勤務間インターバルを導入しても、緊急対応のたびに例外が増えれば形だけになります。高校野球の投球制限にある「数える・共有する・上限に達したときの扱いを決める・休む日を先に入れる」という仕組みを参考に、休息時間の記録、例外の承認、予定調整、月次レビューを御社の勤務に合わせて整えます。
対象となるお客さま
- 勤務間インターバルの導入を任された人事・労務の担当者
- 深夜対応や繁忙期があり、例外の線引きに悩む部門長
- 法改正の議論を見ながら、早めに備えたい経営者
よくあるお悩み
- 何時間に設定すれば現場が回るのか、判断できない
- 緊急対応がある業務で、例外をどこまで認めるか決められない
- 終業が遅くなった翌朝も、会議や担当を動かせない
課題|導入企業は6.9%にとどまり、78.7%は検討もしていない
勤務間インターバルは、終業から次の始業までに一定時間以上の休息を確保する仕組みです。労働時間等設定改善法の第2条で、事業主の努力義務とされています(2019年4月施行)。
厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」(常用労働者30人以上の民営企業が対象)では、導入している企業は6.9%でした。導入を予定または検討している企業が13.8%、導入の予定がなく検討もしていない企業が78.7%です。企業規模別の導入割合は、1,000人以上で20.1%、30〜99人で6.1%と開きがあります。
国は「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(2024年8月閣議決定)で、2028年までに労働者30人以上の企業の導入割合を15%以上にする目標を掲げています。また、2026年10月14日の労働政策審議会労働条件分科会の資料では、「法的位置付け」を含めてどのような措置を講ずべきかが論点になっています。今後の動きは、厚生労働省の発表で確かめる必要があります。
(参考)過労死等の防止のための対策に関する大綱(令和6年8月2日) – 厚生労働省
(参考)労働時間法制の具体的課題に関する検討の論点について(第212回労働条件分科会 資料No.2-1) – 厚生労働省
原因|毎日の休息を数えず、確保できなかった後の対応も決めていない
導入が進まない理由は、制度への理解不足だけではありません。原因は次の3つです。
- 月や年の上限だけを見ている:時間外労働の上限は、月や年の総量を抑える規制です。特定の日に勤務が長くなり、休息が短くなる事態までは防げません。
- 残業が少ないから不要と考える:検討もしていない企業の理由で最も多いのは、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」の57.3%です。ただ、制度が役立つのは突発的に残業が発生した局面です。
- 確保できなかった後の対応が決まっていない:時間数だけを決めると、トラブルで休息を取れなかった人への対応が担当者任せになります。
3つ目は、すでに導入した企業の調査にも表れています。厚生労働省の「勤務間インターバル制度に関する実態調査」(導入している、または導入していた企業396社が回答)では、2024年9月に確保できなかった従業員がいた企業が18.0%でした。そのうち、代替措置を「特に講じていない」企業が39.8%と最も多くなっています。
スポーツ知見|高校野球は投球数を公式記録で数え、上限時の扱いと休養日を決めている
日本高等学校野球連盟は、投手の障害予防を目的に、2020年シーズンから投球制限(いわゆる球数制限)を実施してきました。検証ワーキンググループの結果を踏まえ、2025年からは高校野球特別規則に定めています。仕組みは、次の4つに分けられます。
- 数える:都道府県大会から全国大会までの指定された大会で、1人の投手が投球できる総数を1週間500球以内とします。降雨などでノーゲームになった試合の投球数も数えます。
- 共有する:試合後に公式記録で大会本部と両チームが投球数を確認します。試合前には、原則として直近1週間の各投手の投球数を記したシートなどを両チームに配ります。
- 上限に達したときの扱いを決める:500球に達した打者の打撃完了までは投球でき、次の打者で交代します。降板した投手は、その試合では投球できません。
- 休む日を日程に入れる:第108回全国高等学校野球選手権大会(2026年)は、8月5日から22日までの18日間に、3回戦2日目と準々決勝・準決勝の各翌日の休養日3日を含めています。
2025年12月に公表された検討会議の報告では、同連盟の医科学委員であるスポーツ医学の専門家が、投球制限には障害予防の有効性があると結論づけたうえで、500球以内にすれば怪我がゼロになるわけではないと述べています。数えることは出発点で、それだけで安全になるわけではありません。
(参考)高校野球特別規則(2026年版) – 公益財団法人日本高等学校野球連盟
(参考)「高校野球特別規則(2025年版)」改正の要点解説 – 公益財団法人日本高等学校野球連盟
(参考)「全国大会における投手関節機能検査結果を用いた投球数制限の検証研究」について(令和4年7月) – 公益財団法人日本高等学校野球連盟
(参考)第108回全国高等学校野球選手権大会 開催要項 – 公益財団法人日本高等学校野球連盟
(参考)「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」の結果報告(2025年12月5日) – 公益財団法人日本高等学校野球連盟
ただし、試合と仕事は同じではありません。投球制限の目的は成長期の選手の障害予防で、勤務の健康管理で確かめられた仕組みではありません。また、投球制限は1週間の負荷の上限を数えますが、勤務間インターバルは毎日の休息の下限を数えます。例外も、野球は打者1人の完了までと決まっている一方、仕事では災害やトラブルなど事情が多く、代わりの担当がすぐ見つかるとも限りません。そこで考え方だけを借り、例外には承認者と回数の上限、事後の休息を付け、代わりの担当は業務ごとに決めます。
解決策|休息時間を記録し、例外は承認と事後の休息をセットで決める
時間数だけを決めて終わりにしません。厚生労働省のマニュアルが挙げる制度設計の7項目をもとに、現場で止まりやすい3つを具体的な手順にします。
- 休息時間を毎日数える:打刻やパソコンの記録から、終業から次の始業までの時間を出します。基準の時間数は、通勤時間も含まれることを踏まえて決めます。
- 翌日の予定を前日に動かす:基準を下回りそうな日は、管理職が翌朝の会議や担当を調整します。始業を繰り下げるのか、重なった時間を働いたものとみなすのかも決めます。
- 例外は承認と休息をセットにする:認める事由、判断する人、回数の上限、確保できなかった後の休暇や定時退社の扱いを決めます。
そのうえで、月次レビューで例外の多い部署を確かめ、原因を業務配分から見直します。個人を責める場にはしません。就業規則の変更や賃金の扱いは、御社の社会保険労務士などの専門家に確認しながら進めます。
進め方|1部門で3か月試し、就業規則に反映してから広げる
全社に一度に適用すると、部門ごとの事情に合わない部分が見えにくくなります。厚生労働省のマニュアルも、本格導入の前に試行運用することを勧めています。
診断では、過去の勤怠記録から休息時間を計算し、基準を下回る日がどの部門のどの時期に集中するかを確かめます。設計・試行では、基準の時間数と例外のルールを案にして、1部門で3か月使います。定着では、結果をもとに規程へ反映し、ほかの部門へ広げます。
期間は目安です。診断だけ、1部門だけといった始め方もご提案します。Human Soarは様式の用意・記録の集計・ルール案の文書化・月次レビューの進行を担い、御社には勤怠データの共有、試す部門の決定、労使の話し合いと就業規則の手続きをお願いします。
成果物|記録シートから月次レビューまで、社内で回せる4点
最初に作るのが「勤務間隔の記録シート」です。診断のときに人事の担当者が勤怠データから作り、部門ごとの休息時間と基準を下回った日を一覧にします。勤怠システムで同じ数字を出せるなら、その画面を使います。
次に、試行を始める前に「例外と承認のルール」を決めます。部門長と人事が、認める事由、判断する人、回数の上限、事後の休息を1枚で確かめられるようにします。あわせて「管理職の予定調整手順」を整え、終業が遅くなった日に、管理職が何を確かめ、誰に連絡し、翌朝の何を動かすかを順に示します。
最後は「月次レビュー手順」です。毎月の管理職会議で、例外の件数と事後の休息が取れたかを確かめ、業務配分を見直すまでの進め方を定めます。支援が終わった後も、社内だけで続けられます。
期待できる効果|例外の件数と事後の休息が、毎月見えるようになる
経営にとっては、どの部門のどの時期に休息が不足するかが数字で分かり、人員や業務配分の判断に使えます。管理職は、例外を認めるかどうかを一人で抱えずに、決まった手順で判断できます。従業員は、遅くなった翌日にどう動けばよいかが分かります。
見る数字は「基準を下回った日の割合」と「例外のあとに休息を取れた割合」です。厚生労働省のマニュアルは、IT系労働者1,811名の研究で休息時間が短いほどストレス反応が高かったことや、ノルウェーの看護師1,538名の研究で11時間未満の休息の有無が翌月の病気休暇日数に影響したことを紹介しています。どちらも御社の従業員で確かめた結果ではなく、制度だけで健康状態が良くなると約束するものでもありません。体調に不安のある方への対応は、産業医や医療機関にご相談ください。
Human Soarからのコメント
時間数を決めるだけなら、規程の数行で済みます。難しいのは、緊急時に誰が認め、そのあとどう休んでもらうかを先に決めておくことです。高校野球の投球制限は、数字と上限に達したときの扱いをセットにしています。その考え方を手がかりに、御社の勤務の実態に合わせて、現場で使えるルールに整えます。
よくあるご質問
Q. 勤務間インターバルは法律上の義務ですか?
2026年10月時点の厚生労働省の資料では、労働時間等設定改善法の努力義務とされています。法的位置付けは審議会で論点になっているため、最新の内容は厚生労働省の発表でご確認ください。個別の判断は社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
Q. 何時間に設定すればよいですか?
現行の努力義務の規定に時間数の定めはありません。厚生労働省のマニュアルは、11時間を望ましい水準、9時間を最低限確保してほしい水準とするように分ける方法も例に挙げています。通勤時間も含まれるため、御社の勤怠記録を見ながら労使で決めます。
Q. 緊急対応がある業務でも導入できますか?
導入できます。厚生労働省のマニュアルでも、災害や重大なトラブルなどを適用除外として定める方法が示されています。その場合は、判断する人、回数の上限、事後の健康確保措置まで決めておきます。
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