという点では、女性だから効かないということはありません。
閉経前の女性では10週間で1-RMの伸びが20〜25%大きかった研究がある
Vandenbergheらの研究では、レッグプレス、レッグエクステンション、スクワットの1-RMの伸びが、クレアチンを摂った群でプラセボ群より20〜25%大きかったと紹介されています。筋力を高めたい女性選手には、判断材料の一つになる結果です。
無酸素作業能力は5日間のローディングで22%上がったと報告されている
Eckersonらの研究では、5日間のローディングで無酸素作業能力が22%上がりました。ほかの研究では10〜15%の改善で、短距離走やジャンプのように、短い時間に強く動く場面で意味を持つ指標です。
追加の効果が見られなかった研究もあり効く人と効かない人の差は未検証
FergusonとSyrotuik、Wilbornらの研究では、トレーニング単独に比べた筋力の上乗せは確認できませんでした。レビューは、女性ではクレアチンが効く人と効きにくい人の違い(レスポンダーのばらつき)が調べられていないこと、鍛えている女性を対象にした研究が足りないこと、競技結果を調べた研究がごく少ないことも挙げています。レビューの掲載料はクレアチン製造企業が負担し、著者の2人はその企業の科学顧問であると開示されている点も、読む際に押さえておきたい情報です。
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摂取量は1日5gが基本|ローディングを省いても同程度に届く

Smith-Ryanらのレビューは、女性の摂取方法を大きく2つに整理しています。1つは、5gを1日4回、合計20g(体重1kgあたり約0.3g)を5日間とるローディングで、その後は1日3〜5gの維持に切り替えます。もう1つは、最初から1日5gを続ける方法で、同じ程度の筋内クレアチン量に達するまでに3〜4週間かかります。
体重1kgあたり0.3gを当てはめると、体重55kgなら1日16.5gが目安になります。ローディング中は摂取量が多く、胃腸への負担が増えやすいため、急いで量を満たす必要がなければ、1日5gで続ける方法が扱いやすいと言えます。
脳への蓄積を調べる研究では、15〜20gを3〜7日、その後5〜10gという量も記載されています。これは認知機能や気分を調べる研究の話で、競技力向上の目安として使うものではありません。
Q. 女性のクレアチンは1日何グラムが目安ですか?
研究では1日5gを続ける方法が基本として整理されています。短期間に量をそろえたい場合は、1日20g(体重1kgあたり約0.3g)を5日間とり、その後3〜5gで維持するローディングもあります。1日5gだけでも、同じ程度の筋内量に達するまで3〜4週間かかります。持病がある人や薬を飲んでいる人は、始める前に医師へ相談してください。
妊娠・授乳中と腎機能に不安がある人は使う前に医師へ相談する

妊娠中のクレアチン摂取については、ヒトを対象にした研究が見つかっていません。Smith-Ryanらのレビューは、動物の研究と、妊娠中のクレアチン貯蔵量の低下が低出生体重や早産と関連するというデータを紹介していますが、サプリメントとして摂ったときの効果や安全性は確かめられていません。自己判断で使うのは避け、医師に相談する場面です。
腎臓については、MSDマニュアル家庭版が、腎機能障害の既往がある人や、腎機能に影響する薬を飲んでいる人は避けるべきとしています。NSAIDs(解熱鎮痛薬)のような薬との併用でリスクが増える可能性にも触れています。腎機能の指標に差が出なかった統合解析の結果は、持病や服薬のある人に当てはまるとは限らないため、そのまま当てはめてはいけません。
月経周期については、レビューが、黄体期にローディングすると筋たんぱく質を保ちやすい可能性を理論として挙げていますが、検証された方法ではありません。周期に合わせたコンディション管理の考え方は女性アスリートの月経と三主徴|指導者・企業の対応3ステップで扱っています。
(参考)クレアチン(2025年7月更新) – MSDマニュアル家庭版
Q. 妊娠中や授乳中でもクレアチンを飲んでよいですか?
妊娠中のクレアチン摂取を調べたヒトの研究は見つかっていないため、効果も安全性も確かめられていません。自己判断では使わず、医師に相談してください。授乳中については、今回確認した資料に記載がありませんでした。
チームや施設でクレアチンを勧める前に確認する3つのこと
指導者や管理担当者が女性選手にクレアチンを勧めるときは、研究の結果に加えて、本人の健康状態、製品の品質、続けるかどうかの見直し方を決めておく必要があります。以下の3点は、研究結果をもとにした本記事の提案です。
健康状態の確認は本人が医師に相談できる形にする
腎機能や服薬、妊娠の可能性は、指導者が確認すべき個人情報ではありません。導入を案内するときは、持病や服薬がある人、妊娠中・授乳中の人は医師に相談してから決めるよう伝えて、申告を求めない形にしておくと、本人が安心して判断できます。
製品の品質とドーピングのリスクを競技に出る人ごとに確認する
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の2018年の資料は、サプリメントが関わるドーピング違反がほぼ毎年起きていて、ドーピングのリスクがないことを保証するのは非常に難しいと述べています。競技会に出る選手には、使う製品の原材料と品質、最新の禁止表の確認を勧めてください。
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(参考)サプリメント認証枠組み検証有識者会議 中間とりまとめの公表について(2018年4月12日) – 日本アンチ・ドーピング機構
摂取量と体調を記録して定期的に続けるかを見直す
研究が女性の長期データを十分に持っていない以上、現場で見ていく必要があります。摂取量、体重、胃腸の状態、練習の手応えを同じ形式で記録し、数週間ごとに続けるかを本人と話し合ってください。変化が見られなければ、無理に続ける理由はありません。
女性のクレアチン摂取のまとめ
女性のクレアチン摂取を現場で扱うときの要点は次のとおりです。
- 女性を対象にしたクレアチン研究は全体の約9%で、統合解析では死亡や重篤な有害事象の報告はなかった
- 筋力や無酸素作業能力で効果を示した研究がある一方、追加の効果が見られなかった研究もあり、全員に効くわけではない
- 摂取量は1日5gが基本で、ローディング(20g/日を5日間)は必須ではない
- 妊娠・授乳中の人、腎機能に不安がある人や薬を飲んでいる人は、使う前に医師に相談する
- 指導者は、健康状態の申告を求めず、製品の品質とドーピングのリスク、摂取後の記録を整える
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