合理的配慮を企業で進める手順|パラスポーツのクラス分けに学ぶ

合理的配慮を企業で進める手順|パラスポーツのクラス分けに学ぶ ソリューション
SOLUTION|人事労務 × パラスポーツ

合理的配慮の申し出を受けても、誰がどう決めるのかが曖昧で、上司によって対応が変わる。一度決めた配慮も見直されない。パラスポーツのクラス分けが定めている手続きの形を参考に、申し出から決定・見直しまでの社内の進め方を整えます。

合理的配慮障害者雇用人事労務管理職

このプログラムについて相談する

対象となるお客さま

  • 障害のある社員からの相談を受ける人事・労務の担当者
  • 部下から申し出を受けて、判断に迷う管理職
  • 拠点や部署ごとの対応をそろえたい経営者・総務の責任者

よくあるお悩み

  • 申し出があっても、誰がどう決めるのかが曖昧
  • 上司や部署によって対応が違う
  • 一度決めた配慮が、見直されないまま続いている
ISSUE

課題|合理的配慮の相談は1年で340件から509件に増えた

合理的配慮の手続き設計プログラム|ハローワークに寄せられた合理的配慮の相談件数と内容、社内の決め方がないときに起きる流れ

合理的配慮は、障害のある人が働くうえでの支障を改善するために事業主が講じる措置です。障害者雇用促進法(第36条の2・第36条の3)は、すべての事業主にこの措置を求めています。ただし、事業主に過重な負担を及ぼすときは除かれます。

社内の決め方がないと、同じ内容の申し出でも部署によって答えが変わり、上司が替わると経緯が引き継がれません。決めた配慮を確認する機会もないまま、業務のほうが変わっていきます。

厚生労働省によると、令和7年度にハローワークへ寄せられた合理的配慮の提供に関する相談は509件で、前年度の340件から増えました。内容は「上司・同僚の障害理解に関するもの」が27.3%と最も多く、「相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの」が16.0%、「就業場所・職場環境に関するもの」が14.1%と続きます(複数計上あり)。

これはハローワークに寄せられた相談の数で、職場で起きていることの全体ではありません。なお、民間企業で雇用されている障害者は70万4,610.0人(2025年6月1日時点)で、過去最高を更新しています。

(参考)雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和7年度) – 厚生労働省

(参考)令和7年 障害者雇用状況の集計結果 – 厚生労働省

CAUSE

原因|法律が求める流れはあるのに、社内の決め方が決まっていない

合理的配慮の手続き設計プログラム|合理的配慮が人によって変わる3つの原因と、指針が示す流れ・社内で決めること

担当者や上司の善意が足りないわけではありません。厚生労働省の「合理的配慮指針」は、支障の確認、話合い、措置の確定、本人への説明という流れを示しています。一方で、社内の誰が決めるのか、何人で検討するのか、次にいつ確認するのかは、各社で決めることです。ここが決まっていないと、次の3つが起きます。

  • 決める人が決まっていない:申し出を受けた上司が1人で抱えるか、上司と人事のあいだで止まります。
  • 判断の根拠が残らない:何が支障で、なぜその措置にしたのかが記録されないと、診断名や前例で判断しやすくなり、上司が替わると経緯が分からなくなります。
  • 確認の時期がない:指針は、障害の状態や職場の状況が変化することもあるため、必要に応じて定期的に支障の有無を確認するよう求めています。予定に入っていなければ、この確認は後回しになります。

(参考)合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号) – 厚生労働省

SPORTS INSIGHT

スポーツ知見|パラスポーツのクラス分けは、誰がどう決めて見直すかまで明文化している

合理的配慮の手続き設計プログラム|クラス分けの手続きの4つの要素と、合理的配慮との違い

パラスポーツのクラス分けは、障害が競技の結果に与える影響をできるだけ小さくし、公平で意味のある競争を成り立たせるための制度です。国際パラリンピック委員会(IPC)の「IPC Classification Code」(2025年版)が、その手続きを定めています。日本パラリンピック委員会も、競技に必要な基本的な動作に影響を与える障害の程度に従って競技クラスに分けるものと説明しています。手続きは次の4つに分けて読めます。

  • 何を見るか:競技クラスの判定は、障害がその競技に欠かせない動作や活動にどの程度影響するかだけを基に行います(第18.3条)。体力や技術の差は、判定に影響しないよう区別します。
  • 誰が決めるか:判定は原則として2人以上の分類員(クラシファイア)の班が行い、少なくとも1人は選手と国籍の違う人にします(第7.2条・第7.3条)。各段階の評価は書面に残します(第26.1条)。
  • いつ見直すか:競技クラスには、次の判定が必要かどうかと時期を示す「ステータス」が付きます(第20条・第21条)。見直し日を定める場合は、通常は前回の判定から4年以内です。障害の性質や程度が変わったときは、再判定を求める手続きもあります(第37条)。
  • 納得できないとき:競技クラスへの異議(プロテスト)は、元の判定に加わっていない分類員の班が改めて判定します(第41条・第45条)。手続きの誤りを問う上訴(アピール)は、国際競技団体から独立した機関が審理します(第47条・第49条)。どちらも選手本人ではなく、競技団体が申し立てます。

(参考)IPC Classification Code(2025年版) – 国際パラリンピック委員会

(参考)クラス分け – 日本パラリンピック委員会

ただし、試合と仕事は同じではありません。クラス分けは公平な競争のための制度で、合理的配慮そのものではありません。クラス分けでは分類員が選手を判定しますが、合理的配慮は会社が社員を判定するものではなく、本人と話し合って支障を改善する措置を決めるものです。そこで参考にするのは手続きの形だけとし、社員を区分したり点数を付けたりはしません。決める対象は人ではなく、措置です。

SOLUTION

解決策|業務への影響を聞き、複数で検討し、次の確認日まで決める

合理的配慮の手続き設計プログラム|業務への影響を聞く・複数で検討して理由を残す・次の確認日を決める、の3つの手順

新しい制度を増やすのではなく、指針が示す流れに社内の決め方を足します。どの手順も本人との話合いが前提です。

  • 業務への影響を聞く:診断名ではなく、どの業務のどの場面に支障があるのかを面談で確かめます。希望する措置を具体的に言えなくても、支障を伝えてもらえれば足ります。その場合は、会社が実施できる措置を示して話し合います。
  • 複数で検討する:上司と人事など2人以上で検討します。過重な負担に当たるかどうかは、指針の6つの要素(事業活動への影響、実現困難度、費用・負担、企業の規模、財務状況、公的支援の有無)を総合的に見て個別に判断します。情報を共有する範囲は、先に本人と確かめます。
  • 理由を残して伝える:決めた措置を本人に伝え、求めに応じて理由を説明します。実施できない措置があるときはその旨を伝え、負担にならない範囲でできる措置を話し合います。経緯は記録に残し、担当者が替わっても分かるようにします。
  • 次の確認日を決める:措置ごとに次に確認する日を決めます。異動や業務の変更、体調の変化があれば、その日を待たずに確認します。
  • 相談先を知らせる:直属の上司のほかに相談できる窓口を定めて周知します。相談者のプライバシーを守ることと、相談を理由に不利益な取扱いをしないことも、あわせて周知します。

措置の具体例は、指針の別表が障害の区分ごとに挙げています。たとえば発達障害では、業務指示やスケジュールを明確にして指示を一つずつ出すこと、精神障害ではできるだけ静かな場所で休憩できるようにすること、肢体不自由では机の高さを調節することなどです。指針はこれらをあくまで例示としており、すべての事業主が必ず実施するものではなく、載っていない措置が該当することもあります。だからこそ、例を当てはめる前に、本人の業務への影響を聞きます。

(参考)合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号) – 厚生労働省

APPROACH

進め方|今の対応を確かめ、1部門で試してから全社に広げる

合理的配慮の手続き設計プログラム|診断・設計と試行・定着の3つのフェーズで、やること・役割分担・期間の目安

手順を全社に一度に配っても、現場で使えるかどうかは分かりません。まず1部門で試し、申し出を受けた管理職が迷わず動けるかを確かめてから広げます。

診断では、就業規則や相談窓口の周知状況、これまでの対応の流れを確かめます。過去の対応は個人が特定されない形で伺います。設計・試行では、手順書と面談シート、台帳を作り、1部門の実際の申し出や定期の確認で使います。定着では全社に広げて管理職に説明し、次の確認日が守られているかを人事が半期ごとに確かめる形にします。

期間は目安です。診断だけ、手順書づくりだけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・聞き取り・文書案の作成・管理職への説明を担い、御社には資料の共有、試す部門と担当者の決定、運用をお願いします。個別の措置を決めるのは御社と本人で、法的な確認は顧問の専門家とあわせて進めます。

OUTPUT

成果物|申し出から見直しまでを社内で回せる4つの仕組み

合理的配慮の手続き設計プログラム|プロジェクトの4つの成果物と活用場面

成果物は、ひな形を渡して終わりにはしません。どれも御社の就業規則や組織に合わせて、一緒に作ります。

最初に作るのが「申し出から決定までの手順書」です。申し出や相談を受けたときに、人事の担当者が誰に連絡し、いつまでに何をするかを1本の流れにします。面談のときに上司と人事が使うのが「業務への影響を聞く面談シート」で、診断名ではなく、業務の場面ごとの支障と本人の希望を書き留めます。

決まった措置は「配慮の記録と見直しの台帳」に残します。措置の内容、理由、担当者、次の確認日を人事が管理するので、異動があっても経緯が途切れません。閲覧できる人は限ります。最後に「管理職向けの対応の手引き」を整えます。部下から申し出を受けたときの最初の受け答え、1人で判断しないこと、プライバシーの扱いをまとめたものです。

VALUE

期待できる効果|本人・管理職・人事の3つが変わる

合理的配慮の手続き設計プログラム|本人・管理職・人事の3つの効果と、手続きを見直す時期かを確かめるセルフチェック

本人にとっては、誰に相談すればよいか、いつまでに答えが返るかが分かります。上司が替わっても説明を一からやり直さずに済みます。管理職は1人で抱えずに人事と検討できるようになります。人事は部署ごとの対応の違いを把握でき、同じ考え方で検討できます。

見る数字は「申し出から回答までの日数」と「次の確認日までに確認できた割合」です。相談の件数を減らすことは目標にしません。窓口が知られれば、相談は増えることがあるからです。スライド下のセルフチェックで2つ以上当てはまれば、手続きを見直す時期です。

COMMENT

Human Soarからのコメント

合理的配慮は、ひとりひとり違うからこそ、担当者の経験だけに任せると対応に差が出ます。パラスポーツのクラス分けから参考にするのは、人を分ける考え方ではなく、決め方と見直し方を先に文章にしておく姿勢です。本人が安心して相談でき、管理職が1人で抱えずに済む進め方を、御社と一緒に作ります。

FAQ

よくあるご質問

Q. 合理的配慮は企業の義務ですか?

義務です。障害者雇用促進法は、すべての事業主に、募集・採用時と採用後の合理的配慮を求めています。ただし、事業主に過重な負担を及ぼすときは除かれます。2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法でも事業者の合理的配慮の提供は義務になりましたが、雇用の分野の具体的な措置は障害者雇用促進法の定めによります。個別の事案の法的な判断は、社会保険労務士や弁護士、労働局にご確認ください。

Q. 合理的配慮の申請書は必要ですか?

合理的配慮指針に、決まった様式は示されていません。そこで申し出の方法を書面に限らず、口頭の相談でも受け付けて、担当者が面談シートに記入する形をご提案します。希望する措置を具体的に言えない場合も、支障となっている事情が分かれば話合いを始められます。

Q. 本人の希望と違う措置にしてもよいですか?

話合いのうえであれば、選べる場合があります。指針は、過重な負担にならない範囲で措置が複数あるとき、本人の意向を十分に尊重したうえで、より提供しやすい措置を講じても差し支えないとしています。希望する措置が過重な負担に当たると判断したときは、実施できないことを伝え、求めに応じて理由を説明し、負担にならない範囲の措置を話し合います。

(参考)第1章 改正障害者差別解消法の施行(令和6年版 障害者白書 概要) – 内閣府

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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